2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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松本恭攝氏(以下、松本):ラクスルは結構資金調達をしていて、VCラウンドで3回、シードを合わせると、いわゆるシリーズCみたいなところまでやっていて、累計58億円の資金調達をしていて、未上場で外部資本を活用させていただくという経営をしています。
一番最初にVCからの資金調達をしたのが2012年だったんです。会社を始めて3年ぐらいだったんですけど、そのときは秋好さんと同じで「会社を乗っ取られるんじゃないのか?」「クビにされるんじゃないのか?」「自分の好きなように会社を経営できなくなるんじゃないのか?」みたいな恐怖心がすごく強かったです。
一方で、当時黒字化をしていて、エンジェルで投資していただいた投資家の方に、「お前さ、中小企業になりたいわけ?」って。中小企業をバカにしているわけじゃないんですが、「何のために起業したの?」っていう話をされたんです。
小さいながらもちゃんと収益化する事業はできていたんだけれども、「本当にこのために自分は時間を使って起業したのか?」みたいなのを思い悩んで。それで「いや、やっぱり世の中を変えていくために起業したんだよね」っていうところで、外部から資本を入れてもっともっとインパクトをつくっていこうっていうのをやったのが会社をつくって3年目。ただ、結構怖かったというところです。
1回受け入れてからは、事業が印刷の価格比較サイトみたいなメディア事業をやっていたところから、eコマースに変わっていきました。やっぱりeコマースをやらないと、インパクトを出して業界を変えていくことはできないなと思ったんですね。
そうしたときに、「eコマースって想像以上にお金がかかる事業だな」と。すごく資本力が必要になる事業で、そうなったときに自分の持ち分であったり、コントロールとか権利みたいなことを言うのは、本気で業界を変えようとするときにはすごく邪魔になるなと思って。
自分のダイリューションとか持ち分とかに一切こだわらずに、業界を変えるために、インパクトを出すために一番いい選択は何かっていうことを考えました。
創業者って「株主」と「経営者」の2つの立場があると思うんですけど、株主という立場を捨てて、経営者に振り切って一番いい選択をしていこうって決めてから、資金調達を加速させていきました。
現状、上場についてはどう考えているかというと、もちろん上場はしないといけないんですが、上場をすることによってより事業を大きく伸ばしていくことができるような使い方をしなければと。
上場も1つの資本市場の使い方だと思っていて、未上場であるより上場したほうが事業が早く伸びる、インパクトをより大きく出せるっていうところまで持っていったタイミングでの上場を考えていきたいです。
我々の場合、外部の株主がもう15以上いて、かなりガバナンスをちゃんと効かせられる体制になっていて、説明責任もかなりあります。ただ、ガバナンスがきついこととか透明性が高いこと自体は、事業が大きくなる上で必ずプラスに働くと信じているところがあります。
しっかりしたガバナンスを効かせて、未上場のほうがいいのであれば未上場であるべきだし、上場したほうがいいのであれば上場すべきだし。事業をつくる、価値をつくる、お客さんに満足してもらう、世の中を変えるための手段として最適な資本市場の使い方をしていければいいんじゃないのかなと思っています。
田中良和氏(以下、田中):今までで累計どれぐらい集めたんですか?
松本:今58億円ですね。
田中:じゃあ会社の通帳を見たら「58億円」って書いてあるんですか?
松本:そうですね……もう使っちゃって、もうちょっと少ないんですけど(笑)。
田中:わかりました。じゃあ、塩田さん。
塩田元規氏(以下、塩田):僕たちは去年14億円資金調達したんですけれども、その前までは4年間、資本金100万円でやっていまして。まず会社をつくるときに「出資しようか?」って言ってくださる方もいたんですけど、基本的には自分で借りれる額だったら自分で借りたほうがいいかなって当時思っていて。
最初のベンチャーのときってバリュエーションもそんなに高くないので、数百万円っていうお金だと思うんですけど、自分は絶対返せるって信じていましたし、当時は株とか資本は後戻りがきかないって思っていたので、精一杯借りるっていうことをやりました。
なので創業するときは貯金がなくて「僕が結婚したと思って、式の式場のお金がないって言ってると思って貸してください」って言って回って、400万円ぐらい無利子でお貸ししてくださる方が何人かいたんですね。
その後も、ゲームは一定のキャッシュのサイクルはあるんですけど、回らないときには銀行に行ってお金を借りてきていました。去年14億円調達したのは、14億円は借りられなかったっていうことですね。当時20億円集めようと思っていて、14億円の資金調達は投資で集めて、残り数億円は借りられるって思ったので、そういう形で14億円集めたっていう感じですね。
田中:VC中心にお金を集めていくと、当然ですがリターンは出さないといけないので、そうすると上場という話になりますよね。
アカツキの塩田さんにお伺いしたいんですが、最近「上場ゴール」という言葉が流行っていると新聞で見たんですけども、塩田さんも上場ゴールする予定なのか、お考えをお聞かせいただきたいんですが。
塩田:僕も見ました、その新聞。僕たちはあんまり上場ゴールは考えてないです。
田中:「目指してる」って言ったら困りますよね(笑)。
塩田:自分たちはもともと最初から最低10年とか長くやるイメージをしていたので、正直言うと、上場ゴールするならもうちょっと前のタイミングで上がっていればいいじゃん、みたいなこともあると思うんですよね。
もっと大きくして上がりたいなと思っていますし、さっきの話じゃないんですけど、上場することによって資金が集まって、事業が加速してバリューが出せるようになるんだったらたぶんやる必要もあると思いますけど。
基本的には、会社はバリューを出してなんぼだと思うので、そのためにどうするのかということを中心に考えています。ただ、もちろんどこかで株主の方にはきちんとお返しするということは考えています。
田中:アカツキさんはしっかりした会社だということがわかりました。
(会場笑)
塩田:そうですね、お願いします。この話題、かなりつらいんですけどね(笑)。
田中:ありがとうございます。この中ではキャラ的に一番やりやすいかなと思ってたので。すいませんでした(笑)。というわけで次の話にいきたいと思います。
田中:次は社員の採用というところです。お金も集めて、さらに会社を数百人、数千人の会社にしていくというフェーズに入るわけですけれども、それをどうやって実現していくのかということをお伺いしたいと思っています。
じゃあ次は佐々木さんからお願いします。
佐々木大輔氏(以下、佐々木):やっぱり採用って本当に僕自身の時間もかけて取り組んでいることで、どれだけ時間をかけてやったかによってリターンがあるんじゃないかなと思ってやってます。
温度感の低い人でもとりあえず会うとか、昔会ったことある人には連絡してみるとか、そういうことも含めてだし、あとはそれをできる人間を社内に増やしていくっていうことかなと思っていて。
特にマネジメントチームに入るような人間っていうのは、やっぱりその人の魅力、ネットワーク、時間を大量に使って、人を大量に連れて来れる人じゃないとダメだよねっていう。
最近参考になるなと思うのは、僕は大学の頃は体育会のラクロス部にいたんですけども、大学の体育会って2年生のときには徹底的に採用というか、新規のメンバーを集めるということをしないといけないですよね。
ああいうふうに、とにかくみんなが人を集めてくる、優秀な人を集めてくるのにコミットするっていう環境をつくるのはとっても大事だなと思って、そんなのを目指しています。
でも、最近まだまだ僕たちも甘いなと思った出来事が1個あって、先ほども名前が出てきた人材サイトをやっている会社の社長がうちの会社に遊びに来たときに、隣の部屋で採用面談をやってたんですね。そしたら帰りのエレベーターでたまたまその候補者と一緒になったらしくて、そのままその会社の採用面接に連れて行ってしまったんですよ。
これを見て僕は、「なるほど、ここまでやらなきゃダメだな」と。「War for Talent」とかって言うんですけど、生ぬるいと。
このぐらい力を入れてコミットしないと優秀なチームってつくれないんじゃないかなぁと勉強になった、気持ちの切り替えになったイベントで、自分からもっともっとアグレッシブに行かなきゃいけないなというのを感じました。
田中:freeeの成長の秘密は「Googleからいっぱい引き抜いてるからだ」っていう噂も聞いたんですけど……。
(会場笑)
田中:そういうことではなくて、War for Talentで勝ったからっていうことですか?
佐々木:事実として元Googleの人間は比較的多いんですけども、それだけではなくて、その残りはWar for Talentですし、Googleから来てくれる人間というのも他にもいろんなオプションがある人たちなので、その中でも魅力的な会社でなくてはいけないし、そのためにもいいプレゼンテーションができるようにならないとといけないなと思っています。
田中:確かに僕も最近アメリカのマネジメントチームと話して思ったんですけど、アメリカだと日本以上に、偉い人というかVIPはそもそも仲間を呼んで来れない時点で価値が半減というか。
仕事をするのは当たり前だけれど、何人優秀な仕事仲間を呼べるのかっていうことも込み込みでお給料を支払われるという概念があるなと思いました。まさに日本もそういうことがあるなと、最近こと強く思いますね。
じゃあ次は松本さんお願いします。
松本:今の佐々木さんの話じゃないんですけど、採用に対して時間を使うっていうことと、採用が一番大事だという意識を会社全体で共有するっていうところはすごくやっていますね。私だけじゃなくて他の社員に関しても、面接は必ず出るとか、人を連れてくることはすごく重要だっていうことをひたすら言い続けて、そういうカルチャーをつくっていくっていうこと。
最初のプールのつくり方でいうと、人材エージェントさんにもできる限りたくさん会って、細かく事業の説明をして「いい人いたら出してください」って何度も説明して頭を下げるし、ダイレクトリクルーティングも専任の人がいて、あとはもちろん一番重要な社員からの紹介も大事にするっていうように、あらゆるチャネルを用意してそこをちゃんと見ていくっていうことですね。
あとはとりあえずたくさん人に会ったら、まずカルチャーにちゃんとフィットするかということですよね。「カルチャーにフィットしなかったら絶対採らない」っていう、よく本でも書いてあることをせずに失敗した経験がありまして。よく言われていることだけど、カルチャーフィットって本当に大事だなっていうのを失敗談から学び、そこはもう絶対ぶらさないようにしようっていうところを心がけています。
あとは何らかの面において自分より優秀な人を採用するっていう、採用ハードルを下げないっていうことに関しての意識も結構強く持っていますね。
田中:じゃあアカツキの塩田さんお願いします。
塩田:最初の頃は本当にFacebookを見て一人ひとりにメッセージ送って、っていうのをやってました。
けれども最近は、僕たちは早いタイミングで採用とコーポレートブランディングチームみたいなものをつくっていて。
たくさんゲームの会社がある中で、レイバーマーケットから見たときの差別化ポイントというか「この会社に入る利点って何なの?」っていうのはなかなか普通にやってるだけでは伝わらないと思うので、そこをどう打ち出すかというのを考えるチームを早めにつくって、リソースを早めに採用に寄せました。
それと、僕たちは周りの人に応援されることをコアコンピタンスにしようということをやっているので、応援団の人をつくっていろんな人を巻き込んでいって、人を紹介していただいたりとか。そういうことを意識してやっていますね。
ちなみにカルチャーを意識せずに失敗したみたいな失敗談は、全く同じことを僕もやってます。ただ、カルチャーについてはどの粒度のカルチャーかっていうのも大切かなって思っていて、同じような人を採るっていうことは基本的にはしていないんですね。
人格的に悪くないとか、ちゃんと思いやりを持てるかとか、ありがとうが言えるかとか、そういう人としての原則みたいな粒度のレベルのところはしっかり見るんですけど、それ以外はちょっと変なやつが多いほうがいいっていう感じのやり方で、まぁ人間みんな違うしっていうのを前提として採用をしています。
田中:じゃあ秋好さんお願いします。
秋好陽介氏(以下、秋好):僕もお三方と一緒で、やっぱり社長自体がコミットするっていうことと、会社として「採用に尽力するんだ」っていう雰囲気づくりが大切だなと思っています。
というのも、我々ランサーズは最初鎌倉にあったんですよね。鎌倉まで来て働きたいっていう人ってほとんどいなくて。逆に鎌倉まで受けに来た人は100パーセント近くいい人で、「鎌倉フィルター」って呼んでたんですけど
その頃はそういう形でやっていて、直近では僕自身もいい人がいればどこでも地方でも会いに行きますし、経営幹部以上は、エンジニアでも営業でもサポートでも何人連れて来れたかっていう評価制度のKPIを設けています。そうすることによって会社としての採用、コミット力はすごい上がったなと思います。
僕ら独自でやっているおもしろいことでいうと、ランサーズには働きたいっていう人がいっぱい登録してるので、定期的にメルマガで「一緒に働きませんか?」って送るんですよね。そうすると一定確率で応募があって。
ランサーズを知ってる人なので、サポートとして最高にいいスタッフなんですよ。今ランサーズで数十人サポートスタッフいますけれども、半分弱ぐらいは元ユーザーさんと一緒に働いていますね。
あとは株主のインテリジェンスさんの宣伝をするわけじゃないんですけど、株主にもコミットしてもらっていて。インテリジェンスさんから1人会社に常駐してもらって、何人採用するっていうコミットをしてもらっています。
でも別にリクルートさんも使うし、インテリジェンスさんも使うし、社員紹介も使うし、っていう形で、株主の方も含めて巻き込んでやるのは結構うまくいったなと思っています。
田中:やっぱり成長されている会社さんですから社員を集めてくるっていうのは当然なんですけれども、皆さんいろんな失敗を経て今があるんだなというのが伝わってきたセッションだったのかなと思っています。
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