2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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ジニー・ロメッティ氏:みなさん、おはようございます。IBMにしばしの時間を与えてくださってありがとうございます。
IBMの顧客のみなさんがたくさんいらっしゃったので、みなさんにまずご来場を感謝することと、私たちと関係を作ってきてくださり、お役に立たせてくださったことに感謝することから始めなければ、職務怠慢になってしまうと思います。
さて本日は、こちらで私の一番好きなトピックについてお話しする時間をいただきました。一方で、私たちをご存知のみなさんにお伝えしなければならないのは、ヘルスケアがずっと重要な問題だったということです。IBMにとって、長い間目的の中心だったとさえ言えます。
ご存知のように、私たちは巨大な消費者ですよね。みなさん(来場しているヘルスケア企業)にとって私たちは顧客で、ヘルスケアについて巨大な消費者だと言えます。事実、私たちの従業員のために年間20億ドル支払っています。そして私たちはそれを彼らの健康と幸福への投資だと考えています。
また、私たちは変革への巨大な支援者でもあります。昨今の「Bridges to Excellence」があってもなくても、結果に基づいたヘルスケアを奨励する会社団体と共に発表された「Health Transformation Alliance(HTA)」と呼ばれるものを目にすることになっていたでしょう。
そして革新者であり、ソリューション提供者もあります。申し上げましたように、私たちは何十年もこの産業に貢献してきました。
しかし私は、私たちの「月探査ロケットの打ち上げ」――私はこう呼んでいるのですが――についても、いくつかお話ししたいと思います。なぜ私がそれを「月探査ロケットの打ち上げ」と呼ぶかについては後ほどお話しいたしましょう。それが私たちのWatson for Oncology(がん診断を支援するWatson)であろうとJohnson & JohnsonとMedtronicと一緒に私たちがしている仕事であろうとです。
「一方で」と先ほど申し上げたのは、もう一方で私は別の理由でここにいるからです。ユーザーとして、消費者としてではなく、私はヘルスケアの未来は私たちが「認知的(cognitive)」と呼ぶものだということを断言し、みなさんを説得するためにここにいると思っています。
それは成長していくシステムであり、みなさんの仕事と連動してヘルスケアを変えるのに役立つものだと私たちが、そして私が心から信じているものです。私がこれからお話することですけれども、それは発見のしかたをまったく新しく作り直し、受け渡しのしかたを新しく心に描き直します。
そして最後には、それは健康という領域全体を変えてしまうようなものです。メリルが話したように、私たちにとってヘルスケアとはIBMという会社の未来を賭けてきた産業の1つなのです。
さて、私が“認知的領域”によって意味するものを説明することから始めさせてください。聴衆のみなさんとの交流を図るために、1つ質問させていただきます。みなさんの中に、デジタル企業、あるいはデジタルな方向を目指す会社に勤めていらっしゃる方はどのくらいいらっしゃいますか?
わかりました。これは引っかけ問題のようなものです。つまり、世界中すべての地域において、同じ答えが出ます。どこでもそうなのです。私がこれを質問するのが公的な場、私的な場、あるいは政府であろうと関係ありません。
さて、このデジタルという発想は、一部においては、なぜ私たちが一連の能力を築いてきたかということです。メリルが話していたように、みなさんはビッグデータのことを言っていると思いますが、私たちは世界最大で有数のビッグデータ・アナリティクス会社です。
それは、なぜ私たちがこのクラウドという発想をHIPAAに従った事業に持ち込んだかということです。それは、なぜApple社によって安定している世界で私たちが新しく想像的な仕事をしてきたか、そしてなぜ私たちが最大の企業保障を備えた会社であるかということです。
アナリティクス、クラウド、モバイル、それらはすべてみなさんがデジタル社会の一員であるために非常に重要なものです。でもここでお聞きしたいことがあります。すべての人々がデジタルであるとき、それから先にみなさんを差別化するものはなにになると思いますか?
私はつねにデジタルを基盤として考えますが、それは最終目標ではありません。それによって私はそれがなんなのかということに到達できると思っており、この事業ではすでに何度も斬新なシフトチェンジがありました。しかし私はそれが最も破壊的で最も変革的だと信じています。そしてそれはまだ私たちの目の前にあって、それがこの認知的な世界なのです。
そこで私はその認知的な世界がなんなのかを説明することから始めたいと思います。なぜなら私はそれを時代と呼ぶからです。それは時代の幕開けです。おそらく、簡単に言うと、デジタルビジネスとデジタル知能が合体したものがみなさんを認知的にすると考えてみればいいのだと思います。
さて、それには2つの理由があります。ヘルスケアの話に直接入る前に、2つの理由を説明します。それがなぜ今起こっているかということにつながります。
まず1つは、みなさんもこれについてよく話すと思いますが、データです。ただしそれは“可視および不可視”のデータです。ヘルスケアデータの指数の伸びについては終わりのない報告とディスカッションが行われています。
2011年の世界のヘルスケアデータ総計で私が見た数字は150でした。みなさんが言うところのエクサバイトです。エクサバイトという数学がよくわからない人のために言うと、それは世界で書かれたすべての本の300万倍です。さて、今年はその10倍、つまり世界でこれまでに書かれたすべての本の3,000万倍で終わるだろうと言われていますね。
それらのデータがすべて使用されたとは言っていませんよ。とにかく数が多いということです。それは列や段、表に入った昔からある種類のデータで、この時代を動かしているものの一部です。
でももう1つのより興味深い部分は、私が言うところの不可視データです。ビッグデータと言う人もいますね。その80パーセントは体系化されていないと言われています。それを、医者のメモ、衣類、X線、ソーシャルメディア、天気、センサー、音として考えてみてください。
今日、システムはそういったすべてのデータを保持することができますが、それらは実際にはどういったものかはわからないのです。あの映画がどんなだったか、すべての要素がどんなものだったかを伝えたり、言葉にしたりすることはできなかったでしょう?
誰かがそのすべてのデータにタグ付けしない限り無理ですよね。そこが変化したところなのです。その不可視データがこれから可視化されます。そしてこの仕事の中でそれらのデータを結合させるとき、天候がぜんそくに影響するということや、犯罪を犯すことは精神的あるいは身体的健康と大きく関わりがある、といったことが明らかになってきます。
そういうわけで私たちは、Watson Health Cloudと呼ばれるものを結合させたのです。私たちはこの会場にいる人たちの数名や、パートナーと一緒にこれを行いました。それはみなさんが利用できる、体系化された、もしくは体系化されていないHIPAA規格のデータです。
そして私たちはPhytel、Explorys、Merge、Truvenといったおそらくみなさんもご存知の企業、それからApple Research Kitや非特定化されたデータなどの公的資源を買収して力を借りるために40億ドルを費やしました。
そこで、臨床、医療、費用、品質に関するデータについて考えてみてください。
メドラインの相互評価のようなもの、あるいはあらゆる種類の治療のガイドラインについて、そこにあるすべての経路をたどることを考えてみてください。事実、私はそれを世の中で最大の非政府機関によるデータの山だと思っていると言っておきましょう。
ですから、変革を起こす大きな推進力は、単にこのビッグデータではなく、みなさんが利用できる可視および不可視のデータなのです。
さてみなさんは、「それをどうやったら使うことができるの?」と言うでしょう。それが、この時代に変わったもう1つの部分です。そしてそれはつまり、みなさんはなにかこれまでと違うものを手にしているということです。そのデータを理解するのに充分なシステムをプログラムすることは誰もできませんでしたからね。
そしてそれは認知的コンピューティングの出現です。これを人工知能と言う人もいますが、それはひどい呼び方ですね。これらは新しいシステムで、自然言語で作動し、領域知識を持っています。私がいつも言うことですが、それらは理解し、論理的に考え、学習します。
みなさんが質問をするときにみなさんの脳が知識に基づいて非常に素早く仮説を立てるのと同じように、認知的コンピューティングは仮説を立てます。そしてみなさんの脳はその仮説に自信があるかどうかを決めますよね。
もし自信があるなら、答えを言うでしょう。自信がなかったら、知っておく必要があるデータについてなぜ確信がないかに関するすべての理由を述べるでしょう。認知的コンピューティングも同じように働きます。そしてそれらは学習するのをやめることはありません。
これは本当に重要な部分です。それらは決して学習をやめないのです。つまりみなさんがそれらを使い始めるのが早ければ早いほど、それらから得る利益は大きくなるということです。そして時が経つにつれて価値が下がっていく多くのITシステムとちがって、これらは時が経つにつれて価値が上がっていきます。
実際に、これがおそらくみなさんが見て知っているIBM Watsonの実態です。私たちはIBM Researchで10年以上前にこれに取りかかりました。私たちは5年前に、このテクノロジーをJeopardy!ゲームショー(アメリカで放送されているクイズ番組)でデビューさせることに決めました。Jeopardy!を観る人はいますか?
いつでも観るわけじゃありませんよね。わかりました。ちょっとバカげた質問でしたね。でも、こう考えたのには長い道のりがあったのです。当時、私たちが見せたWatsonの行為は、質疑応答でした。Watsonは5つのテクノロジーを持っていたという点について考えてみてください。
今日、Watsonは30の行為、7つの言語、50のテクノロジーを持っています。そして私たちはWatsonに“見ること”を教えています。言いかえると、みなさんは医療従事者という視点で見てみる必要があります。X線や画像を見てそれらがなんなのかを理解することができなければなりません。
ヘルスケアは事実、Watsonの最初の職業選択でした。そして彼は今ほかの仕事にも就いていますが、とにかくそれが彼の最初の仕事でした。彼はずいぶん昔にゲームをするのをやめ、ずっと前に医大を卒業していたのです。だから、今私はそれを認知的だと言っているのです。
それを学習するシステムとして考えれば、それらは立ち止まることなく、理由を理解し、交流によって成長するのです。それが今ここにある新しい時代なのです。
そういうわけで私はヘルスケアよりも完ぺきな産業を考えることができません。だからこそ、ヘルスケア産業の未来は認知的になる、そして今日ここにおいてはすでにそうであるということを私はお話せざるを得ません。
私たちが5年前にJeopardy!にWatsonを紹介したとき、私たちのところへやって来た最初のクライアントが医師と科学者だったというのは、偶然ではありません。彼らは、これを見たと言いました。なぜ彼らがJeopardy!を観ていたかは私に訊かないでください。
「これを見ました、私はWatsonを私たちがやっていることに適用することができます」と。そしてこれは彼らがやっていることを拡大することでもあるのです。これは本当に重要なことです。
私たちはただ研究をしただけです。そして私たちは、エコシステム全体でヘルスケアを提供する人たちに、認知的という言葉を知っているかを尋ねました。私たちはその言葉に聞き覚えがあるかどうかを尋ね、81パーセントはそれが未来にとって重大なものだと言い、95パーセントは投資を始めるつもりだと言いました。
さて、先週私は多くの医師たち、ある特定の領域でWatsonを訓練している15人の医師たちと1日過ごすという喜びを味わいました。彼らは数年間それに取り組んでいます。
私は言いました。「なぜあなた方はこれをやり続けるのですか」と。
と言うのは、あなた方はすでに多くのものを持っているし、この世界のあなた方の領域においては専門家なのに、と。私が非常に興味深いと思った答えの1つは、これです。彼は言いました。
「どうしてかわかりますか? 患者たちがこれを求めるだろうと思うのです。そしてすでに、何本かの連絡を受けています。私はこれが欲しいのです。なぜなら『先生、全部見てくれましたか?』という質問に答えられないからです。
Watsonは全部見たということができる、というわけではありません。しかしそれは医者が意見を聞くことができる、彼らが言うところの博学な同僚や情報に基づくセカンド・オピニオンなのです。それで、どこで申し込めばいいんでしょうか」
最初にお話ししたように、私はここで3つの領域に関する例を挙げたいと思います。1つは、発見のしかたをまったく新しく作り直す方法について。そこから始めさせてください。なぜなら、学習し、データを見て、関係づけるシステムについて考えてみてほしいからです。
そのシステムが得意とすることはなんでしょうか? それは隠されたつながりを探すことです。それゆえ、もし仮説を立ててより素早くそれを試し、結論に到達できるなら、あらゆる場所での発見にそれがもたらし得る衝撃が想像できるでしょう。
例えばゲノム医療です。それは明らかです。創薬です。または、既存薬剤の代替的利用、再度目的を設定すること、あるいはほぼすべての革新です。私が納得できると思う例の1つは、臨床実験の照合です。今日では、5パーセントのがん患者が臨床実験の対象になっています。たったの5パーセントです。
携わったことのある方はご存知かと思いますが、それは非常に複雑な領域で、IDと記録を並べるのがとても難しいのです。そこで私たちは臨床実験の照合にWatsonを使い始めました。もちろん彼は、プロトコルやガイドライン、コンプライアンスと同様に、EMR、研究所、レポート、テストについてもすべて完ぺきに理解するよう訓練を受けなければなりませんでした。
そこで私たちは、乳、肺、結腸、消化器官に関するまず臨床実験の照合をMayo Clinic(メイヨ・クリニック)で始めました。そして最近になって、彼らは製作に入りました。つまり、乳がん患者のために彼らが選んだ方針であれば、正しい種類の臨床実験をすべての人に行うということです。
Novartis(ノバルティス)と一緒に、私たちは別の方向に進みました。テストしようとしているものを入手し、それに合う人々を見つけるのです。ここで突破口を得る方法がよくわかると思いますが、それは着手するのが早ければ早いほど、早く折り合いをつけることができ、そしておそらく実行に移すことも早くできるということです。
もう1つの例は、別の病気です。私たちはつい先週Pfizer(ファイザー)と提携することを発表したばかりですが、そのテーマがおわかりいただけると思います。私たちはこのすべてにおいて1人ではありません。これはエコシステムについての話です。私たちは自分たちの役割を果たすことになると信じています。
しかしメリルの冒頭の挨拶にあったように、別のグループと競争することについて話していましたね。それは私たちが思い描いている未来ではありません。私たちは、人々が共に働くエコシステムを思い描いており、すでにそれが起こっているのを目にしています。
これはパーキンソン病に関するPfizerと共に行った仕事です。先週申し上げたように、私たちが行っていることは、センサーやモバイル、機械学習、実時間処理などのデータを集めることです。そうすることで病状の進行がわかり、そのことで新たな治療の進展が早まります。
そして、それが発見する方法をまったく新しく作り出すことで、それを今挙げた例によって進めることができたのです。感覚的にはみなさんにもわかっていただけると思います。
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