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<質疑応答>(全1記事)

アイデアを出すなら上を向き、ロジカルに考えるなら下を向け 最高のパフォーマンスを発揮するためのサイエンスとテクノロジー

2019年5月29日、Think Labにて「ビジネスパフォーマンス向上のための環境作り@飯田橋 by ビジネスメディアAMP(アンプ)」が開催されました。働き方改革を進める企業が増えていくなかで、個人としてもいかに生産性を高めていくかが重要なテーマとなる昨今。短い時間で大きな成果を生み出すためには、仕組みとしての効率化はもちろん、自分自身のパフォーマンスを高める必要が出てきます。このイベントには、そんなパフォーマンス向上のための環境作りに取り組む3名のゲストが登壇。本記事ではトークセッションの模様から、質疑応答パートをお送りします。

嗅覚はどのようにアップデートされていくか

木村和貴氏(以下、木村):それではこれから、会場のみなさんの質問に答えていただきたいと思います。質問のある方、挙手をお願いします。では、先頭の方。

質問者1:お話ありがとうございます。以前仕事の先輩にシトラス系の香水を勧めていまして、それを試してもらうことでパフォーマンスが上がったのですが、ポイントが3つありました。

1つは周りから「その香り、いいね」と褒められたこと。2つ目は自分自身が好きな香りだから気持ちが上がること。最後の3つ目が、その香水をつけてプレゼンが成功したことで、験担ぎ的としてリピートするようになったことです。

あとはクリスティアーノ・ロナウドとか、スポーツ選手にも香りを研究されている方がいるそうです。嗅覚によってパフォーマンスが上がるかなと思っています。そういった意味だと、香りってもう1段進化するんじゃないかなと思っていて。こう変わっていくんじゃないかという予想がもしあれば、おうかがいしたいです。

木村:嗅覚が今後どのようにアップデートされるのかについて、また今後香りがどう形作られるか、思いついた方からお願いいたします。

井上一鷹氏(以下、井上):別に宣伝するわけじゃないし、僕は何も関係がないんですけど、ソニーさんがやってるAROMASTIC的な考え方は、僕は正しいかなと思っています。僕は科学者じゃないので、話半分で聞いてくださいね。

「においを感じる器官と海馬は近いから、記憶と匂いは繋がりやすい」とよく言われますよね。「このにおいのときはこれをする」という紐付けをつけやすい感覚器官が、たぶん“におい”なんだと思います。「AROMASTIC」みたいなものを4、5種類ほど、自分だけで楽しむのは正しいやり方だと思います。

井上:でも、三木さんがまだやっていないんだったら、10年後に誰もやってないんじゃないかなと思っています。

(一同笑)

木村:10年後を先取りしている。

進化する香水のテクノロジー

井上:三木さんがやってるもののなかで、どれが民主化するかをマジで考えた方がいい。ややこしい人間だと思われやすい気がしていて、けっこう難しいんですよね。

質問者1:香りというと香水をつけるイメージが強いと思いますが、今だとつける以外に塗るタイプも売っているんですよ。それに、1時間だけとか、半径1メートルだけを香らせることもできる。そういったものを試すと変わってくるんじゃないかなとはすごく思います。

木村:井上さんが今されてるやつですか?

井上:塗る香水、使っています。ただテクノロジー側のことはあんまり知らなくて。それは空調の制御なんですか? そのにおいを、この場所だけ指向性をもってやるということなんですか?

質問者1:香水の成分の95パーセントはアルコールなので、揮発のスピードによって香りの印象を変えられるんです。香りの感じ方にはトップノート、ミドルノート、ラストノートという3段階がありますし、オードパルファム、オードトワレ、オーデコロンのように香りの長さも製品によって全部違うんです。

井上:何者ですか?(笑)。

木村:僕も今聞こうと思っていたんですが(笑)。

質問者1:前職が香水会社で、今は建築事務所で情報システムの仕事しています。その辺はまさしくスタンディングデスクとか全社に入れてやっているんですが、パフォーマンスの向上に興味がありました。

木村:なるほど。では次回は香りに限定したイベントをやって、今度登壇してもらってお話をしていただくのがいいのかなと思いました。

植物を置くことで生きている実感を得る

木村:ほかの質問ある方いれば、挙手をお願いします。じゃあ一番奥の方、お願いします。

質問者2:ここ(Think Lab)には同種の植物が置かれているのかなと思うんですが、環境によっての影響について、何か情報はあるかをおうかがいしたいです。

あとは植物も生き物なので、それが出している空気だったりとか、もしかしたら揺らぎを発生させているかもしれないですから、そういった視覚以外の緑に関する話とかもあれば聞きたいなと思ったんですが。

井上:ここは「東京に高野山を作ろう」ということから作り始めましたので、和のデザインになっています。高野山は禅的な空気感をつくるために、シュロチクという竹を使って、エビデンスがあるなかで、それを実現できるものを統一感を持たせたいからと選んだんです。

ちょうどさっき議論していたんですけど、変えたいなとも思います。どこに行っても同じだと、ここを選んで集中するということができなくなります。だからエビデンスがちゃんとあるものを、幅広く並べたほうがいろんな気持ちになりやすいし、集中しやすいかなと思っています。

僕は植物のデータベースには触れていないんですけど、南方系のものも含めて、ストレスが和らぐと認められてるものはかなり幅広くあるそうです。そのあたりは持ってこられるはずですね。

揺らぎに関して植物を扱っている方がよく言われるのは、自然のものって昨日と今日だとちょっとだけ違うということです。それに対して人は、いつも同じ場所にいるという感覚がなくなるし、生き物が息をしている感覚を得る。それには意味はあるんじゃないかと言っています。

そこって、エビデンスを取るのがむちゃくちゃ大変で、感覚値の部分をこえないですね。でも、ちょっと植物が枯れていたりすることで、「生きているんだな」という感じがするとは思います。

植物がフェイクと気づかれた瞬間、ストレスになる

井上:そこでおもしかったのが、フェイクの緑を置いてストレス低減効果があるかを調べた実験です。被験者がフェイクだと気づいた瞬間、逆効果になるんですよ。だからフェイクだと気づかれなきゃ大丈夫なんですけど、人って絶対触るんで。

質問者2:触ればわかりますもんね。

井上:そういうものですね。ちょっとお答えになっているかわかんないですけど。

質問者2:ありがとうございます。

三木明氏(以下、三木):ひとつ植物のおもしろいネタがあります。エクセター大学のサイエンティストレポートを元に書かれたZappos(ザッポス)の記事のなかで、どういう植物を置くとプロダクティビティとウェルビーイングが上がるかを検証していて。

その内容をツイートしておいたので、ぜひ見てみてください。めっちゃおもしろいです。「え、植物の種類でも変わるの?」みたいな。

井上:なんでZapposがそれをやるの?

三木:わからないですよね。彼らのブログに「なぜ、あなたのオフィスにmore plantsが必要なのか」というビジネスネタでした。

何のノイズもない場所は、逆にストレスを感じてしまう

木村:おもしろいですね。じゃあ続いて質問がある方。では先に挙げていた前の席の方からお聞きしましょうか。

質問者3:お話ありがとうございました。私、オフィスに一人で働いているんですけど、電話は本社のほうに入るので、鳴らない環境なんです。 静かは静かなんですけど、逆に静かすぎて「音がないと集中できないなあ」と感じてしまっています。

YouTubeを流したりとか、いろいろやっていたりするんですけど。さきほどあまり効果がないとお聞きして、そういった環境で集中するためのアドバイスをいただければなと思います。

井上:以前、コンセプトワークでご一緒した石川善樹さんというヘルスケアの先生が、「人を狂わせるには、壁紙も床も真っ白な部屋に何にもない状態を作るのが一番早い」と、同席したプレゼンでおっしゃっていたんですね。

何のノイズもない状態って、人はすごくストレスになるらしいんです。リフレッシュ効果を認められていないにしても、音が鳴っていない、ノイズが全くない状態は辛いはず。何かを鳴らしたほうがいいというのはたしかですね。

(会場の一部を差して)あっちは一人で集中する場所に対して、ここは会話してもいい場所なんですね。でも3割ぐらいの人は、会話していい場所の方が集中できると言うんですね。作業ベースの仕事はとくに、雑音があったほうがいいんです。

さっき三木さんも言った通り、本当にものを考えたいときは無音にして、グッと集中したほうがいいんですけど、人はそれだけを続けられません。そういうときはちょっと外界に出て、人に触れ合ったほうがいいんですよ。

緊張とリラックスが同居していないと集中はできない

井上:完全な個室か半個室の、どっちが集中できるかという実験をしたんですが、結果は半個室だったんです。これはなぜかというと、緊張とリラックスが同居していないと集中できないから。その環境が漫画喫茶になった瞬間、人は集中できなくなるんですね。

人からの集団監視と、自分が関与していないノイズが起きていることは、やっぱり必要な瞬間があります。一日中それがないと大変なことになるので、なにか動物を飼ったりしたらいいんです。僕、ハリネズミを飼っていますよ。

木村:お二人は今の質問に対してどう思いますか? 

三木:音を鳴らすこととは違うかもしれないんですが、いかにして血を脳みそに持っていくかを考えるときに、血流をどう上げるかという戦略に持っていくことはありますね(笑)。

例えば、とにかく運動すること。あとは血流を良くするサプリメントを使って、血流をバーンと上げて、脳みそに糖質をガーンと送り込んで集中モードに持っていく。良くない回答でした。すみません(笑)。

木村:集中モードに入って、無音の静寂のなかで仕事ができるっていうことですね。

井上:辛いときは「Think Lab」に来てください。

マルチデバイスが脳を狂わせる

木村:何人か手が挙がっていましたので、なるべく聞ければと思います。それでは一番奥の方、お願いします。

質問者4:一日中同じデスクでずっと作業をすること自体がパフォーマンスを下げるんじゃないかなと思っています。さっきのスタンディングデスクの話とか、つい今しがたの個室だったり、半個室だったりのお話で、そのときの条件についてアドバイスがあればおうかがいしたいです。

井上:3パターンくらいを持っていたほうがいいです。人って「ここで何をするのか」という定義を決めたほうが楽らしいんです。

スマホが辛いのは、仕事もゲームもLINEもやるから。マルチデバイスにすると脳が狂うんですよ。スマホを見たときに何をすればいいかわからないから、自分のスイッチの入れ方が決められない。だから辛いらしいんですね。

企画系の脳みそを使うときはMacを使って、Excel系のロジックを用いて資料化するんだったらWindowsにするとか、そのくらい「この環境はこれをする」と決めたほうが楽なんですね。うちのチームにも切り替えている人が一人いました。

アイデアを出す発散系の仕事と、何か決まったものをしっかり落としていくロジカルシンキング系の仕事では、脳の思考パターンが違います。ロジカルシンキングは下を向いたほうがいい。アイデア出すときは上向いたほうがいい。

それって、椅子の角度なんですよね。こういう椅子に座っているとアイデア出やすい。偉い人がアイデアを出せるのは、そうやって生きてるからですよ。資料化しなくていいから(笑)。絶対そうですよ。だからその2つを持ったほうがいいと思って、「Think Lab」は席を複数用意しているんですね。

「そういう場所を3個持て」というのは石川先生も言っていました。さらに、その3個の点を結んだ面積が広ければ広いほど、イノベーティブだとおっしゃっていた。移動するということも揺らぎなので、すごく大事です。

移動を担保して3つ持つのが、わりといいのかなとは思っていますね。

質問者4:「Think Lab」さんは3つぐらいエリアを設けているんですか?

井上:はい、あります。窓際の席は上を見て、窓から遠い席は下を向いてます。そういうのが大事ですね。

質問者4:ありがとうございます。

海外出張はオンオフの切り替えに役立つ

木村:今移動という話がありましたけど、宇佐美さんって海外でも働いているじゃないですか? そこまでいろんな国に飛んで仕事をすることがあまり想像ができなくて。

そんななかでも集中するために、どういうふう工夫をされているんですか? 僕、いきなりベネチアで仕事しろとか言われたら、絶対集中できない。ずっと河を眺めちゃうだろうな、みたいな。

宇佐美夕佳氏(以下、宇佐美):私の場合、海外のほうがかえって仕事をする役割を変えられるんです。なぜかというと、日本で仕事をしていると常にオンラインの状態じゃないですか。週末すらネットに繋がってしまっている。統計学上、土日も会社の仕事やメールをチェックしてしまう人は50数パーセントもいるらしいんです。みなさんもそうだと思うんですよね。

海外に行くと、逆にネットに繋がらないんですよ。だって、そもそもネットがないんですもん。例えば「今日はプランニングしよう」「今日はリラックスしよう」とか、もしくは集中してExcelで作業をするということもできてしまいます。

木村:ちゃんと線が引けるということなんですよね。

宇佐美:例えば時差があったとしても、オンタイムで仕事を納められるのが海外出張の良さかなと思っていたんですよね。

木村:たしかにそうですよね。そういう意味では、ずっと東京にいて同じとこにいて、自分のなかで切り替えるきっかけを作るほうが、やっぱり難しいのかなとは思いますね。

視覚・聴覚からの情報を、一度ゼロにする

木村:次の質問で最後にしたいと思います。

質問者5:今日はどうもありがとうございました。先ほどのお話で、ほぼほぼ結論が出てしまったのかなと思います。仕事柄、建築現場に行く機会が多いんですが、ある市役所さんは中に入ると真っ暗なんですよね。コンクリートをわざと黒く塗っているんです。

中のイメージと入ったときの雰囲気が異なる。有名な方が設計されたらしいんですけれども。ここのあえて屋内を暗くすることに建築的な意味があるのか、おうかがいしたいです。

逆にキュレーションメディアをやっているようなIT系の会社さんに行くと真っ白なんですよ。この真っ黒と真っ白が同居しているというのがおもしろいなと思って質問しました。

井上:Think Labは高野山を模してつくっていて、ここに来たことを印象づけたい。ふだんの生活から一度切り替えてほしいんですね。

僕らは視覚聴覚を中心に生きているので、視覚情報と聴覚情報をできるだけ一回ゼロにしてあげる。そうすると、違う場所に来たという感覚を感じやすいんです。一度シャットダウンする効果のために真っ黒にしています。

集中するためには緊張感とリラックスの両方が必要なんですね。リラックスしないと続かない。両方が共存できている象徴がお寺とか神社だなと思うんです。(Think Labのスペースを指して)あそこの道が25メートルあるんですけど、そこも含めて高野山から学びを得ています。

お寺の造りに学べること

井上:普通のオフィスって、会議スペース、集中する場所、雑談場所、ギャラリーなどがいつでもすぐに行き来できちゃうんですね。だけどお寺って、一番奥が本殿で、瞑想する場所まで一本道になっているんですよ。鳥居から本殿まで。それはなんでかというと、今ここにめちゃくちゃ集中できる環境をつくっても、そこに入ってすぐに集中できないんですよ。

3年前に流行ったルーティーンという言葉ですね。ルーティーンは、うまくいっているのは全部、緊張をつくってから緩和するという流れにあるそうなんです。なので緊張感をつくるために真っ暗にしています。それがここの考え方です。

固有名詞が出ていないんで、個人的な感想を言ってていいかなと思うんですけど、白くするのはただの流行りです。上の階にあるうちの会社も真っ白なんです。アップルストアがかっこいいと思っていて。白く塗るのは情報が乗りやすいですし。

ただ、真っ白な部屋ってストレスになる。あとエコの視点だと、白のほうがいい。同じ光源のエネルギー量でも白く写るから。災害があると白系に移りやすいというのもあるかもしれないですね。

木村:ありがとうございます。とても勉強になりました。非常におもしろいというか、データも含めて有意義な話だったかなと思います。パフォーマンスを上げていくために自分の体をどうハックしていくかをテーマに、「五感」というキーワードを設定しました。結果的に、いろんなテクニックを実践されている方々から貴重なお話をうかがえました。

全部をいきなりやるっていうのはすごく難しいと思いますが、自分たちが興味を持ったことや、やれそうだなと思ったことなど、できるところから始めてみるといいんじゃないかなと思います。

ということで、本日は長いお時間ありがとうございました。登壇者のみなさま、ありがとうございました。

(会場拍手)

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