2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
基調講演 宮内謙(全1記事)
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宮内謙氏:ソフトバンクの宮内でございます。日頃はみなさまに大変お世話になっております。ソフトバンクのサービスあるいは製品をいつもお使いいただいていることに、この場をお借りして心から御礼申し上げます。
(冒頭に流れた「情報革命」の動画を指して)先ほどのビデオについて「なんか思わせぶったビデオだな」と思われたかもしれませんが、デジタルトランスフォーメーションがまさに今、起ころうとしてると。今日は私がテーマに掲げてるのは「The Power of Data」です。
実は今思い出したのですが、4年前にですね、Alibabaのジャック・マーにここで講演してもらいました。ジャック・マーがあの時に言ったことを今も思い出します。
「第1次の産業革命は石炭によって起こった。その後、石油、オイルで世界中にカーメーカーが出てきて、そしてどんどん発展していった。これからは、実はデータの時代だ。あらゆるものがデータになっていく。」
そんなことを彼が言ったのは、4年前です。実はソフトバンクとしても、5GのネットワークやIoT、AIなど、この4年で準備を重ねてきました。そして今年、これまで私が言いましたものが全部実現する年になってきてます。ですから、ジャック・マーは4年前から全部わかってたんだなと、すごいビジョンを持っていたんだなと思います。
そんな中、今日みなさんにお話したいなと思っているのは、「あなたの会社のデジタル化はどれぐらい進んでますか?」ということです。さっきの冒頭のビデオでもありましたが、普通の会社でいえば、20億のクライアントといいますか、そういったプロジェクトが入ってきた時にどうすればいいか。
デジタル化を単に情報産業の話だけではなくて、どれだけみなさんの企業が、一般のすべてのインダストリーがどうデジタル化をしていくかが非常に重要だと。それによって、まさにデジタルトランスフォーメーションをする。「デジタライズする」と言ってもいいかもしれません。
デジタルデータといっても、従来の一般的な統計データであったり、販売データであったりと、いろんなデータがあります。でもこれからは、まさに五感といいますか、触覚、視覚、臭覚、味覚。あるいは、マインド、心。あるいは、行動データ、趣味嗜好。すべてのデータをデジタル化できる、それだけの技術的な進歩が、実はもう完全にできあがってます。
先ほど言いました5Gのネットワーク。ネットワークのコストは、この10年でかなり安くなりました。ちょうど10年前、日本でiPhoneを僕らが発売しました。
2008年でしたね、あの時。で、2018年。まさに10年で、全員のポケットあるいはハンドバックに、スマートフォンが入ってる時代がやってきました。生活の中で、一般のエンドユーザー全員がデジタルデータをベースに毎日を過ごし、毎日のビジネスをする。そんな時がもうすでにやってきてます。
でもそれ以上に、五感に関わるようなデータであり、センサーであり、CPUであり、ネットワークであり、膨大なデータをストレージするもの。そういったものがすべて、高速で超安くなった。これが現実のテクノロジーの進化であります。
これからいろんな方々にもご登場いただきますが、私が申し上げたいのは、みなさんの企業の中でデジタル化をもっと進めて、そして、デジタルトランスフォーメーションをどうしたらできるかということを、自社のことを考えながらぜひ聞いていただければ、少しは参考になると私は思ってる次第です。
1つ、この10年間でもうむちゃくちゃ成長した、まさにWinner Takes Allの典型例の企業であります。「FAANGAT」という、この7社。みなさんもうご存知のとおり、釈迦に説法ですけども、Facebookであり、Apple、Amazon、Netflix、Google、そして、AlibabaとTencentであります。この7社、圧倒的な強さを持ちました。一言で言うと、彼らはデジタルプラットフォーマーと言って過言じゃない。まさにプラットフォーマーになった。
みなさんもご存知のように、メトカーフの定理という言葉を聞いたことあると思うんですけれども、ネットワークの価値というのは、ユーザーの数が2倍に増えるとその2乗、4倍の価値が出る。このプラットフォーマーは、例えばFacebookでは20億人の顧客がいる。20億人の顧客というこの数、これが膨大な価値を生み出してるわけですね。
例えばAmazonとかAlibabaも、eコマースの世界で膨大なトランザクションが起こってる。このトランザクションの価値というのは膨大なものであります。まさにプラットフォーマーになる。ここにいらっしゃるみなさんの企業も、産業別のまさにデジタルプラットフォーマーになるというふうに、ぜひ推論しながらお話を聞いていただくと、役に立つんじゃないかなと思ってます。
結果として、彼らの価値は100兆円を超えました。1番のApple、それをグワーッと猛追してるのがAmazonであります。Microsoftも80兆ぐらいになってますけど。ちょうど2007年、アメリカでiPhoneが発売されて、2009年はリーマンショックがありましたが、その後完全に、スマホの普及とともに彼らのビジネスは大きくなりました。
何を言いたいかというと、これ実は、まだIoTの時代じゃない方々です。今から、まさに先ほど言いました、5Gのネットワークがやってきます。後で宮川からもIoTの話をします。IoTが動き出すということは……。
彼らの大成功は、スマホとヒトとがつながるネットワークの価値が、彼らのマーケットキャップを大きく押し上げたことによるもの。次に出てくるのは、モノとモノ、モノとヒト、モノとロボット。まさに幾何級数的なデータのボリュームになってきます。そんな時代がやってくる。
私は先々週、Alibabaに行ってきました。まあ、ちょこちょこ行ってるんですけど。ここから話すのは、まさに「データをベースにみなさんのビジネスを再定義しませんか?」というものです。僕がつくづく思っているのは、先ほどAlibabaに行ってきましたと言いましたけれども、実はもう中国はアメリカを越すぐらいの進化をしているということですね。
もうペイメントからなにからすべて、デジタルトランスフォーメーションという意味では、もう完璧に中国が1番になってます。まあ、あんまり言うと、トランプさんといろいろやってますからややこしいんですけれども(笑)、その話を私は少し冒頭にしてみたいな、という思ってます。
(スライドを指して)ソフトバンククラウドという、アリクラウドを日本でやっており、これはそのデータです。昨日のこの会場の人流データを可視化をしたものです。
それから、eコマースの販売ダッシュボードというのを、Alibabaではよく使ってます。我々もソフトバンククラウドとして、小売業などのいろんな企業の、幹部のみなさんの机の前では、毎日リアルタイムですべてのデータが出てきます。
売上のランキングはどうなってるか、あるいは、実績、出荷待ち数、達成率、チャネル別の売上、そして、商品顧客分析。こういった売上データをダッシュボードで可視化する。ソフトバンククラウドでは、これもすぐに提供することができるんです。
例えば製品の検査状況。これは製品を画像認識して、そのデータで、どの半導体が不良品なのかを分析する。あるいは交通データ。その地域の総車両数、渋滞あるいは危険運転など、ビヘイビアのチェックです。
デジタルデータというのは定量的なデータだけではありません。そういったビヘイビアのデータや、あるいは平均速度、中央道路の渋滞状況、違反、規制、こういったデータをすべて可視化する。これがまず、ファーストステップのデジタルトランスフォーメーションだと私は思っております。
驚きました。Alibabaグループのデータ量は1,000ペタバイトです。1,000ペタというのは、これはもう本当にすごい。我が社に帰って「うちはなんぼぐらいだ?」って言ったら、「1ペタだ」とか言うからガクッとしたんですけれども(笑)。
まあ、それでもけっこうなデータを使ってるわけですけれども、1,000倍だと。強烈なパワーです。それだけの過去のデータも含めた膨大なデータがあって、それを新しいことと組み合わせて意思決定するということができるわけですね。
Alibabaグループの時価総額とデータの量の推移ですが、まあ若干違うところもありますけれども、ほぼ一致している。何を言いたいかというと、データ量と時価総額は相関してるぞと。まあ、勝手に思ってるわけですけれども。それぐらいやっぱりデジタルトランスフォーメーション、デジタルデータがどれぐらい重要かということ表しています。
結果として、Alibabaは歳出として82兆円。そして、1日で2.8兆円、これは日本のヤフージャパンとか楽天が1年間かけてやるeコマースの数を、1日でやり遂げているということ。これをやるには、強烈なバックボーンのコンピューティングシステムが必要なんですね。
そんな1年間の分を1日でやったら、我々のヤフージャパンのデータは吹っ飛ぶかもしれません。……というか(笑)、まあ、そういうことはないようにがんばりますけれども。でも、本当にそれぐらいのオーダーが、秒単位で32万件処理すると。
だいぶ前、ジャック・マーは僕に言いました。「なんで独身の日にあんな大変なことやってるんですか?」と。「いや、将来、毎日これぐらいになるから、今から練習なんだ」と。「お!」とビックリしました。なるほどと。これぐらいのデータ処理ができるバックのシステムをつくっとかないと、明日が大変なことになると。「データが命だ」と言った理由が、だんだんそのあたりからわかってくるわけですね。
それで、オフラインもデジタル化がどんどん進んでいってます。スマート決済です。みなさんもご存知のように、日本は貨幣で……。貨幣というか、円。お金を使って買う人が大半ですよね。まあ、若干3割ぐらい、クレジットカードを使う人もいますけど。
アメリカと日本と中国。実はアメリカも大したことないですね、スマホの決済は。まあ、Apple Payとかいろいろありますけども。でも、ほとんどは中国です。Wechat PayとAlipayですね。
スマホでペイした瞬間、その人が何を買って、何時何分にどういう行動をしたか。全部デジタル化されるわけですね。カードで買ったり現金で払った場合は、一切データが取り込めないんですよ。売上集計データは出ますよ。でも、誰が、どこで、何を、いつ、そしてどんなかたちで買ったまではデータにならない。
中国のペイメントは全部これです。それも、それこそラーメン屋からなにから、全部このスマホで買えるわけですね。使えるのがスーパーマーケットの大きいところ、デパートだけですってことだと、そのデータは全然信用できません。昨日発表しましたDiDiでも、DiDiの配車のネットワークでは、どこで、誰が、どう使ったかがデータになります。これがさっきから言ってるデジタルトランスフォーメーションなんです。
顔認証も、先日試してきました。これも完璧にできる。次はデジタルデータです。人のビヘイビアだけじゃなくて、顔の認証まで取り込もうとしてます。地下鉄の券売機では、顔認証と音声認識の全部を合わせると、そのまま電車に乗れます。これも同じ話です。こうやって買いますと、どこで、何時何分に電車に乗って、どこまで行ったかという、全データがデジタル化されて格納されていきます。
そうしていくと、今度はスコアリングです。まさに、その人のビヘイビア、その人の過去の経歴も含めて。これは悪用すると大変なことになるんですけども、そういった意味で、信用力としてスコア化される。まさにインターネットの良さですね。
中国の銀行では、それこそ1秒で融資判断します。日本の銀行の方々は、融資判断っていうのはなんかこう紙に一生懸命書いて、いろいろチェックしてと。しかも、その融資判断もけっこう誤ったりする。デジタル化することによって大きく変わるということを、みなさんに申し上げたいと思います。
それによって、スコアが高いほど多くのサービスが利用可能になる。もうこれは、生活用品、自転車、生活用品、自転車、マンション、ホテル、消費者金融、レンタカー……あらゆるものがデジタルデータ化する。
デジタライズするっていうのは、なかなか難しいとみんな思ってますよね。でも、実はこういったものは全部デジタルデータとして格納されていく。そして、それがマーケティングマネジメントのツールとして使われる。一方で、ユーザーから見ると快適に買い物ができて、快適に過ごせる。ライフスタイルをつくれる。企業は快適なワークスタイル、まさに働き方改革までつながってくるんです。そういうことができる。
日本で僕らがトライしてるのは、みずほ銀行さんとつくりました「J.Score」です。これはビッグデータとAIで行なうスコアリングですが、ヤフーのECデータと、実際のみなさんのスマホの行動データを組み合わせることによって、より精度が上がってきています。
スコアの高い方は、一瞬で、1パーセントを切るような金利で1,000万まで借りることができる。こういったレンディングサービスもスタートしました。
あとは、Alibabaが提唱するニューリテール。これはですね、今日これを詳しく述べるパターンじゃないんですけど。何を言いたいかというと、オフラインのところも実はオンラインにできる、っていうことなんです。
冒頭に言いました、デジタルデータを集積していくということ。来店日時、滞在時間、嗜好、興味を持った商品……あらゆるそういった注文履歴、あるいは問い合わせ内容。これが、今から始まるデータをベースにしたデータセントリックな経営のあり方だと、僕はつくづく思ってる次第です。
実は、それを成し遂げてるのはAlibaba Cloudです。データセンターを構築して、そこでソフトウェアを開発する。こいうのがすべて、Alibaba Cloudは自社の膨大な1,000ペタというデータを駆使しながら構築してきました。そして、IoTデータも収集するというところに突入して、今現実にやってます。
ですから、過去のデータだけじゃなくて、カメラで撮ったいろんなデータ、ドローンのデータ、家電など、今まで考えていたデジタルデータの領域をはるかに超えて、すべてをデジタル化するということ。そして、そのデータをどう分析・収集し、企業の活動あるいはユーザーの活動につなげるか、これを成し遂げます。
そこで私は、キャプテン・クー(をお呼びします)。彼はキャプテン・クックとかクーとか呼ばれてるんですけども、実はAlibabaグループの、Alibaba Cloud IoTビジネスのCEO、総裁です。私が前段だいぶ詳しく言いましたけども、それについて彼が今から話してくれます。
Captain, come here!
(会場拍手)
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