2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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金津豊氏(以下、金津):みなさま、改めましてこんにちは。「若手エンジニアの挑戦」ということでございますね。
例年はお昼ぐらいからやっているんですが、今日は朝一ということで、みなさん爽やかな感じでお越しいただいていると思います。お席もほぼ9割以上埋まって満席寸前ということでたいへんうれしく思っております。今日はどうぞよろしくお願いいたします。
今日のテーマはこのとおりで、正面に5名の各社の若手のエンジニアの方にお越しいただいてご自分のエピソード等々をご披露いただきつつも、みなさまからもいろいろなご質問を賜ってそれにお答えしていきながらということで、必ずしもこちらの一方通行ではなく会場一体となって進めていければと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
では、さっそくですけれども、パネラーの5名のみなさまをご紹介してまいりたいと思います。
まずお1人目の方ですね。株式会社SCREENセミコンダクターソリューションズ様、小森香奈様です。どうぞよろしくお願いします。
お2人目。東京エレクトロン株式会社様の山口晶子様です。どうぞよろしくお願いします。
3人目の方。3人目も女性なんですね。THK株式会社様、松本訓己世様です。どうぞよろしくお願いします。
まだ女性が続くんですね。今年は女性が多いんですよ。株式会社ニコン様、田中さゆり様です。よろしくお願いします。
はい。お待たせしました。やっと男性が登場。ちょっとイケメンをチョイスさせてもらいました(笑)。株式会社日立ハイテクノロジーズ様の釜地義人様です。よろしくお願いします。
そうしまして、運営側アシスタントですが、キャリアコンサルタントでもあります、細谷彩織です。よろしくお願いします。
メインの進行は、私、金津が承っております。この7名とみなさまとで一緒になって進めてまいりたいと思いますので、これから約90分、どうぞよろしくおつきあいのほどお願いいたします。
(会場拍手)
まだ出だしなので我々も少し緊張していますよね。パネラーの方もね。ちょっとニッコリしてもらえますか? 本当はみなさんいい笑顔なのでね。いろいろな話をお聞かせいただきたいと思います。
今日のためにいろいろとご自分の仕事を振り返ってもらったりして題材を集めてきてくれていますけれども、さっそくお1人目の方から、どんな苦労があってどんなふうに乗り越えられたのか、そんな体験談を話していただけることになっていますので、楽しみにしてください。
金津:それでは、いよいよプレゼンテーションに移らせていただきたいと思います。ではお1人目、小森様、ご準備をよろしくお願いいたします。
小森香奈氏(以下、小森):はじめまして。SCREENセミコンダクターソリューションズの小森と申します。本日はよろしくお願いいたします。
現在私はベルギーのIMECと弊社で共同開発を行っておりまして、そちらの仕事内容や苦労した点等をお話しさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
弊社は半導体の製造装置メーカーです。いろいろな装置があり、ウェハのクリーニングシステムの装置、コータ・デベロッパやアニーリングシステム、測定システムとありますが、私の分野はこちらの枚葉洗浄装置の開発に携わっております。
弊社の目標、すなわちSCREEN Goalは、お客様の要求に合ったプロセスを提供していくことです。こちらの目標に向かって現在私は、defect removalやetching technology、ウェハの表面処理の検討をIMECで行っております。
こちらが現在IMECと弊社で行っているJDPの開発概要になります。まず1つ目といたしまして、選択エッチングです。半導体の微細化が進むにつれて、トランジスタ構造はすでにPlanerからFinFETへ置き換わり、また次世代にはGate All Aroundに置き換わると想定されますので、ナノワイヤーを形成するための選択エッチングが可能な薬液開発、装置開発を行っております。
また他にもチャネル材料がSiからSiGeに変更されることを想定した、SiGe表面処理のプロセス検討や微細化を想定したパターン倒壊抑制の検討も行っております。
今回はこの選択エッチングに関しての私の評価スキーム等をご説明させていただきたいと思います。
私の現在の評価スキームといたしましては、まずIMECと弊社で、「今後こういう技術が必要である」という部分を共有し、弊社から「ではこういう新しい薬液やプロセスを提供いたします」と約束して、弊社と薬液ベンダーで共同開発を行っていくというものです。
こちらの画像はシリコンナノワイヤーといわれる構造の断面図でして、左図が現在のIMECにおけるPORの結果になります。
こちらはgas phase process を用いておりまして、シリコンナノワイヤーは形成されますが、この構造を形成するためにプロセス時間がかなりかかってしまうことが大きな課題です。その課題払拭のため、弊社ではwetでのchemical processといたしまして、新規薬液の開発を薬液ベンダーと一緒に共同開発しています。
この新規薬液を用いた場合、現行のPORに比べまして、1/10程度の時間でナノワイヤーの形成が可能となります。
ここで、前のページでは簡単に「こういうことができました」と言っていますが、実際は多くの困難を経験しました。まず薬液の開発のスキームとしては、まずブランケット膜でエッチングの基礎特性を評価し、そのあとに弊社装置で評価を行いますが、結果が再現しないことがあります。
もう1点、薬液ベンダーと共同開発をするにあたってIMECにもいろいろ協力していただかないといけない部分があり、例えば評価装置のスケジュール調整や、ウェハの提供について粘り強い交渉が必要になります。
これらの困難を乗り越えていくためには、もちろん成果を出すことが一番なのですが、最初はなかなか成果が出ない中でいかにIMECに協力していただくかということが最も重要と考えています。
やはり日頃からこの評価に関わらずコミュニケーションを取って、弊社がどれだけIMECに貢献できるかをアピールすることです。IMECから極めて困難な課題を提示されることがたまにありますが、そういう部分も可能な限り受け入れるようにしています。
最後に、困難を乗り越えるためには、ここに「relationship」と書かせていただいている通り、私としてはこの言葉が最も重要ではないかなと考えています。
短いんですが、報告は以上になります。ありがとうございました。
(会場拍手)
金津:どうもありがとうございました。ベルギーなんですね。ベルギーは何語ですか?
小森:オランダ語とフランス語が。
金津:オランダ語。ぜんぜんわからないけど、すごいですね。大変ですよね。今コミュニケーションが大事とおっしゃっていましたけど。
小森:はい。コミュニケーション、そうですね。
金津:語学もできないと。
小森:基本的に仕事は英語になるので。
金津:英語で。わかりました。ありがとうございました。
さあ、みなさん、なにかご質問をいただければうれしいんですけれどもいかがでしょうか? なんでも聞いてくださいね。どうでしょう。
(会場挙手)
手が挙がりました。はい。
質問者1:ご報告いただき、ありがとうございました。業務の中で1点だけ聞きたいんですけれども、業務の中で一番大変だったことですかね。一番挫折しそうだったことと、それを乗り越えるためにどうしたか、僕もエンジニアなのでそのあたりのヒントをいただきたいと考えています。
小森:苦労した点は、まず今回の評価に関しては、評価サンプルの調達面です。構造サンプルになると製作に掛かる時間と費用もそれなりに大きくなりますので、ある程度の成功確度を示したうえでサンプル提供の交渉をする必要がありました。
そこを乗り越えるためにも、普段からのコミュニケーションですね。「これだけの成果を出すのでこういうウェハをください」ということをどうやって交渉していくか。そのあたりをいかに普段からやりとりをしていくかという部分が大切であって、それで乗り越えていったかなと考えています。
金津:よろしいでしょうか。ありがとうございました。もうおひと方ぐらいご質問ありますか?
(会場挙手)
お2人手が挙がりましたけど、先にそちらの方ですね。
質問者2:講演ありがとうございます。薬液メーカーさんやIMEC様とのコミュニケーションが大事だというお話だったと思うんですけれども、直接薬液メーカーやIMEC様のエンジニアの方とman to manでコミュニケーションを取られることが非常に多かったのか、なにかその間に上司などを挟んでのコミュニケーションだったのかというところを教えていただきたいです。
小森:薬液メーカーさんとは、月に1回、2週間に1回程度の電話会議でコミュニケーションを取って、そのほかはメールベースや電話でコミュニケーションを取っていくというかたちになります。
IMECとは、IMECのマネージャーと「こういう結果が出ているのでこういうウェハを提供してほしい」ということを直接お願いしにいくかたちになります。
質問者2:ありがとうございます。
金津:ありがとうございました。もうおひと方手が挙がっています。
質問者3:すいません、1点だけ。先ほどツールとビーカーとの違いというのがあったと思うんですけれども、少し具体的に教えていただけますでしょうか?
小森:ビーカーでは3センチ角程度のクーポンを使って浸漬評価し、装置ではWhole waferを使ってスピン処理評価します。まずサンプルサイズが異なるため、異なる測定器を使用することになります。また、液処理形態が全く異なりますので、どこがキーになっているかを探していくのが一番難しいところかなと思います。
金津:よろしいでしょうか。今日はたくさん質問をいただいてたいへんうれしいんですけど、時間になりましたので、小森さんのご発表はここまでにさせていただきます。トップバッター、どうもありがとうございました。
小森:ありがとうございました。
(会場拍手)
金津:ではお2人目の方、ご用意をお願いしたいと思います。ちなみに、みなさまの中で学生さんはいらっしゃいますか?
(会場挙手)
あ、けっこういらっしゃいますね。ありがとうございます。今日のスタッフの彼女も実は学生なんですよね。ちょっと自己紹介してみて(笑)。
細谷彩織氏(以下、細谷):突然の自己紹介になります。日本女子大学の教育学科4年の細谷と申します。エンジニアの方とはまったく違う教育学について学んでいます。今日は私の世界観を広げるためにたくさん学びたいと思っています。よろしくお願いします。
金津:自分のために来た感じですか?
細谷:……そんな感じかもしれないです(笑)。
金津:本音が出てしまいました。ありがとうございました(笑)。では、お待たせしました。山口様です。どうぞよろしくお願いします。
山口晶子氏(以下、山口):東京エレクトロンの山口と申します。本日は、私の業務についてと、そこから学んだことについてお話しできればと思っております。よろしくお願いいたします。
まずはじめに、東京エレクトロンについて簡単にご紹介させていただきます。ご存知とは思いますが、東京エレクトロンは半導体製造装置、FPDの製造装置を中心に事業を展開しております。現在の半導体製造装置とFPD製造装置の比率は図のようになっております。
また、もう1つご紹介したい内容として、TEL Technology Vision 2030というものがあります。現在、半導体業界、製造業界や我々の生活はあと12~13年後にはかなり大きく変化していくと考えられております。そんな時代に東京エレクトロンとしてできること、貢献できることについて議論を活性化させる活動を現在行っております。
私が東京エレクトロンでやっている業務なんですけれども、主に半導体製造工場の既存のラインに自動化システムを導入すること、またそのシステムの開発を行っております。オートメーションシステムやFDC、データ解析やリモートサービス等、トータルのシステムを提供することでお客様先の環境をより便利にし、生産向上を日々の目標として挑戦して業務を行っております。
私は主に半導体製造装置のラインの中でも200ミリのラインを担当しております。200ミリのラインというのは今、装置の長期使用で装置の老朽化ですとか、主に工場の設備の老朽化が大きな問題になってきています。設備や装置の老朽化によるダウンタイムの減少ですとか、あとは生産性の向上というところの課題に対して解決が難しくなっています。
また装置のスペックですね。装置スペック自体の問題で現在より精密な結果が求められているんですけれども、そこに対しても現行のシステムでは非常に対応が難しくなってきています。
また現場の環境も変わってきていて、業務委託が進むなかで、ベテランさんが今までどおり自分で考えて行動するというよりも、誰もが簡単かつ正確に業務を回せるというところが重要になってきていると感じます。
あとは私の担当している200ミリのラインでは人の手が介在して製品を作っているというところが多いので、そのような現場ではやはりオペレーションの簡略化というところが今課題にあがってきています。
このような問題を解決するために、私としては装置外部のシステムとして、データ収集ですとか解析をサポートするシステム、またホスト通信を用いた自動化システムを納入してお客様の工場の自動化を推進し、より簡潔なオペレーションができるような環境づくりを目指しております。
また、オンラインによる遠隔サポートサービスも行っており、オンラインで装置をつなぐことによって迅速なトラブル対応ですとか、また定期チェックによって未然にトラブルを防止するといったサービスを展開してダウンタイムの低減に取り組んでおります。
システムエンジニアとしては、お客様の要求を満たすために現場の課題を把握して課題を解決することはもちろんなんですけれども、既存のラインに導入するということで、すでにあるお客様先のスペックを理解した上でよりよい実現可能なシステムを提供するということが非常に重要になっています。
最後になりますが、私が業務を通して学んだことについて3つご紹介させていただきます。
1つは、設備、システム、生産現場のバランスの取れた視点で物事を見るということです。トータルで生産を管理する上ではそれぞれの視点から課題解決を考えなければいけません。どこか1つの視点に偏った提案をしてしまったことで、トータルとしてマイナスの結果を生んでしまったこともありました。
またものづくりに対しては、お客様に使っていただける使えるものを作るということの重要性を感じています。過剰にシステムを提供してしまったことで、一部機能しか使えず、マイナスの印象を与えてしまったこともあります。自分が便利だと思うことが必ずしもお客様のプラスに働くことではないということをものづくりを通して学びました。
最後にお客様とのコミュニケーションの重要性です。信頼関係を築くということがやはり円滑にシステムを導入することが非常に大切なことだと感じました。またお客様とのなにげない会話の中から、次の投資につながるようなヒントが隠れているということも感じています。
実際に装置が動く現場でお客様と関わり合いながら今業務ができているという環境を活かして、これからもエンジニアとして自分にできることを探していきたいと思っております。すみません、以上でお話を終わらせていただきます。
(会場拍手)
金津:どうもありがとうございました。TELさん(東京エレクトロンの略称)って、なんでしたっけ。ATGでしたっけ。ATGとか言います? 「明るく、楽しく、元気」とか言いますか。言わなかったっけ?
山口:すみません、ちょっと……。
金津:あ、知らない。ごめんなさい(笑)。なんでもないです、すみません。なにかみなさんからご質問があれば。
質問者4:発表、お疲れ様でした。質問なんですけど、今300ミリとかいろいろやられているなかで200ミリのラインを対応されているということで、200ミリはシステム自体もずいぶん古いと思うんですけど。
それに対していろいろお客様の要望に沿ったサポートというかたちをされているということなんですけど、お客様ごとのニーズに沿ったシステムをそれぞれ設計をされているのか、それともある程度まとまったものを準備されていて、そのなかからこういったものを選択して対応をとれるというかたちのパッケージになっているのか、どういったかたちをとられているのでしょう?
山口:基本的にはまとまったパッケージがありまして、そちらを中心に標準としてお客様に出しているのですが、やはり古いラインになりますとどうしても全体的なシステムを変えるのは非常に困難ですので、そのようなお客様に対しては今でも個々のパッケージというものを作って提供しサポートしているという状況です。
質問者4:ありがとうございました。
金津:ありがとうございました。さあ、もうひと方ぐらいいかがでしょう。
質問者5:発表ありがとうございます。機械の老朽化の問題でなにか対応するときに、一番難しかった老朽化の事例を1つ聞いてもよろしいでしょうか?
山口:一番難しかった対応といいますと、わりと古い装置をやっているので、本当に装置自体の仕様書や通信の部分の残っていないものを対応するときなどは、当時を知る方を探したり、それこそお客様に協力をしていただいて実際にシステムを作らなければいけなかったという体験は、けっこう自分の中では苦労したことの1つです。
質問者5:その時は、結局、お客様のところに行ってからの対応になったんですか?
山口:作って、実際にお客様のところでテストをさせていただいて作っていくというかたちをとらせていただきました。
質問者5:ありがとうございます。
金津:ありがとうございました。ほかにはいかがですか? 女性から手が挙がりましたね。はい、どうぞ。
質問者7:お話ありがとうございます。バランスの取れた視点を取るというお話がありましたけれども、ふだん自分が持てないような視点を持つために工夫されたことはなんでしょうか?
山口:ふだんの仕事からたくさんの方と関わるということを大切にしていると思います。自分は主にソフトをやっているのですが、ソフトの方だけではなく実際に装置を作っている方ですとか、今は通信系のシステムをやっているのですが、コントローラー装置に関するソフトをやっている方ですとか。いろいろな人と関わることで、自分にも装置側の知識もついてきますし、ソフトのほうもいろいろ知識がついてきますし、たくさんの人と関わるということを自分は大切にしていると思います。
質問者7:ありがとうございます。
金津:ありがとうございました。日頃から違う部署の方々との交流もきっとがんばっておられるのかなと思います。では、山口さん、どうもありがとうございました。
(会場拍手)
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