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Let's start up!(全3記事)

「10年後には今の仕事の7割が無くなる」 nanapi古川氏が語る、大企業にいるリスク

日米ベンチャー業界に精通する3人の起業家とベンチャーキャピタリストが語る、スタートアップ論。シリコンバレーでの起業秘話、パートナーの選び方など、スタートアップ時の生々しい実体験を元にそのポイントを解説します(学生向けスタートアップイベント・IVS 2013 Winter Workshopより)。

リクルートにいても成長感がなかった

古川健介(以下、古川):nanapiの古川と申します。nanapiはハウツーサイトというものをやっておりまして、大体月間1,800万人くらいが訪れるサイトになっています。前の二人がすごい経歴すぎたので、僕は親しみやすい経歴で話せればなと思います。簡単に話せるように起業までの経緯と、どうパートナーを決めたか、何をするかをどう決めたか、を駆け足で説明したいと思います。

経緯ですけど、高校時代の夢は普通のサラリーマンだったんです。一度きりの人生なので安定して暮らしたいと思っていて、リスクは超怖いな、絶対嫌だなと思っていて(笑)。今でもそうですけど、リスクはとらないで安定したいなと思っていました。じゃあなぜ起業したのかというと、もともと19歳の時に浪人生だったんですけど大学受験のサービスを作ったんです。

勉強しろよという感じですけど、高校時代に最後の模試で偏差値が40いかなかったんです。馬鹿だなあというかんじですけど。分析してみると情報が足りなかった。これは大学受験についての情報を探さないといけないと思って、当時2000年にインターネットを探したのですけど、良いのが無いと思って自分で作りました。

これがすぐ月1000万PVを超えて、予備校に行くとみんな知っている。先生も全員チェックしているということになって、これはなんかすごいなと思って。こんな19歳くらいの個人が一日くらいで作ったサービスが世界に大きな影響を与えているということに感動して、インターネットにのめりこんだという経緯があります。

インターネットってすごいなと思ったので、大学生時代はサービスを他に作ったりインターネットの仕事を請けてみたり、起業してみたり、事業を売却してみたりしました。大学時代に起業した経験があります。ただ、何故せっかく起業したのに売却したかというと、当時レンタル掲示板事業をやっていたのですが、サービスはどんどん大きくなります。

当時3億ページビューくらいになって日本で100番目くらいになったんですけど、全然儲からなくて、月40万円くらいしか儲からない。これは僕に経営センスがないなと思って、当時のlivedoor、今はLINE株式会社になっていますけど、ここに売却をしました。これにはけっこう反省しまして、就職してちゃんと働かないとなと思いました。

大学時代から起業してそのままやっていると危ない感じがするなと。3年くらいはちゃんとした会社で正社員やっていると、まともな人っぽいじゃないですか。それは結構大事だと思って、リクルートという所に就職しました。3年くらいいてからまた起業したという経緯になります。なぜ大企業に居続けなかったかというと、大企業は最高なんです。とにかく最高です!

いろいろ理由があるんですけど、すごい給料が出るんです(笑)。1ヶ月間成果を出さなくても給料が出るし、休んでも事業は止まらないし、日本では首にされることもないし、トラブルさえ起さなければいつまでも居続けられる。給与はリクルートって超高いのでスゲー良いです。2年目で800万とか越えるんです。

クレジットカードも作れるし家も借り易かったし、とにかく良いなと思ったんですが、なぜ辞めたかというと、成長感がなかったんです。リクルートってけっこう若手に仕事を頼んで、ガンガンに一年目から新規事業をやらせるんです。それでもやばいなと僕は思ったんです。大して成長していないんじゃないかと。要はなぜ成長感がないとダメかというと、変化についていけないという所があります。

10年後には今の仕事の7割が無くなる

引用しておきながらなんですが、この伝聞は嘘らしいので忘れてください(笑)。要は、変化し続けられないと生き残れないということです。今は変化がすごい激しい時代で最近よくニュースになりますけど、GREEさんって変化に対応してすごい伸びた会社ですけど、今ガンホーさんとかが急に来ていてそれを追い抜かすくらいになっている。とにかく1、2年で状況が変わり続けるので、変化についていけないとこれからは勝てないだろうと。常に成長し続けないとダメになっていくのです。

よく言われるのが、今の仕事の7割が10年後にはなくなると言われています。今この何かのスキルを身につけても10年後には7割くらいなくなっていると考えると、絶対に変化が必要だと。じゃあなぜ起業したのかというと、常に変化が必要な状態に自分を追い込むためです。10年後にリクルートでつまらない仕事をやっていて、そのスキルがもう必要ないといわれた時に、食いっぱぐれちゃったりする。そういうことを考えると、常に挑戦する立場にいないとな、と考えて起業しました。

何をやるかより、誰とどうやるか

次にどうパートナーを決めたか、後でまたやると思うので簡単に説明すると、和田というものと共同で経営しています。どういう風な人かというと、中高の同級生です。中1から一緒で高校も一緒でした。どうしてパートナーにしたかというと、そもそも仲がよかった。

僕は友達と起業したほうが良い派です。ビジネスパートナーと起業した時に、その人が仕事出来ないとむかつくじゃないですか。でも友達だと許せるんです。もう一つが、インフラに強いという。楽天でサーバー関係の仕事をやっていて、インフラって何かというと、沢山投稿があった時に耐えられるシステムを作ることが出来るということがインフラに強いということです。

当時は、いわゆる表面的なプログラムって誰でも出来るのですけど、もうちょっと奥深い所は経験がないと出来ないので、大きな会社にいた経験があるのは良いなと思いました。あと、風邪を引かないということがあって、彼は本当に半端なくて、11歳から本当に引いていないんです(笑)。中高皆勤賞ですごいなと思って選びました(笑)。

何をするかをどうやって決めたかということですけど、僕はなんでもよかったんです。というのは、どんどん変化していくので、どうせやることっていうのはかなり変わっていくだろうと。しかも10個やって1個当たるような世界ですし、もうなんでも良いと。そんな時に、小澤隆生さんというYahoo!のECショッピングの担当役員の方で、エンジェル投資家もやられている方から声がかかったんです。ハウツーのデータベースサイトをやりたいんだけど発注出来ないか、という話が最初あって「それ面白そうなんでやります」という、これくらいのノリで始めました。

どうしてやったかというと、3つありまして、もともと小澤さんは自分で起業して楽天に売却して、楽天で楽天球団を立ち上げてその後エンジェル投資家になってという経緯なので、経験を積んだ人のほうが知見があって、そもそもセンスが良いと。その人が「この事業くる」と言うものをやったほうが良いんじゃないかと当時思っていました。

僕は結構、何をやるかとかは問題ではなくて、誰とやるかとか、どうやるかのほうが重要だと思うので、何をやるかを問題にしたくなかったんです。どうせほとんど失敗するだろう、ただ失敗した後に他の事業に転換出来るほうが大事なので、何をやるかよりもそういう所を大事にしたいと思っていました。当然、ハウツーのデータベースというのが自分の今までやってきた所とか趣味趣向とマッチしたのでやりたいなと思ったので、やったのがこのnanapiというサイトになります。みたいな感じで私の経緯は終わりです。

どんな人と組むべきか

小野:ありがとうございます。では早速、ディスカッションに入らせていただければと思います。改めて冒頭に御三方にスタートアップ、最初は大学ですとか銀行ですとか聞きながら、僕自身も御三方の履歴を聞いて実に色々な変化というか、新しいことを常に起していると思いました。

とはいえ、今日は学生の皆さんも多いということで、学生の目線に戻っていただいて、先ほど冒頭に出した、いつやるのか、どうやるのかとかを話していきましょう。せっかくですので、インタラクティブにやりたいと思っています。5W1Hで、何を一番聞きたいかを聞きたいんですが、なぜだとか、どこでやるべきか、誰とやるべきか、どうやるべきかと色々あります。

じゃあ、なぜやりたいかということを聞きたい方手を上げてください。じゃあどこでやるべきかを聞きたい人、じゃあ誰とやるべきか、誰とやるべきかは多いですね、何をやるべきか、どうやるべきか。これで5W1Hもれていないですね。ちょっと自信がありませんが。じゃあ、一番多かったのは誰とやるべきかですね。実は伊佐山さんも学生の頃起業されていたということで、最初どういう面子でしたか? 古川さん、けんすうさんは仲良い人と、という話がありましたけれども。伊佐山さんは当時誰と起業しましたか。

伊佐山:当時も今のWiLもそうですけど、僕も実はけんすうさん派で、ロジカルでこういう人が良いというスペックでチーム作りをする人がいるんですけど、それが悪いという意味ではなく、僕は感性が合わないと嫌だなという意味でそれが友達だったんです。初めの2人も外人だったんですけど、日本のことが大好きなスタンフォードの学生で、二人ともすごく相性が合って、スポーツの趣味とかも一緒で、普段私生活も合う2人だったんです。

2人はエンジニアで、僕はどっちかというとビジネスっぽい考え方をしていたので、一緒にやろうということになりました。ここで、ケンカもするんですけど、しゃあないなとケンカしても違う考え方で、生まれも育ちも違うし、でも友達だから3人でいる時は楽しいよねということで選んでいます。

今回の新しいWiLという組織も、色んな人にどうやって組織作り、チーム作りをするかって聞いたんです。実は、三木谷さんがサンフランシスコにいる間に、時間をもらって市内で二人でランチしたりして、「三木谷さん楽天始めた時に何が一番大事でしたか?」と聞いたら「チームだね」と言っていたんです。でもチームが一番大切ということはみんな言うのでもうわかってたので、三木谷さんがチームを始めた時にどうやって人を選んだんですかと聞いたら、「頭良いとか経歴が良いということではなくて、信頼出来るやつだね」という話をされていたんです。それこそ泰蔵さんにも相談した時に感覚が会う人を選んだほうが良いと、直感で行ったほうが良いといわれました。

ロジカルにやって僕はこのスキルがないからこの人を入れなくちゃいけないとかやるよりは、僕が会って直感で、なんかよくわからないけどこの人と一緒にやりたいという人を選んでコアチームを作ったほうが良いということがあって、なるほどと思って。僕もTrustという言葉がありますけど、信頼を絶対的な一つの基準として、後は感性、センスが合うという2つを、特に創業時のチームを選ぶ時の基準にして動いています。

裏切られても構わない、と思えるか

では、信頼出来るかというのはどういう信頼なのかと突っ込まれると、僕の中の一つの割り切りは、たとえこの人に後ろから刺されても恨まない、別にいいやと思えるくらいの人だったら僕は信頼しているといえる。つまり一緒にいて、楽しくやっている時は盛り上がっていて揉めない訳です。

万が一上手くいかなくなった時に、出し抜かれたり突き落とされても、それでもこの人だったら僕は恨まないだろうな、と思えるぐらいの人だったら絶対的に信用しているということなので、僕は今選んでいる人たちに仮に僕が嫌な思いをさせられてもいいかなと思えるような人です。その人に恨みを持つような人だったら、まだそこまで信用していないということで、チームに入れないということでやっています。

小野:非常にわかりやすいですね。けんすうさん先ほどパートナーの話をしていましたけれども、後ろから刺されたらどう思いますか?

古川:多分あんまり……。しょうがないかなと思います。俺が悪いなと思うでしょうね。

小野:根っこの信頼があるからでしょうか。二人ともキーワードにしていますね。後一つ、お二人の話を聞いていて思ったのは、信頼がありながら自分の持っていないものを要素として取り入れているというのがありましたよね。体が強いというのとか、データベースサーバーに強いのとか。

伊佐山:さっきの基準でいうと、そこそこいるわけですよ。でも選べるのは一人とかで、コアはそんなに、いきなり10人集める必要はないので。まずは自分がそういう風に思える人の中で、僕にないものを持っている人、僕にない意見を持っている人、僕にない感性を持っている人、僕にない経験を持っている人って誰だろうといった形で最終的に選んでいったということです。

全部が全部相性だけで集めていくと、同じような人ばかりになってしまうので。やっぱりビジネスをやる時に限っていえば、実際ビジネスを実行する上で必要なものを持っている人を当然優先して選んでいくことになると思っています。

友達になれないやつをあえて選ぶ

小野:仲間がいない所からスタートした柴田さんは、パートナーが居ない状態から始めて、どうやって見つけたのかも含めてお願いします。

柴田:僕はあの、あんまり友達がいないので(笑)。そもそも僕日本でやっていても大変だと思うんです。一番、ディフェンシブな面で気にすることは、伊佐山さんが言っていたように、ダメになった時にどうするかということですね。

上手くいっている時は良いんですけど、だめになった時に、お互いにケンカをするかもしれないけど、致命的なケンカをしないで済むかということとか、この人逃げないかとか、僕は刺されたら痛いんで許せないと思うんですけど、そうなっても大丈夫かということが一つ。あと僕はお二人とはちょっと違って、スキルセットの補完関係ということではなくて、例えば小学校の時の30人か50人のクラスを思い浮かべてもらって、こいつは同じクラスにいても絶対に友達にならないなという人とやる感じですね、わざと。

小野:なぜですか?

柴田:そういう風にしておいたほうが後々、補完しやすいと思うんですよね。けんかしにくいと思いますし。僕は僕の、パートナーはパートナーの役割が会社の中であるんで、お互いリスペクト出来る関係のほうが良いと思うので、自分の中の小学校の時の一番仲良しの友達とやるっていうよりは、こいつ絶対友達にならないだろうなっていうやつとわざとやるっていうほうが、僕のパターンだと上手くいくのかなと思います。

伊佐山:ドMっていうか、すごいですね(笑)。もう一つ僕が思ったのは、スタートアップって、けんすうさんも言ったように、結構辛いことばっかりじゃないですか。毎日胃に穴が空くようなことを結構していて、結局楽なことがなくて、動かないと変われないし。そんな時に新しいことをやっていて僕が思ったのは、笑いがあると良いなと思って。

僕は今3人いるんですけど、毎日笑えるんですよ。行動が笑えたり、僕が辛い時に突っ込んでくるコメントが。僕はシリコンバレー、二人はベースの東京にいるのでfacebookでやり取りするんですけど、よくわからない突っ込みが面白くてニヤって笑っちゃって。アメリカで夜中の3時くらいに働いててすごいしんどい中でも、2人から突っ込みが入るとそれでニヤッと笑っえてすごくありがたいです。

ほんとに些細なことで仕事を手伝ってくれてありがとうという友情ではなくて、僕がしんどくて凹んでいて体調が悪くて、もう弱音吐きたいときに横から突っ込みが入って、つい笑っちゃうっていうのは、スタートアップにとっては大事な要素であると思っていて、笑いがあればなんとでもなるかなと思っています。

小野:苦しい時に喜びを共有しあう仲間みたいなものですね。けんすうさんどうですか、今の仲間の話は。

古川:そうですね、今30人くらい社員がいるんですけど、基本友達になれる位の人が基準になっています。一方で柴田さんの言っていることもよくわかると思っていて、リクルート時代の人事の人が言っていたのは、一番好きなやつと一番嫌なやつを採用するって言っていてそれは結構すごいなと思っています。結局多様性がなくなると変化に弱くなるので、そろそろ自分が合わない人を入れていかないと、という気持ちはあります。

スタートアップメンバーの誘い方

小野:先ほど皆さんに手をあげてもらった中で、何をやるかという話ですけど、それぞれにスタートアップの時にどう仲間を見つけて、どう誘うかといった所を含めて、何をやろうとかどうやろうといった、どんな風に仲間を誘ったのかなということをお願いします。では、けんすうさんから。

古川:僕は、よし会社辞めよう、と思った時にメッセンジャーで「会社辞めようぜ」といったら「いいぜ」と返ってきたんです(笑)。それから二人で退職届を出してきたという(笑)。

小野:何もやるって決まっていないですか?

古川:そうですね。実は細かくいうと、その一年以上前に会社を登記して仲間6人くらいで副業的にやろうと思ったんですね。会社の本業があるから副業でお金を稼がなくても出来るって思っていたんです。

でも、全然上手くいかなくて、思ったのが、一個本気でやらないといけないというのが一つと、何をやるかが結構問題ではなくて、これをやろうといって起業してそればダメだった場合って解散するのかって話じゃないですか。何をやるかわからないけど辞めてから考えようぜという。日本で餓死している人の数を調べたんですけど、あんまりいなかったので、多分死なないだろうと思ってやったという感じです。

小野:伊佐山さんいかがでしょうか。最初に立ち上げる時に、どう誘ったかっていう。けんすうさんの場合は何もなく誘ったっていうケースでしたけど。

伊佐山:僕の場合は大企業にはじめいて、トレーニング受けたり、色々な仕事をしてアメリカ行って、ベンチャーを支援するということで、ちゃんとしたインフラがあるところでやっていたので、僕の場合、そのプロセスで社会にこういうものが足りないとか、こういうことをやりたいという、やりたいことがあったんです。

僕の場合日本のベンチャーを海外から見ていると、なんでこんなに盛り上げられる人がいないのかということや、さっきの投資によるリスクマネーが少なくて、お金持ちのはずなのになぜ全然ないんだろうという「なんで」って言う疑問がすごくあったので。単純な結論は、そういうことをやろうという人がいないんだということです。

僕が特殊能力を持っている人間だから出来るとかではないんですね。この仕事をやるためにはさっきも言ったようにめちゃくちゃ大変な規制とかハードルがいっぱいあって、そんな面倒くさいことをあえてやろうという人が単にいないんだということではないかと。そういうことに賛同してくれる人っているかなあと思って。それで身の周りにいる相性が良さそうな人に相談をし始めたというのが最初ですね。その中のうち、今の二人は一緒にやりましょうと、即決というか、それやりましょうといって賛同してくれたんです。

小野:同じような危機意識があったというか、問題意識を持っているというか……

伊佐山:二人とも著名な経営者ですがすごく実力のある人たちで、彼ら自身も今の一組織で出来ることの限界とフラストレーションがあって、これで大きな流れを作ることが出来るんだったら、自分たちとしてはそのために10年使いたいと言ってくれたのがすごく大きかった。

日米におけるビジネスの見つけ方の違い

小野:柴田さんいかがですか?

柴田:何をやるかですよね。シリコンバレーにいた時に、僕わりといたずらっ子みたいな性格なので、みんな「お前起業したほうが良いよ」ってよく言ってくれるんです。それで、アメリカ人っていい加減に応援するじゃないですか、無責任に。今思うと、本気で言ってくれていたのかなって思いますけど。それで、起業しようかなって思っちゃったんですよ、勘違いして。

勘違いしたはいいんですけど、何やって良いかわからないわけですよね。で、僕は楽天にいたわけですけど、楽天って充分大きすぎて、みんなどうやって会社の事業のシナリオを思いついているんだろうって、シリコンバレーで上手くいっている起業家の所に会いに行って、「なんで成功したのですか」って聞かないで、「なんでこの事業を始めたのですか」って聞くんです。

で、みんな同じこと言うんです。何かというと、あまり大それて考えるなと言うんです。自分の身の回りの問題を発見して、それを自分のテクノロジーで直しなさいと。で、それが上手くいけばサービスになるし、サービスが上手くいけば自然に会社も作れという人もいるから、まずは会社をつくろうとか何をしたら良いかとかを考えないで、自分の身の周りで困っていることを見つけて、それを自分のテクノロジーで直しなさいと言われたんです。

これだったら出来るかなと思って、何に困っているかを色々紙に書き出したんです。一番困っていたのは当時、スマートフォンが発売されて色々なアプリが出回っていてすごいなと思っていたんですけど、アプリが探せない、あるいはアプリを出しても探してもらえないという点。これは僕はちょっと人生数年かけてやっても良いかなと思ってやりました。

古川:ここで一点良いですか。面白いなと思うのは、アメリカって、問題があって、問題をみんなでどう解決するかを考えるという、結構ハッカー的な考え方で、日本は手段があって、目的って変わるタイプなのです。初音ミクも、曲を使いたいから初音ミクを使うのではなくて、初音ミクを使って何が出来るかというのが日本的発想なので、その違いが面白いと思いました。

柴田:おっしゃるとおりですね。英語ってそういう言語なんで、言語的な違いもあるのかもしれないけど、本当におっしゃるとおりです。

古川:解決志向ですよね。

身近なところにビジネスチャンスは転がっている

伊佐山:僕もずっとスタートアップの人と会っていて、一番成功している人は身近な問題を解決している所から始まって、結構大きくなっているケースが多いんです。facebookだって結局、大きな学校で多くの学生が知り合う時に、昔は紙で連絡先とかを交換してたんです。入学式の日に撮った写真とその紙を見合わせて、この子かわいいからどこの寮に住んでいるかを調べて会いに行くんですね。それを電子化してネットワークで探せるようにする、という些細なことがミッションなんです。

最近大流行のUBER(ウーバー。注:今いる場所にタクシーを呼べる携帯アプリ。決済も行える)とかAirBnB(エアビーアンドビー:使用していない不動産などをパーティ会場や宿泊のために貸借するオンラインプラットフォーム)というのも自分が持っている資産が使われていない、タクシーもずっと人を乗っけているわけではないということがもったいないな、なんかそこでビジネス出来ないかなという。単純にいうと身近な問題で、タクシーがそこにあって一日のうち20%くらいしか人を乗っけていなくて、80%が空いている。

もっと言えば、リムジン会社はアレンジされないと使われないから普段黒塗りのリムジンが停まっているわけです。それを何とか出来ないかということでウーバーみたいなタクシーよりもちょっと高いんだけど居心地の良い黒塗りの車が迎えに来てくれてというサービスが生まれる。

AirBnBもそうで、別荘は夏以外は使われていない。誰かに貸すことが出来ないかな、安全に貸せないかなという身近な問題を解決する所がアメリカではメガベンチャーに育っていて、そういう観点ってすごい大事です。起業したら何をすれば良いんですかってアイデアをよく聞かれるんだけど、そんなのは身の周りで自分がストレスに感じていることをやらなければ、情熱を注げないし、解決に繋がらない。僕がそれをやったら良いよと言うことは意味がない。

実は身の回りに転がっていて、最近だと僕は家の鍵とか人に貸したりして、なくすじゃないですか。もう鍵なんてものはなくして欲しいと思っていて、携帯で良いじゃんと。携帯でやれば誰が入ったかとか、いつ入ったかが管理出来るじゃないですか。家の中だって解決出来ていないものは沢山あって、そういう観点でいればネタはいっぱい転がっているということです。

小野:身近な所に転がっているということですね。身近な人から声をかけてスタートしたというケースも、その一つかもしれないですね。

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