2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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ニケシュ・アローラ氏(以下、ニケシュ):話は戻りますが、私がソフトバンクに入ることを決めたときに、Googleを辞めてインドで4週間休暇をとっていました。
それでも社長はインドまで電話をかけてきました。そして「こういう仕事をしてほしいんだ」と言ってきました。それはたぶん、社長がどこの市場を攻めるかというアイデアがあったから電話してきたんじゃないですか?
孫正義氏(以下、孫):どんな仕事をしてほしいと言いつけたんでしたっけ?
ニケシュ:インドでの交渉です。私は休暇をとるつもりだったのに、いろんな仕事を頼んできたんです。
孫:私から見て、インドは進出すべき市場だと思いました。さらに、その中で注目すべきなのはeコマース市場なんです。
ニケシュ:1年半前ですかね。「中国がうまくいってアリババも上場した。次の大きな市場はどこだ? 人口が多いところ、これからテクノロジーが爆発的に普及するのはどこだ?」とか、そういう話をしましたね。
孫:そうです。それでひとつの会社を見出しました。それがSnapdealです。私はしょっちゅうインドに行けるわけではないので、Snapdealの方には日本に来ていただいて何度か協議を重ねてきましたが、すでにSnapdealには投資家軍団がいたわけです。
ですから、既存の投資家たちにソフトバンクの投資を受け入れるよう説得しなければならなかった。
ニケシュ:そのときは、非常にアグレッシブにプレゼンしてましたね(笑)。
孫:そうなんです(笑)。そして、今はかなり持ち分を持っています。当時はバリュエーションが10億ドルということでしたが「じゃあ私たちが10億ドル出しますから、今回は20億ドル資金調達できますね」と。「その半分は私たちが持ちましょう」となったんです。
そのアイデアをSnapdealのCEOは気に入ってくれて、投資家軍団に説明しにいった。でも投資家軍団はそれを拒否しました。ダイリューション(希薄化)が起きるからです。ということで、また何度か協議をしました。
その当時、ニケシュはまだソフトバンクに入社してなかったので、私は電話して「ニケシュ、ここは頼むよ。交渉してほしい」と。それまで交渉はぜんぜんうまくいかなかった。私はここであきらめてもよかったんだけど、ニケシュがSnapdealに行ってくれて、投資家軍団を説得してくれたんです。
さまざまな交渉があったでしょうが、投資家のみなさんは納得してくれた。あなたがいなければ、私はSnapdealの投資をあきらめてました。その当時、正式にはソフトバンクに入社していなかったんだけど、私のために骨を折ってくれました。ニケシュがいなかったら、あきらめざるを得なかったんですね。
ニケシュ:かなり複雑な交渉でしたね。
孫:もちろん、既存の投資家たちもあなたの趣旨を受け入れず、拒否する権利もあったわけです。ということで非常に複雑なディールだったんですけど、ニケシュのおかげでうまくいきました。
ニケシュ:それ以降も、3〜4社に出資しています。
孫:アカデミアの人がせっかくお越しですから、他にどんな会社に出資したか、それはどんな会社なのか……まあSnapdealの話でもいいので、私たちが投資したあとどう成長したかを話してください。
ニケシュ:孫社長が「中国の次はインドだ」と、市場を見出したわけです。インドの人口構成を考えても、テクノロジーの知識がある若い世代が多いということを考慮して、インドという市場を見出した。
例えばアメリカではウォルマート、GM(ゼネラル・モーターズ)が一番高いです。そしてアマゾンもeコマースの世界ではナンバーワンですけど、インドにも同様のマーケットがあります。eコマースでもリアルな店舗でも、プレイヤーがたくさんいるんですね。
その中でも、インドの小売業界というのは成長の余地があるというのを見出したわけです。それでSnapdealに投資した。
Snapdealに関しても、私たちが出資してから取扱高が5倍〜6倍に増えてきています。ということで、向こう10年にはアリババくらいに増えていく。今の10倍、それ以上に伸びていくでしょう。
孫:(釣り竿を振る仕草)私もニケシュも、「ここに投資する!」と決めたら一本釣りですよね(笑)。
ニケシュ:投資をしていくためには、釣りの技術が必要になりますよ(笑)。
孫:「ここに賭けるんだ、ここで釣り上げるんだ!」という意気込みで(笑)。ということでニケシュに発破をかけて、この件を成立させました。
私が最初に電話したとき、ニケシュは「わかったから、まずはデューデリをしましょう。ドイツ銀行のような会社を通じてデューデリをしたほうがいいんじゃないか」と言いました。でも私は「私たちの直感を信じてここは一気にいこう。そうしたデューデリジェンスはやらずに、とにかく攻めて攻めて取りにいこう」と。
ニケシュ:それでうまくいくこともあったけど、うまくいかないこともあると思うので……。
孫:(笑)。
ニケシュ:それから一緒にインドに行きましたね。2日間で45社のスタートアップと面接しました。
孫:2日間で45社ですよ!
ニケシュ:しかも、選りすぐりの45社です。
孫:実際に私たちのチームは200以上の会社と会って、そこから45社に絞り込んだんです。私たちはその45社と2日間で面談しました。
ニケシュ:そして、残ったのは1つの会社です。その「Ola」は、Uberと同じ事業(タクシー配車)をしています。インドは非常に大きな市場ですが、まだ始まったばかりでした。でも、今やこの2年間で乗客数が25倍です。
孫:まず、乗客数自体が多いんです。私たちが投資したOlaは、この1年半で乗客数が25倍に伸びたんです。
ニケシュ:実際、Uberは他の国にどんどん広まっていますね。これは単なる配車サービスですけれども、(Olaは)それだけではありません。
将来的に、人々は自分で車を持つ必要がなくなるかもしれません。というのも、ある場所からある場所に移動する車があるんだったら、別に自分で車を持たなくてもいいですよね。ちゃんとサービスを行う企業があればいいじゃないかということになるでしょう。
もしくは、将来的にはドライバーさえいなくなるでしょう。自動運転になりますから。なので、好きなときに車を拾って乗って、目的地に行けばいいわけです。あるいは、そのときにカーシェアリングをしてもいいでしょう。つまり相乗りです。そういうことも可能になるでしょう。
バスも同じだと思います。「何時にどこに行きたいか言ってくれ」と。50人の人が「私はここに行きたい」「あそこに行きたい」「空港から六本木に行きたい」と言ったら、「バスが5分で出ますよ」と。バスが来て、50人の人が乗っていく。ですから、より大きな問題を解決することができる。交通という大きな問題を。
孫:2つの信念がないと、そのような問題は解決していかないと思います。私には2つの信念があります。
1つは「成功する会社はグローバル会社である」ということ。グローバルで成功する。Googleはひとつの例だと思いますし、マイクロソフトも然りです。
もう1つは「長い目で見ると、ローカル(地元)の創業者が外国の企業に勝つ」ということ。
ニケシュ:そこには、より強い技術がないとダメだと思いますけれども。例えばGoogleは、強いエンジニアと検索技術がなければ、小さい会社から世界中に展開していくことはできなかったと思います。いろんな技術を扱っていったので、グローバルなソリューションを提供できる機会が多かった。
孫:そのとおりだと思います。マイクロソフトのWindows、アップルのiPhoneもそうしていた。
ニケシュ:Ciscoも同様ですね。
孫:Googleも同様です。こういった技術を中心とした会社こそが、グローバルに展開しやすいと。トヨタも然り。でも……。
ニケシュ:サービスはローカルで。
孫:そう。よりコンテンツに近い部分は……。それぞれの国に別々の文化があり、別のコンテンツがあり、別のライフスタイルがある。別のライフスタイルに対するサービスというものがある。そうすると、地元の創業者でより地元について理解している、地元の文化を知っているほうがチャンスをつかむ可能性が高いと言えます。
例えばアマゾンは非常に成功しましたし、いろんな国で成功しています。ただ、マーケットが非常に大きくなっていますので、その国のより強い創業者が十分なパッションを持ってやれば、ローカルチャンピオンにもチャンスはあると思います。実際、成功できる可能性が高い。
例えばメディア業界。アメリカのメディア会社は日本では一番ではないですからね。日本のメディア会社が中国で一番かというとそうじゃない。やはりこれはローカルなコンテンツですから、ローカルなメディア会社が強いと。スーパーマーケットもそうですよね。
ニケシュ:同じローカルでも、ローカルスポーツの話かと思いました。ここでホークスの話をしないといけないんじゃないですか?(注:対談のおこなわれた2015年10月22日は、ソフトバンクホークスが出場する日本シリーズの直前)
孫:(笑)。まあ、私はサービスやコンテンツというところではローカルチャンピオンが強いと思っています。ここに好機があると思います。
例えばインド、日本、中国。こういったところは十分なサイズの国ですから、ローカルの創業者にチャンスがあります。
こういったマーケット、こういったセグメントでは、私としてはローカルの創業者に……もしローカルの正しいリーダー、情熱と良いハートを持ちすばらしいチームを構成できる人がいれば、彼らは方程式を学んでそれを実証することができると思います。
ニケシュ:ちょっとトピックを変えましょうか。ここからは後継の話をしていきたいと思うんですけども、社長は若いときに10年単位で目標を決め、それに対して意思決定をしていったと。それについてまたお話しいただけますか。
孫:5つのステージに分かれています。私が20代のときにはこう、30代のときにはこう、40代、50代、そして60代と決めていたんですけども。
20代というのは、会社を始めたときですね。そこで私は「ここにいるんだ」ということを宣言したわけです。
30代のときにはそこから会社を成長させ、何らかの形のお金がある程度つくれたと。当時は、少なくとも日本にはベンチャーキャピタルなんてなかったですから、自分でお金をつくってそこから戦わねばならなかった。
40代のときは、大きな賭けをすると。
ニケシュ:それは何でしたか?
孫:例えばボーダフォンを買収するとか。
ニケシュ:世界で一番のお金持ちから貧しい人に変わっちゃったときですか?(笑)(注:2001年頃のITバブル崩壊で、ソフトバンクの時価総額は20兆円から2800億円へと減少した)
孫:そう(笑)。50代のときには、何らかの形で十分長期的に維持できる会社を立ち上げて創るんだと。それで、60代にはバトンタッチを次の世代にしていきたい。それを19歳のときに宣言したんですね。
こういった5つのステージが、私のライフプランなんだと。私は私の人生に合わせて、これを進めていく。19歳のときに「遅かれ早かれ、私には何万人という従業員ができるだろう」と言ってたんです。何十億ドルという売り上げ、利益を上げると。
最初は2人しか従業員がいなかったんですけど、その2人ともが1週間後に辞めちゃったんですよ。
ニケシュ:(笑)。
孫:それは、2人とも私がおかしいんじゃないかと思って会社を辞めちゃった(笑)。
ニケシュ:人を驚かせるのはやめたほうがいいかもしれませんね(笑)。
孫:そのときの私は正しかったと思います。60代でバトンタッチをしたいとみんなに言っているんですけども、私は最初の19歳の時から「この5つのステージの中で、5つ目のステージが一番難しい」と言っていたんですね。
ニケシュ:つまり、維持できる会社をつくるということですか?
孫:違います。バトンタッチをする時期が一番大変だと言っていたんですね。
ニケシュ:ソフトバンクアカデミアをつくられたわけですよね。この目的は何だったんですか?
孫:後継者を探すためです。
ニケシュ:ここまでのところはどうですか?
孫:(客席に向かって)どうですか? うまくいってますか?(笑)
(会場笑)
孫:でも、アカデミアじゃないところからニケシュを見つけちゃった。
ニケシュ:後継者に探すためこれだけのすばらしい方たちがいるアカデミアをつくったのに、アメリカからインド人を見つけちゃったと。このソフトバンクアカデミアをどうするんですか?(笑)
孫:ここは大事なところですよね。
ニケシュ:私が日本にいるんですから、この質問はしとかないと。
孫:ニケシュもアカデミアメンバーにならなくちゃ。
ニケシュ:それもいいですよ(笑)。
(会場拍手)
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