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20代の生き方・経験の積み方(全5記事)

つぶしが効く能力は「営業力」と「おもしろさ」 ヤフー川邊氏が語る、20代の経験の積み方

慶應義塾大学の日吉キャンパスで6月26日と27日の2日間にわたって開催された「IVS SEEDS 2015 Summer」。2日目に、「20代の生き方・経験の積み方」と題したセッションが行われました。ここでは、株式会社じげん 代表取締役社長 平尾丈氏、グリー株式会社 取締役副会長 山岸広太郎氏、ヤフー株式会社 副社長COO 川邊健太郎氏の3名の経営者が登壇。今回は、成功と失敗を積み上げることの大切さや、営業力を身につけることの重要性など「つぶしが効く能力を身につけることがいかに大事か」ということについて語ります。起業家を目指している若者は必見の内容です。

頑張ったことから得たことは血肉になる

小林雅氏(以下、小林):山岸さん、(学生の間に身につけておくべきことについて)何かありますかね?

山岸広太郎氏(以下、山岸):20代で、というか学生のときにやっておいて良かったことですよね。僕が思っているのは、起業するって、ここで話していてもそうだと思うんですけど、百社百様。その中にいる人たちもいろんなやり方があると思うんですね。

僕も一般化できることは何かなと思うんですけど、何にせよ、すごく頑張ったこと、熱中したこと、そういうものは何か役に立つんですよね。コネクティング・ドットじゃないけど、自分のやりたいことがあったときに、昔すごく頑張ったことから得たことっていうのは、血肉になるなと思っていて。

僕だと、大学3年生のときにゼミですごく勉強したんですけど、討論会とかグループワークとか論文書くとかあったんですけど、めちゃめちゃ勉強する。それは自分だけじゃなくて、仲間と一緒に勉強する、調べまくるとか、答えがない中で自分たちで問題設定していって、回答を見つけていくとか。

そういうプロセスが知的体力を身につけるみたいなことが、ベンチャーで仕事をする上でも、自分たちの中でちゃんと市場を調べ、課題を見つけて、物をつくっていくところにすごく役に立ったなと思うし。

あと、ベンチャーで働いていたときも、問題があったり、失敗もする。逆に真剣にやって失敗もするんで、「あー、こういうことやっちゃいけないな」と思ってだいぶキレにくくなるとか、そういうのもあるし(笑)。

常に真剣にやったことは自分の中に残っていて、逆に大学1、2年のときにテニスサークルで、僕も副部長とかやったんですけど、自分の中でかなり流してたんで、自分の中で学ぶものがないですよね。流してやったことは学びにならないし、真剣にやったことだけが残るんだなと。

あと、実務的に言うと、社会人1、2年目のときに、結構会社の経営みたいなことに興味があって。財務的なこと、簿記とかですね。簿記は大学のときも授業を取ってたんですけど、簿記とか財務とか勉強していろいろやってたんですけど、それはやっぱり経営をする上では役に立ってるので。

そういう簿記とか会計とか財務とか、そういうのは身につけてよかったかなっていうのと、あとはプログラミングができて、大学のときにやってたんで、スキル面はその辺が良かったなと思いますけど。

僕なんかずっとナンバー2みたいな仕事をやってるんで、トップとはパフォーマンスの仕方が違うと思うんですけど、結局それもね、それまでの人生で何を頑張って、どういうことをやってきたかによって、自分の能力の発揮の仕方っていうのが変わってくると思うんですよね。

だから、自分のこともよく知りながら、すごく頑張って、成功とか失敗とか積み上げるのが大事かなと思います。

小林:ありがとうございます。

つぶしが効く能力は「営業力」と「おもしろさ」

川邊健太郎氏(以下、川邊):追加でいいですか?

小林:どうぞどうぞ。

川邊平尾さんがおっしゃっていたリーダーシップって、確かに重要だと思うんですね。つぶしが効く、つぶしが効かない? どっちかわからなくなっちゃったけど、そういう能力だと思うんですね。同じような軸でいうと、リーダーシップ以外でつぶしが効くのは営業力。営業力が早い段階で身についていると、超いいですよ。

だから、学生の間に、何だかわからないけど、携帯電話をたくさん売っただとか、クレジットカードの契約をたくさんとっただとか、あるいは街でキャッチをやってて、たくさん実績が出ただとか。

あるいはパーティーをやって有料でたくさんの人を集められたとか、こういう営業力とか、いつでもつぶしが効くんで絶対身に着けておいたほうがいいんじゃないかなっていうのと、あともう1個。

これはすごい難しいことなんですけど、おもろい奴になっとけということです。おもろい奴であれば周りも注目するし、かわいがってくれるし、何かしら救ってくれると思うんですよ。正直40歳とか50歳になってからおもろい奴になるのって難しいですから、若いうちにいろいろ努力しておもろいやつになっとく。

私なんか早い段階でおざーん(小澤隆生氏)とかと知り合ってですね、「お前おもろくないな」とか言って、鍛えていただいて、良かったというふうに思っています。

小林:追加であります? 平尾さん。平尾さん、おもろいですよね。

(会場笑)

テクニカルスキルは陳腐化が早い

平尾:何ですか、この空気は(笑)。こういうときにどっと笑ってもらえるとね、僕の株が上がるんですけどね。

川邊さんのお話も山岸さんのお話もすごい多様性もあって、幅があってって話で。営業力っていうのは、実際自分でも株式会社営業っていう会社を学生時代つくってますから。これ2回目の起業ね。でも、この会社営業しなかったんですけど。営業しない会社を株式会社営業にしてやろうとか、よくわからないことをしてました。

最初に起業したときには、営業はものすごいターニングポイントの1つだったし、当時キャリア論っていうのはすごく好きでした。

スキルというのは今の時代すごく変わってきていると思いますし、自分のときもそうだったんですけど。今の皆さん、もしくは自分たちが30代、40代になってくるときに、ぜひちょっとお二人にもアドバイスをいただきたかったんですけど、スキルが陳腐化するスピードが速くなっていたりとか、代替される。

例えばテクノロジーであったりとか、クラウドであったりとか、そういうところにどんどんどんどんバリュースライスされてくる時代だと思っていて、そういうときに汎用性の高いスキル、つぶしが効くっておっしゃってましたけど、そういったものがどういったものなのかって考えたときに、自分はスキルっていうのを2つにわけたんですよね。

持ち運びができる、ポケットに入れられるポータブルスキルと、自分はもともとエンジニアでしたから、テクノロジーとかを勉強してたんです。意外ですよね、自分がエンジニアだったとか、皆「えー」って顔ですけど。

小林:え、そうだったんですか?

平尾:エンジニアだったんですよ。環境情報学部だったんで、ITハッカーになろうと思って、ITハッカーからIT社長になろうと思ってましたけど。テクノロジーとかテクニカルスキルっていうのは陳腐化が早いんですよ。すごい武器になる一方で。だけど常に腐っていくから、切り換えていかないといけない。

そのときに考えたのは、腐りづらいスキルに集中しようと思いまして、自分もそこから、多分今やったらだめだと思いますが、ビル倒しとか、いろんな人に会いまくるとか、いろんなことを実践しまして。

いろんな海外の方とか、ダイバーシティに対して対応していける営業力もそうですし、対人コミュニケーション能力であったり、こういう場所でバシッとプレゼンするとかね。

あとは学生団体、学生起業家の代表だったりすると、みんなの前で話すこと多いんですよ。こういうときね、バーンとかませるとね。さっきのセッションも吉田さんとか、あれもそうかもしれませんが、結構皆さんついてくるんですよ。社内の部下とか。こういうスキルは結構腐ってないかなと思いますね。

成功と失敗をわける最大の壁を乗り越えるには

小林:次、質問いきます。

質問者:お話ありがとうございます。ちょっと起業を考えています。お聞きしたいのはですね、学生起業家がぶち当たる最大の壁、成功か失敗かをわける最大の壁っていうので、それを乗り越えるには何が必要かっていうのを教えていただきたいです。

小林:なるほど、考えてるくらいですね。じゃあ、学生起業家の先駆けだった川邊さんに聞いてみたいですね。

川邊:実際に何もわかってないですからね、学生って(笑)。だから、いろいろあると思いますけど。

例えば、今の学生の人って生まれたときからインターネットがあって、かなり早い段階からスマホも使ってたりするんだと思うんですよね。そういう意味では、サービスを自分の時代感の中でつくるのとかは大変上手なんだと思うんですけども、それを金に換えていったり、事業にしていったり、経営ですよね。

つまり、毎年毎年それを大きくしていったりする、みたいなことはなかなか難しいんじゃないでしょうかね。

孫さんって教えがとてもシンプルで、「事業っていうのは簡単だ。“売上-経費”である。経費っていうのは2種類で、変動費と固定費だ。このうち、売上と売上に連動する費用である変動費は神でもコントロールできない」と。

要するに、世の中の人が買ってくれるものだから、神でもコントロールできないと。「コントロールできるのは唯一固定費だから、固定費を徹底的に削減しろ。去年100円でやってたコストを来年100円でやる奴はバカだ。99円でやれ、再来年は98円でやるようになれ」と。

こういうようなことを教えてくれるわけですけども、正直これが経営の本質、中核みたいなことですけど、こういうこと(学生は)知らないですよね。

社会に出て、僕の場合は孫さんとかいろんな人に教えてもらいながら、だんだん経営のことがわかってきたんですけども、いきなり学生でそういうことを始めると、わからないでサービスだけが大きくなっていって、サーバー代だけがかかって、データシステムの費用だけがどーんときてビックリしてしまいました、みたいなことが起こり得るんだと思うんですよね。

そういう、本当の経営のいろんなことをですね、どうやって補うのかっていうのが、学生起業家にとってはテーマになってくるんじゃないかなと思いますけども。

学生起業家は勘違いしている

小林:平尾さん、最近まで学生起業家だったってやつですよね。

平尾:そうですね。学生起業って自分も含めて勘違いしていて、本当にちやほやされるんですよ(笑)。「若くて、頑張ってて、偉いね」ってすごいちやほやされて、マスコミにも呼ばれて、いろんなところに出させていただいて、どんどんどんどん勘違いしていくんです。

そのときにですね、強みと弱みとか。事業だとSWOT分析とかやると思うんですよね。「強みと弱みと機会と脅威とあります」と。分析してみたら、意外と強みが1個もなかったんですよ。そんな中、強み、若さと体力! とか、時間があるとか、これを頑張って出しました。strength(強み)と。

これっていろんな人に言えば言うほど、「それって強みじゃないんじゃないか」という話になりまして、確かになと思いまして、それをS(強み)のところに書いてたんですけど、opportunity(機会)のほうに変えました。

これ、何が言いたいかと言いますと、学生起業家に優位性は1個もない。ごめんね、未来がない話に聞こえるかもしれない。未来がないというよりは、勘違いするなと。どちらかというと機会はあるが、強みはない。その機会をどう活かすのかというところを、自分なりに考えていったらいいのかなと思っています。

やっぱりフェーズごとに壁は違うのかなと思っていて、スタートアップであれば人数が少ないからトップの役割が増えるんですよ。本当に社長業に徹するなんていうのは大間違いで、会社つくったときは全然名前だけ社長ですから。やる仕事っていうのは、全部プレイングですよね。

サービスもつくらないといけない、つくったサービスもデザインやるのか、エンジニアリングなのか、ITじゃなければ営業であったりとかマーケティングをやるのかとか、そういライン&スタッフのラインの仕事は、2つから3つくらいはやらないと、うまくいかないと思います。

ユーザー集めとマネタイズの壁

平尾:例えばIT企業でいえば、皆さんもまだITはチャンスあるからぜひともと思うんですけど、多分最初はユーザー向けのサービスをやろうという子が多いと思うんですが、そのときにつまずく壁は、ユーザーが集まらない。これが一番多いと思います。

次にユーザーが集まってくると何が起きるかというと、マネタイズの壁です。儲からない。ここ辺りでお金がなくなってくる。

お金がなくなってくると、今までちょっと時給とか出してたりとか、お母さん、お父さん、知人から借金して、もしくはベンチャーキャピタルの方とか金融機関からお借りしてやっているときも、お金なくなってきて、雰囲気悪くなってきて、人がいなくなります(笑)。

複合的なんですけど、こういったところを超えていって、うまく儲かり始めて、サービスが大きくなったときにあるのが、スケーラビリティと競合だったりします。フォロワーも絶対来るし。

そのあと拡大再生産。1ができたら、10じゃなくて100を目指すんですよ。ここは全然違う筋力が必要になるから。まずは0から1。もし起業したいんであれば、どのフェーズまでやったことがあるかっていうのは、その次社会に出てからも絶対役に立ちますし。

自分は残念ながら0から1くらいまでしか、学生起業のときはできなかったですね。川邊さんなんかはもっと0から100くらいまでやってらっしゃるんで、すごいなと思うんですけど。自分は0から4くらいかな、それくらいまでできましたという話です。それぞれのフェーズごとに頑張ってください。

小林:ありがとうございます。学生起業、ほかのテーマで何かありますかね? 質問。

川邊:1個いいですか?

小林:どうぞどうぞ。

川邊:学生起業のメリットは、やっぱり暇でリスクがないっていうことだと思うんですよ。リスクがあると就職できないとか言いますけども、できない奴はできないんで。家族ができたり、親の介護が始まったり、就職してから起業するとある程度ポジションができて、かわいい部下ができてしまったりだとか、社会人になって歳をとればとるほどリスクが高くなって。

学生のときはほぼ何もないですよね。そして何といっても時間があって、いろいろ考えられるっていうのは、すごいメリットだと思いますけどね。

小林:ありがとうございます。

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