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グローバル展開の実践方法(全2記事)

フィーリング部分は、もう任せるしかない--グリー・メルカリによる、海外展開の実践的ノウハウ

アメリカに支社を持ち、世界進出を進めるメルカリとグリーの経営陣がグローバル展開の実情について語ったセッション。採用から現地スタッフとのコミュニケーションの取り方まで、実践的でリアルな情報について触れられました。(IVS 2014 Fall より)

メルカリの海外ユーザー獲得方法

鈴木健氏(以下、鈴木):グローバル展開の実践方法ということで、この3名で進めて行きたいなと思います。実は先ほどこのIVSの表のセッションのほうで、この3人プラスアルファですでにグローバル展開の話したんですけども。

せっかくなので、ちょっとあの場では言えなかったことなども含めてディープな話が出来たらいいなと思ってます。じゃあ、山田さんから。

山田進太郎氏(以下、山田):メルカリの山田です。よろしくお願いします。

荒木英士氏(以下、荒木):グリーの荒木です。よろしくお願いします。

鈴木:簡単に山田さんのほうから、メルカリで今どういうグローバル展開を取り組んでるかについて説明してもらえますか?

山田:そうですね、会社自体去年(2013年)の2月に作ったんですけど、今年(2014年)の4月にオフィスを作って9月にアプリをリリースして、今3ヵ月くらいっていう感じです。アクティビティやDAUは結構伸びているんで、悪くはないと思っています。

荒木:どこからユーザー獲得したんですか?

山田:ユーザー獲得はFacebookを始め、いろいろやっています。

荒木:あ、広告で?

山田:そうですね、もちろんオーガニックや招待とかもあります。招待インセンティブはかなり効くので、そういうナチュラルなものと広告との組み合わせで増やしています。

スタッフ的には今20人弱くらいっていう感じですね。ただ7割くらいはカスタマーサポートなので、プロダクトを作ったりは6人とか7人とかでやってるっていう感じですね。

鈴木:なるほど。グリーの荒木さんはもう何年前ですかね? 最初行かれたのは。

荒木:そうですね。2011年の頭なのでちょうど4年くらい前に4~5人でサンフランシスコに行って、そこでレンタルオフィス借りるところから始めて。2年3年くらいかけて自社採用と並行して3社くらい買収するという投資を経て海外拠点を立ち上げてきました。

鈴木:本当に? すごいね(笑)。

荒木:投資してって言うと聞こえはいいですけど……。とうとう去年くらいですかね、ようやく収支トントンになってきたっていう。ですので回収はこれからですね。

鈴木:回収しなきゃいけない(笑)。

荒木:まだ回収してない(笑)。とりあえず黒字化はしたので、1年くらい前に日本に戻ってきて今は日本の事業をやっています。

グリーのアメリカ進出1年目は本当に苦労した

鈴木:グリーのオフィスへ行くと結構感銘を受けるよね。

山田:僕行ったことない。

鈴木:行ったことないの? China Basinというすごく大きいところのオフィス。ワンフロア、300人以上いるの?

荒木:300人くらいですね。

鈴木:300人のワンフロアのオフィス、めちゃめちゃデカイですよね。

山田:めちゃめちゃデカイよね。

荒木:長いんですよ、すごい長い。だから端から端まで歩くのに5分弱かかるんですよ。

鈴木:本当にね、見えない感じですよ外が。霞がかかってるんですよ、もうデカくて天井も高くて。しかもほとんど日本人がいない。

荒木:いないですね、多分数人ですね。

鈴木:数人。ほとんど現地で採用してっていう。それを日本の会社がそこで作ってるっていう事実だけでも僕は感銘を受けましたね。大変だったでしょう?

荒木:大変でしたね(笑)。もう大変過ぎて記憶が曖昧になるくらい。

山田:時系列が。

荒木:大変だったことは覚えてるみたいな。

鈴木:何か具体的な失敗経験ていうのは。

山田:一番大変だったのはどのへんなの?

荒木:一番大変だったのは、最初の1年くらいですね。US向けのゲームを作ろうということで、今考えると最大の失敗だったのは日本人が5人いて、まずアメリカで経営するのが初めて、かつネイティブゲームを作るのが初めて。

さらに並行して社員の採用と会社の買収、買収した会社の統合、などを同時にやろうとしたんです。そしたらゲーム開発のプロジェクトがピクリとも動かないんですよね。

鈴木:それは大変だ。

荒木:人増え続けますしお金も流れ続けるんですけど、事業が前に進んでいる感じがしないんですよ。そのとき本国のほう、太平洋をまたいだ日本では当時ドリランドブーム真っ盛りで、すさまじい勢いで売り上げが伸びてて。

かたやこっちは何も上手く行かなくて、インターネットもまともにつながらないくらい劣悪な環境だったんで。

鈴木:アメリカは遅いよね。

荒木:存在意義を喪失しかけました(笑)。

飲みニケーションは世界共通

山田:その頃だって英語もあれですよね。

荒木:まともにできない。そこから。

鈴木:そこから。英語はどうやって勉強して?

荒木:ひたすら毎日話すしかないんで。

鈴木:そうか、それで現場で。すごいね。

山田:荒木さんとか、向こう行ってると現地の友達と飲みによく行ってて、完全に何ていうか……。

荒木:ローカルの友達作るのは大事ですね。

山田:アメリカ人に完全に溶け込んでるって感じだよね。すごいなと思った。

鈴木:やっぱそうじゃないとね。友達いないからね、俺も(笑)。

荒木:そういえばさっきのセッションで話題出なかったですけど、僕が学んだのは、やっぱ飲みニケーションは世界共通なんだなということがわかって。

アメリカって夕食は家族でとるとか、やっぱ早く帰るからそんなに日本みたいなウェットな付き合いしないっていうじゃないですか? それはそれで事実なんですけど。

とはいえ向こうにも、飲むの好きな奴もたくさんいて別に昼間っから飲めばいいっていう話もあり。飲んで仲良くなって打ち解けてっていうのはアメリカでも共通だなと思いましたね。

鈴木:サウスベイのほうは車社会だから、サンフランシスコは違うよね。

山田:若い人も多いし、結構金曜日の夜とか土曜日の夜とかすごいもんね。

荒木:すごい人出ですよね。

山田:人出が。行列とかできちゃって。

鈴木:そうだよね。じゃあ話題はそろそろおいしい店は何なのかっていう話にしましょうか(笑)。進太郎はどんな感じでしたか、苦労は?

山田:最初の頃に、プロダクト作るときにやっぱりデザイン変えたっていう話先ほどあったんですけど、そういうデザイン変えるっていう過程で、日本で「これわかりにくいんじゃないか」って言うと、「いやいや、これで十分。なんでわかってくれないのか」みたいな結構フィーリング的なものだったり。

プロダクトデザインにしてもそうなんだけど「こういうのはないよね」みたいなふうに言ってるのがお互いにストレスというか。

日本人もよくわかんないし、向こうからすると「なんでわかってくれないんだ」みたいな感じになっちゃって、そこが一番きつかったかなあと。

荒木:どうやって解消したんですか? それは。

山田:もうデザインに関してはUSが主導でやろうと。

荒木:決めの問題だったんですね。

山田:やっぱり向こう行っていろんなコミュニケーションして、結局僕も「よくわかんないな」みたいなところがあって。

ユーザーインタビューとかやってなるべく現地の感覚を掴むようにしたんだけど、それでもやっぱりわかんないとこはわかんないところで、もう「信じて任せるしかない」みたいな。そういうところがあるのと、あとそれに対して僕自身がかなりプロダクトにもコミットして。

鈴木:口を出す。

山田:本当に「ここはこういう感じにしよう」っていうのを僕がスペックを書いて。僕は日本と行ったり来たりしてるんで、日本に来て「こういう感じでやりたいんだけど」って言って持っていったりとかしてっていうのがわりとワークし始めたかなっていう感じ。

現地常駐の有無は会社によって異なる

鈴木:進太郎がアメリカ行き始めたのは何ヵ月くらい前?

山田:今年の頭くらいから、1ヵ月に1回は少なくとも行くようにして。

鈴木:何対何くらいになった?

山田:今年はトータルで見ると3分の1くらいだったね。12月とかは行かないんでそういう月も含めると、そういう感じになってる。

鈴木:石塚君(株式会社メルカリ 取締役 石塚亮氏)はかなりアメリカに行ってる?

山田:彼は向こうに基本住んでるんで。

鈴木:そこがグリー、メルカリと僕らの違いで。現地に住む、つまりフルで張りつく人がいたと。スマートニュースの場合、最初に今年の1月に3日だけサンフランシスコに行ったと。それも2年ぶりに。

もう「どうしよう」みたいな感じで。グリーの青柳(直樹)さんとかAnyperkの福山君とかと飲みに行ったり話聞いたりとかして、いろいろ聞いてどうすればいいかっていうのを、反応を聞いてみたみたいなところから始まって。

そこから月に1週間ずつ行くペース。ただ現地に張りついているわけじゃないから、自分と浜本(階生氏)、CEOの2人が1ヵ月のうち1週間から2週間は日本にいないと(笑)。かつアメリカで採用活動をするんだけど、結局現地にいられるのも1週間とか。

山田:そうするとインタビューするにしてもね。

鈴木:そこからクロージングまで持っていく時間も必要だと。いざ採用を決めていくとなると、なかなかやりきれなかったりする。

そうすると向こうは早いから、すごくいい人がいてもすぐに飲みにも行けたりしないからその間にTwitter行っちゃったりとか、起きるわけですよ。転職しようとしてるわけだから。

そういうことが何度かあって、1人2人でもいいから「張りついて現地でいる人がいるかいないか」はすごく大きい。今でこそメンバーが何人かいるから勝手に動いてるけども、そこは苦労したね。

荒木:あとは現場にいないと信じてもらえないっていうのありますね、本気度みたいなものを。僕ら向こうにオフィス作ったのはOpenFeintを買収する交渉の真っ最中だったんですね。

交渉自体はしてたんで「俺ら今週移住してきたから」みたいな、「交渉来たから、家借りたから」っていう話をして、もう逃げられないぞくらいの感じでやったっていうのありましたね。

鈴木:片手間にやられると向こうも嫌だから。僕らもやっぱ面接のとき「最終的にサンフランシスコをグローバルなヘッドクオーターにする気持ちがあります」ってことをちゃんと伝えて。そういうのすごい大事だよね。

荒木:聞かれますよね、「撤退するんじゃないですか?」みたいな。僕最初の頃はよく聞かれました。

山田:僕もよく聞かれたな。最近は確かにベースがあるから、そういう話にはならないけど。

鈴木:オフィスがあるとリアリティがあるからね。じゃあちょっとさらにディープな話として、採用の話にしましょうか、表のセッションでも若干話題になったけど「給料高いんじゃないか」とか話があるんですけど、ぶっちゃけどうですか?

荒木:高いんじゃないですか? ただ日本が安いのかもしれないし。でも実際の額で言うとエンジニアだと大体2倍するじゃないですか。ジュニアの人で1千万円くらい。あのサンフランシスコのダウンタウンの物価とか地価を考えるとまあまあ。

鈴木:もらってるお金で本当にいい生活できるのかっていったら、全然できないんだよね。

荒木:あっち消費税も高いし。だから物価補正するとまあそんなもんかなって気もしなくもないですよね。

山田:結局僕らがベトナムとかでオフィス作ったら、人件費が何分の1とかで安いじゃないですか、というのと同じ。

荒木:同じですね。それはサンフランシスコのほうが高いですよねっていう。

山田:それはそういうものだという前提で進めてるっていう感じかな。

「少なくとも日本でヒットしてる」は魅力

荒木:ただその、会社が小さいうちにグローバル展開するのが僕すごいいいなと思ったのは、やっぱりある程度大きくなって、人員制度とか給与レンジとかが決まってる状態で展開しようとすると「この人なんでこの給与制度が、いやこのスキル制度じゃ収まらない」みたいな話になっちゃって面倒くさいんですけど、小さいうちに行けば「まあそんなもんでしょ」って感じで個別対応できるじゃないですか。

山田:うちもそんな感じかな。現地のレンジに合わせてやっていて。あと小さくていいなと思うのは、オプションが出せるっていう。

荒木:それはグリーの場合は出せなかったから、困りましたね。

鈴木:事前に「日本のストックオプションだとあまり価値を感じてくれてないんじゃないか」みたいなアドバイスしてくれた方はいたんだけど、そんなことまったくない。全然日本のストックオプションで大丈夫だった。

山田:税制上の問題とかいろいろあるんだけれども、むしろ日本がしっかりしているっていうことで「少なくとも日本だけでIPO行けますよね」ということが顕在化してるっていう感覚は多分あるんじゃないかなと思っています。

例えば10人くらいのUSのスタートアップに行ったら「そもそもそのスタートアップがどうなるかわかんないじゃん」みたいなところで考えれば。

鈴木:プロダクトがまだヒットしてないみたいなところに行きたくないもんね。

山田:そうそう。少なくとも日本でヒットしてるみたいな。

鈴木:アメリカで検討する人から見たら、「アメリカで成功したらもっと伸びるけど、ミニマムでここまで保障されてる」っていう、そういう感覚はあるよね。

山田:そうそう、そういう感覚はあると思う。

荒木:それで未上場って結構おいしい案件かもしれないですね。確かに。

鈴木:グリーはでも、そうは行かないじゃない。

荒木:そうですね。上場企業だったんで。確かに面接してて「なんで面接に来てくれるのかな」と僕最初思ったんですよね、本当に。こっちは英語もまともにしゃべれないし、何者か知らないのに来てくれてるから。

やっぱり話を聞いてると、スタートアップとかゲーム業界ってスタジオごと閉鎖ってよくあるじゃないですか。そう考えると、ゲーム業界にいたい、モバイルゲームやりたい。

だけど、潰れるリスクを取りながら自分で立ち上げるほどではないけど、ちゃんと腰据えて作りたい。という人はそれなりにいるんですね。

だから「閉鎖したりとかレイオフされたりとかする危険性がもうちょっと低いところがいいな、ただEAとかだと大企業すぎるな」みたいな、その中間がとれた感じがしますね。

山田:あと多分グリーがインターナショナルな会社というのもあるんじゃないですか? インターナショナルな会社が好きな人っていますよね。

荒木:いっぱいいます。僕らからするとアメリカの会社ってグローバルって感じするんだけど、あれはアメリカ人からするとアメリカの国内企業で。

鈴木:アメリカ、ドメスティックなんだよね。

荒木:別にインターナショナルじゃないんですよね。それは多くの応募者の方に言われましたね。

アメリカのほうが欲しい人材が見つかりやすい

山田:実際キャリアとして、レジュメとか見てるときも「あ、この人ヨーロッパで働いてたことある」とか「中国の会社で働いてたことある」っていうこと自体が僕らにとっても、この人クロスカルチャーなのがわかってるんだっていう。

鈴木:クロスカルチャーの人たちって皆カタコトでいろんな言葉しゃべるのね。イタリアとフランス住んでて日本も行ったことある、中国も行ったことあるぜみたいな感じで、カタコトでしゃべる人が結構多くて。そういう「クロスカルチャー」って一個のジャンルがあるんだよね。

荒木:それは確かに一個、いい経歴ですよね。変なカルチャーの衝突で必要以上にネガティブにならないというか「まあそういうもんでしょ」ってわかってくれてるのはいいですね。

山田:人材プールが圧倒的に厚いから、採用できないことはないよねみたいな感じ。

鈴木:だから結局こういう人が欲しいと思ったら、まず候補は見つかる。採用できるかどうかは別として。

山田:そうだよね、それはそれですごいよね。日本だとなかなかないもんね。例えば広報採ろうとかって言って「こういう経験がある人探してます」って言ってもその合致する人がいないじゃないですか。

鈴木:衝撃なのは、僕ら2年やっててスマートニュース日本でこれだけユーザーもいるのに、うち採用担当と広報がいないんですよ。でもアメリカにはいるわけ。見つかっちゃうんですよね、すごいいい人が。「何だこの人材の分厚さは」って。

荒木:人材は分厚いですね。あと思ったのはバックオフィス系の人材が厚いですね。僕が気付いたこととしては、向こうって何でもアウトソースするじゃないですか。広報も採用も全部アウトソースできる。

そうすると何がいいかって、彼らアウトソースされる側のファームにいた人たちっていうのは、その市場競争の中で戦ってるんですよね。

日本の大企業とかって広報とか総務とか、人事って基本守られるじゃないですか。だから市場競争してないんですけど、向こうの人たちって競合のファームから仕事取られないように頑張ってるから、能力とかホスピタリティが異様に高いですよね。

山田:コンサルタント経験がある人も結構多いですよね。「フリーランスでHRやってたんだけどインハウスで今回はやろうと思ってる」とか、結構そういう意味ではすごいキャリアに対してかなり明確な意思を持ってやってるというか。エンジニアでも起業した経験があったりとか。

鈴木:多いね。

山田:そういうのはすごいいいなって思うかな。

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