2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
アナリストはどのように進化していくのか?(全1記事)
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Fanalyst氏(以下、Fanalyst):『アナリストはどのように進化していくのか?』ということで、私はサッカーをずっとやってきましたので、その話を中心に進めたいと思います。
まずは自己紹介です。FanalystというハンドルネームでTwitterをやっています。自分でツイートしたりはそこまでしていないんですけど、いろんな方の情報をTwitterで得たりして、それを展開したりはよくしています。
サッカーのアナリストとして現場とかでやってきました。今は直接現場のアナリストはしていないんですけれども、いろんなサッカーの分析をしたりとか、アナリスト育成とか。それからスポーツアナリティクスの民主化ということで、いろんな人にスポーツアナリティクスに触れやすい環境を作っていきたいなという活動をしています。
今オンラインでこういったかたちのイベントも増えてますけれども、私も我々の仲間と一緒にオンラインのものを企画しています。現場との接点がけっこうあるので、とくにJリーグ関係とかの方をお呼びしたりして、うまくオンラインの企画とかできたらいいなぁといろいろ進めているところです。
バックグラウンドは、アナリストというよりはもともとはサッカーの指導者をやってまして、その経歴のほうが長いです。サッカースクールで幼稚園生とか小学生と一緒にわいわいやったりとか、育成年代の中学生高校生と一緒にボール蹴りながらやったりとか、プロのチームでコーチをやったりもしておりました。なので自分の持ち味としては、サッカー現場目線でのアナリストというところです。
自分もいろんな恩恵を受けてきたサッカーを通じて、たくさんの人の笑顔を増やしたいということと、日本代表をワールドカップで優勝させる。そこに関わっていくことを自分のミッションとして掲げて活動をしています。
spoana関連のアクションです。1回目、3回目、5回目と3回登壇して、今回4回目になります。それ関連で、2019年の12月にスポーツアナリティクスアドベントカレンダーリンクを貼っているので、またぜひ見てもらえたらと思うんですけれども、正直ここには今の日本のスポーツアナリティクス関連の知見がすべて詰まっていると言っていいと思います。いろんな競技の方とか、データ分析をバリバリやられている方とか、私みたいに現場目線の方とかいろんな方がいます。
そのアドベントカレンダーにも書いたんですけど、今まで登壇したところについてはnoteにまとめています。軽く紹介すると、1回目は自分の現場の経験をお伝えして、サッカー界のアナリストのけっこうリアルな話をしました。
けっこう汗臭いというか泥臭いというか(笑)。アナリストっていうカタカナが最近いろんなところで出回ってきてるんですけど、スポーツのアナリストはカタカナの響きほど華々しくはないという(笑)。そういったリアルな話をさせてもらっています。
そのあとの3回目は、データ分析ってサッカーに限らず一般企業の方もいらっしゃるんですけど、共通するところはないかなというので調べたところを話しました。
5回目では、自分もプロサッカー選手とコミュニケーションを取ったりとかしていたので、そのへんの肌感覚を伝えて、より現場に活きる知見をみなさんに共有できたらなと思っていました。
アナリスト進化の要件ということで、データサイエンティストのスキルセットが発表されています。こういったものがあるとやっぱりスポーツアナリストを目指す方にとって非常にいい目印になるかなと思っています。なかなかここまでうまくまとめられてはいないんですけれども、今後それにつながるようなものを8つ考えてきましたので、それを紹介します。
まず1つ目、Domain知識。私の場合はサッカーですけど、専門分野の深い知見があることですごく有利に進められると思います。とくに現場の感覚とか肌感覚がわかっていると的外れじゃない仮説が立てられたりとか。
それと泥臭い話ですけど、正しい答えが必ずしもそこに通用するとは限らないとか、そういったものがある。じゃあそのうえでアナリストはどういうふうに貢献していくかというためにドメイン知識は、非常に大事かなと思っています。
2つ目がOrigin。原点ですね。自分の原点が何かというところで、けっこうアナリストの仕事ってきついところが多いと思います。そこも変えていきたいところではあるんですけど、実情としてはとても厳しいところもあります。
やりがいと厳しさと天秤にかけながらがんばっていくんですけど、やっぱり支えるものがあるっていうのがとても大事だと思うので、ここをしっかりもっていることが大事かなと思っています。
3つ目がRelationship。こういうspoanaの場に私が登壇しているのは、サッカー界に限らずいろんなところとのつながりを作るのが1つ大きな目的としてあり、やっぱりいろんな広がりは人間関係含めて大事かなと思っています。
最近『シン・ニホン』という本が出て、私もすごく楽しく読んだんですけど、とても参考になる本でした。それを書かれた慶應の安宅教授が言っていたことが興味深かったです。これは公開されていて、慶應義塾大学のSFCの授業としてこのリンク先で見れると思います。
リレーションシップは人とのつながりということで、相談できる人がたくさんいることが大事。だけれども誰でもいいというわけではない。その業界や分野での異人とか、けっこう知見が深かったりそういった感じの人で、親しい人間関係とか友人関係までいかなくてもいいけれども、なにかあったときに相談して教えてもらったりすることができるような人がたくさんいるほうが絶対いいぞっていう話をされています。これって本当にそうだなと思っています。
続いて4つ目、Analysis。分析は、できることを目指すのは当然で力を入れるんですけど、1つの手段。アナリストが一番何をするかというと、現場の監督とか選手とか、そのへんの課題解決をするのが大事です。
今サッカーのアナリストは、映像編集とかが中心になっているんですけれども、それも1つの手段として用いる。意識をもって用いることが大事かなと思っています。
なので定性分析と定量分析どっちがみたいな話もあったりするんですけど、両方できるようになるように越したことはないので両方できるようになってほしいと思っています。さらには勉強してどんどん実践する必要があるかなと思っています。
5番目、English。別に英語に限らずなんですけど、語学力はとても必要だと思っています。最近私も知ったところで、3つリンク先(Friends of Tracking、Barça Innovation Hub、Statsbomb Academy Online Courses)を書いています。サッカーに関していえばヨーロッパの新しい知見がYouTubeで見れたり、オンラインコースがあったりします。これは英語ですし、真ん中なんかはスペイン語だったりするんですけど、たまに英語でしゃべってくれたりもします。
日本語しかできないと、こういう知見は得られないです。とくにこのFriends of Trackingとかって本当にヨーロッパのトップレベルのデータサイエンティスト、クラブのデータサイエンティストが、Pythonでこのデータ使ってやれば分析できるよとか、コードをバーっと書いてくれて、それに沿って君たちも練習しなっていうような知見を与えてくれています。これはとても大事かなと思ってます。
あと、アナリストは日本国内だけじゃなくて海外のアナリストになるという道もあると思うので、そのためには語学力は必要だと思います。
6つ目がMonetize。やりがい搾取禁止って書きましたけど、やりたいんですよね、みなさん。でもそれを搾取するのではなくて、やっぱりお金になってそれが続けられると(いいと)思います。ここは常に天秤にかけながらいったほうがいいかなとは思ってます。
我々は今直接現場に関わっていないんですけど、経済的な価値をアナリストによって生み出せるような仕組みを作っていきたいなとは思っています。
スポーツの世界、気合いと根性でというのはまだ根強くあるんですけど、いい仕事をするには、リソースに時間、体力、メンタルとかいろんなものに上限があるという認識は絶対必要かなと思っています。
そしてOutput。現場があったら一番いいんです。なぜかと言うと一連の分析サイクルを回し続ける経験というのがとても大事だからです。分析して、選手と監督にフィードバックして、試合があって、その結果が出てという(流れ)は、めちゃくちゃ大事だと思います。
今ブログとかSNSで発信されている方がいらっしゃいますけど、そういうところで発信するのはすごく大事かなと思っています。自分の中で勉強するだけじゃなくてアウトプットで、より磨かれると思います。
けど、ちょっとリテラシーのところが最近気になっています。Twitterとかで海外の映像とかパッとあげて分析とかってやったりするのがありますが、これは映像の権利問題とか関わってくるので、そういったところはちょっと気にしたほうがいいかなと思います。あとその部分だけで言うんじゃなくて、試合全体を通じてどう言えるのかとか。そのへんも意識していくと、たぶん発信の場としてはすばらしいと思うので、うまく活用する必要があるかなと思ってます。
そして発信する側と、例えばクラブとかチームとかの受信する側がつながって、コネとかだけじゃなくて適正な評価でこのアナリストとか、この分析している人がこういう力があるからうちにも力を貸してほしいとか。そういった適正な評価と健全な競争がある場というのを作っていきたいなと思って、今いろいろ仕込んでいるところです。ここはぜひみなさんにもいずれ一緒に盛り上げていける場として使ってもらいたいなと思っています。
Newcomer。今日もたぶん学生の方が聞いてると思いますし、先ほど言ったように私もいろんな人たちと話をする中でアナリストになりたいという方がいらっしゃるんですけど、そういった方々がもっともっと業界に入ってきてほしいなと思うし、そういう窓口を開けていきたいと思っています。
ここにもたくさんいらっしゃいますけど、一般企業でデータサイエンティストをされている方が関わったりとかというところでは、新たな関わり方として、アナリスト職もチームに専属でいるアナリストだけじゃなくて、パートタイムじゃないですけど、この案件に関してだけちょっと力を貸してくださいとか、そういったのもめちゃくちゃ必要かなと思っています。
なかなか給料払えなかったりするクラブもたくさんあると思いますが、だったら一部だけでもいいから手伝ってもらうとか。絶対そういう専門的な人の知見とか技術は必要なので、そういうのをぜひぜひ、もっともっと期待も込めていろんな人がスポーツアナリティクスに入ってきてほしいなと思っています。
まとめるとこういった感じになります。僕はずっと、「ドラえもんアナリスト」になれっていう話をしてきたんですけど、その理由は、四次元ポケットから便利な道具を出すだけじゃなくて、のび太くんががんばるように……アナリストで言うとデータを出したりとかいろんな分析をするだけじゃなくて、その使い方がわかってて適切な道具を渡しつつも、たまには「のび太くん、そんなこと言わずに自分の力でがんばりなよ!」っていうような精神的な後押しもできるような。そういうドラえもんみたいなアナリストが一番理想かなと自分では思っています。
最後になりますが、こういった今のコロナの状況なので、スポーツアナリティクスっていうのをもっと広げていきたいなと思っています。今いろんなチームとか選手の方とかがこうやって体を動かしましょうとか、家の中でもできるエクササイズを紹介してますけど、もっと頭を使ったスポーツ、分析の仕方とか、教育的なところにもスポーツアナリティクスを絡めたりして、頭を使ったスポーツの楽しみ方をもっともっと広げていってもいいかなという気はしてます。
コロナの前にはもう戻れないので、たぶんいろんな環境が変わっていくと思います。その中でスポーツアナリティクスというのは1つ大きな可能性を秘めているかなと思うので、ぜひTwitterのDMでもいいので、いろんな人とつながっていければいいかなと思っています。
すみません、ちょっと長くなったんですけれども以上です。ありがとうございました。
司会者:ありがとうございます。今までのFanalystさんの3回の発表を聞いているので、ついにドラえもんが完成したなと思って。1ページ前ですね。頭文字を取るとDORAEMONになるっていうのがついに完成したなと思って感慨深く。
Fanalyst:すみません、ありがとうございます(笑)。
司会者:なにか質問がある方がいればZOOMのほうに質問をお願いいたします。権利問題についてはみなさんTwitterでも「たしかにな」とか反応がありますね。YouTubeとかで分析しているものだったりとかTwitterであがっているものでもなかなか難しいと思うんですけど、このあたりって、やっぱりやりながら適切に反応を受けて鍛えていくしかないんですかね? リテラシーのところっていうのは。
Fanalyst:基本的に使っちゃダメですね。それを知っておくことが大事かなとまず思うんです。このくらいいいだろうっていう方もいらっしゃると思うし。一番危険なのは、知らずにどんどん、どんどんやっている方とかがいると、せっかくいい発信をしていてすごい分析をしていてみんな勉強になるのに、そういったちょっとしたところで効果が薄れるというか……。逆にそれでアカウントが凍結したとかなったらめちゃくちゃもったいないので、そのへんをもっとうまく、権利をもっているところと一緒にやりたいなと思ったりはしています。
司会者:今回DORAEMONというかたちでいろいろ要件を挙げたと思うんですけど、とくにこれが重要だっていうパターンなのか、それともやっぱり広くすべてをカバーできる人が優秀なアナリストだっていうのか。どういうふうに考えていますか?
Fanalyst:全部大事といえば大事なんですけど、分析をできるかできないかとかっていうのは、手段の1つなので、自分で自分を成長させてチームのために貢献していけるっていうスタンスをもっているという意味で、さっきの8つのところを挙げました。まあ正直全部……全部大事っていう言い方はあれですけど(笑)。
分析をすごく一生懸命されている方はもちろんいらっしゃるんですけど、じゃあ現場で活躍できるアナリストって何ですかという話になったときに、そういったものが全部必要かなという気はします。
司会者: FanalystさんのDORAEMONのO、オリジンは何ですか? という質問が来ていますね。
Fanalyst:僕ですか。僕はサッカーを通じてみんなの笑顔を増やしたいというのが一番ですね。というのは、なんか湿っぽい話になりますけど(笑)。自分がサッカーで楽しい思いをさせてもらっているので、これはサッカーに限らずかもしれないですけど、なんでも自分が恩恵を受けてきたものに対してみなさんにもそういういいことがあるはずなので、それを伝えていきたいなというのが大きなオリジンです。
司会者:ファンが戦術分析ブログを書くのが最近チラホラ出てきてるかなと思うんですけど、現場から見た感覚としてどれくらい納得感があるのかとか、どういった印象を持たれているんですかという質問が来ていますね。
Fanalyst:さっき発信のところで全部と部分って書きましたが、よくやられている方とか見ると、一部の現象を説明するのは上手な方が多いかなという気はしてます。
ただ現場から言うと、対戦相手にしてみれば、その起こった現象はなぜ起こったのかとか、その対策を打たなければいけないわけなので、そのためには何が原因だったのかとか。そのときの対戦相手だったらできてるけど、うちと対戦したときはこれは起こらないだろうとか。もっと大変なところがあるだろうとか。そういう要因とかをもっと掘り下げていってるかどうかを僕は見ています。
解説の方とかも、これ否定するわけではないですし、たぶんターゲット層によって使い分けている気はするんですけど、これが起こった要因とかをちゃんと説明できたりとか……。あいまいなプレーを、これはあいまいとか、これはたまたま起こってますねっていうのをはっきりと説明できる人はすごいかなと思っています。
司会者:なるほど、なるほど。ありがとうございます。最後の質問になるんですが、そういった全体とか部分とかを意識しながら分析結果を、監督や選手に渡すときに具体的にどういった部分に気をつけているのか? みたいなところはありますか?
Fanalyst:これはたぶん(本日登壇の)一般社団法人日本スポーツアナリスト協会理事の千葉洋平さんとかもそうだと思うんですけど、情報を与える目的は、選手たちが思い切ってプレーできることだと思うんですね。監督にしても。監督が思い切った采配ができるとか。なので取捨選択とか、渡す先の人がそれをどう使ってどういうパフォーマンスになるかを意識して渡すというのが、やっぱり大事かなと思っています。
そのためには渡すタイミングとか渡す量とか、あえて言わないほうがいいとか。わざわざデータとか分析結果じゃなくて「お前なら大丈夫だ!」って後押しするだけでいいときもあります。そういうのが使い分けられるアナリストがいいし、それは気をつけていることでした。
司会者:ありがとうございます。現場からの貴重な発表と質疑だったと思います。こちらでFanalystさんの質疑を終わらせてもらいます。ありがとうございました。
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