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シリアル・アントレプレナーの考え方(全2記事)

起業はくり返したほうが断然有利--経営者らが語る「シリアル・アントレプレナーの強み」とは

IVS 2015 Springの本セッションを前に行われた特別インタビューに、KLab・真田哲弥氏、メルカリ・山田進太郎氏が登壇。「シリアル・アントレプレナー(連続起業家)の考え方」をテーマに、複数の会社を起業・経営してきたことによって得た人脈や勝負勘など、若い頃と比べた自身の強みについて語りました。

IVS特別インタビュー「シリアル・アントレプレナーの考え方」

佐俣アンリ氏(以下、佐俣):続いてのインタビューですが、テーマが「シリアル・アントレプレナーの考え方」ということで、KLabの真田さん。

真田哲弥氏(以下、真田):よろしくお願いします。

佐俣:メルカリの山田進太郎さん。

山田進太郎氏(以下、山田):よろしくお願いします。

佐俣:まず初めに、簡単に自己紹介をいただければなと思うのですが、自己紹介といってもシリアル・アントレプレナーとして今に至るまでの経営者の歴史みたいなものを、真田さんお話しいただくとすごい長くなっちゃうと思うんで。

真田:30分ぐらいいっちゃいます。

佐俣:3〜5分ぐらいの間でまとめていただけると(笑)。じゃあ、真田さんからお願いしてよろしいですか。

KLab・真田氏、メルカリ・山田氏の起業家人生

真田:僕の起業家人生の一番の始まりは大学生、19歳のときに株式会社リョーマという会社を設立したことに始まります。その頃はまだインターネットそのものが存在していない時代で、そのときは運転免許の合宿という事業からスタートしました。

その後、大学5年目に単身東京に出てきて、ダイヤルQ2という音声情報サービス。その時点でもまだインターネットが存在していないので、電話機を使った音ですね。音で情報サービスをやるというのをスタートしました。

佐俣:それが2社目ですか。

真田:これ2社目。

佐俣:すでに2社目なんですね。

真田:その会社は急成長して、2年目で年商40億とかまでいくんですけど、3年目で倒産するという、非常に短命で終わりまして、そこからそのときにできた借金を背負って、ひたすら返す人生を送ってたんですけども。

1995年ぐらいに日本でインターネットブームができ始めて、「やばい、俺はインターネットやんないといけない」と思って。

実はその間も、小さい会社を何社もつくっては売却してということを(やっていた)。だから主に4社なんですけど、小さい会社を入れると、その間に3、4社つくって売却した会社がありまして。8年間ぐらいかかって借金を返済して、95年にインターネットが入ってきて、その後ぐらいにインターネットの勉強をしようと。

全くわかんなかったんで、それでアクセスという、当時TCP/IPとかブラウザをつくっていた会社に営業マンとして入社して、そこで技術の勉強をして……と言っても、プログラムを書けたわけでもないので、営業マンだったんですけども。

僕が営業に行った先がNTTドコモという会社で、僕がプロジェクトリーダーとしてやって立ち上げたのが、後にiモードと呼ばれるようになって、その担当営業としてドコモさんに入れて、ブラウザメーカーを各社に入れてってことをひと通りコードフリーズまでやって、さあ、俺は独立してコンテンツ側をやろうと。

これはブラウザを売ってる場合じゃないということで、コンテンツ向けの会社をつくったのが、次のサイバードという会社で。

今、赤字上場は、叩かれまくってますけど、サイバードは設立から2年で、15億円の赤字で上場しました。上場した直後からずっと暴落して、下落率1位という名誉ある称号を獲得しましたけども。でも、3年目で計画通り売上100億円の利益10億円を達成しました。

そのサイバードの子会社として、ケイ・ラボという会社をつくりました。それをスピンアウトさせて僕が引き受けて、Klab株式会社と社名変更させて、また上場させて現在に至る。だから、メインで経営している会社はこれで4つ目というわけです。

佐俣:ありがとうございます。もう一つひとつのエピソードが30分ぐらい話せる。

真田:朝まで生テレビとかがんがん企画していただくと、いくらでもしゃべります。

佐俣:じゃあ、進太郎さん、お願いします。

山田:私はシンプルに2社しかやってないんですけど。

真田:「しか」じゃなくて2社もやってますから。

山田:一番最初の会社はウノウっていう会社で、2001年に有限会社で始まったんですけど、個人の箱としてやってたので、社員とかも雇わず4、5年やってました。2005年にサイバーエージェント第1号社員だった石川篤さんという方と共同創業というような感じで、増資をしてつくったのがウノウ株式会社という形になります。

それから2008年くらいからゲームを始めて、その後、10年の夏に売却したというのがまず1社目ですね。その後は1年半ぐらいジンガジャパンになったウノウで働いてて、世界一周に1年ぐらい行ってて、メルカリ始めたのが一昨年の2月ですかね。それから2年半やっているっていうのが今のメルカリっていう会社になってます。

佐俣:ありがとうございます。もうすでにだいぶ濃い感じになってきてますけども。

シリアル・アントレプレナー(連続起業家)の優位性

佐俣:テーマが「シリアル・アントレプレナーの考え方」ということで、今すごい、もう1回スタートアップからすごい流行ってきているなっていうので、どんどん起業家がふえてきてるんですけど、それは日本のインターネット、多分95年ぐらいから活発になってきてて、もう20年。2週目、3週目の方がふえてきたんですけど。

真田:多いですよね。

佐俣:特にお二人みたいにすごいスピードで成長する企業がふえてます。何が違うんだろうかと。1回目の起業家と何が違うのかっていうのを聞いていければなと思うんですが、真田さん。

真田:もうちょっと砕いて質問してくれたら答えましょう。漠然としすぎてると1人で30分しゃべっちゃうから(笑)。

佐俣:それは危険ですね(笑)。真田さん、シリアル・アントレプレナーは有利だと思いますか。

真田:僕は、断然有利だと思ってまして。若い頃の自分を振り返ると、経営者としては本当にレベル低かったし、経験知識が全然足りなかったなと。

今の自分が、当時あの事業アイデアを経営してたらもっと違った戦略をとったよなと思うことがいっぱいあります。

やっぱり僕は経営者として成長してるつもりですし、当時より今のほうが洗練した経営をすることができていると思っています。

佐俣:なるほど。進太郎さん、どうですか。

経営者としての引き出しや人脈が問題を解決する

山田:僕も全く同意見なんですけど、結局、経営って無限の打ち手がある将棋みたいなものだと思うんですね。だから、知らないと打てないみたいな。知ってて打てる手が多ければ多いほど、当然勝つ可能性が。

真田:別の言い方をすると引き出しですよね。

山田:そうですね。

真田:経験とともにいろんな引き出しがふえてきますよね。経営学という普遍化された学問より、自分の中にもうちょっと染み込んだ、「あのとき、あれをやっとけばよかった」っていう後悔とか、「あのときあれをやったおかげでうまくいった」っていう記憶がもっと生々しく、自分の脳みその中に引き出しがふえるんですよね。

佐俣:なるほど。

山田:例えば、ちょっと法律的な問題が事業上に生じたときに、初めてだとあたふたしちゃうと思うんですけど、知り合いに1人弁護士がいれば、電話して「どうなんですか」とか聞いちゃったら終わりみたいなところもあったりして。

だから、それを半年かけて解決するのが1分で解決できるみたいな、そういう有利さもあるかなと思います。

佐俣:その辺もすごいおもしろいんですけど、やっぱり1回目って伝わりにくいと思うんですね。具体的に、今の会社はこの経験があったから、いきなりこれができたみたいなことは何かないですか? 具体的な話であるとうれしいんですけど。

真田:具体的に言い出すとものすごい細かい話がいっぱい……じゃあ、先どうぞ。

山田:資金調達はやっぱり信頼があるかなと思います。初めメルカリ社の場合は、リリースする前に(松山)太河さんのイーストベンチャーズから5,000万円調達させていただいて、その後、すぐリリースして1ヵ月に満たないぐらいで、ユナイテッドさんから3億円調達させていただいたんですけど。

そういうのって人間関係がずっとあって、過去に成功したとかじゃなくても、長い経験があって人間関係ができてて、「この人だったら信頼できるかな」みたいな、そういうのは大きいと思うんですよね。

真田:築き上げてきた長い人間関係とか人脈によって、簡単にいくことってたくさんありますね。ただ、これはシリアル・アントレプレナーだけではないですね。

長年どこかのサラリーマンとしてやってきて、人間関係をつくっていったケースでもあり得ると思いますし。もう1つは、やっぱり年齢がある程度になってくると、周りの友達もそれなりに偉くなってくるから、直トップと会話ができたりっていう。これは単に年齢の問題ですね。

山田:確かにそうですよね。

過去の経験から会社の勝負どころがわかる

真田:次に、「経験上、ここでダッシュかけないといけない」っていう勘どころがわかるみたいな。例えば、もともとKLab株式会社っていう会社は、開発会社として受託開発を延々やって地道に成長させていく。

社員4、5人の受託開発会社を育てていってたんですけど、ソーシャルゲームがやってくるときに、「これだ、ここに張るんだ」っていう決断をして、受注を止めて。すなわち売り上げが止まって、給料は出ていくっていう状況をつくってでも、「ここは自前で張りにいこう」という決断をするわけですけど。

これはやっぱり僕の長い経験の中で、会社って時々ガツっと張りにいかないと、急成長しない。会社も人も階段式にしか成長しなくて、ずっと努力してるのに努力が報われない時期がしばらく続いて、だから横ばい状態が続いて。

でも、その努力の蓄積が何かのきっかけで伸びたりするんですよね。それで、またしばらく横ばい時期が続いてっていうふうに、階段式に起業も人も成長していくんです。長い期間、努力をこつこつ積み重ねることも大事なんですけど、あるきっかけを逃さないこともすごい大事。

それは自分の経験上、あのタイミングで、あそこで張ったから一気にガッといったんだという過去の経験とか記憶が生々しくあるんですね。

「これって、ひょっとしてそのタイミングが今来ているんじゃないかっ!」ていう、この勘はやっぱり、僕はある程度経験だと思っています。

一方でそれをガツンと張るには、当時社員が130人ぐらいになっていて、売り上げを止めてそれに集中すると、もし外すと……。

社員3、4人、学生で起業しましたみたいなときだと売り上げがなくても何とか生きていけるわけですよ。そういう根性のやつだけで創業してるわけですから。

ところが130人とかになって、嫁さん、子供もいる社員もいる会社が勝負しにいくときに、どうしたらいいんだって考えたときに、いったん別法人化して、いざとなったら増資とかで資金を調達できる状況をしっかりつくってやろうみたいな。

そういう資金調達の知識ができ上がってきてるので、「足りなくなってから借り入れに走ると、銀行は貸してくれないな」っていう知識とかもあるから、やり始める前に銀行借り入れに走ったり、念のためにソーシャルゲーム事業がうまくいかなかったときに売却とか増資ができるように分社化したり段取りしてて。

やっぱり僕は最初の頃にはそういう知識はなかったですね。財務系とかそっち系は弱かったので。

でも、今となったら、会社って最後キャッシュがあったらつぶれないし、とにかくキャッシュが一番大事だってことをさんざん思い知ったので、P/Lとか何とかじゃなくてキャッシュなんで、とにかくキャッシュをいかに切らさないかってことを段取りして、新規事業で勝負かけるみたいな。

佐俣:なるほど。

ソーシャルゲーム市場での成功要因

山田:当時、ソーシャルゲームにKLabさんが入ってきた頃というと、現役で僕もやってたときなんですけど、既存の積み重ねの技術力とかがある会社に、そういうお金をバッとつけてやったからすごい成功したっていう感覚はありますよね。それこそ当時は、gumiとかポケラボとかも2、3人でやってたような感じだったから。

真田:あのときもサーバ負荷が一気にドーンといったから、ある程度サーバの技術力がない会社だと対応できなかったですね。あのときは(ゲーム市場に)一気に来過ぎたんで。

佐俣:対応できる者が勝ち残った感じの市場でしたよね。

真田:ですね。

佐俣:やっぱりシリアル・アントレプレナーさんの強みってすごいあると思うんですけど、そうすると若い人はどうすれば。若かった頃の自分の中でよかったなってことあるんですか。

真田:もういっぱいありますね。

佐俣:どういうところなんですか。

真田:僕も今年、50になるんですよ。いい年ですよ。そうすると、体力がついてこなくなるっていう現実問題があるので。

山田:わかりますよ、それ。

佐俣:わかりますよ(笑)。

真田:若いときはね、3日でも4日でも徹夜して。サービスイン直前とか、朝になると社員がみんな床にごろごろ寝転がって、朝までやってたから、もういっぱい死体のように転がってるわけでしょう。僕もその中の1人で、朝までやってて。

山田:今できないですからね。

真田:若いときは無理がききますよね。やっぱりこの無理がきく体力があるっていうのは、スタートアップにとってはすごい大事ですよ。

だって、多少無理しないと山越えられないですから。この無理ができる間は、まだ次の創業ができると思うんですけど、無理がきかなくなったら、やっぱりなかなか難しいですよね。

佐俣:進太郎さんも激しくうなずいてますけど。体力ってこと。

山田:最近やっぱり体力落ちたなと思って。本当に徹夜とかできなくなったんで。今、アメリカ行ったりとかしてるんですけど、なんか本当に疲れちゃったなって思うときあるんですよね。ちょっと戦い方変えないとなみたいな。

佐俣:若い人が勝てるとしたら体力、無茶がきくってことですね。

真田:そうですね。無茶がきく。やっぱり2、3人の自分たちの同じ志を持った者だけで創業してるときって、誰も寝ようとしないし、さぼろうとしないし、無茶がきくじゃないですか。その無茶で無理やり乗り越えていくっていうことは多々ありましたね。

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