2024.12.03
企業の情報漏えいで最も多いのは「中途退職者」による持ち出し 内部不正が発生しやすい3つの要素
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ニケシュ・アローラ氏(以下、ニケシュ):今、社長はおっしゃっていなかったんですが、人にどう教育していくのかという部分も変わっていくと思います。
例えば今、教育は9時にみんなで同じ授業を受けて、同じ5時に帰って、同じ宿題をやっていますよね? そういった画一的なやり方はよくないと思うんです。
孫正義氏(以下、孫):先生もクラスの平均的な生徒に向かって同じ教材を教えてるんですね。昔のテレビみたいですよね。
ニケシュ:ええ。例えば学校を休んだとしたら授業は聴けないわけですけど、今はGYAO!とかYouTubeですばらしい教授陣の講義を聴けるわけです。ということで、教育のシステムは大きく変わるでしょうし、ここにもチャンスはあると思うんです。
例えば英語であったり、数学を1時間やる(と決まっている)。でも英語は5時間やりたいかもしれないと。学校は同じときに同じ時間しかやってくれませんよね。
孫:例えばですけど、私としてはPepperが子どもに教えると。Pepperは子どもがどれくらいの能力か、それぞれの科目について知っている。
それで一緒に話をして歌ったり踊ったりして楽しみながら、数学をやったり英語もちょっと教えたりする。Pepperは、その子どもの実際の学習速度に合わせていくことができる。
これは子どもの非常に良い友達として、より生産的に勉強することができる。学習ツールとして使うことができる。クラスルーム、学校の教室でいつも同じペースで進めていかなければいけない(ということはない)。
ニケシュ:学校の先生は、必ずしもうまくいかないかもしれない。先生も選べなければいけないんですけど、ときには先生と合わないときもありますし。
ニケシュ:ソフトバンクに話を戻しますけれども、300年という計画、読みがあるということで、今後創業者たちを見つけて、我々が投資をする。
孫:我々はフレキシブルに、そしてダイナミックに、いくつかの会社のかたまり、クラスター(集合体)として、それ自体がソフトバンクになっていくんだと思います。それが我々の戦略だと思います。
ニケシュ:そうすると、そういった人をどうやって見つけていくんですかね? その指標というか。そういった人間は世界中にいて、150万の会社が毎年スタートアップ、起業しようとしていると。
その150万のうち、ジャック・マーはすばらしいことに見つけられましたし、私はラリー・ペイジと会うことができましたけども。
こういった人とはどうやれば出会っていくことができるんでしょうか。ソフトバンクではどこを基準として人材を発掘していくんでしょうか。
孫:何らかのシステムが必要だと思います。例えば企業レベルであれば、アーリーステージ、早期段階の会社でどこがおもしろそうなのか、誰が楽しい創業家なのか、できる創業家なのか。
組織の中で何らかのプロセスをつくって、彼らがそのプロセスに乗っかってきてスクリーニング審査をする。最終的に小さい魚が網から漏れていって、大きい魚が残ったら……。
ニケシュ:小さい魚は他の人と一緒にどこかにいく。でも大きい魚だけは我々が見ることができるということですね。
孫:(腕を振りかぶって)大きい魚になったところで、私とニケシュで「これだ!」と言って釣り上げなきゃいけないと(笑)。投資するべきか、それとも投資をやめといたほうがいいか。
ニケシュ:そのしぐさは何ですか? 殺してるんですか? それとも釣ろうとしてるんですか?(笑)
孫:ギャンブルですね(笑)。
ニケシュ:魚を釣り上げようとしてるんですね。
孫:ギャンブルですね。サイコロを投げるのと同じだと思いますけれども。
ニケシュ:前回話をしたときに、3つのcriteria(指標)という話があったと思います。
孫:はい。まず正しい考え方、それから正しい市場、そして正しい人材ということです。
ニケシュ:どこが正しい市場なんでしょうか。どうやってそれを見分けることが必要でしょうか。
孫:正しい市場というのは、いつも我々が測れるものだと思っています。今の既存の業界には、既存の需要がある。例えば自動車業界、または教育業界、電機業界、娯楽業界。
こういったそれぞれの業界において、今現在の市場を見て「彼らのサイズはどれくらいなのか」という計算ができると思います。
ニケシュ:ときにはマーケットは大きくなる。思っていたよりもドッと成長する、人がどんどん増えることもある。
孫:実際に、彼らは何かに置き換えられることもあると思います。ただ、今の既存の市場で我々はヒントを得ることができると。
彼らのサイズは何ドルなのか、どれだけのお金だったらそのサービスに対して払ってもいいと思うか。そしてそれが「その業界において十分なサイズだ」それとも「さらに成長していく」と思われる市場があれば、そのマーケットを見つけなければいけない。
孫:我々は、革新の中心だと思ったからアメリカに投資をしました。そしてアメリカは競争が非常に厳しい、熾烈であると。非常にお金がかかってきていると。
日本はどちらかというと遅れていたわけですから、逆にチャンスがある。だからヤフージャパンを設立したということだったと思います。
そこから我々はブロードバンドを始めて、携帯事業を始めて、インターネットという形になっていきましたけれども、そこから「じゃあこれからは中国が成長するね」「もっと大きく成長しそうだ」と。特に成長していく可能性がある市場、例えばインドも次に大きなチャンスがある。
ニケシュ:マーケットというのは業界、もしくは国のどちらかですよね。(どちらにしろ)大きな可能性があるところだと。それがわかったところで、そこからはどうですか?
孫:その次に、正しい創業者を見つけなければいけない。情熱とアイデアを持った人を見つけなければいけない。そういった人たちに会って「そのアイデアってどんなものなんだい?」と聞かなきゃいけないと思います。「この人は十分に情熱があるけれども、アイデアがない」という人だったら、これは投資ができない。
ニケシュ:ジャック・マーとはどうやって会ったんですか? 会ったときに、彼に何を見ましたか?
孫:例えば、彼はもっとも賢い人かというとそうじゃないと。
ニケシュ:それ、言っていいんですか?(笑)
孫:彼は自分で言ったんですよ(笑)。彼は誇りを持って「(賢くないことは)恥ずかしくない」と。彼は高校の数学の1から5の成績の中で1だったと。1というのは「一番高い」じゃない、最低だと。
ニケシュ:後ろから(スタート)できたということですね。
孫:ですから、彼はその過去を恥じていないと。数学が一番得意だったわけではないことを恥じていない。今現在でも彼はそれを認めてます。実際にジャックに「この数字は何?」と聞くと「数字はわかんないよ」と(笑)。「ウチの人間に聞いてくれ」とよく言われます。
彼の力というのは、数学の分野ではない。それは自分でも認めてます。実は彼の力というのは……もし彼が「この水の中に飛び込め!」と言ったら、100人の人が飛び込みますね。考えもせずに飛び込むと思います。
ジャックが「火の中に飛び込め!」と言ったら、おそらく誰かが火の中に飛び込むと思います。彼には、そういった形のカリスマがある。
ニケシュ:孫社長も同じことができると思いますよ。
孫:どうですかね(笑)。
ニケシュ:どう思いますか、みなさん?(笑)
(会場笑)
孫:彼にはそういったカリスマがあるんですよ。生まれながらにしてリーダーであると。ですから、こういった人を動かす力を持っている。
彼が「ここだ」と方向を指したところに、これだけ大勢の人間を動かせるカリスマを持っている。そういうことであれば、非常に強烈な成功ができると思います。
彼の目を見たときに、彼のカリスマを見ました。5分間彼の話を聞いたとき、特に事業モデルの話はしなかったですし、どれだけのお金が今儲かってるとかどういったお客様がいるとかぜんぜん言ってなかったのに……。
ニケシュ:結局何も言ってなかった(笑)。どっちみち当時は売り上げがほぼゼロでしたから、何も儲かってなかったんですが。
孫:でも彼には情熱があり、彼の目がそれを物語っていた。ですから5分後に、私は「ウチのお金を使ってくれ」と言った。「そんなにお金はいらないんだ」と言われたけど、「お金を取ってくれ」と。「取ってくれ」「いらない」「取ってくれ」「いらない」というやり取りだったんです。
(会場笑)
ニケシュ:それが彼(孫氏)の投資戦略かもしれませんね。人に自分のお金を「使ってくれ!」と押し付けるような形で(笑)。
孫:実は、これがJay Radia(注:Yieldify創業者、2015年7月に投資)のときも同じだったんですよ。彼には「投資はいらない」と言われたんですけど、私が彼に「お金を取ってくれ」とお願いしたんです。
ニケシュ:ソフトバンクはその戦略を書いておいたほうがいいですね。「お金がいらない人に投資をする」というルールを入れたほうがいいかもしれません。
孫:そのとおり!
(会場笑)
孫:我々でお金を必要としない人材を見つけていかないと。
ニケシュ:銀行と同じですね(笑)。
孫:(笑)。まあそういったことでジャックに「私のお金を使ってくれ」と説得した後に、中国の他の人と話していて「なんで彼ってこんな目をしてるんだろうね」「なんで彼はこんなに説得力があるんだろう」と。
「彼は何をやってるんだろう」
「ジャックですか? 彼はもともと教師ですよ」
「先生なんですか? 先生ってそんなに(説得力を)持ってないですよね。目も違う。先生の前は何をやってたんですか?」
「彼は先生をやった後に、何らかの小さい仕事を政府のためにやっていたと聞きました。教師になる前はもちろん学生でした」
「じゃあどんな学生だったんですか?」
「多くの学生が彼についていっていたんだよ」
「何人くらい? 200人くらい(two hundred)かな」
「違うよ。20万人(two hundred thousand)だよ」
ニケシュ:中国は人口が多いですからね(笑)。千の単位で考えないと。
孫:20万人の学生がジャックをリーダーとしてついていったという。それだけでたいしたものですね。
ニケシュ:かつて情報関連の部署(中国国際電子商務中心)で働いていて、彼がジェリー・ヤン(Yahoo!共同創業者)を紹介したということですね?
孫:そうです。その後、(ジャック・マーは)イエローページのような仕事を始めた。
ニケシュ:そして彼の目の中に可能性を見出したということですね。
孫:そうなんです。彼は街を自分たちの市場として選んだ。そして中国ではインターネットがこれから大きくなっていくということを見出した。中国のインターネット市場に絞り込んだわけです。
私は中国でリーダーシップを持った起業家を選びました。それがジャックです。では、どんなビジネスモデルなのか。
ニケシュ:toBか、あるいはtoBじゃないか(笑)。(注:ハムレットのセリフ「To be or not to be」と掛けている)
孫:(笑)。ただ、私はジャックに「もしかするとBtoBは一番いい選択肢ではないかもしれない。まずはBtoC、もしくはCtoCの事業を始めたらどうか」と提案したんです。
もちろんそうしたアイデアは、ちゃんと情熱を持った正しいリーダーのもとに優秀なチームがあれば、どんどん改善していくことができます。
ただ逆はどうでしょう。すばらしいアイデアがあっても、リーダーシップがない人物が率いる会社であれば、そのアイデアはたぶんうまくいかないでしょう。つまり、リーダーシップがないと実行力がともなわないからですね。
ニケシュ:そこは大事なところですね。ビジネスに情熱やアイデアがあっても、実行力がないとダメですよね。失敗します。
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