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顧客志向から生まれるスマートホーム戦略(全4記事)

地方のラジオ番組『居酒屋 清子』を一躍全国区に Amazon Echoのスキルが可能にすること

2018年11月21日、テクノロジーによる「暮らし」の変革を志す、第一線の経営者・クリエイターが集う「LivingTechカンファレンス2018」が開催されました。2020年から5年後の社会のあり方を考える「POST2020」をテーマに、10以上のセッションを実施。その中のセッション「顧客志向から生まれるスマートホーム戦略」では、アマゾンジャパンの前田宏氏と柳田晃嗣氏、リノベる山下智弘氏、米DUFL共同創業者・塚本信二氏が登壇し、スマートホーム戦略の在り方などについてディスカッションしました。

voice to screenを見据えた新プロダクト

柳田晃嗣氏(以下、柳田):3月にスピーカーオンリーの製品がEchoで出てきましたが、ほんの数ヶ月後に「Echo Spot」が出ました。

Echo Spot (エコースポット) - スクリーン付きスマートスピーカー with Alexa、ブラック

スクリーンのついた、ちょっとかわいらしい、小さな丸型で、昔でいうとベッドの横に置いてあった置き時計みたいな感じのものです。

実は、日本ではスクリーンが付いている、音声ファーストのスクリーンのデバイスが、非常に受けているんですね。非常にわかりやすくお使いいただいているのが、日本の特徴かなと思っています。

塚本信二氏(以下、塚本):なるほど。発売したのはいつでしたか?

前田宏氏(以下、前田):7月の末に出荷開始しました。

塚本:voice to voiceからvoice to screenに変わっていくタイミングは、個人的にかなり大きなシフトだと思います。コメントしづらいかもしれないですけど、販売的には予想以上に好調なのでしょうか。

個人的な意見ですけども、スタンダードビヘイビアというか、日常に溶け込まないと、こういう新しい技術や生活スタイルは定着しないと思っているんですよね。そういった意味でいうと、出荷されてすぐの段階で結構なんですが、今後、スタンダードビヘイビアになっていくのか、どういった(感じになるのでしょうか)......。

柳田:シフトというよりも、新しく12月12日から出荷開始になる、「Echo Show」という10インチの製品と、「Echo Plus」は、それ以前の商品ももともと音はよかったんですが、Echo Showではスピーカーが非常に強化されていています。スクリーンの付いてないデバイスで新しく発表されているのは、シフトというよりも、スクリーンの付いたものが加わったということです。

Echo Show (エコーショー) 第2世代 - スクリーン付きスマートスピーカー with Alexa、チャコール

あの丸い小さいもの(Echo Spot)を目の前に置いて、2時間映像を見るかというと、たぶん違うんだと思います。このEcho Showの10インチのものであれば、映画の鑑賞にも十分耐えられる。音もすごく充実しているんですね。そういった製品が出てくると、お客さまがどんな体験をしたいのかという選択肢が増えていく。

そうすると、例えば自分がニュースを聞くのが中心で、洗面所で歯を磨いている間に、ニュースを聞きたいというのであれば、スクリーンがいらないかもしれない。7月の末に発売された、Echo Spotに関しては、ちょうどそのあとにお盆休みがあったということもあり、2台買われて、実家に1台お持ちになったという方もけっこういらっしゃったんじゃないかなと思うほど、2台購入された方も多かったです。

なので、逆に、お客さまのほうが理解されて、いろんな使い方を考えてされているというところと、それによってスクリーン付きのほうがいい、ないほうがいいということで選ばれているということが言えるんじゃないかなと思いますね。

塚本:なるほど。

これからはEchoのスキルに要注目

塚本:これは中にスキルが入っているじゃないですか。スマホで言うとアプリになりますが、AmazonのEchoのスキルというのは、今日来られている方々で、今後消費者にアプローチしていったり、新しい生活支援をしていったりする時に、作るのはそんなにハードルは高くないですか?

柳田:そうですね。もちろん、Amazonが最初に作っておいた機能もたくさん入っているんですね。「こんにちは」といったら挨拶しますし「ダジャレを言って」と言ったら、ダジャレを言うこともあります。ただ、日本のお客さまが、どんなことを求められているのか。

音声がファーストで、声をかけただけで応えてくれるという環境ができた時に、(お客さまが求めることに)どんなものがあるのかを考えると、例えば、銀行や保険会社、セキュリティサービス、教育、それからショッピング、エンタテインメントなど、さまざまなエリアで声を使うことが普通に仕事として存在するものは、すべてパートナーというか、スキルを開発して、Echo、Alexaを上手く使ったいただくサービスになり得るわけですよね。

塚本:そうした、voice to screenが比較的近い将来、スタンダードになっていく印象を持っていらっしゃるということですよね。

柳田:そうですね。実はいま、1,500以上のスキルが登場しているんですけど、95パーセント以上が、日本の開発者の方、もしくは企業の方が、日本のユーザーのために、日本で開発したものなんですね。

例えば、JR東日本さんや三菱UFJさん、ドコモさんといったまったく違う業界の会社。もしくはエンターテイメントですよね。ピカチューのスキルもありますし、ありとあらゆるスキルが出ています。

塚本:(スキルの数は)いま、日本で500個ぐらいでしたっけ?

柳田:いま、1,500個以上です。

塚本:1,500個なんですね。一人で晩酌するためのスキルが出るなど、マーケティング的にも非常におもしろくなってきたとさっき聞いたのですが。

柳田:そうですね。九州のラジオ番組に『居酒屋 清子(いざかや きよこ)』というものがあります。テーマは、サラリーマンの方が一人で寂しくうちに帰ってきて「Alexa、『居酒屋 清子』を開いて」と言うと、一緒に晩酌してくれるようなかたちです。地方のラジオ局の番組が、スキルを上手く活用することによって、全国デビューする。そういうようなかたちでも喜んでいただいています。ユーザーの方も増えています。

「Alexa Everywhere」を合言葉に

塚本:これだけポテンシャルが高いデバイスや技術ですと、企業側も消費者も、それぞれがデザインしていくことや、もしかしたらAmazonの予定してないところで、新しくサービスが生まれることもけっこう多くなるんだろうなと思います。

柳田:そうですね。Amazonがこれをすべてやりたいと思っているわけでもありません。Amazonとしては、このハードウエアをたくさん使っていただきたいのはやまやまですが、このハードウエアをたくさん売ることによってビジネスがしたいと思ってやっているというよりも、さまざまなところで......「Alexa Everywhere」と言っているんですが、行ったところ、行ったところで「Alexa」と声をかけると応えてくれる。そして自分に必要な情報やサービスを提供してくれる。

いまから何年後かわかりませんけど、そういうことが実現できた暁には、もしかしたらAmazonはEchoデバイスを作らなくてもよくなるのかもしれない。こういったことさえ考えているぐらい、自然なサービスになっていけるかなと考えています。それがお客さんが「本当の便利」というものを獲得できた瞬間なのかなと思っています。

塚本:Better to haveからmustというか、あったらいいなというところから必需になっていくというフェーズがくると思います。ですが、結局、触らないとなかなかわからないということもあって、いますぐ生活に必要ではないものの場合、触ってもらうことが重要ですよね。リノベるさんといろいろな取組みをされているという話をお聞きしているんですが、山下さんから簡単にここの説明をしてもらえればと思います。

山下智弘氏(以下、山下):いま、ご紹介にあったEchoなんですけど、ユーザーとして買う時、どんなものかなって、家電量販店さんに試しにいくじゃないですか。

「天気教えて」とか、その場で思いつくものをやってみると、それはそれで「ああ、おもしろいな」と感じるんですよ。でも、僕が自分の家で使っているのとは少し違うなと思ったのが、もっと暮らし全体に変化を与えられるようなものだよねということです。

例えば、僕たちが提供しているスマートホームの世界でいうと、壁のスイッチのスイッチプレートと言われるボタンがあるじゃないですか。それが、ない家があるんですね。目のつくところにない。普通、壁の際のところにあると思うんですけど、スイッチは全部裏側に入っていて、壁には何もない。すごくすっきりしていて、きれいなんですよね。

音声デバイスでコントロールするということができる。そういったものは、一般的な売り場ではなかなか体験しにくいので、それを体験できる場所をリノベるのショールームにご用意しています。

リノベる・ショールーム×Echoの試み

柳田:スイッチのようなものは生まれてこの方ずっと、必ずあるので、あるべきものだと考えているんですよ。ところが、スイッチがないと、いかにスッキリしてきれいなのかということですよね。

山下:そうなんですよね。本当は必要ないですもんね。すごくスッキリしているので、そういったものを実際に見ていただこうというお話をAmazonさんにさせていただいて、いま、うちの4つのショールームでやっています。

Amazonのホームページのほうから、見ていただくと私たちのショールームのご紹介のページがあって、そこに行くと、生のタッチアンドトライということで、Alexaが体験できるショールームを、いまは首都圏に4ヶ所ご用意しています。ショールームは全国に展開していきますので、今後、全国に広げることによって、体験できる場所が増えればおもしろいかなと考えています。

柳田:生活のことを考えると、暮らしの中で、欲しいけれど入手できない情報が実はけっこうたくさんあるんですが、それを当たり前として生活しています。例えば、キッチンにいらっしゃる主婦の方、男性でもけっこうですが、洗濯しています、と。洗濯機がキッチンのサイドあるケースもありますが、そうじゃないケースもあります。知りたいのは洗濯が終わったのかどうか。

その前に知りたいことは「天気が良いのか」とか。洗濯機を回してしばらく違うことをやっていると、ついうっかりして、気がつけば洗濯機が止まっている。エラーが出ている。子どもは着替えが大変だというようなことがあるとしたら、例えば、洗濯が終わったことを手近にあるEchoがAlexaの声で話してくれると、ものすごく便利かもしれない。

そういうことを一つひとつ考えていくと、これをうまく活用することによって、いろんなビジネスの拡大もできる。その場所がリビングルームであるところや、暮らしの中にある家庭、家の中が、実はとても重要なのかなと思っています。

「電気、水道、ガス、Echo」を目指すのか?

山下:どこにEchoを置くかもけっこう重要かなと思っています。リビングの中でも、ソファーの前なのか、ダイニングテーブルのところなのか、それによって、使い方がたぶん違うじゃないですか。

塚本:リノベーションするのであれば、本当は埋め込みたいですよね。いまは新しいものだから、こんなこと言うと怒られるかもしれませんが、いまは格好良いですけど、将来的にテーブルの上にないほうがいいのかなとか。

すでにアメリカでは車に埋め込まれているじゃないですか。わからないですけど、スタンダードビヘイビア的に、「電気、水道、ガス、Echo」じゃないですけど、徐々にそれぐらいになっていくといいという感じですか?

柳田:スキルというのが要は用途で、アプリケーションというふうに考えていただくと......とはいえ、アプリという言い方をすると、ダウンロードが必要なスマホが彷彿されるので、できるだけ避けています。

でも、用途ということで考えると、耳がどこにあるのか、口がどこにあるのかというのは、もちろんEchoというそれ専用の製品もありますけど、AVSという「Alexa voice service」というサービスも提供していています。例えば、各メーカー、別に家電メーカーさんでなくても構わないですけども、お使いになろうとすると、自分のデバイスの中に入れていくことも、Amazonでは公開してサポートしています。

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