2024.10.10
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林信行氏(以下、林):クリエイティブプロセスマネジメントということで、これまでのIVSはほとんど経営者の方やエンジニアの方々がビジネス等の話をしていましたが、ちょっとこのセッションだけはアングルを変えます。
私はいつもそのようなセッションのモデレーターをやっているのですが、実は僕、ITの世界ではアップルさんからいつも事前にシーディングで新製品を受けたり、GoogleやMicrosoftのウェブサイトでも連載をしたりしています。非常にITどっぷりに見えるかもしれませんが、その一方で「東京デザイナーズウィーク」って毎年秋にやっていますけれども、それの企画をやったり、ジェームズ・ダイソン、掃除機のダイソンありますよね。あれのデザインアワードの審査員をしたり。IT系とデザイン系、両方に足を突っ込んでいるんです。
今日ここにいらっしゃる方には独特の文化があって、デザイン系にいくと、そちらはそちらで独特の文化があって、なかなかこれが交わらない。日本はデザインの世界もITの世界もアートの世界も、それぞれが“ムラ化”してしまって、本当は結びついたら素晴らしいものが生まれそうなのに、なかなか反対側まで地平を伸ばさないというのが大きな機会損失なのではと思っています。今回は、エンジニアリングのバックグラウンドを持ちながらもクリエイティブな部分に気を遣っている方々、それからクリエイティブなバックグラウンドを持ちながらデジタルがどういった可能性を持っているのかに詳しい方々をお迎えしています。
今日は4社5名の方をお呼びしておりまして、各社のホームページを勝手にあげてみました。GREEさん、SMART EDUCATIONさん、Bracketさん、Partyさんと出してみたのですが、Partyさん、これなんだかわからないですよね(笑)。これ、わかります? どういうトップページか。
これはスクロールすると実は年表になっていて、何月ごろにどういったクリエイティブワークをやっていたかがわかる、そしてクリックするとディテールが出てくるという、非常に驚かされる、中の作品が見れるという、そんなホームページです。まずは簡単に最初、自己紹介をしてから、どうやってクリエイティブとITのビジネスを結びつけるのか、という議論ができればと思っています。最初、Partyの中村さんから最近の作品等、ご紹介いただければと思います。
中村洋基氏(以下、中村):はい、Partyの中村洋基と申します、よろしくお願いいたします。隣にいるのは、前回北海道で林さんと一緒にやらせてもらったのですが、社長をせっかくなので連れてきました。社長の伊藤です、よろしくお願いします。
伊藤直樹氏(以下、伊藤):よろしくお願いします。
中村:クリエイティブという話と、マネジメントという話。実はこれらは切っても切れない関係だと思っています。その話にうまく移行していくために、まずクリエイティブという言葉自体が非常に広範だと思います。ここにいらっしゃる皆さんが何かしらサービスをつくろうとか、新しい経営をつくろうとしていたら、皆さんクリエイターだと思うのです。そのなかでもクリエイティブというものには定義があると思います。皆さんの定義も違うと思います。なのでまず初めに自己紹介的に、私たちの会社がやっているクリエイティブの定義からお話をしていければと思います。
私たちは、広告のクリエイティブの受注が非常に多いです。
クリエイティブと言われますが、アーティストではないです。むしろ感覚としては受注型のサラリーマンに近い。経営者なのでサラリーマンではありませんが、そのような感覚を持っています。なぜクリエイティブと言われるかというと、発注があったときに、通りいっぺんのビジネスのスキームに従ってPRを行っていくのではなく、そのなかから見たこともない、こんなこと考えたこともない、というのを引き出すのが仕事なので、それを表現者であると祭り上げて「クリエイティブ」という言葉で済んでいるだけだと思うのです。それが僕らの仕事です。最近やったものをいくつかご紹介したいと思います。
まず初めに、先週Lady Gagaが来日しました。その少し前に『ARTPOP』というニューアルバムを出しました。そのプロモーションの依頼を受けて考えました。課題は来日アルバムプロモーションなのですが、日本でしかできないこと、そしてGagaが喜びそうなこと、というのが内なる課題でした。掘り下げていくうちに思いついたのが、Gagaそっくりの人形をつくることです。オリエント工業という、ラブドール、ダッチワイフですね。非常に性能のよいダッチワイフをつくっている会社とコラボしてつくりました。ビデオをご覧ください。
なぜ最後変質的な男の子がいるかというと、一体だけ、抱きしめるとセンサーが反応して骨伝導スピーカーで新曲を流したり、Gagaの日本のファンに向けての「アイシテマス」みたいな片言を言ってくれる機能をつけました。
来日した日にYahoo! Japanに「Lady Gaga.co.jp」をつくってもらって、下にスクロールすると等身大のGagaが出てくる、Lady Gaga版Yahoo!みたいなものをつくらせてもらいました。これが最近の仕事。
もうひとつは、東京モーターショーが先週まで開催されていました。TOYOTAさんのコンセプトカーのひとつ「FV2」という車があります。名前もそうなのですが、コンセプトカーのコンセプトから関わりました。初めに話がきたとき、「コンセプトカーのコンセプトを考えてくれ」と言われたんです。すごいな、と思いました(笑)。
林:仕事放棄していますよね(笑)。
中村:普通、コンセプトカーのコンセプトはTOYOTAさんが考えているのではないかと思ったんですが。もちろん考えていたんですが、それにしても君らの意見をくれ、みたいな感じだったんですよ。一番未来の車、という課題がありました。20年後を目標としてくれ、と。2033年の車です。これはコンセプトでしか作られないので、来年になったらまた違うコンセプトカーをつくる。常に20年後というのがアップデートされる設定なんです。絶対に作られることはない、しかしTOYOTAのビジョンを示すものを考えろ、という非常に無理な話で(笑)。初めは「知るか!」なんて思っていたのですが、話をしていくうちに課題がだんだん絞れてきました。
TOYOTAの今の日本のスローガンは「Fun to Drive」、運転の楽しさなのですが、この車はこの形と体重移動で動く、ハンドルがない、体重移動でセグウェイみたいに動くということが決まりました。そこだけ先に決めるなという話なのですが。そこから未来のTOYOTAはどうなっているんだろうかという話をしたときに、Googleの自動運転カーの話が出てきました。
自動運転カーはすごく便利なのですが「Fun to Drive」、運転の楽しさは、移動することの楽しさであったり、子どもがおもちゃの車を「ぶっぶー」と転がしたりだとか、そういう楽しさを置き去りにする行為なんではないかと思いました。社会が全部自動運転タクシーになっていったら、2000年にはそういう楽しさがなくなってしまうんではないかと思いました。
「未来にあっても、なおかつ愛車にしたい車ってなんだ?」と考えたときに、直観的に自分が走るのを10倍くらいのスピードにするとか、それが体重移動で変わるというのと、感情を介して。一説によると、人工知能AIは2032年に完成されると文献に書いてありましたので、ドライバーの感情を介して勝手に反応するような設定にしました。
実際のモーターショーの現場でプレゼンテーションをやりました。実際に15分くらいのムービーをつくって、車にイリミネーションというLEDが表示され、その中身が全部同期します。車の傾きも時間に合わせて同期して。まったく同じときにアプリをつくりました。
アプリにスマホで参加すると、全員がプレゼンテーションのなかに主人公として参加できる。自分が主人公となってFV2を操作する、というのをプレゼンテーションのなかに入れました。モーターショーに行かなくても、アプリを落とせば全部プレゼンテーションが見られるようにしました。
なので、現場にいる観客はせっかく目の前に車があるのに全員アプリやってる、みたいな(笑)。そういうことが起きました。
もうひとつ、シミュレーターをつくりました。これは実際の車と同じように、体重移動でWii Fitみたいなものを改造してつくりました。体重移動で動かせるレーシングゲームをプレゼンテーションのなかに入れました。幾人かがこれをいじれるようにしました。これはゲームのユニティで制作しています。このようなエグジビジョンを行って、見るだけの(車やおねえちゃんを写真に撮る)展示型のモーターショーのなかに、ひとつだけスターツアーズみたいな体験できるショーをつくりました。
要するに、先ほどサラリーマンと言いましたが、課題を定義してそれを解決する。先ほどのカンファレンスでもミッションの話が経営者の方から出ていました。経営としてのミッションのつくりというのは、非常に広く捉えなければなりません。広く捉えながらも課題解決に合うような課題、色々なプロダクトに合う企業のミッションを持たなければなりません。
逆に個別の仕事になると、課題設定をできるだけ深く狭く掘り込んでいって、「お前らはこれじゃなきゃだめなんだ」というふうにアウトプットを決めさせる、ということが僕らのノウハウです。その課題をつくるためのノウハウや、解決するためのノウハウがある。一周まわって頭のおかしいことを提案する、と言いますか。そういうことをしなければいけないというのが、PRの仕組みかと思います。見たことのないものを必ずつくらなければならない、しかもそれを高い完成度でつくらなくてはならないので、マネジメントや人材をすごくまじめに考えなければなりません。それは僕らの会社も日々悩んでいることなのです。なのでこのあたりの話を聞きたいと思って、今日は来ました。
林:ありがとうございます。IVSの常連のYahoo!さんが「課題解決エンジン」とうたっていますが、まったく同じ「課題を解決する」ということでありながらもアプローチが違いますね。そのあたりの話も後ほどできればと思います。僕もモーターショーに行きました。車業界で何が問題かというと、若い人たちの車離れにどの車メーカーさんも恐れおののいていて、若い人たちに媚びを売ったような車ばかりあるなかで、すごくぶっとんでいて人気のブースでした。会社はどういったコンセプトでつくられたんですか?
伊藤:我々はクリエイティブラボと言っていまして、広告を受注する仕事は年々減っています。3年目になりますが、半分を切ってくる形になります。何をやっているかというと、今中村がお見せしたように車を一緒につくっていたり、ある空港のデジタル化をしていたり。つまり企業自身がマス広告をあまりやらなくなってきて、商品もしくはサービスそのものにコミュニケーションの要素を投資して入れていく、ということになってきています。なので我々はそのお手伝いをしています。
例えば、建築だけであれば建築家がつくるのですが、コミュニケーションの要素を建物の中に入れたいと言ったら、これは建築家だけではつくれなくなってくる。そうすると誰がやるかと言ったら、我々のような人間たちが入ってきているんです。今日はクリエイティブマネジメント、プロダクトマネジメントというテーマですので、クリエイティブというものがベンチャーの企業のなかで、社内で持つべきなのか、外に頼んでもいいことなのか、という議論があると思います。私が見る限り、チーフテクノロジーオフィサーといって、エンジニアリングができる人間が社長さんとくっついてスタートアップしていくというパターンが結構あると思います。
ただし、デザイナーやクリエイティブディレクターが、最初からスタートアップの企業に入って一緒にやっていくパターンは少ないと感じます。それがなぜかというと、クリエイターの性で色々やりたいんですよね(笑)。色々やりたいという本能があって、中間的な立場にいたい。外の人間を雇うか、そいつらにどうやってお金を払っていくのかというのが、成長をこれからしていくベンチャー企業には問題、ポイントになってくると思います。
例えば昔は宮廷画家っていましたよね。宮廷画家でさえ、月々のフィーをもらって外の人間として宮廷の絵を描いていました。契約内容によってその宮廷の絵しか描けない場合と、他の宮廷の絵も描ける場合がある。ですから、宮廷の中に所属していたのではなく、あくまで外にいたんです。我々Partyという会社は表現欲求が強いものですから、色んなもの、Gagaもやりたいし車もやりたい、外の立場にいたいのです。
よくベンチャー企業の方からお仕事いただいたり、問い合わせがあるのですが、焦点になるのはお金のやりとりです。どうやってやっていくのか。社長さんの多くは成功報酬にしたいとおっしゃるんです。つまりアプリが儲かったら、もしくはこの商品が売れたらレベニューをシェアしていく、じゃあそれを契約していこうということです。
しかしこれを何年も続けてしまうと、我々はオートクチュールとかテイラーメイドで一点一点洋服をつくっているようなものなので、それに対してお金がもらえないというのは……。普通のビジネスモデルでいくと我々は潰れてしまいます。ただ経営者の方はスタートアップのときにそんなに君らに払えるお金なんてないよ、とお思いでしょうし、そのとおりだと思います。お互いの現状が噛み合わないのがひとつの問題です。
今の状況というのは、1950年後半の東京オリンピックが始まる前の状況に似ていると思うのです。つまり、日本の企業がばーっと出てきてモダンになっていく上で、実はデザインやクリエイティブが一緒に歩んできたという歴史があります。例えば、グラフィックデザインというのは1950年代後半にようやく定義されました。これが何かというと、企業が支援をしたんです。日本デザインセンターというのがありまして、1959年につくられました。東京オリンピックは1964年です。
これがどういう方式でつくられたかというと、TOYOTA自動車、アサヒビール、新日鉄さんなどが共同の宣伝部を持とうといって出資をし、IPOを前提としない会社としてつくりました。そこに有名なクリエーター、デザイナーが集まって、それぞれの企業を支援していったんです。つまり一社だとデザイナーを雇うお金もないし、外部の人にお金を払うこともできない。でも共同で宣伝部を持って、そこで出資金でクリエイターをまかなって、TOYOTAやアサヒビールの宣伝やロゴ、サービスを一緒につくっていくというパターンがありました。それは今の時代にも参考になると思います。
今日はベンチャーの集まりですが、ベンチャーキャピタルという意味でも、ある成長企業に対し投資していくという方法もありますが、我々のようなクリエイティビティを資本にするしかできない人間たち、お金はありません、正直に言って。クリエイティビティを資本にするしか我々には方法がないのですが、そのときにここにいる皆さんのような方々とどうコラボレーションしていけるのかという可能性を、今日は探れたらいいなと思っています。
林:ありがとうございます。クリエイティビティとは試行錯誤が、エッジが効いたものを作り出すというところがあるので、やはりお金がかかる。コストファクターとして見るか、企業として余裕を見せてちゃんとそこに投資できるのか、というのが秀でる企業を生み出すんでしょうね。続いて、光本さんお願いします。
光本 勇介(以下、光本):初めまして。株式会社Bracketの光本と申します。
私たちはウェブサービスを運営しております。今回はクリエイティブマネジメントということですが、私たちはクリエイティブをすごく重要視しています。サービスを開発したり運営していく中で、どういった観点でクリエイティブをマネージしているのか実例を含めてご紹介できればと思います。
簡単に自己紹介なのですが、私自身外資系の広告代理店のオグルヴィ・アンド・メイザーという会社に新卒で入社致しまして4、5年くらいそこにいて、今のBracketという会社を立ち上げております。
Bracketという会社、渋谷で20名くらいでやっております。
現在は5つウェブのサービスを運営しております。そのうちのひとつ、Stores.jpというサービスにフィーチャーして今日はお話しをさせて頂きます。先ほどお話させて頂いたように、私たちは日々クリエイティブをいかに自分たちのビジネスやサービスに生かしていくかというのを考えながら事業をつくっています。
クリエイティブを介して、私たちのサービスを利用していただいている方々にいかに体感して頂くか、が自分たちのサービスのブランディングにまさに直結していると思っているので、クリエイティブがいかに私たちのサービスを表現するかというのを工夫してやっています。
Stores.jpが提供するサービス、クリエイティブの体験の事例です。簡単にStores.jpというサービスをご紹介します。
一言で言うと、誰でも簡単に、ウェブの知識がない方でもオンラインストアがつくれるというサービスです。
オンラインストアは今さら目新しいものではありません。しかし、ウェブの知識がない方がつくろうとすると、結局は誰かに外注しなくてはいけない。いろいろな知識と技術が必要なのでできない、というところを簡単につくれるサービスを1年ほど前から展開しています。動画を見ていただくほうがイメージがつくと思うので流します。
まずオンラインストアなので、アイテムを登録していただきます。
アイテムも、必要最低限の情報を埋めていただくだけで登録できます。
オンラインストアのデザインも、クリックするだけで簡単に自分の好きな世界観を表現して頂くことができます。
保存ボタンを押した瞬間にオンラインストアがつくれます。
実際のお客様からは、普通のオンラインストアからモノを買うような導線で買い物して頂けます。
このようなサービスです。
例えばこういったリアルな店舗で販売しているような方が。こういったストアを開いて頂いたり、デザイン会社に勤めているようなデザイナーの方が、自分でつくったオリジナルブランドを販売されたりしています。
中小個人の方だけではなく、こういった大手のブランドさんや企業さんが、期間限定の商品を販売するのに外注すれば何十万円何百万円とかかるオンラインストアを、究極的には無料でつくって運営していただくことができます。
私たちはとにかくウェブの知識がない方にオンラインストアをできるだけ多く提供したいので、いかに簡単に使っていただけるかというのを日々工夫したり、悩みながらサービスを作っています。
基本的には3つのステップです。URLを決めていただいて、商品をアップロードして、あとはもう販売。売れたら自分の口座にお金が振り込まれるという簡単なものです。
いつもゴールにしているのは、「いつのまにかできている」サービスというのを重要視しながらサービスを開発しています。究極的にはブログのオンラインストア版になりたい、そして1人1個オンラインストアも持っている世界を実現したいと思っています。あとは先ほどお話したとおり、とにかくシンプルなUIで、オシャレなオンラインストアが気づいたらつくれる、というサービスにしたいと思っています。
なのでいつもこの3つを念頭に置きながら、いかにユーザーの方が表現したり、体感したり、デザインも含めてつくっていけるかを考えています。例えば、オンラインストアを作ってみようと思ったとき、大体こういうフォームを見ると思います。
これは普通だと思いますが、なんか面倒くさそうだな、というのがあります。私たちの場合は最初にいただく情報は3つだけなんです。
これならなんか簡単そうだし、やってみようかなという感覚で使っていただいている方が増えています。なぜそう感じたかなのですが、一番最初の感覚は低ければ低いほうがいいと思っています。
取る情報も必要最低限。できれば3つかそれ以下くらいの情報にしたいと思い、デザインやUIもつくっています。いつも私たちがサービスを開発するときに最初にお客様に決めていただくことは、1つから、マックスで3つ。やるべきことは本当に重要なことからやっていただいて、後でできるものはとにかく後回しにする。あとは、必要ないものはとにかく見せない。常に、どの情報、どのデザインをそぎ落とせるかを工夫しています。これが一番大変なんです。これはほんの一例ですが、例えばストアのデザインをつくっていただく画面です。
背景の色を決めていただくカラーパレットがありまして、ここにオリジナル背景をアップロードできたりします。オリジナル背景を持っていない方には必要がないので、普通はこうなっているんですが……。
オンにしたときに、今度はカラーパレットが消えてオリジナル画像をアップするのに必要な情報を出します。
見せないものはとにかく隠しまくってですね、必要な情報だけいつも出すような工夫をしています。ひとつのメッセージをいかにシンプルに伝えるかを工夫しています。ついつい、いろんなクリエイティブとかデザインとかサービスをつくったり、いろんなものをつくって表現アピールしたくなってしまうところを、いつもぐっとこらえてシンプルにつくるように私たちはしています。いろいろな部分で工夫しながらStores.jpをつくっています。
1年弱くらいですね、今サービスを展開させていただいて、約60,000以上の方にストアを開設していただいております。こんなチャートを出すと楽天の方もいらっしゃるかもしれないので、怒られちゃうかもしれないんですけれども(笑)。
楽天さんのストアと規模が私たちの場合違うので、比較するのもおこがましいのですが、ストアの数だけで言うと、今楽天さんよりも多く保有、展開、使っていただいているという形です。この1年こういった形でサービスを展開させていただいておりまして、こういった機関にグッドデザイン賞を付与していただいたり、外部の方にも評価していただきながらやっています。
ありがとうございます。
林:たぶん(楽天の方は)裏チャンネルの方でEコマースのセッションやっているので大丈夫だと思います。
光本:ちょうどよかったですね(笑)。
林:今回のIVSはEコマース系が冒頭からあってですね。IT系の文脈だと、例えばどこのフィールドをどこに持っていくとより商品が売れるか、というのがありますが、普通に小売店に行く場合は、やはりたたずまいや雰囲気でそもそもお店に入るか選ぶと思います。その文脈を語るのがこのセッションかな、と思います。デザインというと、効率化は語られても、「そもそもこのフィールド(デザイン)は要るのか?」と絞られてしまう。そういうところが上手く組み合わさるといいな、と聞きながら思っていました。
林:続いてですね、今日のLaunch Padでも素晴らしい「こどもモード」を発表されていました、Smart Educationの池谷さん、よろしくお願いします。
池谷:こんにちは、Smart Educationの池谷です。早速ですが、いつも数字の話をするのですが、今日はクリエイティブの話をします。現状当社で展開しているラインアップをご紹介します。
上の段にあるのが「こどもモード」というですね、今まで私たちSmart Educationというスプラッシュをあげていたんですが、まあお母さんたちの間で認知度が低くて、簡単に言うとSmart Educationでは読めない、と。我々10万DAUとかそれくらい1日で行ったりしますが、これが無意味だと。とにかく日本の場合はわかりやすくする「こどもモード」というブランドをつけました。「ポータルもこどもモード」という名前でやってきました。
2年前に起業したときの私たちの夢は、「なんでこども向けやっているの?」とよく聞かれますが、それはグローバルを目指せるからなんです。教育って上の方にいけば行くほど、例えば言語、文化の問題でどんどんセグメントが小さくなっていくので。
例えば音楽とか絵本って聞かない読まない国ってないし、お絵かきしない国もないので、ノンバーバルで攻められるのが魅力で始めました。最初起業したとき、「こどもモード」はほとんど僕がプロデュースしたのですが、普通の日本のおじさんパパで。経営者として世界を攻めたいと思っていても、僕のなかで海外の作品をつくるのがなかなか難しかったり。おかげ様で日本ではヒットしたのですが、それを英語に翻訳しただけでは全然うまくいかないということがあります。やはりアジア向けだよね、みたいな話があって。実際データを見てもアジアがいい。ただアジアはお金を払ってもらえないので国内で今ダントツ、とそういう状況です。
日本でもガラケーでもキッズは売れなかったし、スマートデバイスで初めてできたクリエイティビティが育つ分野なんですけれども、日本のパパを見ているとすごく保守的なんです。簡単に言うと、日本で売れている絵本はこの20年間トップ10が変わっていないのです。1位が「いないいないばぁ」という本で、2番がエリック・カールの「はらぺこあおむし」と、皆さんも読んだことがある本が今でもトップ10。これくらい保守的なんです。
「日本は半歩先だ」と仲間によく言います。ゲームショーとかクリエイティビティを高めるのはいいけれど、むしろジャスコに行け、と言っています。あそこにマスはいる。あそこにいるものをよく見て、ものをつくるのが重要だと。僕のなかでこどもモードってすごく尖ったものをつくった気はしないんですけれども、お母さんたちは初めてスマートデバイスを持ってわくわくしているなかで、2歩3歩先に行くときつい。なので、こどもモードというブランドにしました。夢は世界だ、ということで最近立ち上げたのがこのGOCCOというブランドです。
最近半年前からDNAからすごく強力なプレイヤーが入ってきて、彼にお願いしたのが日本はもう見ないでいいから世界だけ見てくれ、と話してつくったのがこのブランドです。僕にはできないものづくりに関しては他人に任せるということで、強力なメンバーを入れて今「GOCCO」というのを立ち上げました。ちょっとご覧ください。今「GOCCOどうぶつえん」と書いてありますが、日本語設定しているからです。
この世界には英語すら出てこない、一切言葉が出てこないんです。ゾウを選びます。ここでエサらしきものがあるので、ちょっと与えてみる。
こう、うまそうに食うんです。
何をやっているかというと型を外す。彼の言葉で言うと、子供の想像力を爆発させたい。日本人に白いゾウを渡すと何が起こるかというと、灰色で描くんですよ、一生懸命お母さんに習ったように。で、そういうことじゃないだろうと。イモを食わせてみます。
イモになる、みたいな。
こんなのことでまず型を外しましょう、と。
隣のステージにはお絵かきが入っていて、ゾウをいじくりまくる世界が始まります。もう型が外れているので、子どもが自由自在にゾウをいじくりまくるという世界が始まります。何色にしてもいい、単なるパレットなので好きに描いてくれ、とこういったような感じです。あとはスタンプもあるので、目が3つあってもいいですし、好きにデコレーションしましょう、という世界観です。
僕がすごく気に入っている部分を紹介します。消したかったらどうするの? というところで日本人的な考えだと消しゴムを持ってくるのでしょうが、違うんだ、ミルク飲めと。
ま、これで消しゴムでいいんじゃない、という感じです。
最終的には、こどもがお絵かきしたらここが舞台になっていて、背景を変えて、はいポーズ、と写真を撮るみたいな。
以上、という感じです。一切この世界には言葉がなかったですし、ゾウがわからない国はないですよね。だからノンバーバルで世界に通用する。今までのSmart Educationになかった新しいブランド、これがGOCCOです。私たちの夢がもちろん日本市場も取っていきたいと思っていますが、ある意味、日本を捨ててでも世界に出て行こうと思っていて、こういった作品を強化していきたいなと思っている次第です。以上です、ありがとうございます。
林:ありがとうございます。ちゃんと狙いを持って型を外してからやる、というのがまさにクリエイティブだと思います。一番すごいところで勝負なさっていますよね? 子どもって遠慮なくダメなものはダメとダメ出しされてしまう。そこで勝負されているのはすごいと思います。最後、GREE、お願いします。
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