2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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田中章雄氏(以下、田中):じゃあ、ハードウェアから韓国に移りましょう。ジミー、シリルの例に習わないで、長過ぎないように。ディスカッションの時間は必要かい?
ジミー・リム氏(以下、ジミー):スライドは9枚ぐらいしかないから大丈夫ですよ。韓国から参加しているのは僕だけなので、韓国のスタートアップについて主に話したいと思います。
まずK Cube Ventures(以後、K Cube)について簡単に紹介すると、K Cubeは2012年にブライアン・キムと僕の2人で設立した会社です。
実は、ブライアン・キムは韓国のIT業界では伝説的な存在で、彼はNAVERの共同設立者の1人で、NAVERを辞めてからは、韓国最大のメッセンジャープラットフォームのKakaoを立ち上げました。Kakaoも買収されたので、彼は3打席連続ホームランを打ったようなもので、伝説的な存在です。
2012年のある日、僕たちが韓国のエコシステムについて話していたとき、初期段階の投資の機会が限られていることに気が付きました。
それで僕たちは2012年6月にファンドを設立しました。36のスタートアップ企業にかなりアグレッシブに投資を始めました。僕たちはシードとは異なり、たいてい30万ウォンから10億ウォンを投資しています。シードステージの前で、シードやエンジェルとも違う。総額4000万ドルのファンドです。
投資の70%が製造前の段階の企業ということはかなり自慢してもいいと思います。スタートアップがプロトタイプすら作成していない段階で、チームの段階で賭けています。うまくいっているのはラッキーだと思っています。
これまでにモバイルに関することなら、サービス、ゲーム、テクノロジーなど、あらゆることに投資しています。
今言ったとおり、非常にラッキーなことに、もうすでにポートフォリオ企業のうち3社が希望すれば株式を公開できるところまできました。相当の収益を上げているところです。
田中:ジミー、ちょっと聞くけど、ほとんどが製造前の段階の企業ということは、君たちの会社に来て何を見せるの? チームだけ? プレゼン?
ジミー:チームですね。自分たちが何をしたいか、プレゼンしてもらいます。僕たちが投資した企業のうち10社は、法人化前の段階でうちにやってきて、うちの会社が実際に法人化の手伝いをしました。
田中:じゃあ、ほとんどチームに賭けるっていうことですね。
ジミー:基本的にそうですね。さっきも言いましたけど、多くのポートフォリオ企業が追加投資を得て、中にはIPO可能な規模まで成長した企業もあって、10数倍の利益が期待できます。
この2枚の写真はK Cubeの主な特徴をよく表していると思います。
左の写真ですが、年に一度CEOとスタッフミーティングを開くVCはよくありますが、うちは毎月行っています。毎月、ポートフォリオ企業のCEOが全員集まり、夕食をともにしながら知識を共有し、ディスカッションをして、午前3時や4時まで飲みます。
そうして信頼を醸成するのが韓国スタイルなんです。冗談ではなくて、チャンスがあれば日本のVCにも同じようにすることを強くお勧めします。年に一度では信頼関係を築くことは難しい。
もちろん大変ですが、毎月できれば、相手のことをよく知ることができ、信頼を築き本音をシェアできるんです。
田中:じゃあ、この写真に写っているのはみんな、ポートフォリオ企業のCEO?
ジミー:ええ。それから右の写真が、うちの社内の知識シェアプラットフォームです。
田中:それってFacebook?
ジミー:いや、部分的に削除したけど、Facebookじゃなくて別のサービスなんです。この人たちはみんなうちのポートフォリオ企業のCEOで、1人が質問をし、別のCEOがそれに答えているところなんです。
こういったことがあるから、僕たちは「K Cubeマフィア」と呼ばれるほど、韓国で最もポートフォリオ企業と家族のような強い絆で結ばれていることで有名になったんです。
K Cubeの次に、韓国の状況について少し触れたいと思います。韓国についてそれほどよく知らない人もいると思うけれど、韓国はベストの市場ではないかもしれないが、まあまあの市場だと思っています。
何より大事なのは、韓国には優秀な人材が豊富なことです。それに韓国は最もインターネットが進んだ国で、ここ15年でインターネットとソフトウェアを経験している人が多い。
NAVER、Kakao、Daum、Nexonなどの企業は10億ドル規模の企業です。これらの企業から多くの人が独立してスタートアップを設立しています。これはメリットだと思います。それから、優れた大学がたくさんあります。
ソウル大学校(SNU)、KAIST(旧韓国科学技術院)、浦項工科大学校(POSTECH)、これらは研究志向の大学です。テクノロジー系企業についてはまた後で取り上げたいと思います。
ジミー:それから、韓国の人々はたいていJust Do It(行動あるのみ)マインドを持っていますが、それもスタートアップの世界では大切だと思っています。
2つ目は、おもしろいことに、韓国人にはスマホのヘビーユーザーが多いんです。世界一じゃないかと思っています。例えばKakaoのMAU(月間のアクティブユーザー数)は3700万にも上る。
韓国の全人口がたったの5000万人であることを考えると、スマホユーザーがみんなKakaoを使用していることになります。
それから、こちらのほうがもっと驚かれるかもしれないですが、Anipangというパズルゲームがあって、2012年に大ヒットしました。そのDAU(1日当りアクティブユーザー数)は1000万以上なんです。
韓国総人口の30%以上が同じ日に同じゲームをしているわけです。クレイジーでしょう?
他にも100万人以上のユーザーを抱えるサービスがたくさんあります。韓国の人々は新しいサービスやスマホに飢えているんです。
3つ目が、韓国は比較的大きな市場であること。日本や中国、シリコンバレーほど巨大ではないですが、韓国には10億ドル規模になる可能性があるスタートアップがあります。だからまあまあの市場だと言えるでしょう。
だから、近年たくさんのグローバルなVCが韓国にやってきて、オフィスを構えているのだと思う。
田中:ジミー、韓国のKakaoのMAUが約3700万だとしたら、Facebookはどれぐらいかわかりますか?
ジミー:Facebookはおよそ2000万かな。
田中:2000万ね、わかりました。
ジミー:ここからは韓国のスタートアップ・トレンドについて説明しようと思います。シリコンバレーや日本と同じように、たくさんの金がO2Oのようなライフスタイルサービスに流れ込んでいます。今一番ホットな業界はフードデリバリーサービス。
田中:この3つがフードデリバリー企業の代表格?
ジミー:トップ3企業です。
田中:どれが君の会社のポートフォリオ企業?
ジミー:実は残念ながら、これら3社はK Cubeの創業前にすでに資金を集めていたんです。それが僕の最大の言い訳ですね(笑)。ともかく真ん中の会社がトップで、6000万ドルもの資金を得ているんです。6000万ドルですよ。
田中:それは全部国内で調達してるんですか? それとも?
ジミー:いや、実はゴールドマン・サックスが投資しています。今韓国で一番もっともホットな業界です。それぞれの企業が1000万ドル以上を集めています。
田中:日本にもフードデリバリーの会社はあるけど、そんなに資金を集めていないと思いますね。悪いけど、僕ハングルは読めないんです。真ん中の会社は、何て発音するんですか?
ジミー:Baedal Minjok(バエダル・ミンジョク)です。
田中:わかりました。
ジミー:今が旬の業界で、TVをつければCMが流れています。
田中:それには市場モデルがあるんですか? それとも自分たちでインフラを築いているんでしょうか?
ジミー:市場モデルがあって、小規模なデリバリーサービスとレストランをつないでいるんです。他にもたくさんライフスタイルやO2Oサービスがあります。不動産に始まってありとあらゆる……。
田中:タクシーのカテゴリーがあるけど、Uberは韓国ではどうなの? 禁止されたって聞いたことあるけど。
ジミー:首都ソウルで問題があったんです。ソウル市はUberは違法だと主張していて、問題になっています。
今Uberはそんなに人気がないです。Easy Taxiもあるし、Kakaoも来年初め頃にタクシー配車サービスに参入すると発表したので、競争が激しくなりそうです。
直前のホテル予約、クーポンサービス、駐車サービスなどの位置情報サービスはホットで、ほとんどの企業がVCからかなりの資金を得ています。期待できますよ。
ライフスタイルサービスがホットなのはグローバルなトレンドだと思います。
ジミー:この会社はすごくユニークなので、時間があればぜひ調べてみてほしいです。このYelloMobileは非常におもしろい会社で、2012年に創業してから、買収を通じて成長しました。
YelloMobile自体もスタートアップで、相当な資金を集めて、そこから他のスタートアップを買収し始めました。
田中:じゃあコアビジネスは何? 投資?
ジミー:まあ、そんなところかな。M&A専門のスタートアップと言っていいと思います。この2年間で50ものスタートアップを買収したんだ。信じられないでしょう?
資金は総額で1億5000万ドルに達しています。最近はシリコンバレーのformation、8社が1億ドル投資したんです。
田中:この会社の戦略は?
ジミー:たくさんのモバイルスタートアップがあって、どれもトラフィックもそこそこ、ユーザーもそこそこだけど、収益化が難しく、イグジットに至ってはほとんど不可能です。
それで、こうしたスタートアップに「合併したらシナジーが生まれ、収益とユーザーも増えて、株式公開もできるんじゃないか?」と説得したんです。それがこの会社のストーリー。
まあまあうまくいっています。最終的に成功するかどうかは……。
田中:この会社もK Cubeのポートフォリオ?
ジミー:いいや。
田中:実際このモデルがうまくいくと信じてますか? 後でまた話し合いたいけど「Yコンビネーターの今回のバッチの会社を全部買収し、合併して、巨大IPOを目指そう」。クレイジーだけど、話に戻りましょう。
ジミー:いや。他のみんなからもぜひ意見を聞きたいですね、大きなトレンドになっているから。
さっきも言ったとおり、韓国の大きなメリットが研究開発志向型大学です。テクノロジー系企業がたくさんあって、K Cubeはこれらの企業に特にフォーカスしています。
例えば、コンテンツ推奨サービスのWatchaというサービスがあって、会社名はFrogramsというんですが、博士号も含め、20人以上の一流のエンジニアがいます。
機械学習を採用しているので、コンテンツを評価すればするほど、マシンがスマートになり、情報の精度が高くなります。テクノロジー系企業のメリットは、比較的容易に日本などにサービスを拡大できること……。
田中:Frogramsは日本に進出するんですね。
ジミー:日本に進出する計画があるようです。その他にも例えば、Cldiという会社にはKAISTで博士号を取得した人が5人もいます。KAISTというのは旧韓国科学技術院のことです。今年創業したばかりで、画像認識の世界大会でトップ7に入りました。
非常に優秀で、画像認識の分野では世界のトップクラスで、いずれは大企業に買収されるんじゃないかと思います。もう1つがレストラン口コミ検索エンジン。
韓国にはレストラン口コミサイトは無数にありますが、違いは何かというと、これはコンピュータサイエンス学科の教授が立ち上げたばかりの会社なんです。
この教授曰く、ユーザーに立ち上げた新しいサイトを訪れて、レストラン口コミ情報を書き込んでもらうのは不可能に近いから、既存の最も優れた口コミブログを使うことを考えました。
レストラン関連のあらゆる口コミブログのインデックスを作成するアルゴリズムマシンで、自動的にレストラン情報を抽出し、ランキングシステムを作るという検索エンジンなんです。
田中:それってうまくいってるの?
ジミー:かなりうまくいっていると思います。スパムも全部自動的にはじかれますし。興味深いモデルですね。
もちろん、韓国のスタートアップを語る上で欠かせないのがモバイルゲームです。巨大な業界ですからね。今年Google playのモバイルゲームによる収益は15億ドルだったと言われています。
K Cubeが支援しているモバイルゲーム企業3社がIPOしました。トップ20モバイルゲーム企業の1日当たりの収益は13万ドル、つまり毎月収益は300万ドルにも達し、トップ20に入ることができれば、かなりの収益が期待できます。
実はK Cubeはモバイルゲームに多額の投資をしていて、高額のリターンを得ていることでも有名だ。モバイルゲーム13社に投資していますが、そのうち2社はすでにIPO可能で大きな収益を上げています。
田中:ところで、韓国では一般的にゲーム企業がIPO可能になるためには、どれぐらいの収益規模に達する必要があるんでしょうか。
ジミー:恐らく年間30億か40億ドルぐらいじゃないかと思います。
田中:それは利益でしょう。それで現在どのぐらいの評価額を見込めるんでしょうか。
ジミー:たいていは15倍ですね。
田中:15倍ね。
ジミー:15倍。実際ケースバイケースです。例えば、先ほど紹介したAnipangの場合だと、IPOして、時価総額6億ドル。
田中:6億ドルね。
ジミー:6億ドル。かなり高いと言えると思います。ケースバイケースですけどね。
最後は僕が「韓国の強み」だと呼んでいる分野なんですが、ファッション、コスメ、デザイナーなど、韓国がアジアで非常に強い分野があります。
これらの分野のスタートアップも多いし、例えばMemeboxというYコンビネーターに参加した会社があります。だから韓国は……。
田中:もうスタートアップとは言えないんじゃないですか? 巨額の収益を上げていますよね。
ジミー:確かにそう思います。韓国はエンターテインメント、ファッション、ビューティの分野では強いので、こういった企業は海外の投資家、特に中国の投資家から特に熱い注目を集めています。
中国人は韓国ドラマや娯楽やビューティ、アパレルなどが大好きですから。K Cubeもこれらの分野にフォーカスを当てていて、注目を集めています。そんなところですね。
田中:ありがとう、ジミー。
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