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Program3:ビジネスコミュニケーションを壊す!〜名刺や会議がいらないコミュニケーション〜(全2記事)

日本のビジネス慣習はムダだらけ テクノロジーの専門家らが語る、名刺と会議の“新形態”

2018年5月21日、メルカリの研究開発組織『R4D』によるイベント「“破壊”からはじめよう 〜 こわして、つくる、新しい未来。」が開催されました。「新しいものを生み出すための破壊」に着目し、テクノロジー分野の研究者らが、より良いビジネス環境の実現のために議論を交わします。Program3となる本パートでは、「ビジネスコミュニケーションを壊す」と題し、VRやロボット、AIなどのエキスパートが登壇。本パートでは、日本独自のビジネスコミュニケーションの例を挙げ、問題提起と新たなアイデアについて語りました。

VRエヴァンジェリスト・GOROman氏

藤井創氏(以下、藤井):すみません、お待たせしました。かわいい女の人の後に、むさい男ばかりなのですが。

あと、やる前に一応は言っておこうと思うのですが、今までR4Dのメンバーの方が出ていたので、かなり中の話が聞けたと思いますが、ここにいるメンバーは全員、まったく関係がありません。誰ひとりとしてR4Dの人はいませんので。

アンケートを見てみると、メルカリのR4Dのことを知りたいといったことがいろいろと書いてあったので、その期待には添えないかと思います。むしろメルカリをディスるようなことをしゃべるかもしれませんので。

(会場笑)

もしかしたらということもありますが、それも一応、楽しみとして聞いてもらえればと思います。では、第3部を始めさせていただければと思います。第3部はビジネスコミュニケーションを壊す!というお話になります。

登壇者の紹介をさせていただきますが、まずはGOROmanさんです。GOROmanさんは、ご存知の方も多いと思いますが、VRエヴァンジェリストというか “Oculusを日本に持ってきた人”というと一番わかりやすいでしょうか。HMDをかけていることを見ればわかりますが。

近藤義仁氏(以下、近藤):今、VRの中でNetflixのアニメを見ながら登壇中です。

藤井:今、見ているのですか?

近藤:はい、見ています。ガンダム。『逆襲のシャア』。

近藤:見えない?

藤井:見えない。

(会場笑)

近藤:昨日もちょうど、電子書籍のお祭りのような「マッハソン」をやっていて。「マッハ新書」というものを、いろいろと出しているのですが。

藤井:この『全ての出版社は多分潰れる』をマッハで書いたのは、飛行機の中でしたっけ?

近藤:これは、僕がスイスに行く飛行機の中でネットがつながらなくて頭にきて、12時間で書いた本です。1,005冊売れて、150万くらい売り上げたのかな。ピクシブBoothで、ぜひお買い求めください。1,000円です(笑)。12時間で書いて1,000円で売るという(笑)。

藤井:私も今まで出版社にいたので、この話題はすごく気になるのですが、別の話になっちゃうので、今回はちょっと。

近藤:でも、破壊の話じゃないですか。

藤井:破壊ではありますが。

近藤:テーマは破壊だと思って、Oculus Goをサザビーにしてアクシズ落とすつもりで来たんです。

藤井:では、後の方でちょっと(笑)。という感じのGOROmanさんです。

ロボスタ編集長・望月亮輔氏氏

藤井:次が望月さん。「ロボスタ」という、ロボット関連のWEBメディアの編集長が、今回はロボットの方として登壇してくださいました。

望月亮輔氏(以下、望月):はい。会社は人間が15人で、ロボットが70体以上いるという(笑)。けっこう異常な会社です。

(会場笑)

藤井:ロボットのWEBメディア以外にもいろいろとやっていらっしゃるんですよね。

望月:そうですね。ロボスタを中心にいろんなコンサルティングや、その他ロボット向けのサービス展開もしています。

藤井:そのへんも聞いていければと思います。

リードAIリサーチャー・三宅陽一郎氏

藤井:一番奥の三宅さんはゲームのAIの方です。三宅さんは『人工知能のための哲学塾』という本を出していまして、私も2冊買って読んだのですが。

人工知能のための哲学塾

あ、GOROmanさんも『ミライのつくり方2020―2045』という本を出していますね。

ミライのつくり方2020―2045

近藤:買ってください!

藤井:これ(『人工知能のための哲学塾 東洋哲学篇』)もそうですね。これは人工知能の哲学的な話でおもしろいのですが。

『人工知能のための哲学塾 東洋哲学篇』

三宅陽一郎(以下、三宅):三宅です。ゲームの人工知能、キャラクターの人工知能、敵のモンスターの人工知能などを設計して作っています。

こちらはプライベートなイベントですが、「人工知能のための哲学塾」といって、人工知能を作るための足場づくりを、西洋哲学と東洋哲学から考えていこうとしていて、今年も第3部をやる予定でいます。

藤井:私も読んでいておもしろいと思ったのは、「そもそも知能とは何か、人間の知能とはなんなのか」というところを考えている感じがすごくして、今までの人工知能ネタのAIだけの話ではないというところです。ぜひお買い求めください。

老舗PC雑誌「I/O」元編集長・藤井創氏

あまり時間がありませんから、どんどん話を進めていきたいと思います。私の紹介も一応しておきますと、月刊I/Oというコンピューター雑誌でずっと編集長をやっていました。といってもわかる人はいるでしょうか?

(会場挙手)

この中に。あ、けっこういますね。ありがとうございます。一応コンピューター雑誌としては、日本で一番古い雑誌だったのですが、3月で辞めて、今はいろいろとフリーの編集者として動いているような状態です。

その下はどうでもいい話なので、そういった感じで、今回ファシリテーターを務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。

近藤:お願いします。

(会場拍手)

「名刺交換」は日本独自のビジネス習慣

藤井:では、日本企業におけるビジネスコミュニケーションの課題ということで、日本企業のビジネスコミュニケーションは、世界から見ると独自だと思うことがあり、それを今3つほど挙げてみました。

ひとつは、やっぱり名刺を交換する。これは日本ならではの感じがしていますが、紙切れ1枚を交換するところです。もう1つが会議です。会議は別にどこにでもあるのですが、日本の会議は中身のないものが多いという話もあります。あとはメール。今でもいろいろとメールでやりとりをすることがありますが、メールは本当に便利なのか? というところに切りこんで話をしていければと思っています。

まず、ひとつめの名刺は必要かという話。名刺の問題点は、要するに紙1枚でも大量にもらうと、とりあえず捨てるのが大変。もらったところで「誰?」と顔が一致しない、写真が入っていれば別ですが、覚えていない。役職が変われば作り直すし、転職しても作り直す。私も転職して作り直していて面倒くさいなと思ったことがあるのですが。

あとは、パラレルキャリア。いろんなキャリアを始めると名刺がどんどん増えて、ちょっと邪魔だなと思うところもあって、名刺は本当にいるのか? というところをトークテーマとして話していければと思います。まず、GOROmanさんから話を聞いた方がいいと思うのですが、名刺ってそもそも。

名刺は今すぐやめた方がいい?

近藤:もうやめましたよ、とっくに(笑)。

藤井:それはやっぱり、名刺が邪魔だということですか?

近藤:紙切れを交換する意味を見出せないというか、そもそも今、名刺を入稿するときに、アドビのInDesignやIllustratorで入稿データを作っても、この時点でデジタルなのに、それを印刷所に持っていって、ビット to アトム(Bit to Atom)して、それをもらって紙切れを交換した後に、今度はEightで撮ってまたビット化して。

それをおばちゃんが、クラウドソーシングでクラウド内職して、そこでまた打っているというのが最高に無駄。ビットコンバーターをかまさずに、ビット to ビットでもいいんじゃ? と思うのです。それはもうFacebookなどでいいし、例えば、中国の深圳や上海ではWe Chatでバッとやって終わりだし、「なんで名刺なんですか?」という感じです。

そもそも、名刺で人を覚えられませんよね? だから、会議で10人くらい出てくると全員顔と名前が一致しなくて忘れて、ごみ箱にそのまま捨てて帰る、といった感じです。

ですから、むしろ、「名刺 持ってません!」とインパクトを与えて、こいつ頭がおかしいと思われたほうが、名刺を渡すよりも価値があるし、「僕は名刺がありません」といってメッセンジャーでつながったら、「さっきはどうもありがとうございました」とめっちゃ仲良くなって、飲みに行って仕事につながるといったように。

紙切れ交換にめっちゃコストがかかっていて、今すぐやめたほうがいいと思います。AIやらVRやら以前の問題だと思いますが、はい、終わり。

(会場笑)

ぜんぶEightでもかまわない

藤井:じゃあ、ロボスタの望月さんはどう思われますか?

望月:そうですね。僕はバリバリ名刺を使っていますが、さっきの上に出ていた課題ぐらいだったら、ぜんぶEightでもいいと思いました。ロボットは、最初の今回のテーマでも自動化や効率化のようなところがありましたが、僕らが良く見ているコミュニケーションロボットは、効率性を重視しているものではありません。

名刺においても、「名刺交換も無駄なことだな」と思いつつも、その人の人となりが出るので、GOROmanさんだったら渡さないというのが人となりだし。

望月:名刺を名刺入れじゃないところから出すなど、いろんな人の人柄が見えるので、それはそれでいいのではないかと。無理して破壊するものではないと思っています。

「プリクラ」を名刺代わりに

藤井:三宅さんはどうですか? 名刺。

三宅:いや、確かに覚えられませんが。FacebookやEightは、アカウント停止になると一瞬で全部なくなってしまいますので。最近、ネットで、その場で名刺が刷れる機械があるらしく、それならばプリクラ……でもいいのか。ゲームセンターで撮るのは、あれはみんなシールが欲しいからですよね。あれが会場にあるといいと思っていて、要するに相手と自分を組み合わせて、どこでいつ会ったかということがわかる。

藤井:ロゴも入れて。

三宅:そう、それがあると、この人はどの会議でいつ会ったのか、その場でペアになっていれば便利だと。それをお互いに持っていて、いつか会ったときにカチッと合わせられると忘れない。今の名刺はちょっと古いという気がします。

セキュア的におかしなルールが継続される日本

藤井:私、たまに仕事でここのビルに入ってくるのですが、打ち合わせのために上がるときに、下の入り口で「名刺を2枚出してください」と言われるのです。名刺を2枚出して「OKです」と上がれちゃうのですよね。名刺2枚の意味が、2枚あるということはその人なのだろうという証明を出そうとしているのかもしれませんが、それって本当に意味があるのでしょうか、セキュリティ上……。

近藤:セキュアじゃないじゃないですか、それって。コピー機で2枚作れば、みんな入れますよ。藤井さんの名刺を、今からコンビニで2枚コピーして、「藤井です」と言えば入れるんですから。

藤井:そんなんでいいのかなと思いながら。だから名刺は、そもそもその人を表すというか、それ自体が、そもそもセキュア的にもおかしいし、私としては、もっと違う方法があるのだろうというところなのです。

AirPodsをカメラにして”ジャーヴィス化”

藤井:他にももっとこのようにすればいいというものがあったりします?

望月:ロボットだとすぐに思いつくのが、カメラを使って人の顔を見て、名前と一致させてくれる。この「ロボホン」というロボットは胸ポケットに入れて持ち歩ける携帯電話なのですが、このロボットが、ここで誰々さんに会ったということを教えてくれると、効率的なやり方だと思うのですが。

それであれば、別にカメラをつけて、マイクをつけて、スピーカーがついていれば、それでいい感じがするので、コミュニケーションロボットがそこを効率的にしてくれる感覚というのは、僕の中には今のところありません。

藤井:うーん。VRとか。

近藤:VRというか、AppleがAirPodsをうどん化した理由が僕にはわかります。あれ、うどんじゃないですか。でも、あそこを赤外線カメラを使って、コンピュータービジョンにするんですよ。

今、うどんでちょっと気持ち悪いと思っているのは、将来的にはあれが赤外線カメラになって、コンピュータービジョンになって、画像認識をして、顔認識をして、クラウド上で認証をして。

例えばFacebookやLinkedInにつながって、「なになにさんですね?」というと音のARになって、会った瞬間に、「あ、もう4回もお会いしてましたね」「趣味は」「パスタが好きなんですね」と全部バーッと音声で入ってきて、めっちゃ仲良くなるといったような。そのようになっていると思うんです。そもそも、紙の名刺交換をする前に、会った瞬間に相手のパーソナリティが全部ダウンロードされるだろうと思います。

ですから、AirPodsがうどんな理由は、カメラになるからだと思うんです。そういう意味ではAR化するんじゃないかな。僕、今はこれ(HMD)をつけていますが、ソニーのEar Duo、音のAR化でいうデバイスなのですが、本当にiPhoneのSiriなども全部落ちてくるので。

藤井:そういえば、LinkedInの村上(臣)さんも、「早く名刺をなくしたい」というようなことを。

近藤:MicrosoftがLinkedInを買った理由がめっちゃわかって、MicrosoftがHoloLensを作ってるし、HoloLensの次のバージョンはAIがつくし、AIが入った瞬間に、ディープラーニングなどの機械学習で、顔がバーッと表示されたり。

LinkedInのデータベースにアクセスしてめっちゃ趣味が合うとか、この人はなになにさんなど、バーッと。ジャーヴィスですよ。

アイアンマンみたいにジャーヴィス化されてバーッときて、会った瞬間にものすごく仲良くなって、話が弾んで、そのまま飲みに行ったり、同じ趣味はなになにですね、スキルセットはなになにですね、と仕事がめちゃくちゃ加速する。

あの紙切れの名刺に書いてある情報なんて何の価値もなくて、HoloLensなどの次のARデバイスや、それこそ、AirPods2が出れば1,000の情報が落ちてきて、それでもうビジネスは加速するのではないかと思います。

藤井:そうですね。そのように至っていくのではないかと思います。

日本の「会議」は本当に必要なのか

藤井:次の課題になりますが、今度は会議は必要ですか? 前のトークでもいろいろと会議の話が出てきましたが、ここでも、「会議の何が問題なの?」というところで。

みんな、時間を合わせて集まるのは大変、場所を用意するのも大変、時間がだらだら流れる、意見が言える人と言えない人がいる、会社に来ないといけない、結局なにも解決しないということがあったりする。

そもそも会議をやる必要があるのかどうかも含めて、話ができればと思います。トークテーマとしては、この会議の問題をどうやって解決するかというところなのですが。

藤井:GOROmanさんはVR出勤でしたっけ? 出社でしたっけ? なにかをやっておられましたよね。

近藤クマ出社ですよね。

藤井:あれ、会議はやらない、出ない、でしたっけ?

近藤:会議も、最近は全然やっていなくて。会社自体に行くのをやめて、そもそもメッセンジャーなどで、いいね! ボタンを押すだけで仕事がほぼ終わりますから。ハンコを押すのがいいね! に代わっているんです。今までは、社長はハンコを押すのが仕事だったと思いますが、今ではいいね! を押しているだけで良くなりました。

だから、ドイツに行っていようが、どこに行っていようが、だいたい仕事が進むので、そもそも会議がいらないし、会議に行かないといけないときは、Discordなどでつないで、僕のカラダを他人に貸して、代理で聞いてもらって、それでメッセンジャーで送りますね。

藤井:話していいのかどうかわかりませんが、このR4Dの中でもVR上で面接したり、バーチャルでやっていたりしているという話を聞いて、もう本当に来る必要がぜんぜんないなと。

近藤:ないですね。どうしてここにいるのかと今思いました(笑)。

コミュニケーションロボットが会議を盛り上げる

藤井:そうですね。あとロボットでいうと、iPadみたいなのに棒がついていて、タイヤで走るやつあるじゃないですか。

望月:テレプレゼンス・ロボットとか。

藤井:テレプレゼンスがあれば、あれこそもう「来なくていい」という話にならない……?

望月:そうですね。テレプレゼンス・ロボットは、とくにアメリカでよく使われていると言われていまして。日本では、まだまだ認知されていないと思いますが、僕は、人と会うことが好きで、会議も直接会った方が楽しいと思うから、無駄だとは思わないまでも、確かに遠隔地の人などと会議をするときには、絶対に遠隔の方法を使った方がいいですし、ロボットもそれを解決する方法になると。

今回ですね、コミュニケーションロボットというテーマで、たぶん、効率で言えばAIやVRのほうが効率的で、ロボットはすごく非効率な存在だと思っているので。ではどうやって、このテーマの話をしようと思って来たのかですが、僕は1回、「すごい会議」というのを受けたことがありまして。「すごい会議」をご存知の方はいますか?

近藤:あの、本のやつ?

すごい会議

望月:そうです。しゃべりながら、誰かが発言すると「よっ」と言うんです。この「よっ」という掛け声はすごく無駄なことなのですが、会議を進めていくうえで、すごく発言がしやすくなって、楽しくなって、良い会議になる、というような話があって。

同じように、コミュニケーションロボットが今後、どう会議を変えていくか、というときに、効率じゃない方向、超非効率の方を目指してもらうことで、すごく無駄ですごく楽しいことを横で言い続けてくれる。それこそ「よっ」と言ってくれるなど、そういった方向性がコミュニケーションロボットならではの方向だと思っており、そちらに向くことを期待しているところではあります。

藤井:なるほど、ありがとうございます。

「忖度するAI」が言語外の情報を伝える

藤井:そうすると、三宅さんの方にまた聞きますが、AIで会議をすることは解決につながるのでしょうか?

三宅:そうですね。とくに日本人の場合は、あまり合理的に会議で議論を組み立てることができないので、コンセンサスの取り方が意味不明なわけです。濃淡が決まっていくような話があって、うちも半分は外国人なのですが、合理性が確認できれば、だいたいみんなOKのようなところがあります。日本人の場合は、身振り、手振り、あと沈黙の意味など限界まで意味を汲み取って。

近藤:察したりしますよね。

三宅:あと、あいつは腕を組んでいたから「本当は納得してないんじゃないの?」と聞くと「実は納得できてないです!」と。

近藤:TCP/IPに載っていない情報があるのが問題なのだと僕は思っていて、TCP/IPにどれだけプロトコルがのるかという。表情、感情、間など。

三宅:いや、そこを実はAIが拾ってくれれば。テキスト上に、「今、こいつは腕を組んでいます、今瞬きした」といったように。

近藤:怒っているらしいとか。

三宅:はい。口調がいつもより……。

近藤:忖度するAIみたいなのができる。

三宅:そうすると、メッセージだけでは汲み取れないものも、ドイツに送ることができるから。

顔文字が発達した理由

近藤:すごく大事だと思います。顔文字を発明した理由はそれだと思っていて、文字に感情情報をのせられないから顔文字をのっけていたんだと思うんですよね。

三宅:身振り手振りや口調など、音のトーンも全部、TCP/IPからなくなっていったから、AIの研究が進んでいる今こそ、むしろそこも全部拾ってあげないと、特に日本人には厳しいのではないかと思いますね。そこの比重が高くて、下手すると6割が言語外で会議が構成されますから。

近藤:だから日本は、後から分岐できる言語だと思っていて、英語では結論がYESかNOじゃないですか。でも、日本語は偉い人のトーンで「あー、殿の言う通りです!」みたいになっちゃう。つまり、切腹文化があったから、殿がなんか「鷹狩は、殿はお好き…じゃないですよね!」みたいな。

「やる」となった瞬間に、分岐を変えて。分岐がハイレベル言語なので、偉い人やクライアントの顔色をうかがいながら、めっちゃ分岐をする言語だと僕は思っています。

三宅:「殿もこうだよね」という自信のないときは、むしろ反応しなくていいし、むしろ言語外のところ。

近藤:言語外の、表情とはまた違うのかな。トーンのような、音声情報に別のものが乗っている感じがすごくして。それを耳が認知して、トーンでYES、NOを分岐していくから、そこがメールでもトラブルの原因なのかと思っています。

ディベートはキャラクターに任せる

望月:今回の破壊というテーマでいうと、そのロボットで、ヒエラルキーを破壊する可能性があると思っています。今のところは、さっき言ったように、「殿」みたいなところをつけて忖度することは、人間の世界だとあり得るのですが、ロボットはとりあえず、人のどちらが偉いかわからないので、人の上に人を作らずということが、まだロボットにはできるのだろうと。

ですから、ロボットを通せば、(相手が)どんなに偉い人でもきちんと正しいことを言えたりするんですよ。よく会社などである事例ですと、うちの会社じゃないですよ、知り合いの会社で、社長に対して、すごく言いたいことがあるんだけど、言えないと。パソコンからロボットにしゃべらせると、社長が言うことを聞くような。

近藤:僕、それ、すごくわかります。僕、前にクマになって(VR出勤したので)。ワンクッション、クマを入れた瞬間にみんなフレンドリーになったという。つまりアバターを変えることで、立ち居振る舞いが変わってくる。

だから、ロボットがプロキシーサーバーのようにワンクッション入るだけで、突然みんなフレンドリーになる。つまり、ロボットは感情がないのが前提で、表情がないうえで接してくれるから、みんな優しくなる感じはしますね。

望月:だから、さっき太田さんからもありましたが、日テレの方にアンドロイドアナウンサーが入ったと。僕は、そのアナウンサーに期待しているのは、大御所の芸能人に対して「違う」とズバッと言ってもらうのを期待しているのと同じように、会議も社長がどんなにズケズケと、よさそうな雰囲気で言ってきても、「違うものは違う」と言ってくれる存在としてのロボットの進化を期待したい。

三宅:議事録をキャラクターがしゃべっているようになるし、国会中継などもすごく退屈だけど、みんなキャラクターにしてしまえば、動物たちがワーッとしゃべっているから、子どもたちも大喜びになると。

藤井:(笑)。なるほど、それは見た目を変えるという。

三宅:ゲームでも、海外はFPS(一人称視点ゲーム)といって、自分が入り込むのがすごく人気があって1,000万本くらい売れるんですが、日本の場合はTPS(三人称視点ゲーム)など、間にキャラクターを挟まないと入っていかないので、そうした意味では、会社員というアバターになるための間にこう……。

近藤:サードパーソンビューが必要。

三宅:サードパーソンビュー。なんなら装備も自分でつけていいよというような。意味もなく剣を持って。

近藤:それもすごくおもしろいですね。

三宅:怒ったら攻撃魔法をかける。「俺、怒ってんだぜ」というような。

近藤:注目されるといいですよね。会議中になんか、「メガンテ!(ドラゴンクエストシリーズに登場する自爆呪文)」とか言って。

三宅:結局、みんな個人のプライベートのパーソナリティを仕事に持ち込むから、ややこしくなる。ボードゲームなどをやると、一番おとなしいやつが、すごく攻撃的な本性を発揮するから、本性を発揮させるためにキャラクターを一段置いて、いろんな表現をする手段。社長がこう言ったら雷がバーッと落ちる。「お前、そこまで反対なのか」という。

(一同笑)

口では言えないけど、雷ボタンでバキバキッという。

近藤:ふだん寡黙な人が突然、ベギラマ(攻撃魔法)をかける、ような。

三宅:そんな感じの、表現がやっぱりうまくない場合は、エンハンスしてあげるしくみが必要ですね。

藤井:役になりきらないでプ ライベートのままいっちゃうと、気を使わなきゃいけないと思ったりするから、もう役になりきって、言いたいことを言えるキャラクターなんですよというようにすればいいってことですね。

三宅:海外の場合でいうと、会議上でどんなにけんかしても、1分くらいで「ご飯を食べに行こう」となる。日本の会議でけんかすると、帰る方向一緒だとしゃべりにくいなーという感じになるから。

近藤:ディベート慣れをしていないような。

三宅:そうですね。ディベートはキャラクターに任せて、こっちは見かけを別にしてあげないと、つらいんじゃないかと。

藤井:そういった意味では、キャラクターをキャラクターとして、自分の位置づけに使えるということですね。

望月:そうですね。本当に今、言ったような使い方は、完全に使えると思いますし、もちろん議事録も将来的には取れると思いますから、スマートスピーカーが今すごく流行っていて、Amazon EchoやGoogle Homeなどがありますが、どう考えても効率でいえばそちらの方がいいんですよ。

でも、そうではないところ、コミュニケーションロボットなどを持たせられるとしたら、キャラクター性は重視していくべきではないかと思います。

藤井:ありがとうございます。

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