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LINE株式会社(全1記事)

自社の「技術力」を伝えるには? LINE技術広報のイベント・ブログ・SNS活用術

2018年6月28日、Women in Technologyが主催するイベント、「LINE・mixiなどが語る!これからの広報とは?!」が開催されました。近年、広報担当者の役割は、事業企画チームの広報担当、エンジニアチームの広報担当、採用チームの広報担当など多岐に渡ります。そのなかで各々が最適なツールを利用し、最適なタイミングでさまざまな表現をしながら広報活動をしています。今回は、3つの違った立場の方々をお招きして、それぞれの広報はどのような活動をしているのか、また活動の目的やノウハウなどを共有します。本パートでは、「 LINEのエンジニア採用についての取組み」と題し、LINE株式会社の櫛井優介氏が登壇しました。

LINE株式会社で活躍する櫛井氏が語る技術広報の秘訣とは

司会者:続きまして、LINEのエンジニア採用についての取り組みを、LINE株式会社Culture Evangelistの櫛井様よりお願いいたします。

櫛井優介氏(以下、櫛井):今日はイベント名で女性だけなのかなと思ったら、意外と男性も多くて、なるほどといった感じですよね。ちょっとお聞きしたいんですけれど、「技術広報がうまくいってるよ」という会社さんはどれぐらいありますか? 

あっ、1社。なるほど。じゃあ、今日は多少意味があるトークができる気がしてきました。よろしくお願いします。こんな感じのアジェンダで、今日はお話しさせていただこうと思っています。

個人的には、このトークで話されなかったことを懇親会で聞きに来ていただけるのがゴールかなと思っているので、よろしくお願いします。言い忘れそうなので先に言うと、LINEは日本国内だと500人、海外拠点だと1,700人のエンジニアがいる組織になっています。社員数だとグループで6,000人くらいになっています。

ちょっと自己紹介をさせてください。櫛井といいます。通常941というアカウントでインターネット活動をしていまして、Twitterが始まった頃に、このアカウントを取っていて、数字3文字というのは世界的に欲しがられるので、週に1回ぐらいパスワードリセットのメールがくる感じでつらいやつをやっています(笑)。

私は2004年からライブドアという会社におりまして、その頃からWebディレクターとしていろいろやっていたので、もしかしたらお会いになったことがある方もいらっしゃるかと思います。

その後、ライブドアが買収されて、NHN Japanという会社になりました。その頃から、技術の文脈で広報活動をしてきました。2013年の4月からLINE株式会社という会社になっておりまして、(そこで)技術広報をやっていたのですが、2018年の3月から、Culture Evangelistをやらせていただいています。

「Culture Evangelistって何をしているの?」というと、技術という文脈でLINEという会社をポジティブに紹介していくところと、あとは採用みたいなところをやっている感じです。

2004年からもう14年ぐらいいるので、社歴でいうとけっこうベテランなのですが、社長が変わったり会社が変わったりで、転職していないのに3社目みたいな、よくわからない感じになっているところです。

グローバルに活動するDeveloper relationsチーム

櫛井:(スライドを指して)プライベートでは、こういうブログ(941::blog)をやっていまして、いろんな会社に行ったブログを書いてます。実はここのmixiさんにおじゃましたこともあります。これも2004年からやっているブログなのですが、140社くらいに行っています。

あとは技術系のこういうイベントに行って、わりと趣味でイベントレポートを書いていました。

「行ってきた」というのは、名前だけはすごく有名なのですが、155記事ぐらいありまして、行った会社でいくと140社ぐらいですね。関東近郊が多いんですけれど、遠いところだと北海道の十勝、国外だとベトナムのハノイにご招待いただいて行ったことがあります。

PVは840万PVとかあるのですが、仕事が忙しいとやらないので、更新頻度はまちまちという感じでやっています。自分で言うのもなんですが、けっこうおもしろいので、ぜひ見ておいてください(笑)。軽いノリなのでスッと読めると思います。

まず、Developer Relationsチームは何をやっているのというところで、(スライドを指して)こういう感じでやってますと言いたいのですが、ごめんなさい、これは嘘です。

これはイベントをやったときのものなので、実際に日本はこういうチームでやっています。ここで「いいね!」をやっているのが、うちの会社のCTOの朴イビンというのですが、彼女の直下のチームでやっています。

開発組織が日本と韓国とベトナムといろいろあるのですが、それらすべてに関わっているCTOの直下なので、やる範囲はすべてという感じになっています。後で説明しますが、チームとしては技術広報的なことをやっているのが私ともう一人います。

あとは、developer advocateとかTech Evangelistというものがいて、マネージャがいて、という感じなので、実は本務としては、これをメインにやっている人は7人ぐらいのチームです。あとは他のプロジェクトのEvangelistとか人事とかPRとか、そういったところのメンバーも一緒にいるので、国内だとこういう感じです。

自社製品に繋がるあらゆるものを広報する仕事

櫛井:(スライドを指して)これは2ヶ月ぐらい前に、韓国で開発者が1,000人集まってやる大きなイベントをやったときに、われわれのDeveloper Relationsチームで集まった時の写真です。

いろいろいるんですけれど、タイ、台湾、ベトナム、韓国、日本みたいな感じでやっていて30人ぐらいですね。そういった規模感のチームでやっています。

基本的には日本での活動が一番活発なので、われわれの活動の結果やノウハウを他の拠点の人たちにもフィードバックをして、彼らが現地でイベントをやりたい時には、われわれがコンサル的に入っています。

「もうちょっとこういうふうにやったほうがLINEらしさが出るんじゃないか」とか、「現地でこういう感じだったら、こういう雰囲気の企画をしたらどうか」とアドバイスをしています。

社外に向けては、LINEが使っている技術に興味を持っていただいたり、さらに知ってもらったり、あとは今はAPI( Application Programming Interface)やSDK(Software Development Kit)を出してますので、それを使って外部の開発者の方にいろいろ開発をしていただいています。

さらに、その延長上で採用みたいなところもやっています。外向けでいくと、いわゆるイベントをやったりブログを書いたり、そういう広報活動をしているところです。

あとはAPIとかSDKを使っていただいて、外部の方に開発をするチャンスを提供するという、大きく2種類の露出をしています。社内に向けては、けっこう組織も大きくなっていて、チームと部署で使っている技術はけっこう違う場合もありますので、社内的にもっとノウハウを共有する会を作ったりしています。

登壇する機会は世の中にはいっぱいあるんですが、普通に働いているとなかなか気づかないこともあるので、われわれのほうでその登壇のサポートもしています。あと、これはけっこう大事なのですが、エンジニアとして働く環境をより良くするところには、エンジニアの文脈での不満があります。実はそれが、一般的な社員と違うことが多いと思うんですね。

そこら辺をキャッチアップして、「エンジニアが偉いからこうすべきだ」ということではなくて、よりみんなが気持ち良く働けるように、「エンジニアに限ってはこういうことをしたいんだよ」ということを、総務など他の部署にロジカルに伝えて調整しています。

LINEはいかにして技術の認知を広めていったのか

櫛井:技術広報の目的ということで、(スライドを指して)一応概念図みたいな感じで持ってきてはいるんですけれど、これがLINEのプラットフォームで、こっちにわれわれのチームがあります。

外部の開発の方から「もっとこういうふうにしたほうがいいんじゃないの?」というフィードバックをいただいて、自分たちのプロダクトをより良くして、いい感じにするみたいな図にしたのですが、ちょっとわけがわからないので飛ばします。

LINEが行ってきた技術アウトプットの経緯ということで、どや顔で発表しているように見えるかも知れませんが、最初からできたわけではないです。ちょっとご覧いただきたいのですが、話は2014年ぐらいまでさかのぼって、実は4、5年かけて下地を作ってきました。

2014年に何があったのかというと、プロダクトをガンガン作ることで、より多くのユーザーの方に使っていただくことを最優先にしていたので「情報共有とかアウトプットしている暇があったら、プロダクト作れや」みたいな雰囲気が社内にありました。

当時はけっこう控えめで、とはいえ、けっこう採用では苦労していて、「LINEって実際に中がどうなっているのかぜんぜんわからないですよね」ということを言われたりしていました。

2015年は「LINE DEVELOPER DAY」という、わりと大きめな技術イベントをやって、「けっこうイベントとか気合入れてやってますよね」とは言われるようになりました。

でも、当時はまだ自分たちの会社で使っているようなオンプレな環境で、かつ社内的に独自で開発しているものがかなり多かったので、外部のデベロッパーの方に触っていただけるようなものはなかったんですね。

なので、当時は「こんな感じでやっております、というのがわかっていただけましたね?」という感じでやっていました。2016年はブログやSNSを本格化して、これからアウトプットもがんばっていきましょう、という話をしました。

その時は「LINEさん、最近けっこう、ここら辺の領域がんばってますよね」とか「ここら辺のOSSがんばってますよね」という声をいただけるようになりました。

2017年には、だいたい今の体制を確立できまして、けっこうアウトプットをがんばっているので「あの記事読んだので、なにか一緒にやりましょう」みたいに声をかけていただくことが多くなってきました。

自分のやりたいことを勝ち取って会社の制度を変える

櫛井:何をしてきたかというところで、ブログ執筆をけっこうがんばっていたので、ここら辺は細かいノウハウをお伝えしようかなと思って持ってきました。ブログはけっこうコントロールしやすくて、枯れたツールなので使いやすいのですが、以前はけっこう大変でした。

まず社内の運用ルールがすごく厳しくて、以前は「どや!」みたいな、「うちマジ完璧っす!」みたいな内容じゃないと、基本(ブログに)出しちゃダメみたいな感じだったんですね。

しかも、「言語は日英韓中で同時に出す」という謎のルールがあって、それをやっていくと、こう書くじゃないですか。「そもそもこのトピック出すんだっけ?」みたいな話から、途中でPRのチェックとか、あとはテキストとしてのチェックとか、セキュリティや構造レビューなどがいろいろありました。

例えば、日本語ではOKなのに、「韓国語では問題があったからまだ出せません」みたいな。「何だそれ」ということがあって、当時は執筆してから掲載まで3ヶ月かかるような話もありました。

これに対して、「マジかよ」と思っていました。僕は個人的にもブログを書くので、やっぱり基本的に書いたらすぐに出したいんですよ。勢いがすごく大事なんです。なので「これはもう止めてくれ」という話をしました。

日本においては、私がPRやセキュリティのチェックを全部するので、基本的には「日本は日本でやります」と。「良さそうなものがあったら、韓国語とか中国語で勝手に翻訳したらええやん」みたいな話を取り付けて、体制が変わりました。

(スライドを指して)今はこんな感じで書きますよね。上長に見てもらって、私のほうでPRとかセキュリティチェックして、ブログとしての体裁が整っているかをプレビューしたら、もう公開です。これで超速くなりました。良かったです。

シンプルにすることで執筆者の負担を軽減して、内容も「どや!」みたいな感じでなくてもよくなりました。ノウハウとか、「最近こんな感じだよ」みたいな軽いノリもぜんぜんOKにしました。

あとはスタイルガイドですね。例えば1を全角にするのか半角にするのかとか。またそういう細かいことも、実はエンジニアの方は気にするので、スタイルガイドも用意しました。

ここで言いたいのは、人生は戦いなので、ぜひ自分のやりたいように、みんなが自由になれることを交渉して勝ち取ったらいいんじゃないかなと思っています。

大規模なイベントを定期開催してフォロワーを増やす

櫛井:次にSNSの強化をしました。ブログはまとまった情報を書くところで、SNSは拡散するツールという認識です。なので、TwitterとかFacebookとかをやっています。Twitterは2016年の3月から開設したので、約2年でフォロワーが5,000人、今は5,100とか5,200とかいると思います。

オフィシャルマークも付けていただいてやっているのですが、これはちょっとコツがあります。「デベロッパー向け情報“など”をご案内する」としているんですけど、この“など”を書いておくと、わりとふんわりしたこともツイートしてOKになるので、ぜひやってみてください。

ただ、Twitterをやっているだけだと、ぜんぜんフォロワーも増えないんです。みなさんもご経験があると思うのですが、増やすためにイベントをいろいろやっています。さっきも出てきましたけど、「LINE DEVELOPER DAY」というイベントは年1回やっていまして、1日で1,000人ぐらいのエンジニアに参加していただけるような大きいイベントになっています。

そのイベントの担当を私がしているのですが、あとはミートアップを定期的に開催しています。これはお題を決めて、LINEのエンジニアと外部のエンジニアをお呼びしてご参加いただくものです。

あと、LINE BOT AWARDSというのは、うちが提供しているSDKとかbotのシステムみたいなものを提供して、それを使っていただいて、(優勝)賞金1,000万円という。わりと派手なことをやっています。

イベント支援やスポンサーも技術広報の視点で行う

櫛井:それから、Bootcampはけっこう地道なやつで、「うちのSDKを使ってなにか作りましょう」ということをしています。「みなさん、ターミナルを開いて一緒にやりましょう」みたいな、本当に初心者から一緒にできるものも地道にずっとやっています。こういったところを丁寧につぶやきながら、ブログにまとめながらという、かなり地道な活動をしています。

これは、去年の「LINE DEVELOPER DAY」なんですが、去年は渋谷ヒカリエでやりました。京都オフィスをオープンするよとか、海外はこんな感じでやってるよ、というのをやっているところです。

まさに今日、「LINE CONFERENCE」がありまして、これはマーケッターや営業の方向けの事業戦略発表みたいな会で、今の時期にやっています。LINEでは年に2回、「LINE DEVELOPER DAY」という開発者に向けのイベントと、「(LINE) CONFERENCE」を開いているということですね。

次にイベント支援ということで、これは社員が関わっているコミュニティとか、(スライドを指して)例えばこういう勉強会などの支援をやっています。これは直接的になにか効果が出るわけではないのですが、やっぱり、知らない人たちと出会う大きなチャンスでもあるので、これも地道にやっているところです。

次にスポンサーですね。これは2017年にやった実績なのですが、けっこう大きいものから小さいものまでやっています。予算をけっこうかけてやっているのですが、ただロゴがドカーンと出ているだけだったら、けっこう感じが悪いかなと、私個人としては思っています。

なので、出るならちゃんとブースを出したり、あとはLINEとそのイベントに関係があるブースを出すようにしています。今年はもうちょっとスポンサーする数が増えているのですが、そういうのをやったりしています。

「技術力」と聞いて誰もが思いつく会社を目指す

櫛井:結局、技術広報としてのゴールはなんなのかなというところですが、単純に言えば「技術力が高い会社と言えば?」という質問で名前が挙がることが、われわれとしてのゴールかなと思っています。ただ、その「技術力って何?」というところが、けっこう難しいと思っていて、私もわからないところがあるんですね。

何をどうしたら、一般の方や同業の方に「あそこは技術力が高いよね」と言われるのか正直わからないんです。例えば、アンケートを定期的にとって、「その数字が上がりましたよ」というのでもいいのかもしれないですが、アンケートをとる対象は毎回変わるわけじゃないですか。じゃあ、私たちはそこを信じてやっていけばいいのかはわからない。なので地道にやるしかないかなと思っています。

あとは、実際に使うことはないけれど、パッと見、めちゃくちゃすごい技術みたいなものが世の中にあるじゃないですか。何かと何かを組み合わせたら、自動的に何かが生成されるようなものがあるんです。

それはどこで使うのでしょうということがあるんですけれど。ただ、やっぱり、そういうものを作るのに社内のリソースは投資できないので、地道にやるしかないかな、という話を今日はしたかったなと思います。

これでもう終わりなのですが、今日話せなかったこととしては、社内連携をどうしているのか。(LINE株式会社は)けっこう組織も大きいので、「実際に他のメインの広報チームとどう連携しているの?」みたいな話はたぶん気になると思います。

あとは予算をどう作っているのか。それと、今日のタイトルにあったエンジニア採用に対する取り組みも、実際に喋れていないと思います。あとで時間があったら質問していただけたらなと思っています。結局、採用については、個人的にはやっぱり「タイミングがすべて」だと思います。

タッチポイントを増やし続けて、転職しないといけない状況になったり、今の職場が調子悪いなと思ったときに「LINEっていい会社みたいだから、話だけでも聞きに行ってみようかな」と思っていただいたり。

そういうタッチポイントを増やすことをひたすらやり続けるのが、今やれることかなと思って取り組んでいます。どうもありがとうございました。

(会場拍手)

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