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働きがいのある会社を創る(全5記事)

VOYAGE GROUPの原点は「新卒で働きたいと思える会社」

IVS 2015 Springの本セッションにセプテーニ・佐藤光紀氏、コロプラ・千葉功太郎氏、VOYAGE GROUP・宇佐美進典氏の3名が登壇。モデレーターを務めるCampus for H・石川善樹氏の進行で「働きがいのある会社を創る」をテーマに意見を交わしました。本パートでは、宇佐美氏がVOYAGE GROUPの社内制度や、会社の仕組みを変えていく上で大事にしている価値観を語りました。

VOYAGE GROUPの社内事情

石川義樹氏(以下、石川):最後に、宇佐美さんのところの(仕組みは)。

宇佐美進典氏(以下、宇佐美):当社も、「働きがいのある会社」Grate Place to Workですね、3年ほど前から調査をお願いするようになって、今年はじめてランキングで1位になりました。

(会場拍手)

宇佐美:まず当社が今どんな状況なのかということを簡単にお話しすると、3月末時点で正社員が230名ほどで、そのあと新卒が20名ほど入ってきて、最近M&Aによって40名ほどの会社がグループになったので、今300人弱くらいの状況になっています。

2005年から新卒を毎年継続的に採用していまして、全体の中で、新卒の比率が約40パーセントちょっとというところです。直近の離職率はだいたい8パーセントくらいです。

石川:これ(離職率)って分母・分子はなんですか? 年間の平均在籍数、あるいは年間ののべ在籍数とか。

宇佐美:平均在籍数に対しての実際の退職者で見ています。今日、うちの内定者がここにいるので、アレなんですけど(笑)。新卒の3年以内の離職率が約20パーセント。こんな感じです。これはファクトシートですね。

新卒で働きたいと思う会社をつくりたい

宇佐美:いろいろ会社を変えていこうというきっかけが過去にありまして、それがなんだったかと言うと……。

2010年くらいの頃に1回業績が悪化したタイミングがありまして、今でこそこうやって、グラフで見るとグッと伸びているんですけれども、業績が悪くなったタイミングでやっぱり離職率がガッと上がったんですよね。

それまでは10〜13パーセントだったのが、ちょうどこのタイミングというのはソーシャルゲームブームがあって、業界的にもエンジニアの採用がかなり活発であったりとか、そういう中で当社の業績が悪いと、人が一気にワラワラっと抜けたことがあってですね。

それで「なんとかしなきゃいかん」といろいろ取り組みをしていきました。ちなみに僕自身にとって、どういう会社をつくっていくのか、原点はどこにあるのかというと、「自分が新卒だったらこの会社で働きたいと思う会社」をつくりたいなというのが、僕自身にとって会社をつくっていく上での原点です。

その中で当初僕自身が思っていたのは、これ3つの要素が書いてありますが、一番左側の、会社の中の雰囲気として「オープンさであったり、フラットさであったり、フェアな部分」、こういったところが実現されている会社をつくりたいと思って。

実は当初はこの「成長機会」であったり、「アツい仲間」がいるとか、こういうところはそれほど重視をしていなかったんですね。

会社としていろんな施策を考えていくときに、左側に寄った施策のほうが多かったんですけれども。

結果として左側の施策って、「居心地の良さ」なんですけれども、居心地の良さだけでは人は繋ぎとめられなくて。

業績が悪くてもこの会社で頑張ろうと思ってもらえるためには、この会社にいることで、「成長が実感」できるとか、あの人がいるから一緒に頑張りたいという「アツい想い」みたいなものがないとなかなかならないな、というところがあって。

会社のカルチャーをつくる最高文化責任者を任命

宇佐美:2010年くらいから、継続的にいろいろ取り組んできました。こうやって見ると、ほぼ全部取っ替えたというのに近いんですけれども(笑)。

まず最初に取り組んだのが、CCO(Chief Culture Officer)と言って、最高文化責任者を任命して、彼に取締役として、人事も含めた会社のカルチャー・文化をどうつくっていくのかを「全部任せるからやっていってほしい」というかたちでやっていきました。

彼が主導となって全社のプロジェクトのようなかたちで、経営理念を見直したりとか、オフィスのレイアウトを変更するとか、いろんなことを実際に行っていきました。

これは、比較的先ほどの左側の「オープン・フラット・フェア」につながるところなんですが、左側の要素というのは基本的に、コミュニケーションに寄っている要素で、一番大事なのは目標設定や面談といった、極めてオーソドックスな個人の成長を実感できる場を設定したり、それをちゃんとコミュニケーションしていくという。やはりこれがベースにあるんじゃないかなと思っています。

役員を1年ごとに見直す「BOARD制度」

宇佐美:一方で、こういったコミュニケーションを活性化するための取り組みは、組織全体のボトムを上げていくというところには役立つんですけれども、トップラインを上げていくというかたちにはつながらないんですよね。

ですので、先ほどもお話しした「成長機会」をつくり出していくための取り組み、これに関してはかなり意識的に、いろんな制度をこの5年の中で取り組んでやってきました。

例えば今、我々の中では「BOARD制度」と呼んでいるんですけれども、役員を1年ごとに見直しをしますということを、3年ほど前から運用しています。ちなみに原型はサイバーエージェントの「CA8」という、役員を2年ごとに見直しするという制度を参考にしました。

僕自身サイバーの役員をやっているときに、実際にあの制度をつくるところにも関わっていましたし、自分自身がその対象になった部分もあるんですけど。

とても納得度も高く良い制度ではあったのですが、「2年ってちょっと長いな」とも思っていました。つまり次のチャンスが来るまでに、1回(役員が)出ると2年間間が空いてしまうというのは、ちょっと良くないなと僕自身が感じた部分ではあったので、僕らとしては1年にして、1年ごとにその次の年に必要な経営体制の見直しをしていくと。

そうすることによって、もしかしたらまた来年(役員に)なるかもしれないという状況をつくることによって、役員になった人が役員から外れてもずっと残り続けて、そこで頑張って次にもう1回(役員を)狙っていくという、こういう状況をつくっていくというのを行っています。

若手社員が役員会に参加できる「BOADING PASS制度」

宇佐美:それと合わせて、我ながら非常に良い制度だなと思っているのが、「BOARDING PASS」という制度です。これは四半期の間(3ヵ月間)、常勤役員会という毎週行っている役員会に(役員でなくとも)ずっと出られるという制度です。当然そこでは人事の話であったり戦略の話であったり、M&Aの話も含めていろんな話がされるんですが。

そこにだいたい2人、比較的若手と言われている25歳前後の人が1人と、中堅どころの2人がBOARDING PASSで参加するようになっています。彼らは(役員会の)中であまり積極的に議論に参加できたりするわけではないんですけれども、役員会の中でどんなことが議論されているのかを間近で体験するという感じですね。

石川:これはどうして始められたんですか?

宇佐美:僕自身最近、「宇佐美さんって、普段何やってるんですか?」とか、「経営陣の人たちって、普段どんなことを議論しているんですか?」ということを聞かれることが多くなってきまして。

それに対して、僕らとしてはいろいろ説明はしているつもりではあるんですが、どうしても説明すると、議論のプロセスを端折ってしまって、最後の結論だけになってしまっていることが意外に多くてですね。

やっぱりプロセスの部分であったり、背景の部分であったり、こういったことを社内で上から落としていくというよりもボトムからであったり、横、斜めから広げていくようなことをやっていきたいなと思うようになってですね。

石川:実際参加された方は、どういう感想をおっしゃいますか?

宇佐美:「ちゃんと議論してるんだな」と(笑)。そういう感想を持つことが多いです。実際に3ヵ月終わると、社内ポータルに感想を書くようになっていまして、そこで「意外にちゃんと議論をしていた」とか、いろんな(感想が)(笑)。

石川:ちょっと思ったのは、宇佐美さんは社員の方からみると「いつも笑っている、笑い声が特徴的」というイメージがあるとおっしゃっていたんですけれども。社員の方からすると普段見る様子がそうやって会議室で笑っていたりとか、そういう感じだからわかんないんでしょうね、たぶん。

宇佐美:そうかもしれないですね。ちなみに、BOARDING PASSの期間というのは、そのメンバーには「飲み代補助」というのを月5万くらい出していて、その期間はいろんな人に誘われるんですね。

社内の人に「実際どんな議論してるの?」みたいな、もちろんミッションとして「インサイダーな話とかはしちゃダメよ」とした上で、「飲みに誘われたら、この予算使っていいから行け」ということを行っています。

「アツくなれる組織」をどうつくっていくか

宇佐美:こういう抜擢をする仕組みの部分と、あと3つ目。個人的には一番大事なんじゃないかなと思っているのが「アツい仲間」という組織の人と人との関係をどうつくっていくのかということ。

実は、ここの部分が創業してから一番足りなかった部分でした。さっきの経営理念をつくるとか評価制度の見直しだけではなく、「アツくなれる組織」をどうつくっていくのか、ということに最近は重点的に取り組んでやってきました。

先ほど話したCCOを中心に採用方針を見直してさらに新卒や中途も含めてアツくなれる人を採用したり、アツくなれる場を会社の中に創出して、それをさらに表彰していくということを行っています。

また、社内用語で、「握る」という言葉があるんですけれども、「あいつと握れている」というような使い方をしています。つまり上司、いわゆるレポートラインの中で話をするだけではなくて、1対1の人間関係の中で、お互い信頼、信用しあっている関係がどれだけできているか。

辞めるとなったときに、誰にも相談せずにいきなりポーンと来る(辞める)んじゃなくて、事前に相談があるような人間関係がどれだけつくれているのか、ということを意識して増やすようにしています。

あとはネガティブな人を採用しないとか評価しない、マイナスオーラを出す人は会社にはしっかりと対話していくというかたちで、こういったところも曖昧にせずに対応していくということを行ってきています。

大事なのは、会社のいろんな制度や仕組みや考え方に、いかに「一貫性」を持たせていくのかということだと思っています。自分自身を振り返ってみても、言っていることとやっていることが違ったりとか、経営理念と制度が実は矛盾していたりとか、そういったことが振り返ってみると多かったなと思いまして。

会社の中に1本の背骨みたいなものをいかにつくっていくか。別にこれが経営理念であったり、価値観であったり、ビジョンであったり、それは会社によってなんでもいいと思うんですけれど、一貫性を持たせていくということが大事なんじゃないかなというところと。

宇佐美:あとやっぱり、制度ってつくっておしまいではなくて、ちゃんと運用状況を見ていくことが必要だなと思っています。

そのために我々がやっているのが、先ほどのGrate Place to Workという外部調査もそうですけど、それよりも前からやっているのが、年2回全社員に対して、40問ほどのアンケートを取って、先ほど12項目の質問がありましたよね? あれとほぼ似たような質問項目をこの(アンケートの)中で聞いています。

あの中になかったものが「目標設定で、上司とちゃんと話をしているか」であったりとか、「評価に納得しているか」であったりとか、そういった評価周りのことがこの中には含まれています。

半年ごとに見ていくので、個人ごとに前回と比べてあまりにも低くなっていると、それに対して人事として、上司がちゃんと目標設定しているかというのを確認しにいこうとか、この部署は全体としてうまくワークしていないんじゃないかとか、そういったことをフィードバックしてPDCAを回していくということを行うようにしています。

結果として、離職率は今8パーセントくらいに落ち着いてきたというところですね。

一番大事なのは、経営陣の意志と覚悟

宇佐美:今回こういう話をするということで、CCOの役員と「何が一番大事だったんだろうね」という話をしたときに彼が言っていたのは、やっぱり「経営陣の意志と覚悟じゃないですか」と。

いろいろ人事制度とかを変えていくというときに、当然昔からいる人と新しく入ってきた人の温度差に、どっちを大事にするのかであったり、能力はあるけれどもカルチャーが合わない人に対しての対応の仕方であったりとか。

いろいろ悩ましい、今までであれば見過ごしてきた部分というのを、いかに一歩踏み込んだコミュニケーションでお互い率直に話していくためには、ここは曲げられない、曲げないという意志と、それによって起きるネガティブなことも「まぁしょうがない!」と(受け止めると)いう覚悟を持ってやることが、大事だったんじゃないかな思います。

以上になります。

石川:ありがとうございます。

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