2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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岡島:お二人とも海外、特にアメリカっていう大変なゲームの中で戦っているところで、東京からもやいやい言われるじゃないですか。そのときに「こっちの苦労がわかってねえだろ!」みたいにはならなかったんですか?
青柳:そういう意味では、ウチは結構(グリー会長兼社長の)田中(良和氏)の理解があったなと思いますね。当然時差もあって、定例会議を電話でしてても「話通じねえよ!」みたいな感じで(笑)、一人エキサイトするみたいなことはありましたけど、そこのところは結構ドンと任せてくれた。任せる以外にないと悟ったんだと思いますけれども。
日本は日本で、上手くいった時期もあれば海外のことを構ってられないほど大変という……。
岡島:DeNAさんとのバチバチみたいな。
青柳:それよりも、我々の場合は社会的に大きく取り上げられたこともあって。そのときは海外よりも国内をちゃんと……。
岡島:大丈夫ですか? そこの話は(笑)。
青柳:大丈夫だと思います。(国内を)やり切るっていうのがあったので、良い意味で時間をちゃんと2年くらいくれた。でも3年目くらいから海外事業の見直しがかかって……。
岡島:投資した金額も大きいし……。
青柳:見直しがかかったタイミングでギリギリ、キャッシュフローが黒字になったんですよ。
岡島:すばらしい。でも、そう持ってったってことかもしれない。
青柳:そうですね。それが見えてきたんで合わせにいったというのがありますね(笑)。
岡島:なるほどね。宮﨑さんはそこを越えてきたときに「東京はあんまりわかってないな」とか……行ったり来たりはされていたんですか? 西條さんと一緒に。
宮﨑:そうですね、半年に1回とか。
岡島:それくらいの頻度ですよね。やっぱりお二人とも腰掛けじゃなくて、かなりガッツリ入り込んでやってたんでしょ?
青柳:僕、毎月往復してました(笑)。
岡島:マイレージ王子みたいになってる(笑)。
青柳:(笑)。でも、僕がすごくつらかったのが、毎月往復してフェイス・トゥ・フェイスで話していかないと、アメリカで買収もしちゃえば採用もして一時期400人以上社員がいて、この人たちのために制度がちゃんと作れないとか、そういうのがあると申し訳ないなと思って。ある種そのために……。
岡島:しかも、それだけ大きいポストマージャーもきっと初めてですよね。
青柳:そうですね。
岡島:だからそこのプロセスも(大変だった)。
青柳:でも今では、おかげさまで会社の中でもそこの経験値があるんで、そういう話をしても取締役全員が理解してくれる。
岡島:「通ってきた道だよね」ってなってる。そこもお初って感じですよね。東京とのやり取りみたいな感じでは?
宮﨑:僕はそのとき役員ではなかったので、当時海外事業の担当役員だった西條さんが全部のプレッシャーを受けて、たぶん役員会に出席していたと思うんです。僕は幹部の合宿とか会議みたいなもので一時的に日本に帰ったときに、暗にプレッシャーを受けることはありましたけど。
岡島:どんなプレッシャー?(笑)
宮﨑:そのとき、本当にウチの会社はスマホ全張り戦略にシフトしてて、スマホゲームも国内ですごく伸びてる、スマホのアドテクも、スマホの広告もスマホのアメーバもぐんぐん伸びてる……。
岡島:全体的にガンガン伸びてる。
宮﨑:色々なところで色々なサービス作っていて、うちは本当にメガベンチャーみたいな感じで組織の至るところがガチャガチャしてまして。「これは海外事業もっと頑張らないと埋もれちゃうな」という危機意識はすごくありました。
スマホはアメリカが先に進んでたので先に来て立ち上げたけど、日本にもその波が来てみんなすごい勢いで立ち上げてる。その中でそこそこの成果だと、全然目立たないみたいな。
青柳:僕も覚えてて質問しちゃうんですけど……その当時そういう状況があったけど、宮﨑さんは「それでも僕はCA8になる」っておっしゃってましたよね、アメリカで。
宮﨑:言いましたっけ(笑)。
青柳・岡島:(笑)。
宮﨑:はい。そうですね。
岡島:そうか。やっぱり何かそういう目標、旗を置いてるんですね。
宮﨑:これは(これまで役員就任前の)担当役員にも言ってたんですけど、僕は30代で大きなバッターボックスに3回立つって決めてるんですよ。今は2回目使ったんですけど、1回目が海外。2回目がCA8。そういうところは決めてたので、それをやらせてくれって西條さんのあとに担当役員中山(豪)にも伝えてて、それを覚えてくれてたのもあるかもわからないですけど。
岡島:割と宣言して自分を追い込むタイプというか。キャリアの作り方が。
宮﨑:そうですね。
青柳:すごい。社内における、その自己ブランディングのタグ付け。
宮﨑:やっぱり言わないとやらないんですよ、僕。
岡島:ダイエットも結構近くて、こっそりやる人と、みんなに言って手伝わせる人といると思うんですけど。(宮﨑さんは後者で)確実に、明確に目標を出しちゃうっていう。
宮﨑:プライベートでも仕事でも何でもそうですね。フルマラソンをいつまでに走るとか、今は毎日ゴルフ練習して年内(にスコア)100切りするとか。宣言して、追い込んで、可視化して、ゴールに自分の実態を強引に合わせにいくっていう。
岡島:つらくないですか? 「お前やってんの?」みたいなこと言われたりするでしょ。
宮﨑:いやいや。いま注力してる新世代トークアプリ「755」っていうコミュニティサービスがあるんですけど、そこにも毎日投稿して「やってるぞ」みたいな。
岡島:すごい。自分を追い込む感じ。なるほどね。そして、2つ目のCA8に今年選ばれたということで……おめでとうございます。
青柳:おめでとうございます。
宮﨑:ありがとうございます。
岡島:急に?
宮﨑:いや、話をそのCA8選出のタイミングから少し過去に戻すことになるんですが、9月に……「あした会議」っていうのがありまして。半期に1回あるんですけど。その回はCA18(取締役+執行役員)が中心となって幹部がサイバーエージェントの「あした(未来)」に繋がる新規事業を考えるチーム対抗バトル形式の経営合宿のでした。
そのときに他のチームから、ちょうどいま僕が見てるコミュニティとかメディア系のサービス部門が、元々アメーバが変革でリスタートするタイミングで部門ごと引き取って始めた事業なので「もっと注力していくというトーンで大きな打ち出しでやりたいよね」って提案があって。あした会議上の決議は藤田が担当役員として見て、そこを僕も全力で一緒にやるって感じになったんです。
岡島:COO(最高執行責任者)的な感じで。
宮﨑:そんな感じの決議がされたんですけど、「ちょっと待てよ」と。「僕がその事業を責任者でやりたい」というのを社員総会(10月3日)前日の10月2日に藤田に直談判しにいったんですよね。
岡島:やるね~(笑)。
宮﨑:「社長が自分でみるとおっしゃるんだったらもちろん全力でやりますけど、僕がやれるくらいじゃないとダメだと思うんですけど」「CA8としてこの領域を本気でやるくらいの気持ちでやりたい」みたいなことを言いにいったんですけど、華麗にかわされたんですよね。(気の抜けた声で)「まぁ~、やればいいじゃん」みたいな。
岡島:(笑)。
宮﨑:そう言われて「まあ期待はしてくれてるんだろうな」と受け取ったんですけど、もっと目立ってやらないとCA8のチャンスももらえないのかと思ってたら、会場で呼ばれて、ちょっとびっくりしましたけどね。
岡島:藤田さんはそうしようと思ってたのかな。
宮﨑:わかんないっすね。
岡島:前日のがなかったらどうなってたのかっていう。
宮﨑:それもわかんないです。
岡島:全然選ぼうと思ってるのにかわされてたんだったら、ちょっと藤田さんすごいなって(笑)。そうか、やっぱり社内でずっと良い意味での健全なアピールをしてきてることが効いてるし、サイバーさんの場合だと手を挙げる仕組みもあるし、ポジションが人を作る、経営陣をたくさん作っていくってことにも皆さん前向きだし。みんなも成功体験がそこの中にあるから。
宮﨑:組織の土台としても成功体験がそこにあるし、そうやって注力する事業にやる気のある伸びしろ人材を充てて育ててきた会社なので。僕も前日に行ったのは、「今34歳で今回CA8にならなかったら次は36歳か……とか。それは自分の中のキャリアスピードと変わってくるな。ここで大振りしにいかないと」っていうのがやっぱり……ここがデッド(ライン)って決めてたので。
岡島:なるほど。ちなみに30代で3つって言っていた3つ目は何をやろうとしている……?
宮﨑:それはまだ具体的に何かというのは決めてないですけど……僕はアメリカに行ってて、結局アメリカでは実現できなかったんですけど、日本企業からグローバルで大ヒットするようなサービスとかメディアを生み出していきたいっていう信念がすごくあって。それをやる一番手になりたいっていうのはあります。
岡島:じゃあ3つ目の山はそれかなっていう。
宮﨑:はい。自分の中では決めてるんですけど。
岡島:なるほど。青柳さんは今後……?
青柳:ちょうどこの(2014年)8月9月から拠点をアメリカから日本に移しまして、今は日本の事業をある種再生しようというところを任せてもらってるので、これをやり切らないとしゃあないなと思っています。
グリーという会社は今まで逆境を越えてきて、今回もまた来たなという感じで思っているんですが、ここを乗り越えられるかどうかは……ちょうど会社が10年で、次の10年があるのか。10年後にウチの会社が……。
岡島:いや、あるでしょう(笑)。
青柳:でも、その……。
岡島:存在感のある(会社でいられるか)?
青柳:存在感のない形で10年後に存続していても、それはリビングデッドだから、本当にしょうがないなと。(グリーは)10年前にはなかったわけですし、今日IVSに来ているほとんどの会社さんって、この10年間にできた会社(ばかり)。
岡島:本当にすごいですよね、そう考えると。
青柳:そう思ったときに、次の10年に自分と仲間たちがチャレンジするためには、結構この一番に勝たなきゃいけない。
岡島:自分を追い込みますね。
青柳:こういう役割を任せられたからには、結果出したいなと。テーマからは外れるんですけど、もはやキャリアとかは関係ないです。ここでグリーの次の10年という新しいチャプターをちゃんと作れるかどうか。それがあれば、きっとその中で僕もハッピーだろうなと思ってるし、それがないと「過去10年よかったね」と……。
岡島:過去の人みたいに。自分の総括として。
青柳:そうそう。そうなってしまうのは、今35歳でこれから45歳になる自分を考えたときにつらすぎるなと。
岡島:でもね、まだあと30年くらい働いていくだろうから(笑)。
青柳:(笑)。そういう意味では、過去の自分が26歳でグリーに入って9年くらい生きてるんですけど、次の9年とか10年でこれまでの自分を更に越えていかないと。世の中にはいるんですよね。たくさんはいないかもしれないけど、それをやり続けてまた違う高みに登ってる人とか。
岡島:今日私がやらせていただくパネルでも4人のパネリストの方に伺おうと思ってるんですけど、やっぱり卒業していく人もいるじゃないですか、正直。ファイナンシャルでは皆さんもう十分にやっていける感じだと思うし。そこで誰かに席を渡すってタイプの人もいるだろうし、チャレンジし続けてフロンティアを開いていくタイプもあるとすると、青柳さんの場合は完全に後者で。
青柳:両方だと思ってはいるんですが。
岡島:しかも自分のキャリアっていうよりは使命感に近いですかね?
青柳:それは両立していると思っていて。
岡島:結果として自分のキャリアができてくるってイメージでしょ? どっちかというと。
青柳:そうですね。どちらかというと数年置きに違うところに飛び込んで、自分のユニークな、他の人にはない青柳直樹という形になってきているので、それを僕は続けていけばいいかなと思ってます。
岡島:ありがとうございます。時間がだんだん近づいてきているので、お二人からひとりずつこれを見てらっしゃる方に……まあ、これから追っかけてくる人たちに向けてのアドバイスっていうのかな。ご自分のキャリアが早回しで、すごくチャレンジを取っていった結果としてたぶん想定外の成長をされてこられたと思うので、アドバイスのようなことがもしあればお願いします。宮﨑さん。
宮﨑:まず僕のスタイルでもあるんですけど、やりたいことがあればその期限を決めて、周りにもドーンと言って、自分をとことん追い込んでやる。協力者も見付けてちゃんとやるっていうのが自分の中の鉄則なので、これは結構オススメしたいんですよね。なので、割と社内外でキャリアの相談を後輩からもらうことがあるんですけど、毎回同じことを言ってます。
やっぱり思ってることを言わないよりは言ったほうがいいし、いつかやりたいと思ってるんだったらすぐにやったほうがいいですよ。自分にゆとりを生ませるなと。人生一回きりなんで。
岡島:ずっと高地トレーニングしてるような感じですけどね(笑)。
宮﨑:そうですね(笑)。思ってるんだったらやってみればいいじゃんって。やる前に考えちゃう人が多いなと思ってて、それはもったいないと思います。
岡島:その中でも、今おっしゃっていた重要なポイントは「周りの理解者を巻き込む」みたなことがすごく上手だったなって思うんですよね。そこも何かポイントが(あれば)。
宮﨑:なんだろう。それは組織の中でやる人と、独立してやる人とではまた違うと思うんですけど。組織の中でやる人の場合はそのやりたいことがエゴでもダメで、個人の成長にも繋がることであり、かつ、それが組織の次の飛躍に繋がるものであるというシンクロが必要だと思います。
そこをしっかりと見せていったり、サイバーエージェントが新規事業をやりたいフェーズのときに「新規事業で社長やらせてくれ」って大きなテーマで事業案をしつこく持ってくる内定者とかいるんですけど、やっぱりそういうやつは重宝したいし、任せてみたいと思います。そういうところじゃないですか。
岡島:ストーリーみたいなのありますよね。そこを自分の中でちゃんと構築して投げていくってことで、理解者を得る。そういうところを上手にやってらっしゃるから、どんどんポジションを……単なる偶発ではなくて必然的に持ってくることになってるんだろうなって気がしますよね。ありがとうございます。青柳さんも最後にアドバイスを。
青柳:私から言えることは、1年後でも数年後でもいいんですけど「いま想像していない自分になるためにはどういう行動を取ったらいいか」というふうに考えると、面白くなるんじゃないかなと思っています。特に自分より若い人に向けて言うと、自分が想像できる範囲で物事を組み立てると、どうしてもそれより早く成長していく人がいるので。
そういう意味では、企業の中でも起業した人でもそうだと思うんですけど、いま想像できてない1年後になるためにはどういう行動を取ったらいいか……究極的には住む場所を変えるとか。住む場所が変わると付き合う人が変わる。付き合う人が変わるといろいろ変わる。やる事業も変わるとかあると思うんです。
そういうふうに考えるといいなというのと、ただこれを逃げに使ってほしくないなと思っていて。何かうまくいかないなってときに、ちゃんと成果を出すまでそこを離れちゃいけないというか。
岡島:そこは難しいですよね。
青柳:自分がどんな言い訳しても周りは見てるから、それなりに自分で胸を張れる成果を出して、次のムーブオンを心がけていく。そこをブレさせると、なんか新しいことをホップしていけばいいんだって話になってしまう。
岡島:雨が降るまで雨乞いするみたいなこと、すごく大事だったりするじゃないですか。だけどどこかで見切らなきゃいけないこともあって。そこのバランスがすごく難しいなっていう。
青柳:僕は比較的、そこで他の人より見切らないでステイするタイプですね。最後は自分の過去の判断を信じるしかないし、世の中にそれで成し遂げてる人がまったくいないと、完全にみんなで沈没するかもしれないんですけど、いる場合には……やっぱり負けず嫌いなんですかね。
岡島:でも、負けず嫌いじゃない起業家なんていないでしょう(笑)。
青柳:そうですよね(笑)。相当みんなバチバチやってますね。
岡島:みんな負けず嫌いだと思いますけどね、相当。
青柳:最後の、そこのバランスみたいなところは上手くアドバイスできないんですけど……。
岡島:体感みたいなところもありますよね。経験していって、ここの最後を頑張ると(結果が出る)。
青柳:そういう意味では、最初の1サイクルがすごく重要だなと思っていて。私の場合はKDDIさんがあって、「こういう新しいチャレンジをしても自分はいけるんだ」って思うと、次からチャレンジに対する心理的なハードルが減るんで、若いうちに新しいことをやって成功する。
岡島:一皮むけるみたいなところを早めに……。
青柳:1回やっておくとその後の再現性が出てくるので、成長カーブの角度がグッと変わるんじゃないかなと思いますね。
岡島:ありがとうございます。聞き切れないほど楽しいことをいろいろ伺わせていただいて、ありがとうございました。お二人に大きな拍手で終わりたいと思います。ありがとうございました。
青柳・宮﨑:ありがとうございました。
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