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爆速成長スタートアップのグロースの軌跡 -RevComm編- ~あのスタートアップはいかに事業をグロースさせたのか~(全3記事)

爆速成長企業が最初にITリテラシーの低い人を採用したワケ 2年でARR10億円を達成したスタートアップの営業組織の作り方

とてつもないスピードで成長を遂げたスタートアップの裏側を見る、株式会社 リブ・コンサルティングのセミナー新シリーズ。第1回目はARR1億円を半年で、10億円を2年で達成した株式会社RevCommの代表・會田武史氏が登壇。最初にHR業界に営業をかけた背景や、営業のトークスクリプトを作らなかった理由などを語りました。

前回の記事はこちら

最初にHR業界に営業をかけた背景

會田武史氏(以下、會田):(スライドの)「どのセグメントを初期ユーザーと定めて、その選定方法はどのようなものであったか」については、我々が最初にやっていたのが電話の事業で、電話営業をしまくっていた。基本的に属人的な労働集約モデルになっていたわけですよ。

従業員数が多くてマーケット規模が大きいインダストリー、つまり金融・不動産・保険・人材だったんです。そこでそれぞれに全部ヒアリングしてみたんですね。

気づいたことは、不動産・保険・金融は利益率がめちゃくちゃ高い。でも謎に、市場にあるシステムを使っていない。Salesforceもあまり使っていなくて、不動産会社さんに「自社のシステムを使っていますよね?」と聞くと「あ? なんですか?」という。 

最近はもう変わっているんですけど、当時各社ともオリジナルのSIer(システムインテグレーション)を起用して、オリジナルのシステムを作っていたんです。我々のサービスはCRM(顧客関係管理)と連携して使うものなので、連携のスケーラビリティ(柔軟に適応できる能力)が担保されていなかった。

それ以外のマーケットコンディションはすごく良かったんですけど、そこが担保されなかったんですよね。まあ営業利益率は平均20パーセントぐらいなので、それだと自社のCRMを作る感じにもならないし。

一方、HR(人材系)インダストリーはわりと新興系で、中には台頭したプレイヤーもいて、「Salesforceを使っています」という人が多かったんですよね。Salesforce連携なら簡単にできるので最初に入る市場としてHR業界はいいなと。

かつHRはいろいろなインダストリーと接しているので、HRを起点として色々なインダストリーにアプローチできるんですよ。HR業界以外にもいろいろな需要はあるんですけど、今日はちょっと時間もあるので……。

権田和士氏(以下、権田):サイズ感でいうと、上から行くと決めていたわけ?

會田:そうっすね。

権田:やっぱりそこのブランドネームも含めて?

會田:はい。人材系の大手は、ザ・エンタープライズのお堅い企業じゃないんですよ。わりと新興系でメガベンチャーみたいな感じで、新しいシステムに対するアレルギーもあまりなくて入りやすかった。そこが良かったんです。「これはもうエンタープライズから行ったほうがいいじゃん」と。

「人材系大手が入れてます」と言ったら、他の人材企業もバーっと入れる。全国に数万社ある人材系の会社なら面も取りやすいという理由で、人材系にした感じです。

権田:なるほど。

営業組織の作り方

會田:(スライドの)3番目の「セールス組織の拡大に向けて、どのように整備したか」。基本的にはThe Modelのファネルです。いわゆるマーケティングのリードジェーン(見込み客の獲得)があって、ナーチャリング(見込み客を顧客に育てるマーケティング法)があって、SQLに転換して商談があって、CS(顧客満足度)があって。

最重要KPIは「Net Revenue Retention(売上維持率)」をいかに最適化するか。それはただ型を作っていくだけ。

権田:以前、曾田さんから初期フェーズにおける営業の仕組みについてExcelでまとめているものを見せてもらいましたが、めっちゃ細かいですよね。

會田:めちゃ細かいです。

権田:しょっぱなからめっちゃ細かく作ってるな~と思って。あれはまだARR1億円を超えたぐらいの頃だと思うんです。「こんなに細かく作り込んでやっているんだな」とけっこう驚いたんですけどね。あれは、會田さんが自ら細かく……。

會田:全部自分で。だから最初はあえてITリテラシーの低い人を採用したんですよ。

最初に採用した人は、G Suite(現Google Workspace)も知らなかったんです。「そんな人がいます!?」という。ザ・金融の富裕層営業をやっていた方だったんですけど、「G Suiteとは何ですか」という感じで何も知りませんでした。

でも、もしその人でも売れる仕組みを作れたら最強じゃないですか? 誰もがジョインできて、誰もが活躍できる仕組みを作っちゃうことになる。

そのためにはどんどん粒度を細かくしていくべきだった。「このタイミングではこういうプロセスがあって、うちのバリュープロップ(顧客価値)はここなんで、こういう内容でいきましょう」と、とにかく細かく設定していきました。

営業のトークスクリプトを作らなかった理由

會田:ただ僕が唯一細かく設定しなかったのは「何を話すか」なんです。

MiiTelが解決する課題、誰のどんな課題かはめちゃめちゃクリアにして、それをどのように解決するのかは箇条書きにしていました。でもトークスクリプトは一切作っていないんです。

「誰の、どんな課題を、どうやって解決するのか」の3つの方程式を解けば、起業、新規事業になる。この3つの解像度が高いことが重要で、それをどう言うかはある程度の地頭力があればいけるんですよね。

変にトークスクリプトを作っちゃうと、それに固執して機械的な営業になっちゃうから、売れるものも売れないしヒアリングもしない。なんだったらPMF5ぐらいで「こっちのほうがいいんじゃないか」というゼロベース思考もしなくなるじゃないですか。

だから僕はトークスクリプトを作り込まないのは正解だったと思うし、おすすめしています。

権田:なるほど。

成果の出た顧客獲得チャネル

會田:(スライドの)最後4点目、「初期に取り組んだ顧客獲得チャネルは何で、どのチャネルで成果が出たか」。やっぱりワードオブマウス(口コミ)ですよね。顧客に紹介してもらうのが重要です。

権田:そうですよね。

會田:初期カスタマー30社ぐらい、クローズドベータで獲得したのは全部Salesforceの「インサイドセールス分科会」でしたね。当時丸の内のオフィスでSalesforceの「インサイドセールス分科会」があったんです。毎回50社ぐらい集まって「うちはインサイドセールスで、こんなことをしてうまくいきました」というナレッジシェア会をしていて。

そこにどうやって入り込んだのかはよく覚えていないんですけど、入り込んで、ひたすら名刺交換しまくって。「いや、僕、営業のブラックボックス化問題を解消していまして……」「え、それは何ですか」と。

「うちも、ブラックボックス化に悩んでいるんです。ぜひ使わせてください」「いや、今ちょっとクローズドアルファなんで、クローズドベータになったらでもいいですか」と言って。そこにいる人たちはアーリーアダプター(早期導入者)だから、めっちゃ情報交換するんですよ。ワードオブマウスで広がっていった感じです。

権田:ワードオブマウスもそうですし、最初にコミュニティにうまく入って、結果そこでマーケティングセールスができたんですね。

會田:そうですね。

権田:それがアーリーアダプターのコミュニティだった。イノベーターコミュニティだったんですね。

マーケコストは予算を増やすと雑になる

會田:今思うと、少なくともARRが1億円の時にはマーケ費用が月5万円から10万円でしたね。

権田:すごいっすね。

會田:3~5億円ぐらいの時には100万円から200万円。10億円になって一気に増やして失敗した感じです。

権田:そんなことがあったんですね。

會田:はい。相当エフィシェンシー(効率)が低くなっちゃって。マーケコストは予算を増やすと雑になるんですよね。しかも権限委譲し始めたことが失敗でした。

ビズリーチの南(壮一郎)さんは僕の恩師でメンターですけど、彼も同じことを言っていました。マーケコストは増やせば増やすほど、ざるになって雑になるから増やすべきじゃないと。「特にBtoBなんていらないだろ」という考えですね。

だからマーケはけっこう沼るんですよねぇ。僕は今まで上場SaaS、未上場SaaSも含めていろいろな創業者に聞きましたけど、「(マーケコストは)うーん、使って月数千万円前半だなぁ」と。

ランチェスター戦略で強者で広域戦や確率戦の話になると、広告宣伝費を年間2桁億円以上使ってブランド認知度を上げる、決裁者の認知度を上げて承認を得やすくするという話が出てくるのかなと思いますね。

権田:會田さん、ランチェスターは、よく……。

會田:ランチェスターは大好きです。

権田:大好きですよね。全体のシェアじゃなくて、さっきのコミュニティの話もそうですけど、周辺シェアというか。

會田:そうです。

権田:その業界の全員がRevCommやMiiTelを知らなくても、周辺の人たちが知っていて話してくれればいい。それを意識しながら広げている感じですか。

會田:そうなんですよ。だから、いかにノルマンディー上陸作戦をやるかなんですよね。橋頭堡(きょうとうほ:足掛かり)はどこなのか。最初に「ここが肝だよね」を見つけるのは超重要だと思います。

ただ「なんとなくこのインダストリー」じゃなくて、インダストリーを決めた後も上から行くのか下から行くのか。地域としてはどこなのか。事業モデルがあるのか、SLG(営業主導の成長)なのかPLG(プロダクト主導の成長)なのかによって、実は同じインダストリーや規模でも売り方がぜんぜん違うことがあります。

そこの解像度を上げて橋頭堡を作りにいくのが、めっちゃ重要だと思いますね。

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