2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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大貫美鈴氏(以下、大貫):みなさん、こんにちは。このセッションでは「宇宙ビックデータが拓く新たな価値」ということで進めさせていただきます。本日、お二人の方にパネリストとしてご登壇いただいています。佐藤航陽さん。株式会社メタップス会長で、株式会社スペースデータ代表取締役社長です。金本成生さん。株式会社スペースシフトの代表取締役です。
私、本日ナビゲーターを務めさせていただきます、スペースアクセス株式会社の大貫美鈴です。よろしくお願いします。それでは最初に、イントロダクションとしまして、私から「宇宙ビックデータが拓く新たな価値」ということで、宇宙産業の全体像の話をさせていただきます。
宇宙産業はここ10数年で商業化が大きく進みまして、2倍以上に市場が伸びました。今後もこれ以上の勾配で伸びていくことが展望できます。全世界の宇宙産業の売上は、2020年には50兆円も超える、楽観的に見ると2030年には100兆円を超えるんじゃないかとも言われています。
また、2040年には固く見ても100兆円を超えており、楽観的に見たら300兆円を超えてくるんじゃないかというような勢いで伸びているのが宇宙産業の現状です。
その宇宙産業ですが、みなさんの中には、宇宙と言ったら「政府の公共事業」というイメージの方もいらっしゃると思います。政府の宇宙開発はもちろん今後も続きますけれども、ここ10数年で大きく商業化が進んだということが言えます。この表のように、今では80パーセント以上が商業の宇宙開発になります。
この残りの20パーセント以下のところですけれども、これが各国政府の宇宙予算を足したところでして、残りの20パーセント以下の中に紫色のところが50パーセント以上あります。
この紫色のところはミリタリーの宇宙(予算)も入ったアメリカの政府の予算です。残りの黄色いところは、アメリカ以外の各国の宇宙予算です。ここ2年の宇宙(産業)の売上の推移では、商業の80パーセントの中でも、ブルーのところが激増しているということがひと目でわかるかと思います。
このブルーのところは「プロダクトアンドサービス」と言いまして、データ利用などが含まれるところです。むしろ割合としては激減して、額として減っている赤いところは、従来の宇宙産業の衛星とかロケット、あとは地上システムのようなものになります。
大貫:やはり、これまでの宇宙開発ですと、衛星と言えば何トン、何トン、何トンって、だんだん大きくなっていくようなイメージの大型衛星が思い浮かぶわけですけれども、私たちは今、小型衛星という新たなプラットフォームを得ています。この小型衛星をコンステレーション(多数の人工衛星を協調して動作)させることによっていろんなことができるんですけれども、1つには通信で利用するというものがあります。
今、通信衛星として事業計画が出ているものを全部足すと、2万3,000以上の衛星の計画が発表されています。
今はまだ、世界中で40億人がインターネットにつながれていない。世界の全人口の60パーセント以上の人がITを使えない状態なのですけれども、これらの通信利用でそのコネクティビティを実現する、あるいは5Gに貢献するというようなことを目指して、利用が進められています。
また一方、「地球を見る」という地球観測でも、1,000以上の衛星の事業計画が出ています。こちらはコンステレーションによって、時間分解能を上げるんですね。そのリビジット(衛星による上空再訪)によって、全地球上の画像データを1日に何回も更新できる。写真ではなくてモニタリングの状態になるということでして、これらのデータがいろいろな産業に利用されるわけです。
これはハードウェアの世界ではなくて、データが高度化してソリューションとして提供されるということで、さまざまな産業に新たな価値をもたらすことになると思います。
また、地球観測データ単独ではなくて、G空間(地理空間)情報、気象データ、あるいは地上のいろんなセンサーで取得するセンサーフュージョンも得て、宇宙ベース以外のデータと一緒になって、アクショナブルデータとして新たなインサイトを私たちの生活にもたらすことができます。未来予測や経済予測ができるということになります。
それらが、あらゆる産業に新たな付加価値を付けると思います。また、今いろいろ話題に出ることも多いですけれども、デジタルトランスフォーメーションに貢献できるということで期待されています。
大貫:これらの商業宇宙開発では、ここ10数年で世界中に宇宙ベンチャーが出てきました。今、1,000社が商業の活動をしていると言われており、中にはこの数年でユニコーン、つまり1千億円以上の企業価値を持つようになった企業も出てきています。ご覧になっていただくとわかるように、ほとんどが小型衛星ですとか、アナリティクスに関係する企業です。
また宇宙ベンチャーだけではなく、「ビリオネア」と呼ばれ、『フォーブス』誌の長者番付にランキングされるような企業の創業者たちというのも、宇宙産業に大きく入ってきています。
この「ビリオネア」ですが、2000年より前は宇宙に投資する人は1人もいませんでした。2000年以降に増えてきているわけですけれども、今では20人以上が宇宙分野に投資しています。こういった中でも、小型衛星や衛星データに投資する人が少なくありません。
また「ビリオネア」だけではなくて「ITジャイアント」と呼ばれるような企業も、こういった衛星データ、衛星利用の分野に来ています。また一歩進みますと、「ベンチャーキャピタル」ですね。「ビリオネア」や「ITジャイアント」に加えて、「ベンチャーキャピタル」も、こういった宇宙分野、宇宙スタートアップ、商業宇宙の分野に資金を投入しているのも現状です。
このVC(ベンチャーキャピタル)の投資にまで至ったのが、2015年。そこから激増しています。2015年から3年間伸びてきまして、「これは一種のバブルなのか? そうではないのか?」ということで、今年の数字が出るのがけっこう注目されていたんです。今月(2019年3月)末くらいに正式に出るんですが、まだ出ていません。どうやら今年出てくる新しい数字もそれを上回り、30パーセントアップになりそうだということを最近聞きつけました。
私からは宇宙産業の現状として、今このような状況になっているというお話をさせていただきました。次は、この分野で具体的に事業を進めていらっしゃいます、パネリストの佐藤さんからお話をお願いします。
佐藤航陽氏(以下、佐藤):はい、こんにちは。佐藤と申します。私、ふだんはITの会社を経営しているので、データ解析に特化した知見を持っているかなと思っています。
衛星データはまだまだ「活用方法がない」と言われていて、それも含めて「衛星データは本当に産業的に使えるのかどうか」、あとは「社会的な課題を解決できるかどうか」というプロジェクトをやっています。
現状で言うと、データの解析を使って企業のビジネス利用に活かすと言われてはいるんですけれども、ユースケースってあんまりないんですよね。実際に何に使われていて、どういう効果があったかはビジョンベースでしかなくて、収益的にも大きくない。
私はもともと、購買データやアプリの利用データを使って、それを元にコンサルティングをしてきたのですが、データ解析を元にコンサルティングをする、あるいは販売するという事業自体がそこまで規模は大きくないんですよね。
みなさん、「データがあると何かおもしろいことがわかって、大きなビジネスが生まれるんじゃないか」という想像をされることがあるんですけれども、ここにお金を使っていただける企業様って、滅多にないんです。そういう意味で、今回の「宇宙データの活用方法」というのも、「世の中で言われているのとは違うんじゃないかな」という疑問からこのプロジェクトは始まっています。
衛星データ系のベンチャーはたくさん出てきていて、「データの収集」「データの解析」、あとは「ナレッジの抽出」のところまでは行くんですけれども、そこから「ビジネスにつなげる」というところには深い谷がありまして、ここを越える企業はまだまだ出てきてないのかなと思っています。
アメリカ系の会社もほぼ、政府から予算をもらってマネタイズしている状況なので、純粋な民間からの収益をどれだけあげているかというと、まだまだかなという状況になっています。
私はネット側の人間なので、「データを価値に変える」という意味では、ブロックチェーンの技術が一番相性がいいんじゃないかなと思っています。衛星から取れるデータをブロックチェーン上のトークンに変えて、そのトークンを軸に経済圏を創出していくというビジネスモデルの方が直接的で早いんじゃないかなということで、今回「EXA(エクサ:仮想地球プロジェクト)」というプロジェクトを行っています。
佐藤:私は「社会的な課題」は、世界の中に2つあるかなと思っています。1つは政治。今の政治って、トランプの件も含めてあまりにも問題が複雑化しすぎてしまっていると思います。
世の中の課題や解決策が一般の方々で理解できるところを超えてしまっているので、その社会の課題、あとは正しさというよりは、感情的に「賛成できるかどうか?」というところにフォーカスが移ってしまって、結果的に先導者に権限が集まるという問題が起きていると思います。
もう1つ経済でいうと、これはピケティの話と同じですけれども、資本が偏ってしまいます。「人気者が(さらに)人気者になる」というのと同じで、「お金持ちがさらにお金持ちになっていく」というのは資本主義上では宿命づけられていて、なかなか税金でこれを平衡にしていくことができないという問題がある。なので結局、今の不安定で不確実な時代、政治経済の問題を何か解決できないかなと思っていました。
この2つを解決する課題として自分が考えたのが、「仮想空間上にもう1個、地球を作ってしまえばいいんじゃないか」ということです。衛星からのデータ、画像データもありますし、3Dデータ、GPSも含めて、仮想空間上に今の地球とまったく同じものを1個、作ってしまうということです。
その位置情報やデータを、ブロックチェーン上に記述していきます。金と同じで、ユーザー自体は位置情報と連動して、デジタル上のブロックチェーン上のトークンを発掘できるという仕組みになっています。現実世界で言うと、石油やダイヤモンド、ゴールドと同じように、仮想の地球上ではデジタル上のデータ、トークンを発掘できる仕組みを作っていきます。
この仮想の地球上では、「現実世界と真逆の格差を起こす」という仕組みを作ろうと思っています。日本やアメリカのように裕福な国では、さっき言ったトークン、デジタル上の鉱物、データというのはなかなか掘り出しにくく経済的なチャンスがない。
逆にアフリカや南アメリカのようなところは、トークンが掘り出しやすいということで、現実世界の地球と真逆の格差を起こす地球を作って、(現実と仮想の)2個をくっつければ平衡状態、つまり格差はゼロの状態に戻せるんじゃないかというような仮説から動いています。
佐藤:ここでは夜間光のデータを使っています。結局、各国の出す経済情報のデータって偏りがあって、正確じゃないんですよね。中国なども改変されているんじゃないかという情報があったりします。
なので、「夜間光」のデータと「経済的な成長・成熟度」にほぼ相関関係があるという仮説を元に、今回、夜間光のデータを用いながら、どの地域がどれくらいトークンが掘れるかということを数値化し、リアルタイムで更新していく仕組みを今、作っています。
「夜間光の光度」と経済指標(GDP)にも強い相関があることも一応、研究で発表されています。市町村単位、今でいうと250メートル×250メートルのすごく小さな単位で光度を分析していますけれども、これによって仮想世界と現実世界とで真逆の格差を作り出すということをやっています。
今は2Dでやっていますけれども、将来的には3Dのデータ、衛星から高さのデータを取りながら、本当にバーチャル空間上に地球と同じようなものを作り出していって、VRでヘッドセットをかぶって、並行宇宙、並行世界、パラレルワールドというものを作れるんじゃないかなと思っています。
全体としてその宇宙空間は「物理的に宇宙に行く」というのとは別で、理論上、人間は仮想空間上にもう1個の宇宙を作り出すこともできるんじゃないかなという仮説で動いています。
ただ、コンピューターのリソース的にまだまだ時間がかかるので、実現するのは何十年後かという話だと思います。こういう試みを今、着々と進めていっている状況です。
大貫:ありがとうございました。
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