2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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田中章雄氏(以下、田中):では、マミラブのアリスさんに話をしていただきたいと思います。アリス、お願いします。
アリス・チャン氏(以下、アリス):アリスです。マミラブの共同創業者であり、CEOをしています。マミラブは、地域において信頼できる人を集めるプラットフォームとなります。
田中:あなたはどちらからいらっしゃっていますか?
アリス:私は台湾から来ています。私はさまざまな職の経験もあり、高度な教育を受けています。しかし、娘を生んだ時、育児について何も知りませんでした。
インターネットでいろいろと調べ、情報収集し、子育ての秘訣や育児のサービス、育児関連商品などを知ろうとしました。Googleにエンジニアとして勤めていたので、オンラインで調べるのは自然なことでした。しかし、インターネットで調べてもあまり役に立つことはなく、まるで迷子になったように感じてしまいました。
田中:Googleもあまり役に立たなかったのですね。
アリス:たくさん情報はあります。私がわからなかったのは、誰を信頼したらいいのかということでした。多くのeコマースのサイトはあります。商品も非常に多くあります。しかし、どれを買ったらいいのかがわかりませんでした。
私たちが目指したものは、母親が最も信頼できるプラットフォームです。なぜならば、母親というのは子供のために何かを購入する切り口となる人であり、自身のためにも買いますよね。
マミラブを始めるきっかけは、ほぼ事故のようなものでした。私はFacebookで見つけた育児の情報を、シェアしようとしました。そして、その情報は友人だけでなく、さらに広い範囲の人に対してもシェアされました。
ある金曜の夜、私は1通のメールを受け取りました。彼女は緊急の質問があり、それをFacebookに載せてほしいというものでした。掲載後15分のうちに、彼女は20〜30もの反応を受けました。
そして他の友人も、私に質問を載せるように頼んできました。フォーラムやコミュニティを作ろうと思っていたわけではありません。私たちは、ただ質問を載せ続けていただけなのです。
Facebookでの友人が、私のことをキャットママとよぶのですが、これは子供の名前がキャシーというからです。そして、皆がそのうち「キャットママ、この商品は買ってもいいと思う?」、「キャットママ、何がおすすめですか?」、「キャットママ、一緒に商品を買いませんか?」などと、質問を重ねていくようになったのです。始まりは2年半前にも満たない頃ですが、今はすでに30万人ものファンができました。
田中:つまり、Facebookでの質問が発端となって、それが母親のための育児情報交換サイトとなったわけですね。
アリス:そうですね。最初の交流はFacebook上で始まりました。マミラブの企画をしたわけでもありませんでした。ただ、よい情報や育児の秘訣などを共有していたことがきっかけでした。
最初は友人とのやりとりでしたが、そのうち新しい人が入ってきました。私はブレンダー1つを買うのにも、すべての会社を見て決めています。サイトで離乳食のレシピなどを載せていましたが、そのうち「どんな調理器具を使っていますか?」などの質問があり、「何がおすすめですか?」、「その器具の購入はできますか?」と、話が進みました。
そこで私は、台湾の調理器具などを扱っている店をあたって、店のオーナーと話をしてみると、彼女も私のページのフレンドでした。そんなことがきっかけとなり、マミラブが始まりました。私たちの最初の売買では、200個もの商品を売ることができました。
さあ、どうやってマミラブは最も信頼されるプラットフォームとなったのでしょうか? 以下にまとめます。「Contact、Community、 Commerce」の、3つのCがキーワードとなります。
最初のC、つまりコンタクトですが、私たちは育児の秘訣をエキスパートから聞きます。母親もいますし、医者や歯医者などのエキスパートも加わります。エキスパートたちも母であり、地域に属して情報を共有したいという人たちです。
近日、母親同士がスピーディに質問をし合うことができるアプリケーションを作りました。10分以内に返事が返ってきます。だいたいの返事は、何人かの異なるユーザーからとなります。
次のC、コミュニティですが、私たちのユーザーは非常にアクティブでお互いに交流をしています。写真のコンテストやレシピのコンテストなどを絶え間なく行い、ユーザーが人生の中で大事な瞬間を、私たちと共有してくれています。
サイトにはしばしば800以上もの写真が掲載され、時には1000を超える写真が載ることもあります。コミュニティイベントからの写真も含まれます。みんなが地域に参加したいと思っているのです。
さらに、多数で購入すると安くなるものがあった場合、そういった形で物を購入したがる人もたくさんいます。「一緒に何かを購入しよう」とFacebookに載せるのも、お得に買うためのよい方法です。
ある中国人の友人は、「夫に殺されちゃうから、やっぱり買うのはやめておきます……」なんて言ったりします。 買いすぎてしまうのですね。一緒に購入するかどうか、Facebook上で友人同士でやり取りをして決めます。
私たちは他のサイトに比べ、あまり宣伝にお金は使っていません。私たちはそれよりも内容を高め、さらに信頼できる情報を集め、創造性豊かな商品を提供するサイトになることに、注意を向けています。信頼のおける商品をメンバーに届けたいと、日々思っています。
最後のC、コマース。ビジネスにおいてですが、私たちは自分の家族や子供に買ってもいいと思うものだけをすすめています。アマゾンなどのサイトでは、すべての商品において、商品の出元の会社から出された写真をスタンダードとして載せています。私たちは商品を自分で試して、商品の質を確認してからおすすめするのです。
私たちのオフィスのコーナーには遊び場が作ってあり、社員は子供を仕事場に連れてきて、商品を使ってもらいます。そのことで商品の質を試すことができ、サイトに掲載するか決めています。
田中:では、すべての商品を自分で試されているのですか?
アリス:最初は、私と私の子供とで商品を試していました。今は社員が増えたので、社員の子供にも試してもらっています。ほかにVIPのメンバーに試してもらうこともあります。
彼女たちは赤ちゃんの写真を見せるのが大好きなので、私たちはただ商品の出元からの写真を使うのではなく、商品をどう使うか、どんな時に使えるか、おすすめの使用法などの、実際に役に立つ写真を掲載するようにしています。
母親は非常に忙しいのですが、母親になる前には買わなかったものが大半なので、どの商品を買うのにもいろいろと調べなくてはいけません。私はまずGoogleで検索して、最初のページの記事をすべて読み、商品を一番安く買います。
私たちは大量買いをするため、メンバーのために最もお得な値段で商品を提供できるのです。私たちはブランドの商品のみを取り扱っています。他のサイトはブランド以外の商品も扱っていますが、私たちは信頼を重視しているため、まずはどんなブランドなのか、信頼できるのか? 安全性は非常に重要だと考えています。
商品の情報だけではなく、私たちはそれに関わるプロの情報なども提供しています。医師のすすめる情報などです。例えば、抱っこひもは赤ちゃんが座るポジションも重要で、大腿部にも重みがかかるような使い方をしなくてはいけません。赤ちゃんの股にだけ圧がかかる抱っこの仕方は間違っています。
毎日サイトやアプリケーションが更新されていくので、お母さんたちはそれを通して、どの商品がいいか、なぜそれを推奨するのかがわかります。
質問者1:内容はテキストや商品紹介が多いようですが、サイトには動画もあるのですか?
アリス:動画もあります。実は最近とても売れた商品として、日本製のベビーカーがあります。世界で最も小さいベビーカーです。折り畳むとA4サイズが2枚の大きさに収まるのではないかと思います。
田中:その動画はありますか?
アリス:サイトにありますよ。A4で2枚ということを示すには、動画がいりますよね。本当です。
私たちはオーガニックも推奨しているので、地域のオーガニック商品の販売者とやり取りしています。輸入された商品などは、私たちのサイトでまず商品を試して、販売者はその反応を参考にすることもあります。
私たちのサイトのメンバーは中流階級の中でも上のクラスの人たちであり、質に重きを置きます。
田中:例えばケヴィンが悪質の販売者だとして、質はあまり高くなくても安く、利益を多くあげられるような商品をすすめてきた場合はどうするのですか? 「これはよく壊れるけれど、利益はたくさんあがりますよ。どうですか?」と言ってきたら、どうします?
もちろんケヴィンの商品は失敗するでしょうが、それがわかっているような商品をすすめられた時は、どう対応するのですか?
アリス:商品の安全テストの結果を、必ず業者に請求しています。私たちは消費者からの信頼を大切に思っています。地域の中で、信頼は最も大事なものであり、あまり評判のよくない悪質な商品を売ることはありません。
私たち自身が試したものをすすめているだけではなく、メンバーにも試してもらっている商品なので、地域の声が反映されていると言えます。
では、どうやってオーガニック商品のマーケットを成長させていけるのでしょうか? 最初は、Facebookの内容を友人の間で共有することから始まります。だいたいの友人が母親同士です。
ただ評判がいいから宣伝しているだけではなく、さまざまな地域の人々が交流を深める中で、自分が買ってもいいと思うような商品のみを扱います。時には自分で買おうと思っていたものが、先に売り切れになってしまうような売れ行きを示す場合もあるのです。
サイトのメンバーたちは自然と購入者にもなるのですが、メンバーは私たちのサービスに満足しており、そのサイトを通して多くの友人に出会っています。
最近は、シニアのメンバーにも参加していただくようになりました。彼女は頻回にサイトを使う人なのですが、その彼女が言うには、この会社に勤めるのは大変有利で、誰よりも先に一番お得な買い物ができるということで喜んでいます。
田中:何人のお母さんが社員として働いているのですか?
アリス:現在7人のお母さんが社員として働いており、40人が社外で仕事をしてくれています。
私たちのサイトにはVIPのお母さんグループのメンバーがいまして、彼女たちは他のメンバーの質問に回答したり、返信したりするのを手助けしてくれます。VIPのお母さん方も大きな力です。今後の私たちの方針に移りたいと思います。
Google Analiticsや自身の経験からも、母親というのは常に子供の世話や家事をしていて、細切れの時間を作るのも大変で、非常に忙しいです。子供がいる時には、ノートパソコンを開くのさえもなかなかできません。
2週間前から、モバイルを使ってリアルタイムでより簡単に交流ができるようなプログラムを始めました。夜の10時に、その日で最もお得な商品を集めた情報や、他の育児情報を流したりするのです。マミラブは、若干2年半前に私のアパートの食卓で始まった会社です。
田中:そして今は、どれくらい成長したのですか?
アリス:今は合わせて40人です。
それに加え、海外との交流も増えてきました。なぜ、私たちのサイトを見るようになったのかはわかりません、みんな中国人の人ばかりなのですから。
さらに最近は、海外への商品の郵送依頼もよく入るようになりました。といっても、まだそういった海外への郵送は行ってはいないのですが。今年から規模を拡大し、台湾だけでなく東南アジアや中国にもビジネスを広げようと思っています。
なぜなら、世界中でアッパーミドルクラスのお母さんたちから、品質にこだわった育児グッズなどの需要があるにも関わらず、実際に母親業をしながら、どの新しいブランドが一番いいのか調べている時間がないからです。
アメリカや日本、韓国などの海外から来たブランドなどが対象で、中でも日本のブランドは台湾で非常に人気があります。
田中:あなたのサイトでは、日本の商品はどれくらいの割合を締めているのですか?
アリス:約25〜30パーセントくらいが、日本のブランドになります。1日に入ってくる注文の数は、それほど多くはありません。だいたい4件の注文が、平均回数になります。ただ、今後その注文の数を増加させていくことは可能だと思います。
また、時折、信頼に欠けるような地域の販売者が商品を売りたいと申し出てくることもあります。私たちは販売者も知り、どんな商品なのかもよく知った上で売買したいのです。
ただお金の取引だけではありません。売買のやり取りも友人関係であったり、地域の関わりで行っていたりします。どちらかというと、先に友人になり、その後「マミラブはこんないいことをしていますよ、商品を売り買いしませんか?」というアプローチを採っています。
インターネットが始まる前、人が何かを買っていた時のような感じで、私たちは頑張っています。そして、これまですばらしいチームを築いてきたと思っています。
台湾では軌道に乗っていますし、こうした信頼を重視したアプローチはインドネシア全体でも必要とされているので、需要は大きいと思われます。
では、なぜマミラブが今日本にいるのでしょうか? 先ほど述べた通り、私たちが扱う商品の25〜30パーセントのブランドが日本のものになっています。日本のブランドとも契約を結び、連絡も密にし、台湾に定期的に訪問していただいたりもしています。
私たちは、さらに日本の質の高いブランドの販売者と関係を作り、共にビジネスを拡大していけたらと考えています。
田中:すでに、幾人かの日本の販売員と連絡を取り合っているのですよね。
アリス:ええ、社員の中には日本語が日本人と同じように話せる人もいますし、そういった社員を日本に派遣に出すことも考えています。アメリカの販売会社とも関係を作っており、そちらも順調に進んでいます。私たちは、地域のみなさんの毎日をよりよくしていきたいと思っています。
田中:アリス、ありがとうございました。
ケヴィン:質問があります。あなたが最もよく使用する、組織としてのサイトはどこですか?
アリス:オーガニックに関しては、Facebookです。Facebookは、台湾では最も広く使われているサイトであり、私たちの友人はFacebook上で商品やアイデアなどをシェアしていきます。
南アジアでは、他のメディアとしてよく利用されているサイトもあります。中国では使われていないので、何か他にも考えなくてはいけませんが。
田中:Googleはあまり使えないのですか? 前にもそう言っていましたね。
アリス:Googleでの広告自体が、それほど役に立っているとは言えません。確かに私はマウンテンビューにて4年間、Googleの技術者として仕事をしていましたが、どうも友人からのおすすめの言葉というのはGoogleで使うキャンペーン用の言葉よりも力があるように思います。
マーケティング用のお金をたった1月で使いきってしまいたいとは思っていません。私たちは質の高い内容を作り出し、地域で多くの人がそれを何回もシェアしていくような情報を作り出していきたいのです。
地域では、友人同士で情報を共有していきます。友人関係を築くのには時間がかかります。信頼関係を作るのは、たった1日でできるものではありません。私たちは、信頼の置ける情報をシェアし続けていくことから始め、その後そういった相手が購入者となってくれるのです。
田中:アリス、ありがとうございました。
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