2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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司会者:お待たせいたしました。次のセッションを開始させていただきます。続いてのリーダーズセッションのテーマは、「次世代人材育成とインパクトスタートアップ」です。ご登壇のみなさま、どうぞお席にお着きください。みなさま、どうぞ拍手でお迎えください。
(会場拍手)
次世代人材育成におけるインパクトの視点は重要なのか、インパクトスタートアップが共創する社会とは。ということで、パネリストのみなさまをご紹介させていただきます。
みなさまから向かって右から、株式会社COTEN 代表取締役CEO、深井龍之介さまです。続きまして、東京大学総長、藤井輝夫さま。UntroD Capital Japan株式会社代表取締役、永田暁彦さまです。インパクトスタートアップ協会事務局/一橋大学大学院社会学研究科修士課程在学、佐藤真陽さんです。
(会場拍手)
佐藤さんはまさに、学生という次世代の立場で参加していただいています。そしてモデレーターはインパクトスタートアップ協会代表理事/ライフイズテック株式会社代表取締役CEO、水野雄介が務めます。
(会場拍手)
では水野さん、よろしくお願いします。
水野雄介氏(以下、水野):みなさん、こんにちは。ちょっと疲れているとは思うんですが、これから学術的な話が進みますので(笑)。「次世代人材育成とインパクトスタートアップ」という題名でやらせていただくんですが、そもそもインパクトスタートアップって、結局今までずーっと「共助」とかいろいろな話があったと思うんです。
スタートアップをやるんだけど、当然利益だけじゃダメだよねという話じゃないですか。そうじゃなくて、インパクトも大事なスタートアップだというのがインパクトスタートアップで、みんなそう思っていたところでこの協会が立ち上がって。「俺もそう思っていたんだよね」という方が入っていただいている感じなんですよ。
水野:1個前のセッションで、共助、共助資本主義という話がありましたが、共助という言い方でもいいし、ポスト資本主義という言い方でもいい。つまり、ポスト資本主義時代における人材育成とはそもそも何なのか。そういう話として捉えることもできるなと思っています。
じゃあ、なんでポスト資本主義と言われ始めているのかというところを、まずは歴史のプロの深井くんから。歴史のプロでいいんですかね? みなさんで共通見解をしていただいたところで話をスタートできればなと思っています。よろしくお願いします。
深井龍之介氏(以下、深井):なんでポスト資本主義の潮流が出てきたかというところですね。すっごくざっくり言いますね。一応、資本主義が生まれてもう200年近く経っているんですが、別にこの200年間で資本主義がまったく変わっていないわけではなくて、ずーっとちょっとずつ、うねうね変わり続けているように自分からは見えます。
たぶん今もその途上にあるだけで、今まで150年間とか200年間まったく同じだった資本主義が、この瞬間に「ポスト資本主義にボーンと変わります」みたいな感覚では捉えてはいないということを先に共有しておきますね。ずーっとちょっとずつ変わってきていて、今も変わってきているから、こうやって言われているというか。
直近でいくと、でっかい変化って60年単位ぐらいで来ているように見えます。(カール・)マルクスの時とか、その後は例えば戦後の時とか、福祉が勃興する時とか。それからまた60年、70年ぐらい経った今という感じの周期で比較的デカいパンチが来ているけど、細かいパンチみたいなものはずっとあった。
直近でデカかったのは、もう本に書いてあるので読めばわかる話なんですが(笑)、やっぱりアレですよね。リーマンショック。
水野:金融資本主義。
深井:はい。
深井:新自由主義というものが1970年代ぐらいに出てきて、「会社って株主のものだよね!」「そうなんだ」となって。別にそれまでは、そこまでそういう合意が取られていなかったし、そうじゃなかった。
今、「会社が株主のものである」という感覚は、比較的当たり前のこととして扱われているけど、それ自体も歴史があるんですが、1970年代ぐらいからより強く浸透して。
10年ぐらい前に「それは本当にそうだっけ?」となっているという、ただそれだけの話。そこで僕がすごく重要だなと思っているのは、その資本主義の変化の中で、人類全体のリソースの使い方が少しずつうまくなっていると思うんですよ。
水野:なるほど。
深井:例えば中世で考えると、これは資本主義の前の話なので比べるべくもないんだけど。中世の時代に、才能ある人が社会のために活躍ができる環境があったかと言ったら、貴族でもない限りはないわけですよね。
水野:王国だから。
深井:そうそう。貴族とか王さまとかじゃない限り、何もできない。農民に生まれた人がめちゃくちゃ数学ができたとしても、なんにも起こらないわけです。
水野:なるほど。
深井:これが資本主義になって、少しは経済領域から参入できたり、四民平等みたいになったので、できることが少し増えてきた。
深井:それでも、例えば儲けることだけに突っ込み続けても、社会にはいろんな問題があるし。今、核戦争とかが起きたら、普通に全員ビジネスを続けることさえできないんだけど。
じゃあ「核戦争を防ごう」みたいなことに対して、優秀な人材のリソースがどれぐらい使われているかと言ったら、詐欺広告を作るほうにたくさん(人員が)使われているわけじゃないですか。
水野:そうね。
深井:みたいなのって、僕から見ると「リソースの使い方が頭悪いな」という感覚なんですよ。
水野:なるほど。
深井:リソースの使い方の頭が悪すぎてツッコミが入っているというのが、僕の認知。
水野:ポスト資本主義というものは(笑)。
深井:そう。だから、資本主義があまりにもリソースの使い方の頭が悪いから……。
水野:わかる。
深井:「それ、頭悪くない?」と言われている、みたいな。
水野:わかるわかる。なるほど。
深井:ということは、指標を2つぐらいにしないといけない。単一の指標でやるとそういう頭悪い現象が起こるので、今は多くの人が「それはやめようよ」みたいに言い始めている状態かなというのが、自分から見た時の現在の流れって感じですかね。
水野:「株主利益を大事にする」みたいな、1つのものに注力し過ぎなんじゃないかと。
深井:そうです。
水野:注力するところからきているじゃないかっていう。
深井:それ自体が悪いことではないんだけど、その単一指標を使ってしまうと、さっき言ったように人類全体のリソースの使い方がめっちゃ頭悪いことになっちゃったっていう。
水野:なるほど。ありがとうございます。
水野:そんなふうにちょっとずつ変わっていっている中で、東大総長になられた藤井先生。僕のイメージだと、やっぱりダイバーシティとスタートアップに力を入れられていると思うんですが、まずはポスト資本主義に対してどう捉えているのかと、その人材育成に関して思っていることを教えてください。
藤井輝夫氏(以下、藤井):はい。私は2021年に総長になったんですが、その時に基本方針として「UTokyo Compass」を作ったんです。その前提として考えていたのが、いわゆる物質的・経済的な発展だけを追求するだけでは、私たち一人ひとりのウェルビーイングは達成できないということです。今、そういう状況にありますよね。
まず、2021年はパンデミックの真っ只中だったというのがありますよね。それから当時からというか、もうそのずいぶん前から、気候変動を含めたいわゆるサステナビリティの問題が指摘されていた。
まさに「リソースの使い方が頭悪い」という話なんですが、世界的に見ても、資本主義そのものがこれじゃあ立ち行かないよねということは、もう言われていた時期でした。これに対して大学はどうすべきかということで、このような基本方針を作ったんですね。その中に「ダイバーシティ」とか、そういうものも入るんです。
2年前になりますが、入学式の時に「みなさん、スタートアップに1歩足を踏み出してみてください」と話しました。今の資本主義にはいろんな変遷がありますが、日本の場合はおおよそ明治期に外から「資本主義というものがあるんだ」といって入って来た。
(入学式の時に)その時の渋沢栄一さんのお話をしました。当時はいわゆる合本主義と言っていたわけですが、考え方としてはみんなの人手とかリソースを持ち寄って、本当に「社会を良くしよう」という発想で何かをやっていこうとしていた。その中で、株式会社ができたわけですよね。
藤井:それからもう1つは、その時は「国を作っていこう」という発想があったと思うんです。その視点を現代に変えてみると、そういう経済的・物質的発展のコンテキストの中で、社会の中に必要とされているケアが実はとっても多いけど、その多くは、いわゆる資本主義のシステムの中で見落とされている。これはなんとかしなくちゃいけない。
持続可能性という観点で言えば、もちろん一定の利益を生み出していくことも必要ですが、やっぱりそういった社会の中のケアを実現して、社会を良くしていくこともスタートアップの本来のあり方だから、そういうことを含めてぜひ考えてみてください、と。そういうことを入学式でお話ししたんですね。
水野:なるほど。
藤井:ええ。
水野:学生の変化もすごいって聞きましたけど。
藤井:そうですね。学生のみなさんも、「自分たちの手で社会を良くしたい」と考えている。それから、今お話ししたようなサステナビリティの問題に対して、ものすごくアウェアネスが高い方も多いです。
それからもう1つ、学生から「自分は研究室に残って博士課程に行き、そこで研究を極めたいんだけれども、起業もしたい。どうしたらいいでしょうか?」ということをよく質問されるんですね。
水野:へえ。
藤井:そういう時は、だいたい私は「どっちもやってください」と答えているんです。
水野:東大生が起業するんですか?
藤井:ええ、そうです。もうけっこう多いですよ。本当に多いです。
水野:多いんですね、へえ。
藤井:研究もちゃんとやって、起業もやって、どちらかに集中したい時はしばらくどちらかを休んでもいいと思うんですね。どちらかだけに決める必要もないし、自分が研究してそこから生まれたテクノロジーを実際に世に出すのも、とても大事なこと。それはそれでぜひ追求してもらいたい。
ということで東京大学の場合は、そういう起業したい人をサポートする仕組みやプログラムもいろいろ用意しています。例えば「アントレプレナー道場」というのもやっている。そういうかたちで後押しをしたいなと思っています。
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