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シェアリングエコノミーの今(全4記事)

IoTの進化で「資格」は不要になるか--シェアリングエコノミーの拡大を経営者らが予想

IVS 2015 Springの本セッションを前に行われた特別インタビューに、スペースマーケット・重松大輔氏、akippa・金谷元気氏、DeNA・原田明典氏が登壇。立命館大学准教授・琴坂将広氏をモデレーターに、「シェアリングエコノミーの新しい可能性」について語りました。経営者らは、IoTの進化によって、システムに関する知識や専門スキルを持たない、いわゆる「素人」でも容易にビジネスに参入できるようになり、シェアリングエコノミーの概念がさらなる広がりを見せていくことを予想しました。

シェアリングエコノミーの新しい流れ

琴坂将広氏(以下、琴坂):原田さん、この成長軌道に入った2社以外に、注目の種みたいな、シェアリングエコノミーの新しい可能性を持っている会社ってありますか?

原田明典氏(以下、原田):先ほども少し話した、レストランとかのスモールBですよね。

琴坂:スモールB。

原田:ええ。今はC向けのスマホのアプリという流れの中から、シリコンバレーではエンタープライズのものが増えてますよねと。で、その中間のサービスだとか、スモールB向けのソリューションみたいなものも増えてきてると思うんですけど、スモールBがもう少し入ってくるような……。

琴坂:スモールBというのは中小企業というようなイメージですか?

原田:レストランとか美容室という場合もあります。

琴坂:個人商店みたいな感じの場合も?

原田:そういう場合もありますし、士業の方々もいらっしゃいますね。

琴坂:教員もそうかもしれないですけど。

原田:この辺がだんだん重なってくる。クラウドソーシングの発展形なのか、シェアリングエコノミーの発展形なのかっていう辺りがかなり混ざってくると。

クラウドソーシングも実はシェアリングエコノミーの中の1つであって、先ほどのダイナミックプライシングと同じですね。これがまたスモールBっていうところで融合してきているのが今結構おもしろい化学反応かなというふうには見ています。

琴坂:なるほど。

専門のシステム・スキルがなくても事業に参入できる

原田:もうちょっと前にはCtoCマッチングと言われたタスクラビットのような、ああいう人のリソースが出てきました。今世界的に見て先進国の失業率ってあると思いますけど、これも遊休資産ですよね、働く力があるわけで。これをどう活かすかということでタスクラビットのようなものが出てきていましたが……。

琴坂:日本ではあれはうまくいかなかったんじゃないかなぁと。

原田:タスクラビットは実際は家具の組み立てとかそういうところで今回っているという感じで、なんでもありますという概念のところではない感じなんですね。なので、私なんかがUSで投資をしているところではルーターとかパソコンとかのセットアップに特化した、ギークを集めた「geekato」っていう会社があるんですけど。

琴坂:すごい名前ですね(笑)。

原田:例えばECで何か難しいものを買ってセットアップできるか不安だというときに……。無線LANとかはリアルの店舗で買う方のほうが多くいらっしゃると思うんですけれども、そういうのをだんだんECで買うようになっていくときに、近所にいる、まぁ言ったらギークがセットアップしてくれるというUber for geekのようなものが出てきているんですけども。

先ほど重松さんが「素人と素人」という言葉を、言い方はどうかということも含めておっしゃいましたけど、まさにさっきの専門システムや専用機みたいなものが不要化して、タブレットとかスマートフォンのような汎用端末でできるようになったと。

それと同時に汎用スキルでもけっこういけるようになったということで、今まで手に職がないという方であっても結構イージーに入っていけるようになった。

となると、スモールBの世界とさっきの素人とおっしゃっていた部分の境目がますますなくなってきている、というのがなかなかおもしろいところですよね。誰でも簡単に駐車場のオーナーになれるとか、スペースのテナント業を開けるようになっているわけですから。

琴坂:昔は境目がありましたよね。事業にできるかできないか、0か1かって存在したものが。

住居や駐車場の管理がシェアリングエコノミーで完結できる

原田:やっぱり一番のポイントが「資格」だと思います。従来であればそれがすごく境目としてあった。今先進国でいろんなシェアリングエコノミーが普及していくなかで、必ず問題になるのが法の問題ですね。その法というのは、たいてい何らかの資格を定義してっていうようなものが多いですよね。

なので、本当にその資格がなきゃできないのか、安心安全にできないのかというあたりがですね……。今はもうテクノロジーのほうが超えちゃってる場合があるんですね、その資格よりも。その場合にこれをどう整理していくか、どう議論していくかということだと思いますね。

琴坂:なるほど。スマートフォンであったりタブレットであったり、そういった技術によってシェアリングエコノミーが出てきたという側面があるとおっしゃられたんですけども、世の中ではIoTというまた新しい言葉が出てきています。そういうふうにモノにタグが付いてそれが通信するようになったらどういうことが起きてくるのでしょうか? アイデアとかイメージはお持ちですか?

重松大輔氏(以下、重松):スペースマーケットでは特にスマートロックですとか、今日も出ていましたSafieのような監視カメラのようなところ、あとはタスクラビットのようなエニタイムズさんとか、そういうものを組み合わせると、私が例えば鎌倉に古民家を持ったとすると、ぶっちゃけ行かなくてもこっちで管理できるわけですよ。

いついつこの人に認証のキーを渡して、カメラがついてるから一応到着確認とかができて、どういうことをやってるかっていうのもちゃんと全部見れて、後片付けもエニタイムズさんとかタスクラビットみたいなプレーヤーにやってもらえば、すべてがリモートでできちゃうっていうわけですよね。

琴坂:もうすべてがシェアリングエコノミーでできあがるビジネスモデル。

重松:その辺は本当におもしろいなと思っていて。それが今までには考えられないくらい低価格でできてしまうと。そこに今非常に可能性を感じていますね。

金谷元気氏(以下、金谷):駐車場の場合は、不動産会社さんって基本的にアパートの管理をして、おまけで駐車場も管理してるので、本当はやりたくない業者さんが多いんですね。

その中で私たちは本当は駐車場管理できたほうがいいんですけど、人に行かせるわけにもいかないですし、セコムさんとかホームセキュリティでカメラをつけるわけにもいかないんですけど、まさしく今日のSafieさんとかで、月に2000円~3000円の低価格でカメラをつけて録画できるならば、そういうのを活用して駐車場管理はしていけますよね。

やはりこれから自動運転が来るなかで、駐車場を押さえておきたいっていう気持ちはすごく強いので、管理までしたい気持ちはあるんですけど、現地に行って何かするというよりもやはりそういうのを活用してやっていければとは思っていますね。

IoTによってビジネスの効率化が進む

琴坂:なるほど。IoTというと、カメラに通信するとか身の回りのものというイメージがあるんですけども、その辺はどのぐらいインパクトのあるものでしょうか?

今のビジネスに足していくものの他にも、新しくネットにつながることが増えていく中で、すべてがネットに繋がったシェアリングエコノミーってどんなものなのかなと、どういうふうなイメージをお持ちかなと思いまして。

原田:やはり基本はセンサーだと思うんですね。カメラは画像だったり映像のセンサーと捉えることができると思いますし、あとは温度とか振動とか、動きを捉えるセンサーもあると思うんですけど。なので、そのセンシングをどのようなところに入れたいのかというようになってくるのかなと思いますね。

IoTの火付け役になった「UP」なんかも要は万歩計で、センサーとしてはそんなに新しくはなくて。バッテリーの技術が発達したので丸一日それを充電しなくても大丈夫とかいうようなところに来てるんだと思うんですね。

もう1つ、昨今のIoTの肝は、私が元docomoだから言うわけじゃないんですけども、やはりスマートフォンというものが多分に関与していると思います。センサーの技術はかなり前からずっと発展を遂げてきているわけですけども、ただセンサーの働きや動きをビジュアライズして感じることってなかなかできなかったんですよね。もしくは解析とか。

それが手軽にこの画面でもって見えたもんですから、急にここで「見える万歩計」にワッとなるということであって。今まで何もしゃべらずに寡黙に働いていたセンサーが、いろいろ「僕こんな仕事してるよ」っていう働き様が見えるようになってきた。そうすると急に「このセンサー、かわいいやつだな」と……。

一同:(笑)。

原田:それでいろんな可能性が出てきたというのが今だと思います。センサーとバッテリーの技術っていうのは綿々と地道に進化していて、それがスマートフォンが出てきたことによって、Bluetoothとかも同時に進化してきた背景もあるかと思うんですけども、突如として急に「こんなにすばらしいものだったんだ」ということで、センサーのことを、カメラも含めて見直しているということだと思いますね。

琴坂:それがまた新しくシェアリングエコノミーを広げていくんじゃないかという。

原田:そうですね。人が介入する部分、特にプロフェッショナルじゃなきゃできなかったところや資格がないとできなかったところ。

資格を無意味だと言っているんじゃなくて、やはり安全とか安心とかっていう社会の基盤を守るために作られた資格が多いと思うんですけども、センサーが優れてきて、ワイヤレスの技術も進んできて、となると、「資格がなくてもこのセンサーでこういうふうにモニタリングすれば安心安全は担保できるよね」ということになってくれば、シェアリングエコノミーという考え方が一般的に広まる。

基本は先ほど「素人と素人」とおっしゃいましたけど、こういうところがうまくマッチングしていくことがやっぱり肝になるので、今までプロフェッショナルがやってたような部分をセンサーとかがやって、テクノロジーの進化、IoTの進化によってまた効率化が進むと思っていますけどね。

琴坂:わかりました。さて、前半部は「シェアリングエコノミーの今」ということで、技術があってそこによって生まれてきたサービスの現状と未来の可能性についてお伝えしてきました。後半はいろいろあるかもしれないトラブルですとか、課題に関してもお話を伺えればと思います。ありがとうございました。

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