2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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田中洋一郎氏:なんか当たり前のことを書いているかもしれませんが、実践するのはなかなか難しいものたちばかりです。1つずつ紹介していきましょう。
まずは、「素振りを欠かさない」。みなさん、ある日「あ、閃いた。やってみよう!」みたいな閃きがいつか天から降ってくるんじゃないかと日々漠然と思っていると思うんですが、僕も思っています。「いつか天才的なことを考え付かないかな」と思っているんですけど、ぜんぜん思いつかないですね(笑)。
思いついていたらきっともっとお金持ちになっていると思うんですが、そういった閃きって、いつ降ってくるんだろう、どういう人に降ってくるんだと思うと、やっぱり基本がしっかりしていて、しかもその裾野が広い。その上に、いろんな工夫や応用を日々やっている。そういった人たちに閃きが降ってくるんじゃないかと思っています。
つまり、未知なものを何か自分で築くためには、その下にある既存のものをどれだけ広く知っているか、それを日々こねくり回しているかみたいなところが大事だと。
なので、自分が何も持っていないというところから「とにかく何かを探してそしてそれを試してみる」ということをひたすら繰り返していくと、結果として、自分の持っている引き出しの数がどんどん増えていく。これが大事なことです。
グローバルな人、つまり世界中の人々と会話をするときに、とくにプロダクトを何か出した後だと、いろいろなフィードバックが来ます。そのフィードバックには自分の得意じゃないようなことも突然降ってきたりします。そういったことに迅速にいろいろ対応していくためには、自分の引き出しの数というのはとても大事です。
じゃあ引き出しをどうやって増やすかと言うと、僕は小学校のときに剣道をやっていて、毎日竹刀を振っていました。これを例えとして使って、とにかく毎日素振りをするというところが大事かなと思っています。
ただ、これをそのまま受け取ってしまうと「毎日同じことをこうやりなさい」というメッセージに聞こえちゃうんですが、そういうことではなくて、とにかくちょっとずつでもいいからいろいろなことにチャレンジをしていくということを「素振り」と表現をしました。
これは、はしゃいでいるんですけど、Google I/Oがまだサンフランシスコのモスコーニ・センターで行われていたときに、僕は参加をして最終日に日本のGDEたちと撮った写真です。こんなことをやっていたのは日本人だけでした。
僕を含めてこのGDEの人たちにどんな共通点があるのかと言うと、みなさん何かに尖ったエキスパートと言われるだけの詳しい分野があるんですが、実はそこが重要ではなくて。僕がどうかはわかりませんが、他のGDEの人たちは、特定のものだけに詳しいのではなくて、あらゆる分野に対して平均よりも上なんですね。その上で、何かが詳しい人たちばかりだと僕からは見えています。
例えば、コンピュータで言えばクライアント技術、サーバ技術、今流行りのAIだったり、基礎となるコンピュータサイエンス。こういったものをみなさんは広く知っていますし、コンピュータからちょっと離れたカスタマーサポート、セールス、アライアンス、開発、企画。そういった開発の作業全体についても経営も含めて詳しい人たちばかりです。そこで尖ったものが出てくるというようなところが特徴的ですね。
なので、自分がぜんぜん詳しくない分野でもとりあえずやってみて、「こんなもんなんだ」というところだけを握っていくといったことを、世界で活躍しているGDEたちはみんなやっています。
とくにエンジニアの方々におすすめなのが、新しい技術が日々出ていて、そのときに必ずセットでチュートリアルが付いています。それをちょっとやってみる。これを趣味にしていくと自然と素振りをしていることになりますので、ぜひやってみてください。
あるいは、チュートリアルをやっているとけっこうつまらないことがあるので、ベータ版が出たときというのはすごくチャンスです。
例えば、さっきのChromebook向けの僕の機能は、ベータ版として出たときに「これはおもしろそうだ」と思って作ったものが、ベータが外れてステーブルになったときに、一緒にステーブルになって使われていきました。このように、先行者利益を得られますので、ぜひ今どんなベータ版がリリースされているのかをウォッチするといいと思います。
次、「居場所を探し続ける」なんですが、ちょっとまた僕の経験を言います。
僕が初めて買ったパソコンはPC88というもので、1980……何年だったかな、それぐらいに買ったものです。CPUは、今だともう3ギガヘルツとかなんですけど桁が違います。4メガヘルツ、8メガヘルツ。メモリがメガではなく128キロバイトしかありませんでした。
僕はこのパソコンを使い倒すんですが、とにかく遅いので、マシン語でプログラムを書くしかなかったんですね。
ただ、このおかげで、PC88というハードウェアを直接いじるコードをマシン語で書いていく経験を得られたのは幸せだったかなと思うんですが、とにかくOSもない状態でアプリを書くしかありませんでした。
けれど、これはWindows95ですけど、これが出たときぐらいからOSが持つ機能の上で何かを作るということが当たり前になってきました。
「OSってすごい。いつか僕もOSを作ってみたい」と少年の頃に思うんですね。
それで、社会人になって最初はSIerに入ります。ちょっと印象の悪い絵を持ってきてしまったんですけど、ひどい現場も行きました。
そういったなかで、具体的な業務ロジックを僕が書いてきたわけではなくて、実はその下にある今で言うフレームワークというものを作っていました。
僕が設計したフレームワークの上で何百人もいるエンジニアたちがコードを書いていくといったところに20代は携わっていました。あるいは、そのフレームワーク前提の開発ツールを作ってみなさんに使ってもらうといったことをやっていました。
なので、具体的なアプリケーションは僕らのチームが設計して作った土台の上で動くという構図でした。
それで、30歳になってミクシィに転職をします。このときに出てきた技術が「OpenSocial」というもので、今で言うソーシャルゲームの土台ですね。今はSNSの数も減ってしまいましたが、いろんなSNSで1つアプリを作ればどこでも動きますということを実現してくれる技術でした。
これはすごいと思ってミクシィに入社をして、mixi PlatformというOpenSocialに準拠したプラットフォームを作りました。これは今でもあります。
その上にいろんなアプリ、ゲーム、サービスが登場したんですが、ある日山手線に乗っていると、山手線の中にいる女性の方々が当時流行っていたガラケーで、ものすごいスピードで操作をしています。「何かな?」と思ってちょっと覗くと、みなさん牧場に水をやっているんですね。
友達の農園に行って水をあげて虫を取っていると。エラーが出ようと何しようとすごいスピードでやっているんですよ。それを見たときに「あぁ、なんか時代を作ったかなぁ」と思いましたが、これもソーシャルネットワークというものをアプリケーションの実行、ランタイム環境として仕立てたというものになります。
そして、時代はガラケーからスマホに変わります。そこで、スマートフォンでも同じようなことがしたいと思って、僕はLINEに転職をします。そこで手掛けたのが、BOTプラットフォームになります。今はみなさんLINE全盛なので使っていると思うんですが、LINEの中でも公式アカウントの中でいろんなサービスを享受できますね。
例えばヤマト運輸さんですと、僕が家にいなかったときに荷物が来て不在通知が入っていたというのも、昔はポストを見るしかなかったですけど、今はLINEの中でできます。
この仕組みは簡単で、みなさんがLINEに投げているメッセージをLINEのサーバから企業のサーバに送って、企業が返信を作って返すというシンプルな仕掛けなんですけど、こういったものを使っていました。これも今流行りのメッセージングサービスの中でアプリケーションを動かす仕組みになります。
似たような話を3つしたと思うんですが、何かアプリケーションを動かすための土台となるものを作ってきたというのが、実は僕の社会人の中で一貫したことなんですね。こういった、いわゆるOSかな? と思うんですが、そういったものを作ってきたという点では、ちょっと夢が叶ってるかなと実感しています。この目標を僕はぶらさなかった。じゃあ何をぶらしてきたかというと、実は居場所です。
つまり、僕は転職をめっちゃしているんですね。今13社目です……12? もう忘れました。つまり、今自分がどこにいればやりたいことや信じていること、世界的に影響力が出せるようなものができるかということを常に考えています。
これを言うと上司に怒られるかもしれませんが、みなさんも1社にとどまることにこだわるといったことよりも「自分が今いる場所はどこなのか」というのを意識してほしいなと個人的には考えています。
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