2024.10.10
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中村薫氏:ホロラボの中村と言います。『新しい技術でアジャイルなマインドで進めていく』ということでお話しします。スライドはこちらにアップしていますので、お手元でご覧になりたい方は取得ください。
僕は基本的にオンラインではカメラをずっと切りっぱなしにしている人間なんですけれども(笑)、たまたまこの前、動画の講演資料を作る機会があって、顔が見えたほうがいいのかな? どうなのかな? と思って(Twitterで)聞いてみたら、やっぱり顔が見えたほうがいいらしいというのが、200人くらいから投票いただいてわかったので、ちょっとこういうときは顔出しをしながらやろうかなと思っています。
自己紹介からしていこうと思います。株式会社ホロラボという会社をやっています。あとで少しお見せするんですけれども、HoloLensという頭に被るデバイス。俗にARとかVRとか言われるものをやっていて、たぶんこの界隈だとめずらしい、どちらかと言うとマイクロソフト寄りの人間です。特にMS(マイクロソフト)べったりというわけでもないんですけれども、なぜか昔からずっとMS技術をやっているような生い立ちです。
バックグラウンドについて少し共有しておきます。2000年くらいからプログラマーとしてこの業界で働き始めていて、基本的にはずっと受託の開発をしています。
当時は炎上プロジェクトとかそういうのがけっこう多くて(笑)。月の残業が何百時間とかあったりして、このままじゃいかん!
そこでいろいろ調べて、アジャイルとかスクラムを知ったのが、自分のブログとかを戻していくと2009年くらいらしいです。自分の感覚では、もうちょっと前なのかなと思ったんですけど。
2010年くらいにCSM(認定スクラムマスター)を取りました。僕はCSMの認定を活用できなかったので、今は更新してないです。
そんなふうにやっていて、2012年くらいから個人事業主として1人でやり始めました。これも基本は受託です。
そして2017年に今の会社を作ったと。これもまあ、もともとは受託でやっていました。あとで話の流れで紹介する自社サービスや自社パッケージをやりはじめて、また少し違った視点が見えてきたのが最近です。
会社の設立は2017年の1月です。さきほど言ったHoloLensという被り物があるんですけれども、これが日本でリリースされたのと同じ日です。リリース日があらかじめわかっていたので、これをやるために会社を登記したというのもあり、合わせたかたちです。
最初は5人で始めたんですけれども、おかげさまで、メーカーさんや大手の会社さん含めていろいろお声がけいただきまして、今従業員は30人くらいでやっています。
やっぱり新しいことというのは、けっこう小さくやっていかなければいけないとか、ビジネス的にどうかというところがあったり、投資が必要になってくるので、会社の生い立ちとして、比較的大手のお客様が多かったりします。
こうしたかたちでやっていて、ここ1、2年くらいでトヨタ自動車さんの方と一緒に仕事をする機会をいただくこともありまして。アジャイルとかスクラムという文脈だと、トヨタの話って出てくると思うんです。
やはりトヨタの方と話をしていると、カイゼン文化やジャストインタイムみたいなところが本当に染み付いているというか文化として根付いているんだなというのをものすごく感じています。そうしたところからも学びがあるのを日々感じています。
(ホロラボという会社は)どういうことをやっているかということで、昨日、ちょっと動画を作ってきました。
(動画再生)
右下のほうで被っているのがヘッドセット。メインで見えているほうが、実際に僕がヘッドセットのディスプレイ上で見えているものです。空間上には、なにも映っていないんですけれども、ジェスチャー操作をすると、よく見るWindowsのウィンドウが出てきます。
これを進めていくと、従来のコンピューター環境と違って、空間をコンピューター環境にすることができます。例えば、3Dモデルを表示すると通常は2Dの画面で見るわけですが、HoloLensでは本当に立体が立体のまま出てくるので、それをつまんで移動したりとか、大きくしたり小さくしたりとか、回り込んで見たりもできるので、今までのコンピューター環境とはちょっと違う作り方というか、表現の仕方というのが出てきます。
VRやARと呼ばれているものが、このあたりになります。こうしたものが次の世代のコンピューティング環境ということで、各社様で取り組まれています。(ビデオで動いているところを指しながら)こういう感じですね。3Dのモデルをいろんな角度から見ることができます。
これをもう少し業務っぽくすると、(切り替わった動画を示して)こうなります。これはゲーム開発用のエンジンを作っている、Unityの日本支社のオフィスです。実際に現実の空間上でジェスチャー操作すると、その現実の情報が、例えば、家具だと家具、椅子なら椅子っていうのが、ポンっと現実に情報として上がってくるんですね。
これ実は、建設業で使われている3Dモデルをデバイスの中に仕込んでおいて、現実に重ねているみたいなことをしています。製造業ですとか建設業ですとか、それからインフラ業の方たちに対して、比較的興味があるようなものになっています。
(動画終了)
アジャイルとかそういう話をするにあたって、会社のサービスを共有したいと思います。
もともと受託開発をしてきて今も受託開発をずっとやっているのですが、最近やはりお客さんのほうでも中で開発したいというようなことが増え始めているので、開発のご支援というかたちでお客さんに対してトレーニングをしたり、一緒に開発したりというようなことをやっています。このご時世なので、当然リモートでやっているかたちですね。実際、今一緒に開発しているお客さんとは直接の面識はなくて、オンラインだけのやりとりというのが多いです。
それとは別に、自社のパッケージとかサービスというのをやっていて、ここは比較的アジャイルというか、継続的な開発をしているようなものになっています。
これはわりと日本特有なのかなというのがありまして。よく言われるような話で、アメリカとかだと製品に対して自分の業務を当て込む、変えていくみたいな話があるのに対して、日本の場合は自社の業務に対してソフトウェアを変えていくというようなことがよく言われるのかなと。
お客さんは、特に新しいものに関しては、やはりそれぞれ実現したいこともあるので。そうしたこともあって、受託開発でそれぞれの叶えたいものを作っていくというのが、まず1つかなと。
共通的なサービスやスタートアップ的な1プロダクトでやるみたいなところは、もう少し市場が成熟してきて、やりたいことが定まってきたあとにやっていくといいのかなというところです。
ヒアリングとかマーケティングとかになるとは思うんですが、お客さんの話を聞いて、それを受託開発でやっていくわけですが、だいたいみなさん考えることはそんなに大きく離れていません。そこで共通項を抜き出してサービスやパッケージとしてリリースするというようなことを最近よくやっています。
大きなお客さんだと、やはりお金というところで投資ができるんですけれども、市場が広まって、より広がっていくと、どうしてもコストをかけられない方が出てきます。そういった方に対しては、投資をしていただいたお客さんから共通のニーズを引っ張り出したパッケージを作って、それを比較的安価に提供すれば、投資をしながら学びながら市場を広げていけるのではないかというふうに考えています。
これはお客さんに対してお話をしていて、新しい技術をどういうふうに実導入していくかというものです。
HoloLensの導入フェーズと書いていますが、おそらくIoT然り、たぶん古くはクラウドとか、もっと前もこういうことをやってきたんだろうなと思うのですが、いわゆるPoCというのがあって、その前にはEnvisioningという学ぶ機会、後ろにはPilotというかたちで実導入の一歩手前くらい。さらに実導入というかたちで進めていきます。
よく言われる「PoC死(ポック死)」というのは、概念実証のPoCのところでうまくいかないでコケるとか、そこで満足しちゃって終わるみたいなケースが多く、PilotやDeployのフェーズに進まないというようなことです。
例に漏れずHoloLensも同じようなことをやっています。PoCというのは多いんですけれども、ここ1年くらいはPoCを越えて、Pilotというかたちで自社サービス、社内サービス。社内サービスというのはお客さんの社内の環境でありますが、これと連携して先に進んでいくところも増えてきています。こうして業界ですとかお客さんが成長していくというところと自社の成長というところがリンクしているようなかたちになっています。
これをどういうふうに積み上げていくかというところになるのですが、やはりわからないをどんどんわかるに変えて、わかることをどんどん増やすというところが大事かなと。言ってしまえば基本的なところかと思うんですけれども、やってみると意外とこれを実際にはできていないケースが自分たちも含めてあるのかなと思っています。
とにかくわからないをわかるに変える。そのわかる項目をどんどん増やしていくことによって、なるべくうまくいくこと、うまくいかないことを切り分けて、うまくいくことを積み上げていくことで先に進めるような、そういったやり方がいいのかなというふうに考えています。
僕はけっこう前から、アジャイルとかスクラムという知識としてはあるんですけれども、どうも性格的にうまくアジャイルの開発というのができないみたいで。なかなかこう知識としてはあるんですけれども実践ができないというジレンマを抱えていて。
ここ3年くらい、開発というよりはどちらかと言うとビジネスを作るとか市場を作るというほうが自分の役割になっていて、そういうときに、タイトルにもあるとおり、アジャイルのマインドセットというところが非常に自分の中で有効に働いているというのを最近感じているところです。
このわかるというのを積み上げるところで、やっぱり小さく検証する。あまり大きくしすぎるとどうしても時間もお金もかかってくるので、それをいかに小さくしてできる、できないの判別をするのか。その検証をするために何が良さそうで、何が良くなさそうなのかという仮説を立てるというところ。それに対しての結果をきちんと計測するので、いわゆる仮説と検証だったりとかそういったところが大事なのかなと非常に実感しています。
これは開発とかビジネスというところの視点で、会社をやり始めるとやっぱり経営的な視点みたいな話が出てきます。そういう目で見ると、もうちょっと俯瞰して、積み上げるということ自体が有効なのかどうかという話。そしてこのやり方自体に再現性があるのかみたいなところをやっぱり自分が興味を持ち始めていて。
例えば先ほどの受託開発というのは、当然同じようにやれば同じようにうまくいく。お客さんに対して価値を提供できるというような再現ができる。最近は開発のご支援というところでトレーニングをして、一緒に開発をして、一緒にPoC、Pilot、Deployに進んでいくみたいなところがビジネスモデルとして再現するかどうかというところを、今いくつかのお客さんと一緒に検証している段階になっています。
ちょっと話が変わりますが、先ほど言ったとおり、今ホロラボの中では、受託の開発とサービスの開発の大きく2つがあって、そのなかのサービスの1つとして、mixpaceというものをやっています。
なにかというと、さきほどお見せしたような3Dのデータには、いろんな形式があります。一般的に最近だとよくみなさん見かけるのはアバターみたいなものですが、製造業で言うとCADというものがあったり、建設業で言うとBIMというものがあったり、いろんな3Dのデータがあります。当然ながらそれぞれファイル形式が違うんですね。テキストデータとかバイナリデータとか。2次元のデータとかと一緒でそれぞれ表現方法が違うのでファイルフォーマットが違います。
これをクラウド上で同じような共通フォーマットに変換して、ARとかMRとかで見るというようなサービスをやっていると、今まで手動でやっていたいくつかの手順を自動化できるようになっていて。これは僕もわりとアジャイルとかに首をつっこんでやっていた成果かなと思っていて、手動でやっていることを自動化するというふうに考えるのは、この何年かでずっとやっていることです。
このサービス自体の発想もそこからきています。(発想の基は)ソフトウェアを使って手動でいろんなことをやっていると、じゃあそこを自動化すればもっと短くなるよねというようなところからできていて、会社を作ったときは、実際これを受託開発でやっていて、データを書き出して、軽量化して、ポリゴン化をして、アプリ化をするみたいなことを数週間とか2、3ヶ月くらいでやっていたんですね。
これを全部自動化して、ファイルをブラウザにポンっと入れると全部クラウドでよしなにやってくれて、しばらく待つとデバイスのほうにデータが降ってくるみたいなことで。2020年の2月にユーザーテストをした結果、おおよそ3分くらいでほぼほぼ対象のデータが変換できるというところで、やっぱり時間がかかっていたもの、時間的なコストというのがグーっと下がっていったというようなことをしています。
これを開発のほうで、もう少しブレイクダウンしてみると、スクラム的なかたちでやっていまして……。
ちょっと広告になるんですけれども、RSGTの2021で、このmixpaceの開発をしている酒井さんというスクラムマスターの方がプロポーザルを出しているので、ぜひ清きLikeをお願いします。
このあたりの話は、前回お声がけいただいたScrum Osakaで話したときに、けっこう僕らの中ではわりと必要に応じてそうなっていったんですけれども、意外と新鮮だったみたいで、そういう話が実は今日のお声がけにもつながっているっていうのがありまして。
一般的に開発において、開発のチームで1つにまとまるというところは、たぶんみなさん含めて興味範囲としてあると思うんですが、当然サービスになると、開発をするっていうのと、売るっていうのと両方あります。その2つ、作る人たちと売る人たちがどういうふうに協調するのか、コラボレーションするのかという話がそんなに多くないのかなというのは、少し感じていて。そういう話を聞いたあとに、いろいろ見たり調べたりしていたら、あんまりそういう話はそんなにないのかなみたいな。
実際にうちの中だと開発チームがそれほどまだ多くない10人に満たないようなかたちになっているので、それで開発と営業というのが1つのチームになって話しているよっていうような……。これももともとは開発と営業は分かれていたんですけれども、いろいろうまくいく方法を探していた結果、それが1つにまとまってきたっていうところです。
そういう細かい経緯や話は、ぜひ酒井さんから話してもらいたいなと思うので、機会をいただけると嬉しいなと思います。
(次回につづく)
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