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基調講演:ソフトウェア開発の未来(全1記事)

GitHubシニア・バイスプレジデントが語る、デベロッパーとソフトウェア開発のこれから

2018年6月12日から13日にかけて、TOC五反田メッセにて「GitHub Satellite 2018」が開催されました。登場から10年、日本オフィス設立から3年が経ち、ますます成長を遂げるGitHubに関する最新情報やコミュニティの知見を広く共有する今回のイベント。日本だけでなく世界中からGitHubユーザーが集い、プレゼンテーションやパネルディスカッションを繰り広げます。Day1の基調講演「ソフトウェア開発の未来」には、GitHub日本法人のカントリーマネージャーである公家尊裕氏、GitHubのJason Warner氏、そして買収が発表された日本マイクロソフト株式会社CTOの榊原彰氏が登場。GitHubが変えたソフトウェア開発の常識とこれからについて語ります。

GitHub誕生から10年

公家尊裕氏(以下、公家):みなさまSatelliteTokyo2018にようこそ。今日から2日間、たくさんのみなさまをお招きして色々な有意義な情報をお届けしたいと考えております。

実はGitHubがサービスを開始したのは2008年です。今年がちょうど10年。みなさまに非常に可愛がっていただいたこのサービスも10年を迎えることができました。この場をお借りしまして、改めてお礼いたします。

いまだにGitHubという会社は、コラボレーションとリモートオフィスでの仕事環境をとても大事にしています。65パーセントの社員は現時点でもリモートで仕事をしています。

そんなGitHubなんですが3年前2015年に大きな決断をしました。それはアメリカ国内だけではなく、戦略的な地区にオフィスを作ろうじゃないかという重要な決断をしました。そしてその決断の最初の戦略地点として選んだのが、ここ東京です。

ここ東京で日本語が話せる社員を置き、みなさまの近くに仕事をする。みなさまからたくさんの声を頂くとことで、3年間で非常に多くの学びを頂くことができました。そしてその学びは、今後のGitHubのサービスとして、みなさまの未来に役立つようなサービスとして恩返しをさせて頂く。そして今後も人を増やし、リソースを増やし、みなさまに対するサービスレベルを上げることでよりたくさんの方々に使って頂き、ソフトウェア開発の未来というものに対して、貢献をしていきたいと考えています。

ではここ10年間で我々はどのくらいの規模になったのか、GitHubが掲げている標語に「ソーシャルコーディング」というものがあります。ですので、たくさんの方々に使って頂くことに非常に大きな価値があります。

最新の数字です。(GitHubは)10年経ち、2800万人の開発者の方に使っていただいております。当然登録者数が多いから良いということだけではありません。登録者数が多いだけではなく、みなさまさまざまなプロジェクトにGitHubをご利用頂き、現時点で既に8,500万を超えるリポジトリが作成されている

大変ありがたいことだと思います10年で非常の多くのプロジェクトが世に出ました。素晴らしい革命的なもの世に送り出されております。みなさまがGithubというサービスをうまく使って頂き、みなさまの本当の能力本当の力を世の中に知らしめて頂いた。その結果だと思っております。

日本におけるGitHub

今、世界の話をしましたが、3年前に日本を作りましたね、じゃあその日本はどうなったかという、そのトレンドをご紹介します。3年前にオフィスを作りました。みなさまと近くでお仕事をさせて頂きました。

それだけがすべてではないと思いますが、結果的にどうなったかと申しますと、まずGithubのユーザー数が3年前と比較して250パーセント増、3.5倍に増えました。

そしてプルリクエストの数は550パーセントの増加の6.5倍。さらにはオープンソースプロジェクトに関連する参加していただいているエンジニアの方、開発者の方の数も8割近く増えました。

これらの数字だけではなくて、今日このイベント。昨年度は「コンステレーション」というイベントを日本で行いました。そのイベント200名という規模でしたが、今年は「サテライト」。2日間のイベントで800人のお客様と一緒に情報交換をさせて頂く機会を設けました。

5月の中旬にこの800名のイベント「サテライト」を発表し、そこから申し込みを開始しました。わずか2日間で800名すべての方の登録を完了し、多くの方にウェイティングリストでお待ち頂くというような状況まで来ることができました。非常にたくさんの方の興味を頂くことをできたこと、改めて感謝を申し上げます。ありがとうございます。

この2日間の大きな流れ、今開発現場ではどんなことがおきているのかというキーノートの部分を誰に話してもらおうか頭を悩めましたが、GitHubの中でもやはりテクノロジーのトップの人間に話してもらうのが最も良いのではないかということで、みなさまにここでご紹介をしたいと思います。

今開発現場で起こっていることは何なのか、GitHubシニア・バイス・プレジデントオブ・テクノロジー、ジェイソン・ワーナーをご紹介いたします。みなさま盛大な拍手でお迎えください。

(会場拍手)

デベロッパーを取り巻く歴史

Jason Warner氏(以下、Jason):この方はマーガレット・ハミルトンさんです。アポロ11号プロジェクトをリードしたMITの研究者です。

あの本の山はアポロ11号の原動力となったソースコード。

彼女の時代のソフトウェア開発の様子を想像することは不可能に近いでしょう。あの本の山の中のコードはすべて手書きでした。パンチカードに読み替えられてから機械に挿入されたのです。

デバッキングは頭の中でやることで、バージョン管理システムはファイル棚の修理のことを指していました。彼女自身がコンパイラでした。

それから多くのことが進化しました。

コンピュータ・サイエンスは今や大学で最も人気のある科目の1つです。デベロッパーは世界中で引っ張りだこのスペシャリスト職です。みなさんが作るコードが地球上のあらゆるものの原動力になっています。過去にないほど便利なツールが溢れており、デベロッパーの仕事は過去になく楽になっています。

現在はデベロッパーにとって天国のような時代です。我々デベロッパーにとって黄金の時代と言えます。今やソフトウェア・デベロッパーが世界中の難問を解決しています。機械学習やIoT、サイバー・セキュリティや仮想通貨、またはインターネットのクラウドコンピューティングなど、みなさんのコードが文字通り未来を創造しています。

これは同時にデベロッパーにとって複雑さが増していることも意味します。どんな分野のデベロッパーであれ、合点が行くことでしょう。

まずはコード自体が複雑化しています。2012年の『ワイアード』誌の推測によると、平均的な車に1億行以上のコードが使われていました。自動運転なんて始まるずっと前のことです。

次にツールが複雑になっています。ツールチェーンの最初から最後まで、フレームワークや言語、コードがプロダクションに至るまで今までになく複雑になっています。クライナー・パーキンスの2017年のレポートによると、平均的なデベロッパーは毎日1,000種類以上のクラウドサービスから選択しなければならないそうです。

最後に我々の業界で常に必要とされる学習ペースも過去になく加速しています。新しいツール、新しいフレームワーク、新しい言語、新しい方法、新しいクラウド、新しい何もかも。すべてが貴方の注意を引こうとしており、我々も進化を止めることはできません。進化に遅れないようにするのは大変です。

デベロッパーがつながるということ

GitHubは10年前に設立されました。その頃ソフトウェアはもっとシンプルでした。アマゾンは今やフォーチュン500の頂上に君臨するクラウドですが、その頃はちょっと派手なオンラインストレージのエンジンなだけでした。

DropboxやSalesforce等のSASプロバイダがやっと知られ始めた頃でした。今ではデベロッパーがそれなくしては生きていけない、プログラム言語はまだ存在していませんでした。

その当時GitHubの基本サービスである、シンプルで信頼性のあるWeb上のバージョン管理システムは、デベロッパーとくにオープンソースのデベロッパーのやり方を根本から変えてしまうものでした。でもそのバージョン管理システムが大化けしたのです。コミュニティとして成長したら驚くべきことが起きたのです。

まずデベロッパーがお互いに繋がり始めました。そしてより大きく難しく複雑な問題を一緒に解決し始めました。オープンソースが爆発的に広がりました。今やオープンソースがソフト開発の中心です。

さまざまな問題が解決されるに連れて、世界中のデベロッパーの貴重な共有資産となっていきます。

抽象化がデベロッパーが現在の世界で戦うための重要なアプローチとなりました。世界中のデベロッパーを1つの繋がったコミュニティに集めることにより、GitHubは過去には不可能だったスケールで知識を集結しています。

そして誰もがアクセスできるようにしています。すべてを繋ぐことにより発生するパワーを目の当たりにしています。それは人だけでなく、データ、ツール、パートナー、エコシステムの接続です。

この多様で深い繋がりはものすごい量のデータを生み出します。データは知識につながり知識からケイパビリティが生まれます。デベロッパーがこの繋がりのパワーを使いこなせばこなすほど、好きなこと得意なことにもっと専念できるようになります。即ちソフトウェア開発です。これがGitHub設立の趣旨だったのです。

より複雑化する開発環境

複雑化のトレンドは止まりません。ソフトウェア開発はどんどん複雑化し、より新しいツールと一層新しい専門技術が必要になります。ソフトウェア開発は今パラドックスに直面しています。こんなに参入障壁が低かったことはありません。

でも、コードがプロダクションに至るのは今までより難しくなっているのです。犯人はワークフローの断絶です。デベロッパーの決断はすべて連鎖の中に存在します。デベロッパーの個々の行動はそれぞれ数百種類の判断に基づいています。だからデベロッパーは常に集中をして詳細な方程式を解く必要があります。

毎日このように何百もの決断をしているのです。この決断に時間をかけること自体が問題の原因となります。ワークフローや一貫プロセスを確立するために時間を費やすと動けなくなります。

過去にはデベロッパーは連続的に熟練していきましたが、今は小さな独立した関数の積み重ねで習熟していきます。二歩進んでは一歩下がっているんです。GitHubは設立当時よりこの熟練の過程を線形に加速させることを目指して来ました。みなさんが楽に成長し続けられるようサポートします。

例えばこれは世界の何百万人というクラウドデベロッパーの競争環境です。

選択の自由が広がった訳ですが圧倒されてしまいます。実際にデベロッパーは余りに選択肢が多いため、生産性がかえって落ちてしまっています。

1日の時間は限られており、有り得る選択肢をすべて評価して理解し使いこなすことは難しいです。この競争環境の中を外部のサポートなく航海することは、みなさんの創造力にも悪影響を及ぼします。

10年前に我々はそのワークフローの一部を変革しました。プルリクエストが世界を変えました。複雑な問題に対する簡単な解決策でした。でも今日のデベロッパーは、コードフェースの奥にある複雑さに直面してます。一貫性を持って柔軟で効率的で信頼性があるワークフローを構築するのは大変難しいことです。

更に問題なのは、デベロッパーが直面する誤った選択肢です。複雑さを簡略化するため、作成済みのワークフローを使うか選択の自由を獲得するためワークフローをゼロから構築し、その苦労を享受するかという選択です。

これがGitHub創立理念です。

複雑さをケイパビリティに変換することです。我々は10年をかけてその理念を実現するプラットフォームを作ってきました。この先10年でソフトウェアが何をもたらすか分かりませんが、我々はみなさんをサポートし続けます。

みなさんの最初のプルリクエストから、ソフト開発のライフサイクル全体を通じてプロダクションとその先に到るまで一緒に歩みたいと考えています。

より良い開発環境のために

極端な選択肢は役に立たないと思うので、本日は第3の選択肢を提示します。何でもできる独立したソリューションを作ろうとしている訳ではありません。みなさんにとって何がベストか分かっている訳ではありません。またみなさん自身でカスタムソリューションを作れと言っている訳でもありません。

むしろベースとなる基盤を提供し、お好みのツールに簡単に接続できるようにします。結果として選択の自由が実現し、最新技術にいつでもアクセスできます。しかも既成のソリューションのため安定しています。ソフト開発のライフサイクルはどんどん長くなっていますが、依然としてコードが鍵であることに変わりはありません。

プロダクションに移行する次のフェーズもGitHubが先導することは当然です。変革はすぐそこまで来ています。今後数年間でソフト開発の過程はまた大きく変わってしまいます。そこで我々は世界中のデベロッパーのみなさんを支援したいと考えています。

この流動的な環境の中でもみなさんがやりたいこと。コードを書きソフトを作り、走らせてユーザーをサポートすることが簡単にできるようにしたいと考えています。そのため世界中の何百万人ものデベロッパーとすべての領域で日々拡大しているパートナーのエコシステムのノウハウを集積し、アクセス可能なリソースにします。

ウィキペディアと同じようにGitHubのグローバルコミュニティの知識はユーザー自身がキュレーションしてアップデートしています。これがコミュニティのパワーです。時代が変わっても繋がっていること、それがGitHubの力です。

今まさにGitHubは大型ソフト開発をより簡単でクリアで効果的にしようとしています。毎年新しい開発スタイルや新製品、新技術が登場することは誰もが知っています。例えばARVRブロックチェーンAI仮想通貨、他にもいろいろあります。

ソフト開発の未来はどんなものになるでしょう。本当に知っている人は誰もいないはずです。でも我々はみなさんの成功をサポートします。みなさんにとって大事な問題にフォーカスできるよう支援します。どのツールを使うか悩んだりコンフィグファイルを編集するのではなく、みなさんが本質的な難問を解決するため、コーディングに専念できるように。

このスピーチの最初に申し上げたように、今はデベロッパーにとって天国のような時代です。挑戦のしがいのある問題が沢山あり、みなさんのような才能ある人材が求められています。世界中のGitHubユーザーのみなさんのことです。より多くのツール、フレームワーク、言語、そしてより大きなコミュニティを活用することができます。

GitHubはみなさんを支援します。コーディングに専念できるプラットフォームを提供します。もともとGitHubの起源はそこにあります。ソフト開発の複雑さをケイパビリティに変え、不可能を可能に変え難しいことを簡単にすることです。

MicrosoftのCTOが語るGitHubのこれから

Jason:先週は当社に関し大きなニュースがありました。マイクロソフトがGitHubを買収することが発表されました。とてもエキサイティングなニュースです。この日本でもお祝いをするため、マイクロソフト・ジャパンのCTOアキラさんが登壇してくれます。アキラ?

榊原彰氏(以下、榊原):ありがとう。

(会場拍手)

設計図共有サイトファンのみなさんこんにちは。

(会場笑)

日本マイクロソフトの榊原でございます。よろしくお願いいたします。

マイクロソフトの世界観をご紹介したいと思います。我々の世界観がどのようになっていくか。「インテリジェンクトクラウド」と「インテリジェントエッジ」という合言葉を使っています。

世界中のあらゆる場所にコンピューターパワーが偏在して、世界がコンピューターになっていく。すべての産業はソフトウェア産業になります。そうした時に社会を変えていく人は誰なのか。私たちはそれがデベロッパーのみなさんだと確信しております。1975年にマイクロソフトが創業した当時、我々が最初に提供したプロダクトはBASICの「インタプリタ」でした。

マイクロソフトは創業当時から開発者のみなさんとともに歩んできました。私どもの現在のミッション、これは「地球上のすべての人々すべての組織がより多くのことを達成できるようにする」というものです。マイクロソフトは価値観を共にする仲間と一緒にデベロッパーのみなさんを支援する、そんな道を選びました。

まさにGitHubはすべての開発者がより多くのことを達成できるようにする。そういうデベロッパーのホームです。それを私たちはともにサポートしたいと考えております。いつも私こういうカンファレンスで言うんですが、「マイクロソフトは変わってきましたよ」と。「あなたのお父さんの世代のマイクロソフトじゃありません」ということを言うんですが、言葉で言ってもなかなか信用してもらえないですよね。

今でもマイクロソフトが嫌いな人もいます。でも私たちは「信用してください」と言葉で言うだけではありません。行動で示そうと思います。LinkedInでもMinecraftでも、私たちは彼らの事業の独立性を保ってきました。今回も私たちはそのように我々の行動規範を整えていこうと思っています。

GitHubの独立性を保って、すべての開発者が今まで通りGitHubのファンクションを自由に使っていただける。なんの気兼ねもなく安心して自分のソースコードを蓄えて頂くということができるようにする。これが我々の今のミッションです。

我々はそういうふうにコミットメントをしております。行動を見ていて頂きたいと感じています、我々のミッションが先ほども言いました「地球上のすべての人々すべての組織がより多くのことを達成できるようにする」。英語だとempowerという言葉を使っています。「empoweralldeveloper」これが私たちが今成し遂げたいことです。

すべての言語すべてのOS、すべてのクラウドすべてのデバイスをサポートします。GitHubを使って開発者のみなさんとともに未来を創っていきたいと考えています。私の今日のあいさつはこれだけなんですけれども、みなさんの前でこうして挨拶できることをつい先日までまったくこう思っていませんでした。

非常にワクワクしています。これからGitHubとマイクロソフトでタッグを組んでより多くのことを達成できるようにしていきたいと思っています。

今日はどうもありがとうございました。

(会場拍手)

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