2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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長谷川聡氏(以下、長谷川):こんな感じで一気にテンションが上がりましたけど。児堂さん、次、受け取ってください。よろしくお願いします。
児堂義一氏(以下、児堂):はい、こんにちは。児堂です。今は人材育成の会社パラレルワールドを創業しまして、管理職やリーダーの育成を行っております。今日のメインテーマは、村田製作所時代の経験になりますので、そういったところをちょっと最初にお話したいと思います。
ちょうど30代の時、携帯電話向けの高周波デバイス事業をゼロから立ち上げることになりました。のちほどまた、そこらへんのいきさつはお話ししますが、10年かかって40億円ぐらいまで持っていきました。
村田製作所は、今1兆8千億円ぐらいの商いをしていますが、5,000億円ぐらいが、その時に始めた通信事業の流れになります。
それから旧ユビキタス社と業務資本提携をしました。長谷川さんがユビキタス、私が村田製作所の責任者でした。
村田製作所は電子部品、ハードの会社で「村田の中にソフトウェアの部隊を立ち上げよう」と、私が社内に初めてソフトウェア開発部を作りました。
その時ユビキタスさんと組んで、たくさんの会社にデジカメ用のWi‐Fiを採用していただき、けっこうデファクトになったんじゃないかなと思っています。そのほか、米国のベンチャーを買収する経験もしております。
30代で事業の立ち上げをしていた時、私は商品開発の立場で参加していたんですけど。生産技術(要は作り方や設備)を担当しているすごい先輩がいて、その方が「10年間、一緒にやるよ」と言ってくれたんですね。
分野の違うパートナーと組むこと。今考えると、とてもすごかったなと思っています。私が商品サイドから「こんなことをできるようにしてよ」と、いろいろ無理難題の話をしても、(その先輩は)きちんと実現してくれました。
1人だけでなにかがんばっても、なかなか難しいところがあります。ぜひすごいやつを見つけて組んでやっていただけるといいんじゃないかなと思います。
児堂:それからわからない時は、当然専門外は専門家に頼む。普通の会社経営でも一緒ですけど、本当にわからない時は、地球の裏側まで飛んでいく、明日飛んでいくぐらいの勢いで、(専門家を)頼りにするのが、時間短縮と成功につながるんじゃないかなと思います。
ぶっちゃけ、例えばX社の方だと「これを聞きたい」と言うと、もう2、3日で来るぐらい、そんな活動をしていますね。
それから「1社でもいい。強烈な引き合いを獲得する」ということ。30代で多層基板をプロモートしていた時、いろいろな会社を訪問してPRしました。
村田製作所の看板もあると思いますけど、「これを作ったんですけど」と持っていくと、みんながたいてい「それはすばらしいね」と言ってくれるんです。でも、それを信じて事業になると思ったら、大きな勘違いで、それではまったく事業にならない。
ちょうどその時、スウェーデンのエリクソン社が、「それを使わないと、自社の携帯電話の将来はない」と言ってくれて、いろいろな便宜を図ってくれました。
「携帯電話の中に2つのシステムを入れないといけない」と携帯のメーカーが困っていた時だったので、(エリクソン社は)非常にピンときたんだと思います。エリクソン社が価値を見つけてくれて、エリクソン社への受注で事業を大きくすることができました。
デファクトスタンダードとは、「みんながいい」と言ってくれてデファクトではなくて、こういうむちゃ強烈なファンがいて、そのメーカーが製品化することで、みんながまねをし出すのね。みんながまねをするから、同じ部品を使うようになるんですね。
これも余談ですけど、自社内の評価としては、みんな「そんな高いものが売れるわけないだろう」と言っていたんです。価値を見出してくれると、あんまり値段は関係なく使ってくれるもの。自信を持っていい物を作って高く売ることを、やっていただきたいなと思います。
児堂:最後に、大企業とのコラボを考えますと、スタートアップのみなさんは当然、新しいアイディアや独自技術を持っていると思います。驚きやおもしろさ、熱意を持って伝えてくるのが普通だと思います。企業側にもやりたいことがあります。それがずれていればコラボになりません。また企業にはいろいろな部署があるので、本当にマッチする部署に行かないと、コラボにならない。
ぜひ自分たちの商品のすばらしさと、「どこが使ってくれるだろう」という視点で考えて、いいところ(マッチする場所)を見つける。とりあえずいろいろなところに行ってアピールするのではなくて、「ここじゃないかな」というシナリオを作ってアプローチをしていくことが大切です。
技術が不完全でも、企業側には技術者がいっぱいいるので、たいていの場合は助けてくれます。ただ、あんまりいい加減だとすぐ打ち切りになると思うので、時間短縮になるぐらいの技術力は必要かなと思います。
はい、私の言いたいことは以上でございます。
長谷川:ありがとうございます。児堂さんは、ちょうどコロナ禍が始まった年に定年退職されて。その前の年に2人で飲んでる時に、「もう定年ですよね、どうするんですか? あと何年ぐらい、会社いるんですか?」と言ったら、「もう辞めて、自分で会社を起こす」と。まさに60歳でスタートアップされました。
実は今、当社の社員の課長育成プログラムをやっていただいていて、社員がすごく成長しています。みんな管理職になるのを嫌がる。最初はマネージャーになるのをすごく嫌がると思うんですけど。それを社内で教えるのは難しくて、外に頼むことで今うまくいっています。
長谷川:次にいく前に、こちらの女性をご存じないという方はいらっしゃいますか。手を挙げるのが怖くても挙げてくださいね。知らない?見たことはないですか。
みなさん、けっこうご存じなようですね。製造業ではないんですけれども、新規事業をいろいろ立ち上げてきた経験があるので、今日は一緒にご登壇していただいています。じゃあ、若宮さん、よろしくお願いします。
若宮正子氏(以下、若宮):若宮正子でございます。どうぞよろしくお願いいたします。私は1935年生まれですので、みなさんとはぜんぜん違った経歴です。当時は、女性で高卒は当たり前。たぶんみなさんは大学に行っていらっしゃると思うんですけれども、私は高卒です。
当時は大卒の女性、四大卒の女性は採用しなかったんですね。当時の結婚年齢が24歳ぐらいですから、22歳だともう仕事を経験する時間もないということだったらしいんです。本音は「女は学問をすると生意気になっていかん」という、そんな時代でございました。そんな中私は、高校を卒業してから大手の都市銀行、旧財閥系の銀行に勤めました。
そこで気がついたのは、高卒の女の子は個別管理がない。一束いくらみたいな扱い。ただ、実際にみなさんもご存じのように、銀行は昔から店頭、内部事務など、女性が非常に重い責任を持ってやっていました。ただ、まず(女性が)管理職になることはまったく考えていない、そんな時代だったんですね。
若宮:本部に在勤をした時にもそういう立場だったんですけど、逆に期待されていない人間はすごくいいんです。
例えば、「これのコピーを取って。会議に10冊使うから」と言われ、コピーを取りながらチラチラっと見る。「ちょっと上層部、こんなことをやっているんだ」と、みんなわかっちゃうわけですよ。
それから「会議室にお茶を出しなさい」とお茶を出していると、「あ、なんだ。まだ、いまだにあの問題は解決してないのね」なんて。時々、お茶もこぼしましたけど。そんな大企業での現役時代を過ごしてまいりました。
三菱銀行の中でもそうやってるうちに、会社の問題点がわかってきました。なんでしょう、まだ製造業の高度成長期の日本製品への神話が収まっていない。世の中はどんどん変わっているのにそのままでいる。「あ、これは、ちょっと意識が古いんじゃない?」とか。
それから、既存のお客さまにお金をお貸しするので精一杯。でも世の中が変わっていれば、もっと新しい需要がある。そこに投資しなければいけないのに、いわゆる審査という、上から目線で企業を見ている。世の中が変わっていることに気がついていない。「あ、これはなんとかしなきゃ」と。
その時に私が着目したのが、いわゆるマーケティングなんですよね。企業はたくさんあって、その中で税金を払っている企業、高額所得法人名簿は公開されているものですから、税金から企業を捕まえていったわけです。
「あ、こういう企業がだんだん新しく増えてきているんだわ」「こういう企業は意外と儲かっているんだ」というのを、税金の面からチェックしていきました。そもそも儲からないところは、法人(税)を払っている場合じゃないわけですから。そんなことをやっていたのが1つです。
若宮:それから銀行は、お客さまから預金をいただいて、それをお預かりして貸す。いわゆる資金収益というんですけど、利ざや(借りたお金の金利よりも高い金利で貸し出した場合に得られる利益)が資金。
それ以外に振込や、当時まだ手形がありましたから手形をお預かりする仕事もあったわけですね。いわゆる役務収益というんですけど、儲からないお荷物という時代が長かったわけです。ただ関係あるお客さまのためにやっていた。
ところが、コンピューターが出てきたら、時代が変わってきちゃったんですね。お荷物だって、機械化すればお荷物じゃなくなるんだという時代になってきた。逆にそれを使って、役務収益というかお金を稼げないか。いろいろ考えついちゃいました。
私ね、今でもそうなんですけど、いろいろと新しいことを思いつくのが好きなのね。100作れば99はアホらしいようなものでしょうけど、たまにはいいことも言うらしいんです。
どこの会社でも、業務改善提案とか提案制度がありますよね。ああいうのにせっせと投稿していたんです。そしたらある時、「企画開発部のようなセクションに転勤しなさい」と言われたんですね。早く言えば高卒の女の子のポストではなかったんですけど、そこに転勤になって。
上司はわりと理解があって、私にどんどん仕事を与えてくれた。それから、いわゆる益務収益に気がついたんです。
若宮:それともう1つは、今日は製造業の話らしいですけど、製造業ばかりじゃなくて、サービス業がだんだん台頭してきた。自動車販売は(車を)売ってばっかり。今度は自動車販売というディーラーさんが出てきて、さらにそれを売らなきゃいけない時代が出てきた。
それとお客さまの取引の安定化。いちげんのお客さんだけで、明日は来てくださるかわからない。お客さまを定着化して組織化する動きがあちこちで出てきた。それを安定させるために、銀行が間に入ってお金のやりとりのお手伝いをする。
当時、便利な公共料金の口座振替が出てきた。みなさんも銀行の口座振替にしていらっしゃると思うんですけど。あれがあるから安心できる。毎月コンビニ払いだと、「今月は忘れていた。電気が消えちゃった」となったら大変です。口座振替でお客の定着化を図る。
ただ(もともと)口座振替は、それぞれの銀行だけがやっていました。地元だけでやっている時は良かったんですけど、全国展開、もっと広範囲で口座振替をやると、なんとか銀行だけではできないことが起こる。エンドユーザーのお客さまが「どこの銀行と取引があっても口座振替ができるように」と考えついて、他行間口座振替を商品化した「ワイドネット」を作ったんです。
早く言えば、FinTechの先駆けみたいなものだと思うんですけど、「ワイドネット」という形で商品化をすることができました。それは今も収益が上がっていて、ポスト開発にも役に立っていると言われました。
若宮:商売としてのベンチャーもあると思うんですけど、もう1つは社会のベンチャー。福利や介護、そういう世界でもベンチャーはなければいけないと思うんですね。
今、私は、一般社団法人メロウ倶楽部という高齢者の交流サイトをやっています。もう300人くらい会員が集まっています。これは海外からも注目されていて、昨日もシンガポールのテレビ局が「日本の高齢者対策の中で唯一ユニークなのがそこだ」とオンライン見学に来てくださいました。
ベンチャーとは商売だけではなくて、福利厚生や教育などいろいろな面で出てくるべきだと私は思っております。
最後にもう1つは、私個人のベンチャー。趣味もベンチャーにしようと。今着ているブラウスですが、Excelアートと言います。Excelの線の塗りつぶし機能を使って作りました。こういう服や縁飾りも作っています。
今までどおりの趣味もいいけれども、新しい趣味も創造していくといいなと思っております。ちょっと長くなってごめんなさい。
長谷川:若宮さん、ありがとうございました。予想どおり完全に時間オーバーしてしまっています。ぜんぜん時間に収まっていません。
ちなみにご存じの方もいらっしゃるかと思うんですけど、若宮さんはWWDCに呼ばれて、ティム・クック(ティモシー・ドナルド・クック)にハグされて。最近はサティア・ナデラやサンダー・ピチャイが来ていて、そこの席に行くんですけど、いつも完全にオーバーランしているらしいです。3分と言われているのに、15分くらい、1人で話をしているそうです。
さっきお話しいただいた口座振替ですが、当時は大蔵省があったんですけど、銀行は大蔵省の管轄で「都市銀行は都市銀行、地銀は地銀の口座からしか引き落としができない」という制約があったんです。
若宮さんはそこの制約に目をつけて「子会社を作ったら大蔵省の管轄じゃなくなる」「ノンバンクにすれば事業できるよね」と。そこに持っていけば、全国の銀行から口座引き落としをしてもいいことになるんですね。
口座引き落としをするために口座を作ってもらうと、給与口座ではないケースがあるので、引き落としの確率が下がるんです。さらに給料をもらってすぐに引き落としを設定していたので、引き落とし率が良くなり、競合と比較しても完全に優位な立ち位置に立てたんですね。実は(若宮さんは)そこまで考えてやられていました。
みなさんの中でも、ウェブサービスを利用される方がいると思うんですけど、サブスクの利用料は毎月だったり、年に1回だったり、引き落としされると思うんです。確実に引き落としをできるかできないか。
今はクレジットカードがあるから関係ないかなと思うんですけど、当時はカードがない中で、いかに回収率を高めるか。どうやって規制をかいくぐってビジネスを考えるか。これは、もしかしたらみなさんがされていることと、共通しているんじゃないかなと思います。
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