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CEOからCTOへ(全3記事)

CEOにもCTOにも「変化」が必要--10年後のインターネット業界に対応するキャリアの作り方

Infinity Ventures Summit(IVS)とアマゾン データ サービス ジャパン 株式会社の共催によって行なわれた、CTOおよび技術責任者のためのテクノロジー・カンファレンス「IVS CTO Night & Day 2014 powered by AWS」に成長し続けるIT企業のCEO3名―KLab・真田哲弥氏、クラウドワークス・吉田浩一郎氏、nanapi・古川健介氏の3名が登壇。「CTOはどのようにキャリア設計すべきか」「どんなキャリアを持ったCTOと仕事をしたいか」といった会場からの質問に回答しました。(IVS CTO Night & Day 2014 powered by AWS より)

CTOの人生設計

玉川憲氏(以下、玉川):時間がなくなってきてるんで、いろいろ質問はあるんですけど……むしろ会場から質問をいただいたほうが盛り上がるような気がしてるので。おっ、和田(修一)さんから手が挙がってます!

(会場拍手)

真田哲弥氏(以下、真田):ここで対決だ! 公衆の面前で対決、いいですね!

和田修一氏(以下、和田):僕、あくまで素の質問しようかなと思ってるんですけども。

吉田浩一郎氏(以下、吉田):給料ですか?

真田:「給料もっと上げられないんですか」とか(笑)。

和田:それでもいいですけど(笑)。キャリアの話というか、CTOって結構一緒に仕事をする機会が多いと思うんですよね。この中のCTOと会ったことも多いんですけど、死ぬまでCTOやる人もまずいないと思うんですよ。

しばらくやる方はいると思うんですけど。社長から見て、CTOってどういう人生設計というか、どういったキャリアを持ったらいいですか? どういったキャリアを持ったCTOと一緒に仕事していきたいですか?

古川健介氏(以下、古川):キャリア……どうですか? 吉田さんは。

吉田:どうなんですかね。大場さんは今、理想的な働き方の1つの形だと思ってるんですよね。日本のベンチャーって「がむしゃらに働いて、1日でも休むな」みたいな風潮がある中で、ちゃんと夫婦で子育てをしながら働いてる。

ウチとしては大場さんみたいな人が働きやすい会社を作りたいみたいなイメージはあります。受けてくる人でもいるんですよ。野村に関しては、野村がやりたいようにできれば。

彼は創業者で株式も持ってるので、できれば長らくいてほしいですけど、野村がやりたいように、一緒にやってもらえるんだったら「今度また新しいビジネスを立ち上げようぜ」みたいなのは彼は得意なんですよ。

ゼロイチでシステム作るのは得意なんで。本人がやりたいようにできるっていう会社の器をいかに作り切るかが、社長の役回りだと思ってますけどね。答えになってない?

古川:そうですね、エンジニアのキャリアの話なんで。

(会場笑)

吉田:ああ、そっか! 

玉川:真田さんは何かありますか?

CEOもCTOも変化し続ける必要がある

真田:すごく難しい話だなと思っていて。このインターネットの業界自体の流れがものすごく速いわけですよ。僕自身、ときどき「俺がこのまま何歳までこの会社のCEOをやっているべきなのか」というのを、結構自問自答します。

20代の若い経営者がたくさん出てきてる中で、もっと若いやつに譲るべきかどうかを常に自問自答してるんですね。僕がどうしたいかということもあるけど、会社にとってどうあるべきかということを考えてやっていこうと思ってます。

技術革新というか、技術の流れが速くてどんどん移っていく中で難しいですよ。CTOの方も。いろんなタイプがあるんですね。特定の技術に特化してる人もいれば、自分自身でコーディングとか一切しないけども、知見とか見識とか先見性みたいなところで、しっかり技術系社員をグリップできている人もいる。

そういう人は、技術の流れとかに関係なくいつまででもできると思いますし。やっぱりさっき言ったステージによって変わってくるというのと、タイプによっても変わるんじゃないですかね。

CEOもそうなんですけど、会社のステージとか方向性によって自分自身が変わっていかないといけないわけですよ。そこはCTOも同じで、CTO自体も変わっていかないといけない。さっきIVSのほうのセッションでも、トランスフォーメーションみたいな話をやってましたけど、やっぱり同じ事業はなかなか10年続かないので、事業内容も変わっていかないといけない。

ウチなんて創業したときはJavaアプリ……皆さん覚えてますか? 「FOMAシリーズ」という端末がドコモにあったんですけど、Javaアプリ向けのアプリ開発の会社……。

吉田:ずいぶん酔ってますね(笑)。

真田:……としてスタートして、次にiモードとかのサーバーサイドのWebコンテンツ開発に移って。そこはおもに受託開発で、そこからゲームアプリ開発の会社になって。要求される技術力も全然変わってくるわけですね。

でも、その中で対応していける人と対応していけない人がどうしてもいるわけです。ゲーム会社になってからも、最初はガラケー向けにPHPで開発してたのが、今はスマートフォンアプリなんで技術的にがらっと変わっている。

現場のエンジニアはもちろん対応してもらわないと困りますけど、CTOはCTOで対応してくれないと困るわけで。会社というのは同じ軸をずっとやり続けることはないんですね。

今の時代、10年一緒のままということはないですから、そこの変化に対応してしっかりCTOであり続けてくれるのであれば、それが一番理想だと思います。変化に対応できない人は、何か変わっていくしかないのかなという気がしますね。

玉川:ありがとうございます。変化していくかというところで。

(会場笑)

玉川:他に(質問は)。おっ、じゃあそこの黄色の……みんな黄色ですね(笑)。

吉田:酔ってますね、玉川さん!

50歳を超えて社長をやるのはみっともない

質問者:ちょっと答えづらい質問をしようと思っていて。

玉川:大歓迎です(笑)。

質問者:(CEOは)CTOから見てビジネスのパートナーというか、一応会社の頭をやってもらってるわけなんですけども、買収されたりとか上場したりとかいろいろ会社のステージが変わっていく中で、いつまでやるつもりか、ちょっと……。

吉田:社長が? なるほど。

質問者:いつまで自分が社長でいるつもりなのか、自分のプランを教えてほしいなと。

古川:これは難しくて、真田さんがおっしゃった通り「ついていけなくなったら辞めるべき」というのは1つあります。あと役割が変わるというのは全然あると思っていて、自分よりも業績を伸ばせる社長がいるんだったら変わったほうがいい。

クックパッドとかはたぶんそういう形なので。そういうのは常にあります。その上で、インターネットで何かやるというのは好きなので、自分がワークをしてる限りはやりたいなというのはありますね。吉田さんも、上場したら…。

吉田:(笑)。まあ、ありますね。ウチはご存知のとおり……結論から言うと、20年は絶対やります。20年は絶対やるんですけど、ただ別に社長でなくてもいいです。なんでかというと、ウチのサービスを通して世界が変わって……要はクラウドソーシングって、入り口は「企業が必要な人材を必要なときに調達できる」ということなんですけど。

結果として何が変わるかというと個人の評判が変わるんですよね。個人が50件iPhoneアプリを開発して、評価が5段階で4.5だったとなると、価格交渉力を個人が企業と対等に持つようになる。私は個人の与信インフラを作っていると思っていて。

そのためには20年かかると思ってるんですよ。ウチの会社の中でも全社員に対して20年という話をしてるので、20年が1つのスパンで、それはまずやり切ると思ってます。とにかく20年。やる気まんまんです、私は。

真田:僕は先ほど言ったとおり常に自問自答していて、自分がやりたいかどうかじゃなくて、会社にとって俺がやっているのがベストなのかどうなのかという視点で考えてます。

できることならば、早いタイミングで会長か何かに退くべきで、今のインダストリーは若い人が経営したほうがいいと思ってます。会社としての平均年齢を若く保つことは結構大事じゃないかと。

なので、後継者をしっかり育てるということも社長の大事な仕事で、実は僕はもう50歳なんですけど、50になって引退できないということは、社長の大事な仕事である「後継者を育てる」ということがちゃんとできていない。

よくないことだという認識を持っていて、このインダストリーで50歳を超して社長をやってるなんてみっともないくらいに僕は思ってますね。

玉川:ありがとうございます。時間ももうアレなので……ただ、こんなタレントが揃ってるので最後に1個だけ。

CTOがいないとできないことだらけ

質問者:皆さんにお尋ねしたいのは、CTOはある意味経営者のポジションの方も多いと思うんですけど、自分ではできなかったけどCTOができたからこそ、組織または事業が大きく変わったみたいな経営判断を今まで体験されてきたかどうかをちょっとお伺いしたいです。

玉川:CTOがいたからこそ(できた)、自分1人じゃできなかった経営判断。

吉田:(CTOは)専門用語を使えますし(笑)。

古川:頭良いですし(笑)。

玉川:CTOの発言であったり行動であったり、その存在によって自分1人じゃできなかったことが……そういうことでいいですかね?

質問者:はい。

古川:例えばウチの会社の場合は共同創業で、ほぼ2人で考えてやったことが初期の全てだったのですね。なので「これは俺がやった」みたいなのがあんまりないんですよね。

勝手なイメージとしては、Googleって誰がこれを引っ張って、みたいなのがあんまりないじゃないですか。三頭政治というか。あんなイメージで考えてはいるので。ほとんどがそうですね。

真田:先ほどちょっと言いましたけど、KLab株式会社は昔「ケイ・ラボラトリー」という社名で。ケイ・ラボラトリーの「K」は、知ってる人は知ってると思いますけど、2000年くらいに「KJava」っていう……Javaという言語にはエンタープライズとかいろんな種類があって、携帯用機器向けのKJavaというのもあった。

当時のドコモのFOMA900シリーズ向けのアプリ開発をしていて、当時は容量制限が10kbだったんですね。僕は、必ず携帯が世界のコンピューティングの中心的デバイスになる時代が来ると1999年くらいから言い始めて、そういう時代に向けたアプリ開発会社を作ろうと。

結果それはスマートフォンという名前で最近実現されるようになったんですけど、Kラボを作ったのが2000年で早すぎて、まったく商売にならなくて。売り上げも全然上がらなくて「やばいな」という状況だったんですね。初代CTOの仙石(浩明)というのがいまして、そいつがサーバーサイドの技術がすごく得意で。

「こいつがいるからサーバーサイドの事業、開発を受注してそれでしのごう」ということで、会社が救われたと。「彼が持ってる技術にあわせて彼が得意なところを受注しよう、今はそれが一番飯の種だ」ということで、会社の事業を方向転換しましたね。

吉田:CTOとかエンジニアがいなかったらできないことだらけで。私は小学校から中学校でMSXでプログラミングやってたんですけど、当時のベーマガとかMSXマガジンの「1画面プログラム」に投稿しても全然採用されないんですよね。

自分がやってもすぐにSyntax ErrorとかIllegal Function Callとかそういうエラーがでてきてよくわかんないみたいな(笑)。あのときの経験で、ロジカルシンキングの大切さとかデータベースの構造の考え方とか基礎的な知識は身に付いたんですけど、やっぱり自分の能力の限界というのはすごく感じてるんですよね。

なので、そういう意味ではCTOがいないとできないことだらけで、本当に大感謝というか。

玉川:はい。残念ながら時間も尽きてしまったので、最後にCEOからここにいる100人のCTOに向けて、一言熱いメッセージをいただければと思います。

真田:先ほどのアンケート調査で辞めたいと思っている何人かがおられましたけど、当社はエンジニアを募集しております。

(会場笑)

真田:あと、給料に不満のある人も(笑)。よろしくお願いします。

ものづくりができることは素晴らしい

吉田:(古川氏に)締めてもらったほうがいいですね?

古川:いえいえ、吉田さんに締めてもらったほうが。ここにいらっしゃる皆さんがどれだけ知ってるかわからないんですけど、いま我々はSyn.というプロジェクトをやっていて、nanapiとかナタリーとかいろんなサイトの右上にメニューがありまして、それを押すと出てくるアレがSyn.なんですね。認知度がすごく低いので、皆さん今日から最低1日5回くらい開いてください(笑)。

吉田:私はどっちかっていうとめんどくさい人間なんで、真面目なことしか申し上げられないんですけど……。ものづくりができるっていうのは素晴らしいと思うんですね。

私は中・高で同人誌描いてコミケとかに出しても全然売れなかったりとか、写真も白黒で紙焼きとかやったんですけど誰にも評価されなかったりとか……。

古川:同人誌出してたんですか?

吉田:やってましたよ! パトレイバー本とか出してましたよ。

(会場笑)

吉田:いろいろやってたんですけど、向いてないんですよ。向いてないということをすごく痛感してやってるんで、ものづくりができる皆さんっていうのは日本の宝だと思うんですよね。

プラス、さっきの経営の話の期待でいくと、ものづくりができて経営視点があれば最強で、インターネットの21世紀の頂点に立てると思ってまして。頂点に立つことに興味があるかというとまた別ですけど。

そういった意味では、皆さんが日本社会を動かすど真ん中にいらっしゃると思うんで、ぜひ今後とも……さっきの(アンケートの)給料にご不満がある方はご相談いただきながら、ぜひ日本を良くしていきましょう! ありがとうございます。

(会場拍手)

玉川:いろんなご意見ありがとうございました。アマゾンでもカスタマーオブセッション(Customer Obsession)といって「お客様から立ち戻って考えよう」というのがあるんです。エンドのお客様が一番大事なんですけど、ある意味CTOにとってCEOはパートナーでありお客様なんですよね。

その皆さまから意見を聞くことで……他のCEOからCTOに向かって話すことって、ほとんど私は聞いたことがなくて。非常に新鮮で役に立ったと思っております。改めまして、パネリストの皆さまに盛大な拍手をお願いします。ありがとうございました。

(会場拍手)

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