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IoTとAIによるビジネスと働き方の変化(全3記事)

人間はロボットとどう共存すべきか--AIとIoTが当たり前になる時代、企業はなにができる?

IoTやAIといったワードが広く認知され始め、盛り上がりを見せていますが、実際のビジネスにはどのような影響があるのでしょうか。クラウドワークスCEO吉田浩一郎氏、neurowear加賀谷友典氏、電通クリエーティブ・ディレクター森直樹氏、ソフトバンク徳永和紀氏が登壇し、昨年から今年にかけて起こった変化についてパネルディスカッションを行いました。

日本企業が抱える問題点

徳永和紀氏(以下、徳永):話の続きから、コンセプチュアル、概念的な捉え方も重要だと思うので、ディスカッションを入れさせていただきました。

今日、BtoBビジネスされてる方、もしくはBtoBtoCをされているご来場者の方が多いと思いますが、じゃあそもそも日本企業もしくは大企業さんがAIやIoTを進めるときにどういう障壁があって、どんなきっかけから打開できるのかというお話をディスカッションさせていただければと思います。

当初の進行とやり方を変えまして。先ほど森さんが提示していただいた……森さんを売り込むつもりの趣旨ではまったくないんですが、話が拡散しないように、具体的になるように、みなさんの心に響くようにということで。

(スライドを指して)この図は毎年だいたいこのみんなで話し合ってるんですけど、具体的にいうと、このなかのどこが一番トリガーになって、IoTとAIの事業は進んでいくのでしょうかということを、じゃあ森さんのほうから先に。

森直樹氏(以下、森):すいません。私が話しきれなかったところを、ちょっとスライドを、先に出していただきまして、ありがとうございます。さきほどの問いかけのテーマはIT、AIとかIoT、テクノロジーの採用だと思うんですけど、日本企業の障壁と解決策かなと思っています。

今のラッダイトの話は、ホワイトカラー、一個人の話だったと思うんですけれども、私の立場から言うと、我々のお得意様、企業1社1社に関わるところなのかなと。いわゆるAIとかが進んでいって、ロボットなのかどうかはわからないにしても、考える部分も自動化していきます、みたいな。

新しいビジネスモデルを考えないといけないときに、個人の働きようって、イコール、企業としてのビジネスの立て方だと思うんです。そこを変えていかないといけないのかなと。障壁、もう私もプロジェクト何本もやっているんですけれども、ほとんどの障壁はサイロ化されていることですね。部署間のコンセンサスをとることができない。

徳永:そうですね。私もいろいろお客様とお話すると、だいたい部署が7事業部ぐらいあって、社長がやれって言ってるんですけど、受けた人がどうしていいかわからないというようなところだったりとか、よくありますよね。

:はい……。まあ、あまりたくさんはいないんですけれども(笑)。

徳永:言えないですよね(笑)。

:結局、なんでそれが大きな、いわゆるセクション間の問題が起きてるかというと、とくに私のやっている「デジタル体験を変えていく」って、部門をまたいでなにかをしなくてはいけないんですね。

プロダクトをやっているところ、リテールをやっているところ、Webの部門、コミュニケーションの部門、ITの部門が横串になって、1つの図柄に対して、ものごとを考えていく目線を合わせないと成功しない。そこがそれぞれ各部門間の利害関係であったり、あるいはカルチャーの違いを理解できないということがプロジェクトを遅らせる原因になっています。

みなさんもたぶんそういうことを日々感じられているのかなと思うんですけれども、じゃあ、どうやって打開策をとっているかというと、1つは、すべてのセクションの方に、例えば車のプロジェクトでいえば、UXデザイン、サービスデザイン、IT、まあ、新興技術の採用ですとかデータ・IT基盤、ユーザーインターフェイスとあるんですけど。

「目線としてこれが必要なんですよ」ということと、なにが課題なのか・どうするべきなのかを、できればボードメンバーの経営層の方と、ステークホルダーになっている部署の現場のスタッフが集まって、将来的なあるべき姿をディスカッションによって決める。この作業を私どもは非常に大切にしています。

5年後、10年後のあるべき姿を、こういった同じ目線、同じ単語を理解したうえで作る。そこからバックキャストして、来年どうしよう、再来年どうしようという、実際にSOWを切っていく、フェーズを切っていくことをやることによって、通常であればプロジェクトの最後には、「8割ぐらい意図しないものになってしまいました」が、6割ぐらいやろうとしてたことに近づける。

これだけでも、だいぶ今までのたぶんサイロによる障壁で止まってしまうよりは、いい状態になるのかなということが、課題と解決策かと思っています。

社外も含めたミートアップ・ワークショップがカギ

徳永:1つだけ最後に質問させてください、IoTとAIということになると、やっぱりベースのデータセットがいくつか必要になると思います。 例えば自動車業界だと販社さんの都合があったりとか、研究開発の都合があったりとか、いろんな都合で出したくないという話とかも出てくると思うんですが、そういうときの整理はどのような切り口で今は収束させていらっしゃいますか?

:なかなか難しい質問なんですけれども(笑)。まあ、業界に限らず、最後は権利の問題があるので、権利の問題をクリアしているという前提でいえば、それは社外も含めて、例えばメーカーと販社さんとか、メーカーとパートナーさんとか含めたかたちでやっぱり同じテーブルでやるという。我々はミートアップとかワークショップって呼んでるんですけれども。すごくフィジカルな話で恐縮なんですけど。

それをやることによって、実は自分たちが持っているデータというのは、自分たちは価値がないと思っていたものが、ほかの人にとっては価値が、同じ会社であっても、あったりする。そういう気づきがあるんですね。

「これ価値がないし、価値がないものを掘り出すのにリソースとか時間がかかるからめんどうくさい」と自分で思っちゃってることを、集まって議論することによって、「なんだ、こういう価値があるのか」とか「こういうことなんだ」「こういう誤解だったんだな」みたいなことが解けていくと。

で、そこにトップがいるというのは重要で、トップの意思決定につなげるという。

この仕組みが、先ほど徳永さんがおっしゃられた、例えばメーカーと販社さんが持っている違うアセットを合わせてなにかをしようというときにも有効なのかなと。権利関係の問題が解決できていればという前提ではありますが。

徳永:ありがとうございます。私個人の好き嫌いもあるかと思うんですが、例えば今みたいな課題を解決するのに、加賀谷さんが先ほど見せていただいた動画。私も会社で論理的な話ばかりしていると通らないんですが、「こんな体験ができるんだよね」っていうと一気に議論がブレークスルーする瞬間もあったりするんですが。

加賀谷さん的に、今のような課題があったときには、やっぱり捉え方みたいなところで会議をうまくまとめるというか、仕事を進めていくような感じになるんでしょうかね?

加賀谷友典氏(以下、加賀谷):僕らはちょっとこういう……。

徳永:あ、まあ、そうですね。こういう実務的なところよりは、コンセプト的に。やっぱりいろんなショールームとか見てても、新しいユーザー体験というところの切り口はすごく価値があると感じております。

例えば、今みたいな自動車会社さんに対する価値提供という意味でいうと、どんな切り口が? 今パッとこの場ででもいいんですが。

加賀谷:まったく違うコンセプトを創出するとか、そういうことになれば、僕らのチームはすごくいいと思います。

吉田浩一郎氏(以下、吉田):加賀谷さんに教えていただきたいのは、「COTORIES」ってあったじゃないですか。ロボットって誰でも作ろうと思えば作れると思うんですけど、「なぜあれになったか」という、そこの発想の入り口というところがたぶん一番重要かなと。

徳永:そうですね。

コンピュータを鳥型にするメリット

加賀谷:今の段階って例えると、iPhoneって出たばっかりの時、「ぜんぜん使えない」とか「ガラケーのほうがすごく性能いい」とかすごく言われまくりましたよね。

吉田:確かに。

加賀谷:ちょっとそれに近いかなと思っていて。今の段階で、音声インターフェイスを使ったコンピュータといって大々的に出すと、期待値が上がりすぎちゃって、出てくるアウトプットが貧弱だと「えっ、こんなことしかできないの?」となる。

でも、最初からああいったデザインにしておくことで、期待値ってちょっと下がりますよね。「所詮、鳥型コンピューターか」というところで。鳥ぐらいの期待値で接してもらうと、ちょっと間違えても、「まあ、しょうがないか」って思ってもらえる。

そのへんを考えて、今の時代背景からいうと、このあたりが落とし所かなということで、あのようなデザインというか、考え方になりました。

吉田:なるほど、じゃあUXだけじゃなくて、市場とのコミュニケーションというところも含めた設計なんですね。 それがおもしろいですね。

徳永:本当そうですね。私もいろいろコンシューマー向けのプロダクトを作ってるメーカーさんとお話していると、メーカーの方だと、真摯な意味であれもこれも盛り込んでしまって、多機能化して動かないときとかたまにあるんです。

今のお話をおうかがいしていると、やっぱり単機能化ですよね。わかりやすさ。本当は流通の値段がそれでなるべく下げられて出荷されると、生活にIoTが浸透しているというシーンが見えやすくなるだとか、そういったお話ですよね。

いくつかまだディスカッションもさせていただきたいとは思ってはいるんですが、今年は時間が限られておりまして。去年はもう15分ぐらい長かったんですけれども。加賀谷さん、ロボットとの共存はサクッと話せないですよね?(笑)。

加賀谷:これ、1個だけみなさんにシェアしたいなと思ってるのが、ここに僕、本持ってきたんですけど、たぶん明日発売かな。『<インターネット>の次に来るもの』というタイトルの本で、ケヴィン・ケリーさんって『WIRED』というオンラインのメディアの初代創業編集長が書かれたんですね。

〈インターネット〉の次に来るもの―未来を決める12の法則

ケビン・ケリーさんは今、日本に来ていまして、今日も講演をやる。明日も講演をやるんですね。この本のなかにすごいヒントがいっぱい入っています。

このロボットとの共存については、事例で書いてあるんですけど、僕が「これは参考にすべき」と思ったのは、チェスのチャンピオン、(ガルリ・)カスパロフさんかな、彼がWatsonに負けましたよね。何年前かな、ちょっと前ですけどね。

あの彼は負けたあとになにをやったかというと、実はフリースタイルということを始めていて。なにかというと、コンピュータと人間がタッグになって試合するという、そういうチェスを始めてるんですよね。

それによって、実はチェスのレベルって上がっていったんです。人間とまったく違う思考法で指す、今まで存在しなかった定石というんですかね、これが登場して、それを学んでより強くなってるという現象が今、起きている。

個人で働くという目線がシニアライフにつながる

吉田:なんかあれですね。恋愛と結婚みたいな(笑)。対峙するんじゃなくて、「2人で前を向く」みたいな(笑)。

加賀谷:そうです。今のチェスの事例というのを仕事に置き換えても成立するんじゃないのかなと僕は思っているので。

この本はヒントが満載で、ぜひみなさん、今日これを本屋あるいはアマゾンで注文して読まれるといいんじゃないかと思っているので、ちょっとこれシェアします。僕のネタ本でした(笑)。

徳永:ありがとうございます。思わぬ宣伝が入ってきましたが(笑)。お時間も限られているので、私的にはまとめづらいんですが、一応まとめ的にいうと、去年と今年でなにが変わったのか、主に2点ポイントがあると思っています。

去年は「IoTとかAIはすごいんだ!」「すごいぞ、すごいぞ!」というようなマーケットの感じだったのが、ちょっと、具体的なクライアント名はあげられないですけど、某自動車会社さんとか、まあ弊社もホンダ様といろいろ協業をやらせていただいてるんですが、どうやってAIとかIoTを収益化するかと。

けっこうみんな忘れてるのが、これ、そもそもお客様の価値を向上して、キャッシュを生むためにやっている取り組みなので、その話が具体的な経営レベルの議論になってきたというのは非常に重要なのかなと思っております。その先行投資で、弊社の社長はARMの買収もしている流れになってるかと思います。

2つ目のお話は、やっぱり働き方のお話というのは、やっぱり人間あってのAIとIoTでございますので、やっぱり会社名で「○○会社さん、すごいですね」というのもあるんですが、やはりクラウドワークスさんだとか、最近のスタートアップベンチャーのみなさんと話してると、その方の信用力が非常に高い。

「信用力があること=借り入れをできる」というビジネスの基礎ですよね。信頼力というものが、社名だけじゃなくて個人にもウェイトがきている。

先ほど吉田さんから話があったように、普通の女性が年収2,200万円ってすごいことですからね。すごいですよね、固定費かかってませんからね。全部じゃぶじゃぶなわけです、というとあれですけどね。

吉田:完全に変わってきてますよね、枠組みが。

徳永:なので、やっぱりより個人のスケール、具体的に言い方を変えると、人のクリエイティビティという。言い方を変えると、さらに受け身じゃなくて、自分が「これが問題なんじゃないのかな?」っていって、それを事業化していくとか、チャレンジしていくということ、を進んでやっている人はちゃんと利益を生んでいる。

吉田:だから、65歳以降どうするのかということでいくと、クラウドワークスで実際に85歳まで働いていて、65歳、70歳、75歳ぐらいまではぜんぜんクラウドワークスで稼げるんですよね。企業のなかだけで使えるスキルという目線、この会社のなかだけでの評価という目線でいくと、その65歳から困るわけですよね。

そういった意味だと、本当に個人という目線で今から努力をしていく、そういったことが本当に65歳以降のシニアライフにもつながってくる時代になってきているのかなと思いますね。

徳永:ありがとうございます。というかたちで、ちょっと、我々の講演は以上で終わらせていただければと思います。すいません、時間だいぶオーバーしまして、お忙しいところ、みなさん、どうもありがとうございました。

:ありがとうございました。

(会場拍手)

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