2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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司会者:それではご紹介いたします。株式会社永和システムマネジメント 代表取締役社長/株式会社チェンジビジョン代表取締役CTO/Scrum Inc.Japan取締役の平鍋健児さんです。テーマは「withコロナ時代のアジャイルとコミュニケーション〜効果的な場作りとツール〜」です。よろしくお願いいたします。
平鍋健児氏(以下、平鍋):よろしくお願いします。永和システムの平鍋と申します。今日は「withコロナ時代のアジャイルとコミュニケーション」ということで、今の環境はうまくいっているという人もいればなかなか雑談とかしにくいねという人もいると思うんですけど、僕の考えていることをお話したいなと思います。
それはそうと、今日の川口さんの基調講演とてもよかったね。僕もずっと思っていたんですよ。やっぱり日本のやり方という、カルフォルニアロールじゃなくてもいいんだけど寿司にもいろいろな寿司があってと。
その土地のものがあるというのはやっぱりいいなと思います。このまま日本が変わらないか、どちらの方向に変わるかはわからないですけど、この時代に僕はここに生きているということを最大限に活かして、アジャイルがいいかたちになるといいなと思っています。
コロナになってから自分の時間が増えて、僕は『はじめ人間ギャートルズ』にけっこうはまって、よく見ています。これは漫画もとてもおもしろくて、終わりの歌とかとてもよくないですか? (歌う)「なんにもない、なんにもない、まったくなんにもない」(『はじめ人間ギャートルズ』EDテーマ「やつらの足音のバラード」より)みたいな。最近カバーしている人もいますけど、とても素敵なのでみなさん見てください。
僕の自己紹介は特に今日はしませんが、いろいろなことをやっています。
1問目、「へびの心臓はどこにあると思う?」。『物理の道しるべ』という本から取ってきた問題です。これは最後に解答したいと思います(笑)。
福井と東京に会社がありまして、福井にAgile Studio Fukuiという、お客さんと一緒に合宿をしたあと、オンラインでつないでアジャイル開発をやっていこうという、そういう場所を作っています。
最近はオンラインになってしまったので、Work from Anywhereでアジャイル開発ができるようなチームを持っていて、そことお客さまと一緒にやっています。名前もAgile Studio FukuiからAgile Studioと変えて、リモート時代のDXとやってもう少し広くみなさんと協業できたらいいなと思っています。
場所を作ったきっかけは、福井にいてもやっぱり東京のお客さまがすごく多いのでどうやってつながろうかねという話をしていたときです。場所を作ってPOの人に来てもらってそこで一緒にやったらいいんじゃないかみたいな話や、POだけじゃなくてお客さまのチームも一緒にやったらいいんじゃないかみたいな、そんなことを考えて作りました。
(スライドに)そこに見学にこられた人の数「70社300名」とありますが、事業会社の方も来られていますけど、言っていいのかな? 実は来られているのはほとんどSIerで、コンペティターなんですけど(笑)。ちょっと「一緒にやりますか」みたいな話や、ぜひやり方見せてくださいみたいなことも全部受け入れて、たくさんの人に見てもらっています。
やっていることはアジャイルのやり方で「共創・共育」と言っているんですけど、共に作る・共に育つwith顧客。お客さまの中にも最近内製化を進めたいという方もたくさんいらっしゃって自分のチームを持っていらっしゃるんですよね。そのチームを変えたいと思っているお客さんだったり、それからそこの人たちと一緒に育つ環境を与えてほしい。
一緒に勉強ができるような場所で一緒にモノづくりができると。そんな場所を求めていたので、福井で「共創・共育」というようなことをやっています。
ちょっと川口さんが冒頭でいい話をされたので、僕も今ちょっとどう考えてこれをやっているかというのを書いてみました。アジャイル開発のかたちということで、一番左がいわゆるレガシーの開発です。日本のSIのかたちは事業会社が上にあって受託をしているITベンダーがあって納品をしています。要件と発注、調達です、みたいな話が今でもまだたくさんあると思います。
米国は事業会社にITエンジニアがけっこういて、そこでプロダクトあるいはサービスの方針と開発チームを作れてしまうので、その中でアジャイルができます。ITベンダーは何をやっているかというと、やっぱり製品開発をやっていますよね。プロダクトを作っています。
その作ったプラットフォームを提供してやっているから、プラットフォームはプラットフォームのインターフェイスで1つのサービスとして成り立っていて、自分たちのサービスのかたちを決められるし作れています。だから両方のアジャイル活動がうまくいっているんですよね。日本では非常に早くからスクラムを入れたのはやっぱり楽天さんとかリクルートさん、クックパッドさんとか、そういう事業会社でWebを中心に基幹で持っているところですね。
そこが内製化をどんどん始めました。だからWebサービスの会社が内製化をしてそこにPOがいるというかたちが、日本のアジャイルで今起こっているもののたくさんの割合を占めていると思っています。とは言え僕もそのSIer側にいたので、「この構造はどうなるんじゃい!」と思っているんですけど。
僕がAgile Studioを作った意味でもあるのですが、その事業会社とITベンダーとその両方が一緒の場所に集まって同じ釜の飯を食うじゃないですけど、同じチームを作ってそこで開発ができると。そういう環境ができないかなというのを今模索していて、その1つのかたちとしてAgile Studioというのを作っています。
1つのトライですね。これがうまくいくかどうかはわからないですし、今やりながら考えているというところです。
地方とか首都圏とかはあまり関係なく、今は東京、神奈川、横浜とかの地区にエンジニアの7割がいるんですって。野望みたいな本望みたいなところでいうと、「そんなのおかしいよね」というのがあります。地方にももっと優秀なエンジニアがいるはずなんだからつなげていくということをやっていきたいなと強く思っています。
今のコロナの時代になって「もうどうでもいいじゃん」みたいな話も出てきているので、この状況で働き方も絶対変わりますよね。
ちょっと話がズレますが、僕の娘は大学生ですが、もう大学に実際に行かなくていいもん。どこの大学に行っても自分の町から参加してぜんぜんいいんじゃない? みたいな、そんなおもしろい環境になっています。そういうのもあってエンジニアが直にビジネスにつながっているかたち、社会に影響を与えられているという時代がもうそこにあって、それが東京とか田舎とか関係なくできるといいなと思います。
それからソフトウェアはもはや調達ではないですよね。やっぱりこれからは強みの核になるところなので、安いところに発注するとかそういう話ではなくてイノベーションの核なんじゃないかなと思っています。それからちょっと青臭いことを言いますけど、やっぱり仕事をしていて「ワクワクするな」とか、「これうまく動くかな」とか、「これサービスインするときのドキドキ」とかね。
「やったぜ!」みたいな、そんな感覚はやっぱり僕らはみんなもっているし、胸を張って大切にしていきたい。「仕様書に書かれている通りに作りました」ではなくて、「これで社会が変わるんだ」とか。お客さんと一緒に作ったそれが公開されて、そんな感覚をずっともっていたいなという思いが僕の思いです。
今日は何の話をするかというと、afterコロナ、withコロナの時代のコミュニケーションの話ですが、途中で野中郁次郎先生の言葉を借りたいというのもあって、その話をちょっとだけしたいと思います。
僕はどこでも何度もこの話をしているので、聞いた方もいると思うんですけど、スクラムの一番初めに出た書籍。これはKen SchwaberとMike Beedleが書いている書籍なのですが、この本の第1文目はこれなんですよね。最初の引用はこの「今日では新製品開発の動きが早く」というこの文章が、この本の先頭に出てきます。
この先頭の文章はどこから引用されているかというと「The New New Product Development Game」。1986年にHarvard business reviewに書かれた野中郁次郎先生と竹内弘高先生の「The new new product development game」という論文から来ているんですね。
この論文がちょっとおもしろくて「new new」と2つ付いています。これはなんでかというと、最初のnewは「新しい」という意味です。2番目のnewはproductに付いていてnew productなんですよ。
だからnew product、つまり「新製品開発の新しいゲーム」と読むんですね。だから今世の中にあるものを作っていくという製造の話ではなくてnew product、まだ世の中にない新製品を作る時の新しいやり方という論文なんですよ。
右側に「Stop running the relay race and take up rugby」と、いい言葉が書いてあります。ものを作るときに例えば仕様書をバトンにすると「ここまで作ったよ。あとはお願い」とバトンを渡して、次の走者がそれを受け取ってまた走って最後にゴールするというリレーモデルじゃなくて、みんなで一緒にガチャガチャして押し合いながら、あるいは時には後ろに戻りながらラグビーのようにボールを押していこうというのを書いたんですよね。
(スライドを示し)これはその論文に出てくる絵です。これは僕らにとってはどう見ても一番上がウォーターフォールみたいに見えるじゃないですか。そのように錯覚しますが、これは86年の絵でソフトウェアは関係ありません。モノの開発についての図で、ソフトウェアそのものの開発のことを言っているわけではありません。
例えばTypeAはNASAで使われているPPPというPhased Project Planningかな? そのやり方です。Aは例えばプロトタイプなんですよね。隘路を潰してそのあと企画となってそれが実際の設計に入りみたいな、そういうのがディスクリートに分かれていて、その間をハンドオーバーしています。
「これが僕たちの成果です。これを使って次を進めてください」と。そのゲートにその次に進んでもいいですか? というテストがあって、「じゃあ進めてください」という承認が入って進むというやり方らしいです。もっと大きなことは人が1番と2番で違うというところです。1番やっていた人と2番やっていた人はけっこう離れていて、もちろん会話をQAなんかをするんでしょうけど同じ人じゃないんですよね。
人づてにつなげていくやり方ですね。僕らから見ると完全にウォーターフォール系の形式に見えますが、そのときはそういう言葉ではなくてこれはハードウェアも含んだシステム開発なので。
TypeBになるとだんだんそれがくっついてきます。TypeCになると今度はかなり人も混じるしフェーズも混ざっていきます。TypeCには、野中先生は最初は「サシミ」と名前を付けたらしいですね。「でも『サシミ』では流行らないだろう」と言って「スクラム」といういい名前を付けたそうです。わかりますよね? 刺身が重なっているようにということです。
でもこのTypeCで一番大事なのは、これは、僕はこう読んでいるということなのですが、一番に関わった人がこれがずっと2番、3番、4番と走っているんですよ。最初に企画を書いた、つまり「こういうのを作りたい」と言った人が情熱をもっていろいろな人を巻き込んで2番の人に話をして、3番の人に話をして。
仕様書だけで伝えるのではなく「僕はこう思う。なぜ思うか、お前もそう思わないか?」みたいな話をして、人を巻き込んで人と人の対話の力で、そのエネルギーを維持してフェーズを進んでいくと。これがけっこう大きなポイントです。
これは別の川口さんが書いた絵ですけど、こういうふうに日本のこの論文がスクラムに影響を与えているという話です。
2011年にこういうのがあったという話があって、2019年の去年もジェフ・サザーランド博士が来て話をしたりしているということですね。ちょっとこの話はやり始めると深くなるので、今日はここでおしまいにしますが、いろいろおもしろい話があります。
(次回につづく)
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