2024.10.10
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「次世代の、起爆剤に。」をミッションに掲げる日本最大級のスタートアップカンファレンスIVS(インフィニティ・ベンチャーズ・サミット)。2023年は京都で開催されました。今回はサイバーエージェント 藤田晋氏、ROXX 中嶋汰朗氏、ビビッドガーデン 秋元里奈氏、ミラーフィット 黄皓氏、そしてUPSIDER 宮城徹氏が登壇したセッション「スタートアップ経営塾」の模様をお届けします。Major7th代表の丸尾浩一氏のモデレートのもと、「集中」と「分散」を繰り返す組織特有の特徴や、起業家のメディア活用への考え方などが語られました。
丸尾浩一 氏(以下、丸尾):続きまして、宮城さんお願いします。
宮城徹氏(以下、宮城):2002年の転機となった経営合宿で決められたことが他に何だったのかをうかがいたくて。
中長期で人を大切にすること。その手段として新卒文化に投資するみたいなことを、先ほどうかがったと思うんですが、それ以外に起点となったミーティング、もしくは当時の組織をうまく中長期的に作っていく時に注意されていたことをうかがいたいと思います。
背景として今、100人の組織から数百人の組織に1、2年で急拡大していく最中でして。正直私以上に数倍も優秀で経験のある方々がどんどん入ってくる中で、物事を任せていく。
そうするといい意味で権限委譲、ネガティブにいくと完全に方向性を任せることになると思っていて。その時に組織の引力というか、グリップを強めていくことが重要になってくるのかなと、経験が浅い中で思っていまして。もしそういうことを2002年前後で考えられていたら、うかがいたいなという質問です。
藤田晋氏(以下、藤田):僕は会社経営というか、すばらしい会社を作ろうと思ってやってきたので、一番重要なのは一貫性だと思っています。
2002年の合宿の時に、一貫性が取れた話がスイスイ決まっていったんです。中長期で経営する。そのために中長期で働いてくれる社員を大事にする。社員を大事にしているから、大型の買収をして、突然外からたくさん上司がくるといったことはしないし、大きなヘッドハンティングもしない。
人も事業も自分たちで育てる。農耕民族みたいに新卒で採ってイチから人も育てるし、事業もゼロから自分たちのアイデアを形にしていく。このように、いろんなものが一貫性を取れたんですよね。
藤田:ちょっと話が変わりますが、権限委譲みたいなものは、我々もずっと繰り返しているんですけど、「組織とは集中と分散を繰り返すものだ」とは最初から頭にありました。
ホールディングス化みたいにして分散させれば、個別の事業の目標がはっきりして採算もはっきりしていくんだけど、それをやりすぎると今度は縦割りになって、無駄が増えたり、会社全体でのシナジーが弱くなっていく。
そうするとまた本社に集約するんだけど、また同じことが起きる。その繰り返しなので、その中で会社を大きくする考え方をしているという感じです。
宮城:そのサイクルは決まったサイクルですか? それとも時によってぜんぜん違うんですか?
藤田:体感値で無駄がすごく増えて、縦割りが増えてきたなと感じたらそうします。それぞれの個別採算が見えづらくなってきて、みんながお互いに依存し合っていると思ったら分裂させたり。それは感覚値で変えています。
それを可変なものだとしておかないと、1回「ホールディングスです」とすると戻すのも大変なので、サイバーエージェントはホールディングス化をさせていないんです。実際の会社はホールディングみたいになっているんですけどね。
宮城:そういう波があるものだという前提でやっていく。なるほど、ありがとうございます。
丸尾:どうもありがとうございました。いいお話でしたね。
丸尾:それでは、黄さんお願いします。
黄皓氏(以下、黄):藤田社長と私は、けっこう対極なのかなと勝手ながら思っていまして。採用に活きてくる範囲でということですけれども、あまりメディアに積極的に出てみなさんに発信をされていない印象です。
私なんかは自分の知名度が上がることで、プロダクトの認知が上がったりということで、さんまさんと一緒に土下座してみたり。浜ちゃんにぶん殴られてみたりと、せっせとやっているんですけれども。
藤田社長から見た時に、現代の起業家のメディア活用は、どういうバランスで取っていくのがいいとお考えなのかをおうかがいしたくて。というのも、昔と違ってSNSという個人がメディアを持てるようになったので、その中で今思えばこういう使い方もあるのではないかなという、藤田社長流のお考えがあれば教えていただきたいなと思っています。
藤田:それはすごいジェネレーションギャップを感じますね。昔、すごくメディアに出まくっていた時期があったので。とにかく会社を始めた頃は出た人が注目されて、雑誌にも掲載されて、人材も採用しやすいし、お客さんからも声がかかるし、投資家からも来るし。当時は堀江(貴文)さんの次ぐらいに出まくっていましたよ。
黄:昔ですよね。
藤田:それも活用して、さっきおっしゃったように会社の宣伝、採用、投資家へのアピールも全部やっていたんですけど、それ以外に、会社が始まってすぐ、ホームページに今のブログのようなベンチャー企業日記を書き始めたんですよね。
社員も見るし、外に向けて発信するのでかなりフェアに書かないといけない。それをずっとやってきて、途中からブログに変わって、今はSNSの時代になった。やはり文章を書く能力はすごく大事だと思います。
昔の社長は朝礼で声を張り上げてみんなに方針を説明していたけれども、日記に書けば何とかなるので。今は、YouTubeも出てきたので、書けなくてもしゃべれればいい時代にもなっている。
メディアを活用して意思統一するのは経営者の重要な役割です。方針が変わったら、なぜ変わったのかの背景をタイムリーに適切に発信できるものがある時代なので、当然活用した方がいいですね。
ちなみにメディアに出まくっていた頃からそうですけど、出ない方がいいという社長もいるんですよ。これは確かに業態によってはあったり、何か出たことで叩かれた時に会社に迷惑がかかるだろうという思いはあるんですけど。
それでも僕は出た方がいいなと思う派です。後ろめたいことがなければですけど。
黄:ありがとうございます。意識されていたバランスは、業務に支障が出ない範囲でなのか、積極的に活用する方なのかで言うと。
藤田:少なくとも自分たちが何者で何を目指しているのか、理解してもらわないといけない段階では、社長が取り上げられる価値がある人であれば出た方がいい。堀江さんは、途中からそれに気づいてめちゃくちゃやっていました。
黄:そうですよね。ありがとうございます。勉強になりました。
丸尾:これもみなさん大変参考になるお話ではないかと思いますね。あと時間が2分ということで、本当ならモデレーターはここで切るところですが、せっかくこれだけのみなさんに集まっていただいているので、1問だけ質問をさせていただきたいと思います。どうぞ。
質問者1:はじめまして。ウェブマンガを作っているソラジマの前田と申します。さっきの中嶋さんの質問につながるところもありますが、持続する会社という意味で、21世紀を代表する会社を作るのは、終わりがないように見えて終わりがある目標にも思えていて。藤田さんとしてそれを達成したあとで、何をされる予定なのか知りたいです。
藤田:確実に終わりが来るのは22世紀になった時。それは「変えてよ」という感じではあるんですけど。もともと「自分がこうなりたい」「この事業をやりたい」というよりは、パブリックカンパニーを作るつもりでした。だから上場企業歴も、もう23年やっていますけど、何のストレスもないですよ。
パブリックカンパニーを本当にやるには、創業者に依存しているのはおかしいので、ちゃんと引き継げる状態を作ろうと、今すごい一生懸命やっています。引き継いだら、あとは見守っていこうと思っています。
質問者1:ありがとうございます。勉強になりました。
丸尾:ということで、ちょうど時間になりましたが、もう1個行きます? じゃあ、さっきから気になって仕方がない、コスプレの方に。せっかくなので自己紹介も。
質問者2:今、WEB3とかNFTゲームの業界で、ムカキングという名前でインフルエンサーをやっています。よろしくお願いします。
自分も新しい業界で自分から発信し始めて、変な格好をしているのであれですけど、自分のやるべきことを理解してもらえない、ある意味の孤独感みたいなのを感じるのをちょっとわかってきて。
藤田さんがトップに立って、人から理解してもらえない状態が何年も続いた中で、どういうモチベーションで自分のプロジェクトを進めていったのか。その感覚が知りたいんです。数年も、孤独すぎるじゃないですか。何でそれをできるのか、感覚が知りたいです。お願いします。
藤田:そうですね。その雰囲気は、ちょっと私も理解できないんですけど。
質問者2:ああ、そうですよね(笑)。
藤田:さっき25年増収のグラフを出してドヤってしまいましたけど、やはり自分だけあれを思い描いてやっても、理解してもらえない。
『起業家』という本で、「孤独、憂鬱、怒り、それを3つ足してもはるかに上回る希望」という言葉を、THA BLUE HERBというアーティストの言葉を使って描いたんですけど。孤独だし、腹が立つこともあるし、憂鬱なんだけど、自分だけが信じてやりきるしかないという。そのままがんばってください。
質問者2:はい。がんばります。めっちゃ感動しました。
丸尾:では、お時間となりました。藤田さん、お忙しい中、今日は本当にありがとうございました。最後に藤田さんと登壇者のみなさんに拍手をお願いいたします。ありがとうございました。
(会場拍手)
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