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スタートアップで働くということ(全4記事)

「あの頃はイケてないほうのベンチャーだった」 グリー・青柳氏が入社1年目の思い出を語る

起業を目指す学生が多く参加する「IVS 2015 Spring Workshop」にスタートアップ企業の経営者ら4名―グリー・青柳氏、コロプラ・千葉氏、NewsPicks・佐々木紀彦氏、freee・佐々木大輔氏が登壇。「スタートアップで働くということ」をテーマに意見が交わされました。本パートでは各登壇者の学生時代の思い出や起業のきっかけについて振り返ります。(IVS 2015 Spring Workshop より)

博報堂に入社するが、広告に興味が持てなかった

佐々木大輔氏(以下、大輔):今回は「スタートアップで働く」というテーマでお話しさせて頂ければと思います。まずはそれぞれの自己紹介ということで、僕から自己紹介させて頂きます。

僕はクラウド会計ソフトのfreeeという会社をやっておりまして、ヴィジョンとしては日本のスモールビジネスに携わる創造的な活動にだけフォーカスできるようにしたい、という想いを込めて、経理の業務、給与計算の業務、その他やらなきゃいけないことを、全てインターネット、クラウドを使って自動化しようといったことに取り組んでいます。

2年前くらいに起業したんですけれども、今では従業員100人を超えて、アメリカのベンチャーキャピタルなんかに17億円以上。

僕自身はですね、なんと今回アウェイで、SFCではない大学を出ているんですけど、大学時代はベンチャー企業でインターンをして、だいたい日曜日の昼出社して土曜日の朝帰る、と。その間ずっと会社に泊まり込んでひたすら、仕事し続けるみたいな生活をしてました。

その後大企業に就職するんですけど、就職した理由はそのインターンしてた会社の一番おっきいお客さんが博報堂という会社で。大きい会社かっけーなと思って入ってみたんですけど、その後僕20代の間、いろいろ迷うんです。「何好きなんだろう?」とか。

で、なんでかっていうと、広告代理店ってみんな、広告が好きな人が入ります。で、夜中通してですね「この広告に芸能人AとBどっちがいいんだ?」って一晩中議論できる人たちなんです。僕はあんまり議論できなかった、興味がなかった。別に誰でもいいじゃん、みたいな感じで。

だから「あー好きなものないなー」と思って過ごしていました。そんな感じだったんで20代の間はもう、コロコロコロコロ転職してました。で、ようやく出会ったのがGoogle。

Googleには5年くらい在籍していたんですけども、その中で日本の中小企業をテクノロジー化するみたいな物になって。すみませんながながと。では次は……。

青柳直樹氏(以下、青柳):はい、青柳直樹といいます。私は1998年にSFCの総合政策学部に入りまして、2002年からドイツ証券という証券会社で4年くらい働き、2006年から今働いているグリーという会社に入りまして、今ちょうど9年くらい働いております。

私自身もこちらの教室で村井先生のインターネットの授業を受けて、インターネットの仕事をやりたいな、と決めたのがちょうど18、9だったかなあと思ってます。最初はそんな仕事につけなかったんですけれども、縁があってグリーという会社に入って、お陰さまで9年位いろんなことやらせて頂いてます。

グリーの中では最初証券会社に入ったということもあって、管理部門の立ち上げをやりました。私、社員番号が20番位で「会社をこれから作っていく!」っていう時に入りまして、その会社が2008年に東証マザーズに上場しました。

2010年に東証一部に行き、事業も立ち上がってきたということで2011年からサンフランシスコに赴任して、ちょうど今年の1月までSFに居て、4年位アメリカの事業の立ち上げをやって、ちゃんと利益貢献できるようなとこまで来たので帰国しました。

グリーには開発部門とか管理部門とか様々な部門があるんですけど、それ以外の事業部門を統括する立場で今年から仕事をさせて頂いてます。よろしくお願いします。

学生時代は起業するか就職するかで迷った

千葉功太郎氏(以下、千葉):コロプラの千葉です。本日はよろしくお願いします。創業からコロプラやっております。ここにいるのはSFCズなんですね。僕もSFC出身で、僕が居たのは1993年から1997年ですね。シータ館にはよく入り浸ってました。懐かしいです。

僕は環境情報学部にいて、4期生でした。ここができて4年目に入った人間で、まだ卒業生もいないSFCに飛び込んでいって、ベンチャーみたいなもんで、スタートアップそのものですよね。

まだ大学に来る道路がなかったんですね、まだ僕が入ってきたときは。なので駅から遠回りして、山道みたいな臭い所自転車で20分ぐらい漕いでここに来てたんで。「変なとこ入っちゃったな」ってこれが噂の慶応大学かってあこがれの三田キャンパスのイメージを持って来た訳ですがそんな学生生活でした。

学生のときはいろいろやっていたんですけれども、実はいろいろ仕事やっていて、稼ぎながら楽しくやっていたんですが、起業するか、仕事をするかって結構悩んでいて、どうしようかなーって思ったときに、当時残念ながらベンチャー企業っていうのがなかったんですね。

普通に新卒としてベンチャー企業に入れる存在がなくて、自分で本当に裸一貫で立ち上げるか企業に行くかの選択肢しかなかったんで、ちょっと軟弱だったんで大企業入ろうかと思ってリクルートという会社に新卒で入ってます。

リクルートって当時は紙の会社で、ネット化の波が丁度来てる時だったんで、そこで手を挙げて、ネット化の波の中で1人だけ「モバイルだ!」って言って、携帯電話化のプロジェクトを全社でほぼ1人+α位でやっていたんです。

で、リクルートの幾つかのサービスがiモード化するっていうことをやったりして。こっから後はずっとベンチャーですね。サイバードっていう会社の創業で入って、ドベンチャーで、社員として20番目くらいです。

で、サイバードの中で子会社つくる話が出て、KLabっていう今六本木ヒルズにあるソーシャルゲームの会社、この立ち上げをしろっていって、取締役をして26、7位だったと思うんですけどチャンスを賜りまして、全然右も左もわからないんですが「えー……」っと言いながら会社を立ち上げるというのをやりまして、7年位。

ここは今東証一部上場。で、その後、ここで一緒に出会った馬場と一緒にコロプラという会社を立ち上げて。

馬場が30歳、僕が35歳位の時の起業なんですけどマンションの一室で「俺らがんばるぜ!」みたいな。今更30代のおっさん2人がマンションベンチャーかよ! って言いながら、でもちゃんとした会社つくりたいよねっていうことで6年間あーだこーだやってきて今コロプラになりました。

今従業員500人位ですかね。去年東証一部上場させて頂いて、スマートフォンゲームを作っているという状況です。クリエイターの会社ですね。2016年新卒採用もやっているんで良かったら来てください。

あと学生起業家支援というのを一昨日発表させて頂いて、コロプラネクストっていう会社を作って「これから本気で起業するぞ!」っていう、学生さんがCEOをやっている会社だけに限定して応援するというプロジェクトを始めさせて頂きました。

僕が学生さん全員とお会いして、その後決まったところは馬場がプロダクトを見るというようなことをやっています。社会貢献だと思って一生懸命がんばるつもりです。以上こんなことに興味を持っています。今日はよろしくお願いします!

経済をもっとクリエイティブにしたい

佐々木紀彦氏:すいません、はじめまして、NewsPicksで編集長をしている佐々木と申します。ちなみにNewsPicks知ってる方はどれくらいいらっしゃいますでしょうか? 毎日使っている方? 有料会員の方? ほぼゼロですかね?(笑)

これ、毎回やるんですけどもだめですね。課金率が低いんですかね。すいません。紹介させて頂きます。私のSFC生活は1998年から2000年だったんですけど、ひと言にいうと、竹中平蔵先生に始まり、竹中平蔵先生に終わるっていう様な4年間を過ごしました。

入学したてのときに先生が担当につくアドバイザリー・グループってありましたよね。その担当の先生が、竹中平蔵先生でした。その後2年の後半から竹中平蔵ゼミに入って2年半在籍しました。実は青柳さんもその時の同期で、今でも付き合いが続いています。

竹中先生の思い出は良い思い出ですね。竹中先生の授業って今思い浮かべても本当におもしろかったなって思います。その後いろいろなプレゼンとか授業とか受けた事あるんですけど、彼ほどおもしろい授業受けたことないっていうのが私の実感です。そこから海外で1回勉強してみたいっていう想いがすごく強くなった。

東洋経済という出版社に入った後、5年位経って1回休職をして、スタンフォード大学の大学院に行って国際政治経済学を学ぶということを2年間しました。そして帰った後はまた雑誌や本を作る仕事をしたり……。

ただ、メディアが今大きな変革期にある中で千葉さんもモバイルに飛び込んだっておっしゃってましたけど、私そこまで早くなかったですけど、なんかやっぱりネットのことやりたいなということで東洋経済オンラインをやって、その後去年の7月からユーザベースという会社のスタートアップに入りました。

今の会社はSPEEDAという企業の情報を調べるプラットフォーム、ブルームバーグやロイターのような端末みたいなものを創っています。一言で言うと、企業情報のGoogleみたいなサービスです。こういうサービスをしたり、あと1年強前に始めたNewsPickというサービスを担当者としてやっています。

今それでやりたいことっていうのは、経済をもっとクリエイティブにすることで、メディアだけじゃなく、いろんなものを含めて経済をもっとクリエイティブにできるようなことをこれからしていきたいと思っています。

ただちょっと入りたてなので、前の企業も別に大企業じゃないんですけど、古い所と新しい所の違いを今日具体的にお話しできればと思います。

佐々木大輔:ここにいるメンバーは一度大企業に就職を経験し、さらにそこから起業された諸先輩方もいらっしゃる。まず最初にパネルの皆さんに聞きたいのは、スタートアップの衝撃というか、そういったものってどうだったかなって。

半年くらいで4億円集めた

青柳:私は始め、(ドイツ証券時代は)NTTドコモさんが入っていたようなインテリジェントビルディングで、僕みたいな当時ペーペーの人にもパーティションで区切られた広いデスクがあって……、という恵まれた環境でした。

そこから当時のグリーに転職し、だいたい20人位だったんですけど、建物の地下1階が踊るほうじゃないクラブ。で、目の前がSMバーっていう所で働いていて。朝から日が変わるまで働くという環境でした。

グリーに入るまでの会社では夜ご飯も会社が出してくれるような環境で、そこから一転して「全てを受け入れて、全てを自分でやらなきゃいけないんだ」という環境になったのは衝撃でした。なので、会社のお金を扱う所から経理もやるし、あらゆる契約も自分で作るし、と。

会社の机買ってきて組み立てるとか。「そういうことも今まであるものだと思っていたけど、誰かがやってくれているものなんだ、自分でなかったらやるものなんだ」と。そういうものが大きかったなあと思います。

そこから、私は管理部門に入ったので会社がなくなるっていう恐怖、それが常にありました。当時はソーシャルネットワークが出て、mixiさんがすごく伸びていて、GREEは2番手だと言われていて、社外の人に会うと大体95パーセントくらいの人が「なんか違う事やったほうが良い」っていろんなアドバイスを頂くんです。そういう状況でした。

会社のお金も自転車操業で。サバイブするんだっていう生存本能にスイッチがカチッと入るような、そういうのが最初の1日目、1ヶ月目位の感触で、そういう状況から早く脱しようと必死になったことを覚えています。

あと前の会社はお客様商売だったのでスーツ着て、白いシャツしか駄目でした。そこから僕だけスーツ着てる会社になって、PCも僕だけウィンドウズみたいな(笑)。会社に馴染むのに半年位かかりました。

「なんか違う人いますね」とか「あの人ちゃんとグリーに貢献してくれてますね」って皆に認めてもらうまでに半年位かかったんです。そういうのを最初の頃の思い出として覚えてます。

佐々木大輔:入ってみて怖くなかったんですか?

青柳:やばいです。世の中のイケてるベンチャーじゃなくて、イケてないほうのベンチャーに入りましたからね(笑)。どうやっていこうか。ベンチャーって全然かっこいいものじゃないよっていう。冷静に考えたら、ヤバいし後悔しますよね。でも後悔したくないんで、やるしかない、というのが当時の状況でした。

佐々木大輔:そこから、入ってよかった。って気がついたことありますか?

青柳:やっぱり自分が目に見えた貢献ができた時だったと最近感じます。資金調達をしなければならず、半年くらいで4億円集めました。当時は4億円集めるのも結構大変で、売り上げが月商1000万円の会社でどうやって4億円調達するんだって話で。

ライブドア事件があって、ベンチャーっていうのはヤマっけがある怪しい奴らがやるもんだって思われていて大変でした。グリーは当時PCの事業をやっていましたが、モバイルに行こうってなってKDDIさんと事業提携をまとめて。

負け犬ベンチャーからお金を手に入れて、これから勝負するベンチャーに変わるんだみたいになって、赤字だけどビジョンがなくて、大丈夫ですか? 役員大丈夫ですか? って毎日の様に皆言う中で「いや、これなんだ」って言えるようになったっていうことが、赤字は赤字だけど、進んだかなって感じがしました。

それがスタートアップ1年目でした。

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