2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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孫正義氏(以下、孫):では次に、医療の産業を見てみましょう。
医療では、今までは人間が聞く「問診」でした。ただ聞いて、医者が判断すると。現在は聞いての判断ではなく、レントゲン、CTスキャン、MRIといった機械や医療機器を使って、人間のドクターが映像を見て判断しています。しかし、これからの医学は予防医学で、人間のドクターが見て判断ではなくて、AIがデータを見て判断すると。
例えば癌の事前予測、早期発見、進捗といったものを、AIがピンポイントで判断する。「これは人間業では無理」というようなところまでできるようになるのです。つまり現代の医療では、症状で判断して、人間が薬を作って、一般薬として大勢の人々に同じ薬を発行するのですが、これからの医学は予防医学としてDNAで判断するということです。
つまり、顔色を見て判断するのではなくて、DNAを見て判断する。DNAは記号の羅列でできているわけですから、人間がDNAを見てもわかりません。記号の羅列の中で、DNAのどこにミスや異常があるか。そんなの人間の目で見て判断するのは不可能です。これはAIだからできるわけです。
人間が試験管で薬を作るのは偶然の発見によるものです。ノーベル賞を取るような薬を発見したいろんな人に「どうやって発見しましたか?」と聞いたら、「偶然でした」というのがほとんどです。偶然で薬を発見したというのが今までの創薬の大半の現実です。しかし、AIは偶然で薬をつくるのではなくて、機械的に片っ端からあらゆる組み合わせを、より素早くテストして、薬を見つけ出していきます。
しかも、何万人、何十万人向けの薬ではなくて、テーラーメイドのあなた向けの薬です。あなたに副作用が一番少なく、あなたに一番効く効果的な薬を開発して提供する。こんなことは人間業では無理です。AIだからこそ大量の異なった薬を、一人ひとりの症状、DNAを判断しながらピンポイントで、患者ごとに提供する。こんなことが可能になるわけです。
孫:その最先端の会社の1つはGuardantですが、今日はたまたま全体のいろんな都合で呼んでいません。私はGuardantについて喋りだすと(止まらず)、48時間ほどやりたいんです。
(会場笑)
そうすると、みなさんはスケジュールに困るでしょうから、今日は圧縮しています。Guardantは、全米の血液を使ったDNAによる癌の診断、リキッドバイオプシー、血液を使ってDNAで癌の早期発見、癌の現状の状況分析をすることの80パーセントのマーケットシェアを持っている会社です。
ソフトバンクが数百億円というお金を投入し、今、AIのエンジニア、データサイエンティストなどを一気に増やして、進化させています。いろんな癌の診断、早期発見、あるいはピンポイントの発見に対して、このDNAとAIをマッチングさせる最先端の会社です。
もう1つ(今日は)、自分の子どもが熱を出したとか、あるいはいろんな症状が起きたとしても、AIで効率よく診察してもらえる「平安グッドドクター(Ping An Good Doctor)」というサービスをご紹介します。
AIによって、個別に、かつ効率的に、24時間365日、より安くより素早く待ち時間なしで、いつでもスマホで安心して診てもらえます。今日は平安グッドドクターも来てくれていますので、プレゼンをいただきたいと思います。
(会場拍手)
Oliver Wang氏:ありがとうございました。みなさま、おはようございます。Oliver Wangと申します。
4年ほど前、私も含めて一握りの人間が、「平安グッドドクター」というサービスを創設しました。人々はショッピングも、食べ物の注文、タクシーなどの配車もオンラインでできます。ところが、病気になるとどうでしょうか。
オンラインで、医療サービスも提供できればというのが我々の願いでした。その願いを実現するために、「平安グッドドクター」を創設しました。中国では、毎日2,000万人近い方々が病院に行って、医師の診察を受けています。そのほとんどが、トリプルA(三ツ星病院)といわれる総合病院に行きます。
ところが、中国にはそういった総合病院が1,000弱しかありません。たぶんここにいらっしゃる方々には中国における患者の苦痛を想像できないと思います。そこで、短いビデオをご紹介したいと思います。5月にIPOをしたときに、投資家にお見せしたビデオでございます。
(動画が流れる)
中国の医療が抱える問題を表している2つの数字をご紹介したいと思います。まず、大きな病院で平均的な患者がお医者さまに診察をしていただくまでの待ち時間は、平均で3時間です。ところが、実際の診察時間は3分間弱という驚愕する数字です。
その理由は、中国では、慢性病、一般的な病気などでも、ほとんどの人が病院にかかるからです。中国では、いわゆるかかりつけ医、ファミリードクターはなく、病院の、それぞれの診療科ごとに医者が働いております。ということで、中国では、かかりつけ医が約30万人不足していると思います。
では、この問題をどう解決したらいいのか。従来の問題解決のために、より多くの病院を建てて、より多くの医者を育成したとしても、向こう10年~15年は、ほとんど改善が見られないでしょう。
我々の考えたソリューションは「インターネット」プラス「AI」でした。まず最初に、専任ドクターのチームを作ります。トリプルAの総合病院でトップの医師に加え、一般の開業医の優秀な方々を集めました。
患者は単なる医者に診てもらいたいのではありません。良い医者に診てもらいたいんです。地方に住んでいる人、あるいは小さな町や村などに住んでいる人にとって、良い医者にかかることは非常に難しいことです。
そこで上海・北京・広州などのトップの医師を我々の専任ドクターとして、オンラインで患者にサービスを提供するようにいたしました。
現在、このような専任ドクターが中国5ヶ所に1,000人近く所属しています。我々がオンラインで提供したいのは、待ち時間ゼロのサービスです。24時間365日対応できる待ち時間ゼロのサービスを目指しています。
専任ドクターのKPIは顧客満足度です。毎日診察できる患者の数、問診の数、処方箋の数ではありません。3年経って、このプラットフォームには約2億人近い登録ユーザーがいらっしゃいます。我々がこれだけ多くの患者にサービスを提供できるのは、「AIファミリードクター」というインハウスのAI技術を開発したからです。
AIファミリードクターが、人間の医師をサポートしています。つまり、人間の医師が従来の病院よりも5倍近い効率で働くことができるようになっています。
従来の病院ですと、毎日診察できる患者の数は最大100人です。しかし、AIファミリードクターを使ったオンラインのサービスなら、毎日500人近い患者を診察することができます。
AIファミリードクターは、生身の人間の医師が症状を収集して診断・処方箋の提案を行うのをサポートします。これは、パイロットに提供したオートパイロット機能と同じサポートの機能です。また、AIによって、医師が非常に完ぺきな、救急救命隊を利用するのと同じことを可能にします。
我々は患者と医師との間のすべてのやり取りを全部記憶しています。過去3年間私どもは中国全土で3億以上の診察をオンラインで提供しています。そして毎日、診察件数は37万件を超えております。
人々の医者へのかかり方を変えるだけでなく、ファミリードクター、かかりつけ医が病気に対応するだけでなく、私どもは「平安グッドドクター」の健康相談サービスを通じて、各家族の健康を増進することを目的として活動しています。
でも、それを我々が単独でやることはできません。エコシステムを作ることが大切になります。私どものエコシステムは、4万の外部の医師とつながっています。また、3,000以上の病院と提携しています。2,000以上の医療機関とも提携しています。全国で1万の薬局と提携し、診察してから1時間以内に処方箋を出し、薬品を配送するサービスを実現しています。
我々のビジョンは、すべての家族に専属のかかりつけ医サービスを提供すること、すべての人に健康管理の電子記録を提供すること、そして中国のすべての人に健康管理プランを提供することです。
ありがとうございました。
(会場拍手)
孫:みなさんご存知かもしれませんが、平安グループは保険会社として世界最大の時価総額の会社です。時価総額20兆円を超える世界最大の保険会社がAIドクターを作りました。
2億人の登録顧客をすでに持っていて、1日あたり40万回近くの診断をしている。すごいことですね。AIドクターだからできるんです。1日当たり40万回のコンサルテーションを、人間でやろうとしたらいったい何人のドクターが必要になるかと。多すぎて不可能ですよね。それがオンライン上で行われているわけです。
僕はチェックしていませんが、おそらく今でも、日本ではオンラインで処方箋を発行することは法律で禁止されているんだと思います。それを今すでにやっているわけです。コストが下がり、人々が助かっているわけです。それで実際に死なないで済んだ子どもたちもお年寄りもたくさんいるはずです。
人々にとってよいことなのに、従来の薬局を守ろうとか、従来のタクシー会社を守ろうとか、従来の何々を守ろうということで、未来を放棄している国に未来はないと私は思うんですが、法律で禁止して、未来が近寄れないようにしてしまっている。
実際に中国ではオンラインで処方箋が発行できて、今言ったように2億人も登録ユーザーがいて、1時間以内に薬が家に届くと。24時間365日、家族に異変が起きても、AIのファミリードクターが、自分の家族の病歴を詳しく知っていて、的確にアドバイスをしてくれると。
そしてさらに、必要ならば実際の病院に入院のためのベッドの確保だとか、担当の医者の確保をオンラインで全部済ませてくれると。そんなサービスは日本にはないわけです。今から世界中でこういうことが起きてくると。
AIのドクターとしては、今おそらく中国のPing An Good Doctorが世界一進んでいると思います。こういうことがこれからもどんどん起きていくということです。
Daniel Ammann(ダニエル・アマン)
General Motors Company President
Eric Xing(エリック・シン)
Petuum CEO/カーネギーメロン大学 教授
Jean Qing Liu(ジーン・リウ)
Didi Chuxing President
Oliver Wang
Ping An Good Doctor Chairman and CEO
Vijay Shekhar Sharma
Paytm/One97 Mobility Fund/One97 Communications Limited Founder
Wayne Xu
ZhongAn International / ZhongAn Insurance COO
孫正義
ソフトバンクグループ株式会社 代表取締役会長兼社長
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“AIを誰もが使えるものにしたい” 孫正義氏も支援するAIスタートアップCEOが、そのヴィジョンを語る
"信号の変わるタイミングをAIで最適化すれば、渋滞はなくせる" Didiが掲げる「交通プラットフォーム」思想とは
自動運転技術のビジネスチャンスはダウンタウンにある ソフトバンクと手を組んだGMが目指す信号機のない世界
病院の支払いを、医療保険からダイレクトに行えるように 1年でインド最大の金融網をつくったPaytmの展望
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