2024.10.10
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寺田進一氏(以下、寺田):今日は「SIer(システムインテグレーター、以下SIer)の未来はどこにあるのか?」というディスカッション形式で進めていきます。今日モデレーターを担当します「マジセミ」の寺田です。はじめましての方もいると思いますので、まず簡単に私の自己紹介をします。
私自身、SIerである野村総合研究所で20年ぐらい勤めていました。前半の10年はインフラのエンジニアでして、後半の10年は社内ベンチャーでオープンソースのサポートビジネスを立ち上げて、「OpenStandia」という名前でやっています。こんな焼きそばみたいな駄洒落ノベルティも作ったりもしました。
今はやきそばからラーメンになったりしたんですが、本当は今日からビッグサイトで展示会をやる予定だったんですけど中止になってしまいまいした。このラーメン4,000個ストックがあるので、これをどう使おうかというのも、ちょっとみなさんの意見をいただきたいです。
本業は「マジセミ」ということで、今日のウェビナーも「マジセミ」の位置づけですが、セミナーの運営サービスをやっています。
ほかにもいくつかの会社さんのマーケティングコンサルをやらっていたり、あと共同出資でベンチャー企業を作ったり、ベトナムのオフショアの会社に出資したり、そんなことをやっています。
最初にゲストの山本さんを紹介して、そのあとパネリストの田辺さんと佐藤さんを紹介いたします。
今日の進め方と注意点です。最初に、参加している50人近くのみなさんに投票をしてもらって、その方々のSIerに勤務しているとか、そういった属性を確認して、ディスカッションを進めていきたいと思います。だいたい1時間半ぐらい、やっていきたいと思います。
まずは山本さん、自己紹介をお願いします。
山本融氏(以下、山本):私は通信系のグループ会社のSIerに所属しています。そのグループに限らず、産業・公共、幅広い横断的なITコンサルタントをしています。プロジェクトマネジメントを15年ほどしたあと、ITコンサルを4〜5年やっています。アパレル、出版業界、通信事業グループなどの国際調達をやっています。
単独でプロマネのキャリアをもっていて、プログラミング以外の行為をすべて単独でできるので、営業段階でなんでも行なうため、業界では「コンサル殺し」と言われています。ほかにもいろいろと対策本を書いたりとか、いろいろ趣味を持ってたりするので、そういう関わりがある方は仲よくなっていただければと思います。
今回の参加者にはいろいろな方々がいるかと思いますが、(私自身)SIerに所属しつつも、今日はいち個人・いちITコンサルタントとしてお話しする中で、いろいろな製品とか戦略にとらわれずにみなさんのお役に立てればと思っています。
寺田:ありがとうございます。私がいるマジセミは笹塚に事務所があるんですけど、本当はここで山本さんと2人でディスカッションをやろうと言っていたんです。でも、緊急事態宣言も出てしまったので、今日は完全リモートでお届けをすることになりました。山本さん、よろしくお願いします。
山本:みなさんオフィスのようですが、私は自宅なので生活音とかいろいろあると思いますけど、ご了承いただければと思います。よろしくお願いします。
寺田:ぜんぜん大丈夫です。よろしくお願いします。では続きまして、パネリストの方の紹介になります。田辺さん、簡単に自己紹介お願いしてよろしいですか?
田辺泰三氏(以下、田辺):ご紹介いただきました、アイシーティーリンク株式会社の代表をしています田辺泰三と申します。よろしくお願いいたします。
簡単な自己紹介ですけれども、23歳〜29歳ぐらいまで、大手SIerでシステムインテグレーションをしておりました。その後、今のソフトバンク株式会社となる当時はADSL事業をずっとやっていたソフトバンクBB株式会社に入社しました。
そこではVodafone買収や日本テレコム買収など、会社がどんどん大きくなるにつれて、システム基盤領域のマネジメント、マネージャーをしておりました。その後、3年半前ソフトバンクを辞めて、システム基盤領域に特化した会社を興しました。
今回SIerというテーマで参加していますが、SIの経験、エンドユーザーの経験、そしてもう1回飽きて、SIerとしての起業した経験があります。SI、エンドユーザー、起業したという、おもしろそうなキャリア(の人)が必要かなと思いまして、参加しています。SIer視点・エンドユーザー視点・起業家視点という、いろいろな役割でのお話しできればなと思います。よろしくお願いいたします。
寺田:よろしくお願いします。では、佐藤さん、お願いします。
佐藤氏(以下、佐藤):住友金属鉱山の佐藤と申します。当社は金銀銅の金属を山から掘ってきてメタルにする会社なのですが、その中の工務本部という保全とか設備の開発を行なう部署にいます。情報システムとは少し違うのですが、自前でコンピューターのシステムも作っています。
実際にIoTからデータ解析まで一気通貫でシステム構築していまして、小さなものはもう自分で作っちゃうのですが、大きなものになってくるとSIerさんのような力もたぶん必要になるだろうなと。
たぶん私の立場は、ユーザーであり、社内SIerでもあり、両方の立場なんだろうなと思います。今後、新しい大きな工場を作るときにはみなさんの力も助けを請わなきゃいけないかなと。そういった立場でお話ししています。以上です。
寺田:ありがとうございます。それではよろしくお願いいたします。では、私のほうでいったんまた画面を共有し、今日の進め方について少しお話しします。
今日、基本的には私とゲストの山本さんとの間で議論を進めていきたいと思いますが、田辺さん・佐藤さんは適宜コメントを挟んでいただいてかまいません。もう直接音声でどんどんコメントしてください。私からもタイミングを見て、お二人に意見をうかがうと思いますので、よろしくお願いします。
参加者のみなさんからも、ぜひ意見だとか質問をいただきたいんです。ディスカッションなので、基本的には山本さんとやるんですけど、参加者のみなさんからの反応がないとWebセミナーってすごく寂しくなっちゃうので、ぜひコメントをいただければと思います。
その際に、今日はQ&Aという機能がありますので、そちらでコメント、質問をどんどんしてください。今日は基本的にディスカッションなので、最後に質疑応答の時間をとるというよりも、その場でどんどんコメントいただいて、それを含めて我々議論を回していきたいと思いますので、よろしくお願いします。
あと、「投票」というのがあって、参加者のみなさんに選択をしていただいて、集計が自動的に出るような機能があります。これは適宜私のほうでみなさんに指示しますので、ご協力をいただければと思います。
寺田:では、先に今日の参加者のみなさんの属性を少し確認したいので、投票をしていきたいと思います。今50名ちょっとの方が参加していただいていますが、みなさんの立場をおうかがいしたいんですけど、「SIerです」とか、「ユーザー企業です」「パッケージとかSaaSのベンダーです」「代理店です」「技術派遣がメインです」とか、複数やられている人も多いと思うんですけど、「一番メインはここだな」というところで、いったん回答してもらえればと思います。
いったん締め切らせていただいて、結果も共有していきましょう。やっぱりSIの方が多いですね。46パーセントがSIerとなっています。私が選択肢を挙げられなかったせいで、その他が少し多いですけれども、こんなかたちですね。ありがとうございます。
じゃあもう1個だけ。今日いくつかテーマを予告していたのですが、関心があるやつを教えてください。「DX(デジタルトランスフォーメーション)でSIerはどこまでできるのか」とか、「内製化についてとSIer」「エンジニア獲得競争」とか、興味があるやつをみなさんチェックして送信してほしいんです。「パッケージやSaaSが日本企業苦戦しています」「高齢化の話」「アフターコロナの話」とかですね。
ただ今日は、これ投票させておいてなんなんですけど、シナリオがないのでどういう方向にいくかわかりません。このとおりいくかどうかさっぱりわからないんです。けれど、いったんみなさんの興味関心をおうかがいしています。
けっこうこれはバラけていますね。今だいたい6割ぐらいの方に投票いただいていますが、ここでいったん締め切ります。
これも共有します。こんな感じですね。DXの話とアフターコロナの話、あと内製化とかも多いですね。これはけっこうバラけているようなかたちですね。
じゃあこんなところで、また適宜投票をお願いします。今日はいっぱい作ってきたので全部やれないかもしれないですけど、適宜やっていきたいと思います。
寺田:ではさっそくディスカッションしていきたいと思いますが、では山本さん、最初のDXのところいきましょうか。
山本:お願いします。
寺田:私の問いかけは、「そもそもDXって何か?」ということです。人によって(DXの)定義曖昧なんですよね。私の理解は、ITの話じゃなくて、ビジネスの話じゃないかと思っています。もちろんデジタル、ITは使うんですけど、それを使ってどうビジネスを変革していくかというのが本質です。
SIerはどちらかというとシステムを作るところが生業なわけです。そのSIerが経営やビジネスにどこまで踏み込めるのか、DXに貢献できるかが僕の問いかけなんです。どうですかね?
山本:たぶん今の議論の範疇だと、これまでのIT化の流れと考え方があんまり変わっていない気がするんですね。そうすると、当然ながら貢献できないなんていうことはなくて、今までどおりやればいいかと思います。
私の中でDXをどう捉えているかということの話もしていいですか?
寺田:はい。
山本:(私は)もともとDXって、クラウドとかSaaSとかっていうのと同じように、別にSIerが望んで作った言葉じゃないと思っています。
背景として、Amazon・Facebookが出てきて、それに慣れた消費者がわがままになったということがまずあります。従来、IBMなどのベンダーが企業の情報システムを寡占することで儲けてきたというビジネスがありました。それが、それ以上のことをやってくる企業が出てきたので、それだけでは食えなくなった。
だから「じゃあそれに近づけるためにSIerはどうしたらいいのか?」というのがこのデジタルトランスフォーメーションの本質だと思っています。僕のDXについての理解はそうです。
そうしたときに、今までの仕事の仕方を変える・変えないというのが横軸にあって、事業領域をどう考えるかという部分が、B2B・B2Cに閉じるのかというのを下に置いたときに、B2B2C、B2B2Xへ転換していくかという軸を置いたときに、消費者のニーズは右上のほうにあるので、じゃあこれを右上のほうにしていくにはSIerとして何をしたらいいかということを考えることを迫られてきたというのが、私としてのDXの理解です。
寺田:ユーザー企業が右上に行こうとするときに、SIerは何ができるかということですよね。
山本:そうです。消費者のニーズがここにあるというのはもうファクトなんですよね。残念ながら、Amazonとかそういう人たちがものすごい攻めの経営によって、社会基盤という観点で、いいものを提供してきちゃったわけです。現実問題として我々はシステムを作るという同じ職種を持っている者として比較されるわけです。僕はそれに対して現実的には目を向けなければいけないという話だと思っています。
山本:もう少しこのSIerの仕事に落としていくとどうなるかというのは、もう1個用意してきたので共有させてもらっていいですか?
寺田:準備がすごいですね。私、なにも準備していなかった(笑)。
山本:いや、同じことを日々いろいろなところに対して講義しているんですよね。経営者から一番問われるのって、「じゃあ今までとDXって何が違うんですか?」ということなんです。
結局今までと何が違うのかということをはっきりと伝えていかないと、みなさんご納得いただけないので、そういう資料をいっぱい作っています。
横軸・縦軸というのはさっきお話しした内容と一緒なわけですけど。例えば従来のSIの進化を見ていくと、「IBMモデル」とかって言われていたと。今IBMってこの右下の領域にいると思っていて、今まで売れなかった事業領域という意味でいうと、プロダクトを販売するというスタンスを変えずに、儲からない技術とかプロダクトを切り捨てて新たなものを販売するというものです。Watsonとかがいい例ですよね。
あくまでものを売ることと、特定の企業に対して尽くすことで商売をしているのが従来のITの進化の考え方です。残念ながらそれだとGAFAには敵いません。彼らは何しているかというと、先進技術とかプロダクトとかプラットフォームの活用に加えて、いろいろな組織や競争可能なエコシステムを構築してビジネスを革新し、消費者に新しい体験をもたらすということをやっているわけです。
これに対して、我々(Sier)がじゃあどう右上にいくかとか、右上に行ったときにどう彼らと戦うかということが求められているものであって、一番大事なのは右下の領域から上の領域にいくことだと思うんですね。
その1つが、上のほうだけ読むと、プラットフォーマーとしてデータをもっている人たちと協業することであったりとか、あとはいろいろな業種に対して関わりを持って、特定の企業だけじゃなくて複数の企業あるいは団体に対してメリットを提供して、自律的に育っていくような仕組みを構築するというのが手段だと思っています。そういうふうにアプローチを変えていくことが我々にも求められているわけです。
だから、今までより、より高度ないろいろなステークホルダーの方が関わるようなものを作っていかなくちゃいけないというのが、我々に対して課せられている課題なのかなと思っています。
寺田:一応確認ですけど、さっきのこの図だと、要は右上はAmazonとか書いてあるので、いわゆるIT企業ですよね。
山本:はい。
寺田:この図だと「SIer自身が右上にいかないといけないですよね」ということを言っているわけですか?
山本:はい、そういうふうに言っています。それに近しいものを作って、それを顧客に対して提供しなければいけないと思っています。
寺田:なるほど。そのじゃあ……まぁ2つあると思っていて。エンドユーザーがDXをしたいですと。そこに対してSIerがどう支援できるかという話と、たぶん今この山本さんのスライドは「SIerそのものもビジネスを変えていかないといけませんね」と。今、後者の絵だと思うんですけど、もうちょっと噛み砕いて言うと、どこを目指していくということですかね。
山本:今2つ問いかけがあったと思いますが、前者のほうの話をすると、これも「どういうことをじゃあSIerとして自分たちにしてくれるんですか?」ということに対していつも答えている資料なんです。
だいたいそのプロセスとしてやることはいつも一緒なので、ABとか123とかって書いているんですけど、結局お客さん自身も要はいろいろな会社と戦って行かなきゃいけない。不動産業だろうと、アパレルだろうと、結局Amazonが敵になるんです。敵になるか協業していくかどっちかになっていくるんですよね。彼ら(Amazon)って、服売るし、土地もいずれ売ってくるわけですよ。
そうしたときに彼ら(Amazon)に対して立ち向かうには、今までと(やり方は)一緒ですけど、まず我々がSIerの立場として、お客さんのことを理解しなきゃいけないですよね。そうすると、最初のところとして、Aと書いてあるんですけど、今のお客さん、例えば製造業で捉えるなら、その製造業のお客さんの歴史的経緯だとか、要は業界動向だとか競合他社動向だとか、そういうところで一般的にDXというキーワードで何が行なわれているのかということの現状をまず理解することで、まずお客さんの立場に立つということを、私はしなきゃいけないと思っています。
それに対して、じゃあそれを理解したあとに、じゃあ先進的な技術という面で見たときにお客さんの仕事がどう変わるかということを調査して、それの答えを導くということがまずあります。これが最初のスタートの段階だと思っています。
次の段階として、その先進的な技術を持っている会社はじゃあどういう会社がいるのかとか、どういったプラットフォーマーがいるかということを調査をして、そういう人たちと協業することをお客さんに対して提案をして、我々がコーディネートしてですね、で、仕組みを考えていくということをします。
それから、お客さんの業種だけじゃなくて、お客さんのお客さん、それからお客さんの取引先というふうなかたちで、お客さんを中心にしたときにどんなバリューチェーンがあるのかを分析して、それぞれの方々に対してヒアリングをしていって、「こういうふうなかたちで協業することでいい仕組みができていかないか?」ということを実際打診をして、そのための仕組みとしてどういうものがあるかを考えていくことをします。
それをじゃあ成立したあとに、じゃあそういうのを踏まえたときに、広い範囲のお客さんを中心に使われるようなプラットフォームを実際に作っていくと。データが貯まっていくなかで、じゃあそのあとに消費者に対する値づけであったりとか競合に対する戦略の立て方をどう考えていくのかを議論していくプロセスで、話を整理していくことになるのかなと。
具体的などこどこのお客さんという例が出せないので、抽象的な言い方になって終始して申し訳ないのですが、俯瞰して捉えるとそういう活動をすることになるかと思います。
寺田:ありがとうございます。これはもうコンサルですよね。
山本:まぁ、コンサルというか……まぁ、コンサルですね。はい(笑)。
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