2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
欧州で働き、米国で学び、日本で繋ぐ(全1記事)
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安川要平氏(以下、安川):「欧州で働き、米国で学び、日本で繋ぐ」タイトルで発表していきます。今回のセッションは、前半は日本国内の話がメイン、後半は海外の話。いい感じに分かれているので、僕は、ジェネラルな部分を軽くお話しできればと思っています。
今回、海外の写真をピックアップして持ってきました。カンボさんがベトナムで働いていたように、僕もヨーロッパのチェコのスタートアップで働いたり、アメリカのイリノイ州に留学した経験があります。
今は日本で、「CoderDojo」や「未踏ジュニア」、「Railsチュートリアル」などいろいろなプロジェクトに関わっているので、そういったものを踏まえながら、たくさんある道やキャリアの中にはいろんな例がある、ということを情報や具体例でみなさんに共有できたらいいかなと思っています。
まずは自己紹介で、安川です。RailsチュートリアルとかRailsガイドの開発支援をしているYassLab 株式会社という営利法人と、全国に205ヶ所以上、世界だと2,000ヶ所ぐらいある非営利のプログラミング道場「CoderDojo」に関わっています。そういう作ることを楽しむ場というか、作りたい人たちが楽しんでワイワイできる場「CoderDojo」の公式日本法人である「CoderDojo Japan」の代表理事をやっています。
あとはIPA未踏事業……IPAって聞いたことある方も多いと思いますが、基本情報技術者試験とかをやってる独立行政法人です。IPAがやっている未踏事業の17歳以下版の「未踏ジュニア」というものの立ち上げからずっと関わっています。ざっくり言うと、何か作る人をサポートする……さまざまな法人やプロジェクトに関わる仕事です。
そういうようなプロジェクトに今現時点では代表、ないしはいちCo-Founderとして関わりはありますが、今回はその話はあまりしません。その前段階の「僕にはこういう経験があった」みたいなところを共有して、みなさんのなんらかのキャリアの参考になったらうれしいなと思っています。
ちなみに、僕自身は大学のコンピューターサイエンスに行っていて、前回のイベントでは「情報理工学部で学ぶこと」という話をしました。コンピューターサイエンスの一般的な話に興味があれば、YouTubeの動画にも上げてありますので、よければそちらを参照してください。
大学ではコンピューターサイエンスだけじゃなくて、ほかにもいろいろなことをやっていました。その中の1つが「IAESTE JAPAN」。日本語だと「イアエステ」ですね。「IAESTE JAPAN」の「日本国際学生技術研修協会」にお世話になりました。
交換留学とか聞いたことがあるかもしれませんが、(利用者は)理工系とか農学・医学・薬学とかを修めている学生さんなど主に大学院生が多いです。その方々が、海外のスタートアップや海外の研究機関でお互いに交換して、インターンシップみたいなことを国際レベルでやる国際的な機関があります。僕もそこにお世話になって、ヨーロッパのチェコのプラハでスタートアップでやらせてもらいました。
ちなみにこれは、けっこうシビアな競争があります。今回、もしかしたら人事の人や代表の方が観ているかもしれないので、少し共有したいです。というのは、僕が、これ(留学のテスト)を通れたのは、東芝のサマーインターンシップで研究開発をやっていたから、というのがあるからです。
なので、企業さんでインターン生を迎え入れていたら、ぜひ修了証書みたいなものを学生さんの場合は発行してあげてください。こういった機関にapplyする、申請するときにすごく便利でうれしいなと思っています。あと、できれば日英併記でって感じですね。
そうするとジョブオファーみたいなものがもらえます。国際的に「こんな人間で、安川という学生がいて、受け入れてもいいよという人、手を挙げて」みたい交換会があって、いくつかのジョブオファーをもらいます。
右側に示してますが、いろんなオファーがありました。その中でもスタートアップのソフトウェア開発工学をうまく使って、オープンソースのプロジェクトをやるみたいなオファーがあったので、これはおもしろいなと思って2〜3ヶ月間ぐらいその仕事に従事してました。
プラハは日本からだとだいたいこのぐらいの距離です。プラハの周りにも、オーストリアやポーランドなどいろいろな国が近くにあります。なので、拠点はプラハにあったんですが、実際にはヨーロッパのいろいろな国の方々......特に理工学系の学生と一緒にさまざまなことをやりました。
仕事は、さっきもちょろっと言いましたが、オープンソースのプロジェクトを立ち上げ事業をやっているプラハのスタートアップに参加。ちなみにRubyではなくてJavaです。僕も学生の頃はけっこうJavaを書いてまして、Javaのオープンソースの「Alvila Skills」を作っていました。
今はもうさすがに、プロジェクトとして……生きているかどうかわかっていないんですけど(笑)。当時は、こういうかたちでオープンソースを広めていこうということで、例えば翻訳や実際のコードなど、いろいろなものを内側から手伝わせてもらいました。
ほかにもライフ面では、向こうの方と一緒にシェアハウス生活や意見交換、旅行などを経験しています。この写真は、「Landštejn」という古い城で、「古い城の屋上で寝ていいよ」と言われたので、「じゃあ屋上寝るか」という感じで、寝袋を持って屋上に行って寝たときのもので、いろいろなことをやっていました。
特におもしろいなと思っていたのが、「働く価値観」の違いです。僕は当時、日本のスタートアップや東芝などの研究所、つまり大きな企業で働いていたので、日本と比べると違うなと思っていました。これまでの発表の方々も少し触れていましたが、僕がいた会社には残業する人はいなかったですし、みんな定時になったら帰る感じでした。
なんだったら金曜日は午前中しか働かないみたいな人がほとんどで、金曜日の午後に働いていると「お前はクレイジーか?」みたいな感じを言われたりもしました。その会社が特別だったのかもしれませんが、やっぱりライフに力を入れている感じがこういったところに示唆されているのかなと思っています。
ただ、それが人に合うかどうかは個々人によると思っていまして。僕の場合は、ライフの時間があるよりは……自分のスキル、理工学部とかで習得したコンピューターサイエンスのスキルを使ってもっといろいろな価値をどんどん生み出していきたいと思っていました。もっとワーク寄りで、もっとハードモードのところへ行きたいと考えていたので、翌年はアメリカのリベラルアーツカレッジに留学しました。
ひげもちょっと生えちゃって、「1年の間に何があったんだ?」みたいな感じになってます(笑)。
アメリカの大学って聞くと、みなさんなんとなく聞いたことあると思いますが、宿題とかがめちゃめちゃハードなんですね。学ぶのもハードだし、アウトプットもいろんなことをやる。少なくとも僕がいた大学では、日本の大学より課題に関してなかなかハードなスケジュールでした。やっぱり自分の価値やスキルをアップさせたいということで、アメリカにも行っていました。具体的にはイリノイ州の......田舎と言うとあれですが、(州都から)飛行機と車で2〜3時間ぐらい行くとあるモンマスという地域のリベラルアーツカレッジです。
その留学先で何を学んでいたのか。デザインや経済学のちょっと宣伝になっちゃって申し訳ないんですが、詳しくは前回の動画で話しています。もし興味があったら、向こうのコンピューターサイエンスではどんなかたちで学べるのかがわかるので見てください。
もちろんコンピューターサイエンス以外にもいろんなことを学んでいます。やっぱり自分でできることを何かをやりたいと思って、それでIndependent Studyというコースを取っていました。これは自分で何か作りたいものを作って、それが単位になるというものです。セルフマネジメント……何を作るか、どういうふうに作るかについても自分で決めていきます。
当時いろいろやっていましたが、アメリカ留学していたときに日本で東日本大震災が起こりました。その時、もっていたスキルで何かできないかと作ったのが「Whistle App」という震災対策アプリです。10年、20年のスパンで見ると、僕の人生に大きく影響を与えたアプリがこれなのかなと思っています。
今までずっと何か作りたい、何かやりたいと思っていました。いろいろなプロジェクトやオープンソースに関わらせてもらいましたけど、やっぱり自分のスキルをうまく活かした新しい価値を自分の手で生み出したいと常々思っていて。たくさん失敗もしたんですが、(当時の自分にとって)唯一というか、初めて市場に受け入れられたアプリが「Whistle on Android」です。
検索するといろいろなものが出てくると思います。内容はシンプルで、タップするとホイッスルが鳴り続けるというものです。
例えば、震災が起こってインフラやネットが全部崩壊した状態でがれきに埋まってしまった。手元に何もない状況下で、自分が今どこにいるかを知らせたいと思ったときに音を使って知らせるものです。ホイッスルはみなさん持っていないと思うので、常に携帯しているであろうスマホをベースにしています。
すごくシンプルなので、実際のソースコードもコンパクトにするとだいたい30行ぐらいでまとまるんですが、今まで作った何千何万行のコードより、最初に僕の人生の中で当たったプロダクトだったので、すごく驚愕しました。
3ヶ月で5万ダウンロード、その後は23万ダウンロードされました。あと当時コンビニで販売されていた「ポケットMAP」というものにも収録させていただいたりとか、いろいろなことがありました。
振り返ってみると、自分が作ったプロダクトがなんらかの評価を得て、それをベースにしてもっとおもしろいことができている。これ(プロダクト)をベースに「次はこの課題を解決しよう」といって、初めて自分のスキルが自分の思い描いたかたちで価値を出せたなと思った瞬間でした。そこから、いろいろなことにスピードや力を入れるようになってきました。
例えば、作りながら学ぶことは、当時僕もIndependent Studyでやっていましたが、もっと早い段階で入れてもいいだろうなと思います。なんだったら、AndroidやiPhoneのApp Storeとかのマーケットは、わりと簡単で手軽にパブリッシュすることができるので、それを市場に公開しながら学んでいくとか。
今だと、文科省もenPiT(Education Network for Practical Information Technologies)でPBL(Project Based Learning)を採用しているので、最近の大学生は当たり前にこういう学び方をしています。当時はまだ「なんだこれ?」という感じの学び方だったんですが、(PBLで)けっこういろいろな成果を出すようになりました。
当時、そういう授業を沖縄県と沖縄のレキサスという企業さんと一緒にやっていて、それがうまくいって「TEDxのRyukyu」で発表する機会がありました。
Independent StudyやPBLのような「作りながら学ぶ」ことをずっとやっていくと、うまくいく人とうまくいかない人が出てきます。これは何かというと、できるとすごくうまくいく、できないと楽しくないし、どんどんやらなくなる。こういった学びの二極化が容易に観測できます。
なので、ここの部分をちゃんとレール……橋渡しをしてあげるような仕組みがあると、よりいろいろな人たちがプロダクトを気軽に作れるようになります。その作ったプロダクトをベースに、転職する、海外に行く、研究をする、起業する、などいろいろなことができるんだろうなと考えていて。
そこから、学びの二極化を防ぐために、もっと自分のプロダクトを作りやすくするための滑走路として、長い1本道のチュートリアルがあればいいんじゃないかと思って、みなさんもしかしたら聞いたことがあるかもしれませんが、「Railsチュートリアル」を制作しました。また、自分のプロダクトを作るときに大辞書があるとより開発を加速させることができるので、Railsチュートリアル(の仕組み)をベースにして「Railsガイド」の制作などをやっています。
すると今度は、これ(RailsチュートリアルやRailsガイド)で、いろいろな人たちがさまざまなプロダクトを作れるようになってきます。そうするとさっきの「Railsチュートリアル」は、大学生や大学院生についての話でしたが、「本当に大学生以上じゃないとダメなのかな。社会人の方だけなのかな。いや、年齢関係ないんじゃない?」と気づいて(日本で)始めたのが、「CoderDojo」という非営利の国際的なプログラミング道場です。
これを2012年から始めて、2019年までデータがありますが、今日みたいなイベントが毎年1,480回以上ありました。全国いろいろなところに「CoderDojo」という場があって、今はコロナの時期なのでオンライン開催も増えてきていますが、いずれにせよ、オンライン、オフライン、いろいろなことを駆使しながら、みんなが作って学ぶということを年齢の垣根を越えてする、みたいなことをやっています。
今は日本にいますが、このノウハウを逆に海外に持っていくケースもあります。日本は注目されている地域の1つなので、そのノウハウをケンブリッジ大学で講演したりもします。
こういうプラットフォームというか仕組みができあがってくると、当時の僕よりすごいプロダクトを作る10代の方々がどんどん出てくるでしょう。そういう人たちを支えるために「未踏ジュニア」の取り組みが別途用意されています。
例えば、僕がメンタリングした方で、WindowsのOSS専用の脆弱性スキャナというものを作られたmopiさんという方がいらっしゃいます。mopiさんが作った「DetExploit」が「窓の杜」で紹介されて、1週間のアクセスランキングで1位を取りました。海外の人たちも「DetExploit」を使って、もっと学校のセキュリティ、脆弱性をすぐに検知できるような仕組みを使おうとなりました。こういうのを10代のうちに経験すると、将来もっとおもしろいことをできるようになると思っています。
mopiさん以外にも、コロナのトラッキングアプリを作られた加藤さんという方が、海外のニュースサイトに取り上げられています。
ものを作って、どんどん出して市場の反応を見ながらもっとよくしていくという話が、これまでの発表でもあったと思いますが、それが年齢の垣根を超えて、いろいろな人たちができるような時代になってきたと思います。
それを僕としても今後も、非営利・営利、いろいろなかたちで後押ししていきたいなと思いますし、僕自身も「プロダクトが僕の人生に影響を与えたな」と思っています。最初のきっかけはポートフォリオとか転職とかでもいいです。何か作りながら、新しいことをやっていく人たちがどんどん増えていくといいなと思っていて、そのため会社や非営利、「未踏ジュニア」などいろいろなことををやっています。
あくまでも自分の道で、何を作るか、どういうふうに出していくかは人それぞれです。それをベースにして、就職する、企業へ行く、海外就労する、留学する、今回ちょっと話には出ていませんが、アカデミアの道で研究する。いろんな道があると思います。やっぱり何かものを作ることで自分の道を見つける。それが1つの指針、コンパスになるかなと思っているので、今日の話がご参考になればうれしいなと思っています。
というわけで、「欧州で働き、米国で学び、日本で繋ぐ」お話でした。ご清聴ありがとうございます。
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