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パネルトーク第2部 〜質疑応答〜(全2記事)

データアナリストに求められるのは“筋のいい仮説”を立てるスキル ビジネスドメインに貢献できる分析チームの仕事の本質

2019年5月28日、株式会社メルペイにて「Data Analyst Leaders Talk! #3」が開催されました。データ分析の力を最大限に活用し、成長を続けている注目企業の分析チームの責任者が、分析とデータアナリスト組織について語るこのイベント。第3回となる今回は、AbemaTV・freee・メルカリ・メルペイの4社、それぞれの分析チームのマネージャーが、自社のデータ分析のチーム構成や組織、そして求める人材像などについてパネル形式でディスカッションを行いました。本記事では、第二部 質疑応答のセッションより、分析後の意思決定プロセスなどについて答えた最後のパートをお送りします。

分析結果が出た後の意思決定プロセス

田中耕太郎氏(以下、田中):次は、似たような質問をまとめてお聞きしたいと思います。

「分析フェーズが終わると、その後にどのようなアクションが取られ、どのような効果が得られているか見えにくくなることがありますが、そうならないために意識していることはありますか?」というところと、「分析結果を出した後の意思決定について、どのようなプロセスを取っているか各社の取り組みが気になります」という質問です。

「分析しました。さて、次はどうするんですか?」という内容ですが、各社の取り組みをお話しいただければと思います。

松田慎太郎(以下、松田):メルカリのアナリストはプロジェクトに入り込むので、分析した結果どうなったのかも、自然と目に入ります。なので、分析結果が生かされていないなら、PMに「この案件どうなりましたか?」と聞ける状態です。

アナリスト側の努力としては、「アクションを取りやすいコンパクトでわかりやすい分析結果」を目指しています。

弊社では分析結果も1枚にまとめて、カジュアルにSlackで投稿して意思決定していくというスタイルが多いので極力わかりやすくすることで分析の無駄打ちを防ぐ工夫をしています。

分析後アクションの重み付け

阿部昌利氏(以下、阿部):そうですね。僕もここ1年半は広告システムに関する意思決定の案件が多かったので、実際にそれで作ってみて、配信されて「こんなに変わった」と検証しやすかったので、やりやすかったですね。

これから取組むサービスの分析に関して言うと、質問のケースにけっこう直面するなと思っています。基本的には、あらかじめ定量的な成功定義を決めるつもりです。

ただ、大きな意思決定のケースだと、場合によっては分析による貢献分を厳密に定められなくて、「それでも1回アクションしてみよう」みたいなケースもあるかもしれません。そういうときはもう、とにかくビジネスインパクト大きいものを選ぼうと思います。前後比較だけで差が明確にわかって、かつ分析があったからこのアクションが取れたということが示せるような問題に取組みたいと思います。

鎌田真太郎氏(以下、鎌田):うちはけっこう案件ごとに入り方が分かれていて、例えば軽い集計とか仮説出しをしたりとか、「ザクッと見たい」といった話のときは、あまりその後の意思決定とかって追っていないです。単発でデータ出しましたっていうところも、うちの成果としてはそれで終わりって切っちゃうところがありますね。

逆に、大きい案件だとフルコミットしていくというのが大きいです。事業部の人たちと同じ会議体に入って、定例をやりながら進捗をずっと3ヶ月追っかけていくみたいな感じで、一緒に改善していきます。

なので、けっこう自然に効果の得られ方とかも見えてくるのかなっていう感じです。全部のものを追いかけようとするとしんどいので、これは軽い案件、これは重い案件って色を付けていくと、わりと追いやすいかなと思っています。

分析チームに活きる「どんな場合でも筋のいい仮説を立てるスキル」

田中:なるほど。ありがとうございます。では、次にいきたいと思います。いくつか近いものを読み上げると、「事業ではなく自身に対して、どのような目標を設定していますか? できれば長期と短期の2種類をおうかがいしたいです」。これは、自己成長の観点ですね。

「データ分析によって意思決定に関して価値を出していくためには、ビジネスドメインに関する筋のいい仮説を立てるスキルを向上させる必要があると考えているのですが、データ分析者個人でも、組織でも、そのスキルを向上させるために取り組まれていることはありますか?」。

そしてメンバーの話ですが、「チームメンバーを成長させるためにどのようなことを意識していますか? 例えば1 on 1などではどんなことを話していますか?」という内容です。

要約すると「ビジネスドメインに関する筋のいい仮説を立てるスキル」、「自身でどう成長していくか」、「メンバーの方にそういうスキルをどう獲得してもらうか」、となりますでしょうか。

鎌田:難しいですね。

阿部:難しいですね。

田中:「ビジネスドメインに関する筋のいい仮説を立てるスキル」は本質に近いかなと思っていて、ここを外すと分析の意味がないんですよね。僕の場合だと、以前の職場でもマネージャーをしていまして、その頃から若手の練習として「フェルミ推定」を一緒にやっていました。

フェルミ推定と分析はけっこう似ているなと思うところは、筋のいい仮説の立て方というか、セグメントの切り方ですね。

ちゃんとMECEになるように意識するとか、ロジックを整えるとかは、、実際の分析方針をまとめる仕事とすごく近いと思っています。

ビジネスドメインの知識なので学習が必要なんですが、それに「どんな場合でも筋のいい仮説を立てるスキル」が加われば、どんな経歴の方でも分析業務のスタートは切れるんじゃないかなと思っています。

歴史を見ないと絶対に身につかない知識の存在

松田:そうですね。その考え方はすごくあるなと思っています。メルカリでは、「ビジネスドメインに関する仮説」はアナリストもPMも出していきますが、アナリストが出す仮説においては「きれいに分解できている」ことを担保してなきゃいけないと思っています。

これは後の検証可能性に繋がってきて、仮説がきれいに分解できていれば、「このデータはこうだったから、ちょっとこの枝は違うね」と確度を上げることができるかなと思います。

とはいえ、筋がいい仮説は職人芸で、経験がものを言うという側面もあるかなと思ってますが、メルカリにはディスカッションできる相手がたくさんいるのがうれしいですね。

PMと一緒に施策案を考える時も、一緒にブレストをして他の人の考えも吸収しつつ切磋琢磨できるのは、良い環境だなと思います。

鎌田:「フェルミ推定」とかはそんなでもないんですけど、問題解決のフレームワークは、かつてキャリアの途中で叩き込まれたときがありました。今はその貯金を使いながらやっているかなというのを(質問で)聞かれて自覚したので、「向上させるために、何か取り組まないとまずいな」という実感がちょっと出てきている感じです。

ビジネスドメインに関するやつで言うと、うちの社内もけっこうものすごい量の施策がいっぱい動いています。そこを追いかけてちゃんと理解していくと、パッと数字を見て思いつくくらいの施策って、既にけっこう試されていたりとか、過去にやって失敗したり成功したりしています。なので、そこを勉強しまくるっていうのは、一応個人の取り組みとしてはやっています。

データでよくある「それって当たり前じゃん!」みたいなやつとか、「それは過去にやったんだよね」みたいなやつは、これはもう歴史を見ないと絶対に身につかない知識なので、そこは見るようにしていますね。

阿部:そうですね。一般的な部分、質問でおっしゃっているところに関しては、ある程度体系立てて勉強できるところであったりするのでやっていく、実務を通して学んでいくというのがいいのかなと思っています。

「筋のいい仮説」っていうスキルは、アートな側面があると思います。それでも鍛えていくうえで、ポイントが2つあると思っています。1つは、実際に筋のいい仮説を目の当たりにすること。筋のいい仮説を発信する人と接して、思考様式に触れることで、多少なりとスキルを磨けると思います。

あともう1つ。そういう人ってたぶん、考え続けているんですよね。さっき「思考体力」という話がありましたけれど、何らか考え続けたくなるような仕組みや環境をつくることが重要だと思っています。

幸せになるための「物差し」を作りたい

田中:ありがとうございます。最後に、「5年後にどのようなデーダサイエンティスト、アナリストになりたいと考えていますか?」について、お答えいただければと思います。では、松田さんからお願いします。

松田:僕はけっこう、「マネージャーって楽しいな」と思っていて、チームのアウトプットを最大化するようなデータアナリストでありたいと思っています。

人って、それぞれ特性があると思っていて、「これをやっていると楽しいし、アウトプットも出る」という点が人によって違う。このような個性を束ね、チーム全体として強くなっていきたいです。

田中:阿部さん、お願いします。

阿部:2つあります。まずリーダー観点で1つあって、今の会社はデータアナリティクスを掛け合わせられたときの事業インパクトが大きい会社だと思っていて、期待も大きいです。なのでいろいろな問題がこれから出てくると思うんですが、そこを解決して、チームを成立させられるリーダーでありたいです。

もう1つ個人的なプレイヤーとしての自分で言うと、私は「物差し」を作りたいんですよね。それでこの世界に入ってきたんですけど、「みんながこれを目指して生活したら幸せになったよ」みたいな、そういう「物差し」が作りたいですね。

これから益々、色んなデータが取れるようになっていって、そういう物差しが作りやすくなると思うんですね。そのときに、自分がそれに携われるような腕を身につけていたい、経験を積んでいたいです。

freeeの分析チームは、5年後には最強のチームとなっている

田中:ありがとうございます。では最後に鎌田さん、お願いします。

鎌田:そうですね。データサイエンティストっていうのとはちょっと違うんですけど、強いチームを5年後に完成させていたいなと思っています。分析チームの在り方って各社各様なので、なかなか答えとか、これが正解ってないとは思うんですけれども、freeeにおける僕がつくるチームの正解っていうところに5年後は完全に到達して、体現しているというのがやりたいことですかね。

その上で、たぶんそうなっていたら新メンバーはいろんな、めちゃめちゃ強いスキルを持っている人たちが集まっていると思いますので、僕はその中では最弱でいいかなと思っています。最弱なんだけれども、一応、戦ったら5秒くらいはもつくらいの……。

(会場笑)

そんなスキルを持っていればいいかなと思っています。

田中:みなさん、ありがとうございました。5年後もすごく強いチームを率いていらっしゃるんじゃないかなと思います。時間内に回答できなかったご質問に関しては、この後の懇親会で直接お聞きいただければと思います。本日はお集まりいただき、ありがとうございました。

(会場拍手)

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