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海外企業プレゼンテーション(全5記事)

「世界中が日本だったらいいのに」 BoosterMediaのCEOが日本のゲーム市場の魅力を語る

BoosterMedia・Laurena Rutten(ローレンス・ラッテン)氏やChartboost・Pepe Angell(ペペ・アゲル)氏など、海外の経営者を招いてのトークセッション。本パートでは登壇者による簡単な自己紹介と、日本市場への参入について意見を交わしました。(IVS 2014 Fall より)

登壇者からのあいさつと自己紹介

田中章雄氏(以下、田中):皆さん、おはようございます。IVSのプレセッションにようこそ。IVSのオフィシャルセッションが始まるのは午後からですが、海外からの特別ゲストがいらっしゃいます。

海外で会社を経営されていて、それぞれ日本とつながりがあるけれども、日本市場への参入の段階は異なる5人のゲストスピーカーからお話を伺いたいと思います。簡単な自己紹介をお願いできますでしょうか?

ヤンからお願いします。ヤン、おはよう。マイクで皆さんに自己紹介してください。

ヤン・ミクザイカ氏(以下、ヤン):私はヤンと申します。モバイルゲームのデベロッパー、ドイツのベルリンに本拠地を置くWooga社のCOOです。

田中:ヤン、ようこそ。皆さん、彼の例にならって出身地を教えてください。ディビッド、君の場合は出身は複雑かもしれないけど。

ディビッド・チェン氏(以下、ディビッド):ディビッドと言います。モバイル用のWebサイトビルダー、Strikingly社の共同創業者兼CEOです。今は上海に拠点を置いています。

田中:元々はどこの出身ですか?

ディビッド:そこが複雑なところです。私自身は広東出身ですが、会社を設立したのはシリコンバレーで、今は上海に戻っています。

田中:ありがとう、ディビッド。では、ジョン。

ジョン・ライ氏(以下、ジョン):こんにちは、ジョンです。MixerBoxの創業者兼CEOです。MixerBoxは多機能ミュージックプレイヤーで、詳しい説明はまた後で。チームはパロアルト(カルフォルニア)と台北を拠点にしています。

田中:ありがとうジョン。ぺぺ。

ペペ・アゲル氏(以下、ペペ):やってみよう。(日本語で)コンニチハ、ぺぺデス。コトシモIVSニ サンカデキテ ウレシイデス。

田中:すごい!

ぺぺ:これしか言えません。私はChartboostの国際統括担当です。出身はバルセロナですが、今は本社のあるサンフランシスコを拠点にしています。

田中:ありがとう、ぺぺ。

ローレンス・ラッテン氏(以下、ローレンス):こんにちは。ローレンスです。BoosterMediaの創業者兼CEOです。カジュアルゲーム販売会社で、本社はアムステルダムですが、世界中で事業を行っています。日本には2ヵ月おきに来ています。東京には事務所もあります。

HTML5ゲームは、まだ死んでいない

田中:どうもありがとう。では、ローレンスからお願いします。君の会社と日本への参入について教えてください。最初にBoostermediaのスライドをお願いします。

ローレンス:実は、今からちょうど2年前に京都のIVSに参加しました。その時はゲーム開発の新しい技術だったHTML5について、特にゲームのディストリビューションについて話し合いました。2年経った今、市場でもBoostermediaでもいろいろなことがありました。会社は大いに躍進し、日本市場の参入にも成功しました。

田中:ちょっと待って、ローレンス。HTML5ゲームって言ったかい?

ローレンス:その通り。

田中:本当にHTML5? 日本の人はみんな、HTML5は2年前に死んだと思っているよ。それなのに君の会社は健在なのかい? 僕らの勘違いかな?

ローレンス:かもしれないね。日本市場でフォーカスが一時的にシフトしたのかもしれない。HTML5はあちこちで復活しているし、開発スピードがものすごく早く、クオリティも急速に向上しているし、ほとんどのゲームについてネイティブゲームとの違いがなくなってきている。

田中:今日ビデオ持ってきてるよね、全部HTML5ゲームかい?

ローレンス:そう。ビデオもスクリーンショットも全部HTML5だ。

田中:観客の皆さん、覚えておいてください。この2年間、日本ではネイティブゲームがブームだけど、ここにまだHTML5ゲームを追求し、開発している人がいます。ローレンスから最先端のHTML5ゲームについて話を聞きましょう。

ローレンス:どうもありがとう。今言った通り、僕はアムステルダムで会社を設立して、そこに大規模なチームを置いている。実はアムステルダムで日本人チームを結成しているところで、本社では日本のゲーム業界関係者も2、3人働いている。

プラットフォームの技術が追いついてきた

ローレンス:日本からもアムステルダムからも日本に焦点を当てている。現在数百のゲームのポートフォリオがあって、その多くが世界中の第三者HTML5ディベロパーによるものだけど、社内のスタジオでも最高品質なHTML5ゲームに焦点を当てていて、ネイティブゲームと競っている。1分程度の簡単なビデオをお見せしよう。中には日本で発売されたゲームもあります。

田中:パーフェクト。見てみよう。

(Boostermedia社のPVが流れる)

田中:へえ、君に言われなかったら、これが全部HTML5ゲームだとはわからなかったよ。

ローレンス:ありがとう。最後にお見せしたJEWEL academyは、ヨーロッパでVita用に2週間前に販売したんだ。ご覧の通り、Candy Crushと同じクオリティで、同じぐらい刺激的だよ。やり方をお見せしよう。

確かに販売までにかなり時間がかかった。2、3年かけて、本当に何度も何度も改良を重ね、ようやく成功したと思う。実際、iOS8のリリース以来、Appleの市場でものすごく成長した。3Dゲームやエキサイティングなゲームもできるようになった。8とHTML5の境界はなくなっていると思う。

田中:ようやくプラットフォームの技術が、君が作っているものに追いついたというわけだね。

ローレンス:その通り。今は毎月プラットフォーム上で1,200万人のゲームプレイヤーにゲームを提供している。全部HTML5ゲームで、その半分がディストリビューションパートナーを通じたもので、多くのゲームがメディアカンパニー、テレコムオペレーター、OEM(注:相手先商標製品の製造会社)を通じて販売している。

残りの半分は、直接自社のゲームWebサイトを通じての販売になる。昨年の夏、アメリカの会社を買収したのだが、そこはたくさんのゲームWebサイトを運営していて、そこに今HTML5ゲームを移しているところだ。大事なことは、クロスプラットフォームに焦点を当てることだと思う。

基本的に、うちが作成するゲームは全てスマホ、タブレット、PCなど異なるプラットフォームで使用きる。帰宅中に地下鉄の中でスマホでレベル1から3をプレイしたとする。家に帰ったら続きのレベル4を自宅のPCでできる。それができるのはHTML5だけだ。クラウドベースだからスコアや成績をクラウド上に保管できる。

HTML5にこだわるメリットは、その柔軟性の高さ

田中:質問していいかな。1,200万のMAUの内訳は? スマホ、タブレット、PC間はどうなっているだろうか?

ローレンス:約50パーセントがスマホ、タブレットで、50パーセントぐらいがPCかな。

田中:じゃあ、まだPCゲーマーもたくさんいるということだね。

ローレンス:その通り。

田中:じゃあゲームが複雑化している中で、コスト的にHTML5にこだわることのメリットはたくさんあるの?

ローレンス:あるよ。特に、柔軟性という点ではね。HTML5ゲームは、異なるプラットフォームを通じてディストリビューションできるだけでなく、比較的アップデートが簡単なので、App Storeなどを経ないでもアップデートできる。

全部クラウドでできるからね。それに新しいゲームを、既存のエンジンを通じて素早くリリースできる。最初にHTML5ゲームを立ち上げた時はUnityを使うよりも確かにお金がかかったけれど、一旦やって経験を積んだので、費用対効果は高いと思う。

田中:ありがとう。

「時々ゲームを楽しみたい」ユーザーが大勢いる市場

ローレンス:先ほど述べたように、うちは利用者が多い既存のパートナーをディストリビューションルートの1つとして使用している。例えば、数ヵ月前にYahoo! Japanを通じてゲームをリリースして、Yahoo! Japanにとって初めてのクロスプラットフォームのパートナーとなったんだ。

これが異なるプラットフォームでプレイできるゲームの例だ。基本的な仕組みは、ゲームは既存のYahoo!のエコシステムに統合されている。だから、うちのゲームはスマホでもPC、Webサイトでも楽しめる。

Webには何百万人という、たまにゲームを楽しみたいと思っているユーザーがいて、そういう人たちはApp Storeを頻繁には利用しない。現在は利用していなくても、App Storeの高い課金も払わずにWebを通じてゲームを楽しめるというのは覚えておくべきだと思う。

田中:君のところのゲームは実際、別のアプリじゃなくて、Yahoo!ゲーム内のポータルで遊べるんだね。

ローレンス:そう。クリックしてくれれば、フルスクリーンでゲームを楽しんで、やめたらまたYahoo!に戻るというわけ。だからYahoo!のエコシステムに完全に組み込まれているんだ。

日本向けにローカライズされたゲーム達

ローレンス:うちの会社は、日本で開発されたゲーム、つまり日本向けに開発されたものやローカライズされたゲームに投資することに決めた。明らかに日本は他の市場と100パーセント同じというわけじゃない。

先も言ったように、社内チームには日本からのアーティストやローカライズされたディベロパーもいる。例を挙げると、これはYahoo!でも発売したゲームで、日本向けに開発したものだ。とても成功しているが、日本だけだ。これはカジュアルパズルゲームで無料ゲーム。

これは最初ヨーロッパでも販売した病人の治療をするゲームだけど、だが日本市場向けにはローカライズすることに決めた。それで、病人から動物病院にした。だから病気の患者の代わりにかわいい動物のキャラにしたんだ。そのほうが日本人の好みに合うからね。このゲームも好評を得ている。

田中:よくわかんないんだけど、ヨーロッパ版のゲームは病気の患者に寿司を食べさせるの? そしたらますます具合が悪くなるのかい?

ローレンス:実際は良くなると思うよ(笑)。

様々なプラットフォームに対応するゲーム作り

ローレンス:それからHTML5のメリットの1つとしてクロスプラットフォームアプローチを挙げたけど、わが社は異なるプラットフォーム向けにゲームを作っている。

田中:ちょっと待ってよ。腕時計型のプラットフォームでHTML5ゲームをするの?

ローレンス:腕時計型のゲームには2つバージョンがあって、TizenなどのためのHTML5バージョンとAndroidのためのネイティブAndroidバージョン。これはVita用で、市場としてはまだ小さいけど、それまでは他のプラットフォームも大事だと思う。

田中:将来はみんなウエアラブル端末でゲームをするようになると思う?

ローレンス:ゲームのフォーマットによると思うけど。他のプラットフォームと全く同じではないだろう。ゲームによってはうまくいくだろうね。

これはFlappy Birdに似ているけどもうちょっと高度なゲームで、腕時計型ウエアラブルでも大丈夫だと思うけど、あまりに複雑なゲームは明らかに不向きだろう。でも他のプラットフォームも視野に入れているよ。例えば、スマホだけでなくスマートTVプラットフォーム向けのHTML5も視野に入れている。

スマホユーザーよりPCユーザーのほうが多い!? 日本のゲーム市場

ローレンス:最後に日本で学んだこととしては、まず日本では他の種類のゲームに焦点が移りつつあるけど、カジュアルゲームについては非常に活気のある市場であること。昨年LINEやKing、Supercellといった会社が成功したことからもわかる。

うちの会社も同様だ。うちが作るゲームはKingやLINEのゲームに似ている。また、Webの持つディストリビューションの力を過小評価してはならないということ。何より買収後はものすごくコストを削減できた。

田中:さっき、トラフィックの50パーセントがWebと言っていたけど、それはグローバルなデータ? 日本はどうだろう。Web対スマホとタブレットの相対的なディストリビューションは?

ローレンス:現在のところ日本の場合、絶対数で言えばわが社にとって最大の市場ではないけれど、重要な市場ではある。PCユーザーのほうがスマホとタブレットユーザーよりわずかに多いかな。

田中;日本でも? じゃあ、日本ではまだWebでゲームを楽しんでいるんだね。

ローレンス:そのとおり。いいところは長くプレイできるしね。他のKPI(注:重要業績評価指標)から見れば、うちの会社にとって日本は断トツ、アクティブな市場である。1人当たりのユーザーベースで考えると日本はすごいよ。世界中が日本のようだったら、と思う。ゲームプレイ、プレイ時間、リテンション、APRU(注:ユーザーあたりの課金額)についてもね。

田中:ローレンス、ありがとう。

ローレンス:ご興味がある方はこの後、東京渋谷にオフィスがありますので、ご連絡ください。

Facebookでのユーザー獲得について

田中:ありがとう。(パネリストに向かって)ところでみんな静かだけど、ローレンスに質問はないの? HTML5の時代はもう終わったから、質問することもないのかな?

ぺぺ:いや、おもしろいと思う。君が言ったとおりWebの力を見くびっちゃいけないと思う。例えば、トラッキング(追跡)という点からは、Webで何かチャレンジはあるかい?

田中:トラッキングするのはWebのほうが簡単じゃないか。

ローレンス:実際、ずっとトラッキングしやすいね。Googleとかその他長く存在しているツールも多いから、簡単だね。

ぺぺ:実際のユーザーについてどんな情報が得られるんだろう?

ローレンス:ゲームにもよるけど、匿名のゲームの場合、ユーザーの利用時間やリテンションなどかな。ログインするタイプのゲームはもうちょっと情報がわかる。人口分布だとかね。

田中:Facebookプラットフォーム向けのゲームは作ってないの?

ローレンス:わが社はFacebookを2通りに使っている。1つがユーザー識別のため使っている。ゲームの中にはFacebookアカウントでログインするものがあって、進捗状況やスコアをクラウドで管理している。

またHTML5なので、Facebook上でHTML5ゲームをFacebookアプリとしてテストしたりしている。来年はもっとたくさんのゲームをFacebookでも発売する予定だ。

田中:実際、Candy CrushはFacebookアカウントでたくさんのユーザーを獲得したよね

ローレンス:その通り。そこからスタートしたと言えるだろう。

田中:ありがとう。

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