2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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児玉拓也氏(以下、児玉):1つ目の事例をご紹介します。「流行を予測する」と書かせていただきましたが、先ほどのピープルドリブンマーケティングの発想にもある通り、正しい人に、正しいタイミングで、よりイケてるコンテンツを届けたいというのが、その根底の発想になっています。
私たちはよく、クライアントさんからこういうことを言われます。「とりあえずなんかバズらせて、盛り上がるような、なんかそういうのをよろしくお願いします」と。ここまでひどくはないと思うんですけど(笑)、これ自体が手段の目的化なんですが、ぶっちゃけよく言われます。
あるいは、流行そのものを少し先取りできると、ちょっと先に流行りそうなことを見つけてきて、それに相乗りするかたちで企業価値を伝えていけるようになる。こういった流行をいかに読んでいくかは、実は私たちにとって非常にホットな領域になっています。
ですのでこれを予測するために、指標を1回作ってみました。(スライドをさして)これは、横軸にテレビ番組での露出量。これは私たちがデータとして持っているものです。そして、縦軸にSNSでの露出量。これもデータとして事前にあるもので、これを2次元のフィールドにしてみると、流行というのはこの2次元のフィールドの中で、こういう動きになると位置づけられます。
例えば、こういうパターンの流行がありますと。SNSでワーッと広がって、それをテレビが後追いして、だんだんと露出が下がっていく。
あるいは、こういう流行もあります。テレビが最初に特集して、それをSNSが拾って、そこでの盛り上がりが持続して、だんだん下がっていく。
あるいは、こういう流行ももちろんあります。SNSでワッと上がるけれども、テレビまでは波及せずに、そのままバッと縮んでいく。
こういった流行は、この2次元上のパターンに置き換えられると思っています。これをできるだけたくさんラーニングさせることによって、今少し流行りかけたフレーズが、これからどういう流行のパターンを取っていくのかが予測できるんじゃないかなと考えました。
その前段階として、いくつかすでに流行したもののパターンを抽出してみました。例えば、これはある芸能人さんなんですけど、最初SNSでワッと火がついて、それをテレビが非常に短期的にバーッと広がって、テレビの露出量が1回ちょっと減ったけれども、歩留まっていると。SNS上での話題も歩留まっている。こういう流行パターンのケースもありました。これはブルゾンちえみさんですね。
もう1つ、またちょっと違ったパターンで、最初にテレビでバッと伸びていって、それにSNSが追随している。ただ、テレビはそこから少しスッとシュリンクして、今SNS上で歩留まっていると。この流行パターンは、今年に入っても継続されている「プレミアムフライデー」ですね。
こういった流行のパターンというものも、一口に「流行った・流行ってない」でも、どういうパターンがあるのかを学習させていって、推測することができるようになってきています。
こちらはツールのデモ画面なんですけれども、これは実際に、例えば「旅行」って入れたら、旅行関連のワードが「プチプラ旅行」とか「なんとか旅行」みたいなものが今後どのぐらい流行る、あるいは流行らないという予測をしてくれるツールなんです。
こういったものがあると、例えば企業SNSのアカウントを運営されている方とか、あるいは「タレントを起用してCMをやりたいんだけど、どの芸人がいいかな」といったところに、ダイレクトに精度の高いものを当てていくことができる。そういうツールを今私たちの方ではα版を使って、CMクリエーティブスタッフや、SNSの運用に活用している。今こういう事例があります。
これも、適切な人に適切なタイミングで、よりウケそうな話題を差し込んでいくという、今までは人が経験と勘でやっていた「流行りそう・流行らなそう」みたいなことを機械がサポートしてくれる。そういうソリューションになっています。
2つ目のケースなんですが、「需要を予測する」と書かせていただきました。これはある大手食品クライアントさんからのご相談で、「より商品の需要が高まるタイミングで、効果の高い広告出稿をしたい」と。
これは当たり前なんですけれども、テレビの仕事とかをされたことがある方ならおわかりになると思いますが、今日入れて明日流れますというのはけっこう難しくて、1ヶ月前、2ヶ月前にテレビ局に対して事前に発注をしてというようなフェーズがあります。
今はそういう潮流になってるんですけれども、いつどういうタイミングで需要が高まるかを予測できれば、テレビCMを打つタイミングとかエリアもより細かく最適化されてくるんじゃないか。
この商品については、ある特定の野菜の価格と売れ行きがなんとなく相関していそうだ、ということがクライアントさんからのサジェストとしてありました。じゃあ、1ヶ月前とか45日前に野菜の価格動向がシミュレーションできれば、ある一定の価格ラインを下回った時にテレビCMを発注するというようなワークフローが組めるんじゃないか。そういうことに今トライアルをしています。
天候のデータと食材の価格のデータはすでにいくつかオープンになっているものがありまして、そこから野菜の価格を予測するというモデルを策定しています。今すでに、ある閾値を下回ったところで広告枠を買い付けしていくというモデルを、先ほどの食品会社さんと実証実験を始めています。
大変残念ながら、昨年の秋からはいろんな台風とか寒波とかが来ていて、今は野菜の値段がまったくその基準ラインを下回らずに、こういった実証実験もなかなかやりづらくはなっているんですが、暖かくなってくると、こういう活用の事例はどんどん増えてくるんじゃないかなと思っています。
もちろんこれは天気のデータだけではなくて、今の世の中にあるさまざまなデータを掛け合わせて需要の予測をしていく、そしてその需要の予測をマーケティングのモデルに組み込んでいく。そういったことができると、今まで人間がなんとなくで設計していた広告出稿、それもデジタルだけじゃなくて、テレビや新聞などのマス広告も含めて最適化されてくるという新しい知見を、見方を得るのがAIの力かなと思っています。
また3つ目、「行動を予測する」と書かせていただきました。価格、特にこういったマス広告領域は、非常に広告効果が不透明だという話をよくご指摘されます。まぁ、テレビ広告は小回りが利かないと。本当に見せたいお客さんに対して最適化されているのか、不透明であると。
買った瞬間には視聴率がどのぐらいになるかは当然わからないので、流れてみると、実は本当に見せたかったお客様に見せられてなかったとか、そうじゃない人のほうがよりたくさん見ていたので、「せっかく買うんだったら、こっちのCM流したかった」とか、そういうことが事後になって起こりがちな業界でもあります。
そこで、(スライドをさして)こちらもすでにリリース等出させていただいておりますが、「SHAREST(シェアレスト)」という、視聴率を含めた広告指標を予測するAIを立てさせていただいています。
これはテレビ番組のデータの中に、出演者や番組の中身、あるいは局と時間帯、あるいはその時間帯に流れている裏番組のデータを全部AIに読ませていくと、その視聴率が何パーセントになるかを予測できるデータで、これは私たちがずっとトラッキングしているデータを教師データとして使って、非常に精度が高くなっています。
たとえば、こちらは昨年の夏にオンエアされた『借りぐらしのアリエッティ』なんですが、この青い線がSHARESTの予測の視聴率です。オレンジの線が、実際の視聴率です。このM1、M2、M3というのは、見る人の性年齢区分になっています。これを見ると、M3でちょっと乖離はありますが、それ以外の各年齢層で、非常に高い想定ができています。
こういった単発の映画の時には、「このぐらいは行くんじゃないかな」とか、あるいは「裏がこれぐらいあるから、このぐらいなんじゃないかな」という、本当に人の経験と勘による推測がされていたんですが、もう今はSHARESTの方が完全に、推測の域値は人間を上回っています。いろんな放送局さんからお問い合わせをいただいています。
同じように『思い出のマーニー』も予測すると、もう世帯視聴率なんかはほぼピタリ賞で当てています。こういったかたちで、さまざまなデータ自体も拡充していって、より精度を上げていきますが、それだけではなくて、どうビジネスに使っていくかを今模索しているところです。
すでに大手クライアントさんのほうで、テレビCM、素材の貼り付けのロジック。要は、買い付けた枠がどのターゲットに対して適切なのか。男性の視聴率が高いんだったら男性用の素材を入れましょう、女性の視聴率が高いんだったら女性向けのCMを流しましょう、と。どういったクリエーティブを流していくかという、その最適化の部分に大きく役に立っています。
今までは、人が人力で何時間もかけてやっていた作業を、AIが1回たたきとして出してくれる。それだけで、非常に精度も上がり、業務効率も上がっていく。そういうことが今起こっております。
このSHARESTについては、視聴率を予測してマーケターが楽をするところにとどまらず、もうちょっと大きいインパクトがあるかなと思っているので、ちょっとご紹介します。
今の視聴率だったり広告指標を予測するSHARESTというAIもあるんですが、そこからさまざまな最適化AIを今オリジナルで開発しています。例えば、「このタイミングでこの局に発注すると、どのぐらいの枠が買えるだろう」というシミュレーションツールであったり、その他にも、テレビ広告に関するいろんな予測のAIを作っています。
それができてくると、事前の予測が可能になる。「買ってからわかる」、あるいは「流れてからわかる」ということではなくて、事前にこのぐらいのお客さんにリーチして、それがどのくらいの効果を引き起こすか、それをなるべく事前に可視化しようということにチャレンジをしています。
これができてくると、私たちが長年課題にしてきた、不透明というか、事前に予測が難しいと言われている広告ビジネスのビジネスモデルそのものを変えていくだけの力があるんじゃないかなと思って、SHARESTおよび、その他関連AIには非常に力を入れて開発を進めています。
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