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【三菱UFJ信託銀行共催】「冬の時代」を乗り越えた上場CFOが語る 上場準備で直面したリアルな課題(全4記事)

ヒトの組織や臓器を作る「細胞版3Dプリンタ」の技術で上場 スタートアップCFOが語る「再生医療市場」の未来

三菱UFJ信託銀行株式会社と株式会社FUNDINNOによる共同開催で行われた、上場準備企業向けの「『冬の時代』を乗り越えた上場CFOが語る 上場準備で直面したリアルな課題」のセミナーの模様をお届けします。2022年12月期に上場を果たした、株式会社サイフューズ 取締役CFOの三條真弘氏が登壇。スタートアップにとって「冬の時代」と言われる今ならではの、上場までの道のりで経験したリアルな課題について語られました。本記事ではサイフューズの特徴的な事業内容について解説されました。

冬の時代を乗り越えた上場CFOが語る、上場準備で直面したリアルな課題

司会者:それでは定刻になりましたので、セミナーを始めさせていただきたいと思います。本日会場にお越しのみなさま、また、Zoomを通してご参加いただきましたみなさま、本当にありがとうございます。

「MUTB×FUNDOOR共催セミナー 冬の時代を乗り越えた上場CFOが語る 上場準備で直面したリアルな課題」という題で、本日は株式会社サイフューズ 取締役CFOの三條さんにお越しいただいております。三條さん、本日はよろしくお願いいたします。

三條真弘氏(以下、三條):よろしくお願いいたします。

司会者:簡単に自己紹介をお願いしてもよろしいですか。

三條:本日は貴重な機会にお招きいただきましてありがとうございます。画面越しですけれども、サイフューズの自己紹介をさせていただきます。株式会社サイフューズという、13年目の再生医療のベンチャー企業・スタートアップでして、2022年12月1日に東京証券取引所のグロース市場に上場しました。

後ほどプレゼンのお時間を頂いていると聞いていますので、そちらでサイフューズの行っている研究開発や技術開発等についてご説明させていただきます。

司会者:三條さん、ありがとうございます。本日はもう一方ゲストに参加していただいております。詳細は後ほど第二部でご紹介差し上げますが、お名前だけ、蔡さん、お願いいたします。

蔡氏(以下、蔡):三菱UFJ信託の蔡と申します。自己紹介はまた後ほどとさせていただきたいと思います。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

三條:よろしくお願いいたします。

(会場拍手)

司会者:会場のみなさま、拍手をありがとうございます。励みになります。本日は二部構成で予定しております。第一部は、先ほどご紹介させていただきました三條さんに、調達のポイントというところで、本当に上場したてのCFOからの生の声をお届けさせていただきます。

第二部は少し長めにセッションを取っておりまして、パネルディスカッション形式で三條さんとMUTBの蔡さんでお話ししていただく。そういったような流れでいきたいと思います。

最後に本当に拙い司会で恐縮なんですが、私、FUNDINNOの向井が本日の司会を担当させていただきます。約1時間とちょっとですが、何卒お付き合いいただければと思います。よろしくお願いいたします。

上場して3ヶ月、「景色」が変わった

司会者:さっそくですが、三條さんのプレゼンテーションに入ってまいりたいと思います。三條さん、上場されてまだ数ヶ月だと思うんですが。

三條:3ヶ月ぐらいですかね。

司会者:そうですね。会社の状況はいかがですか?

三條:上場する前から想像も含めていろいろ準備もしてきましたし、いろんなことがありましたけども、実際に上場してみると、本当にいろいろな方々からいろいろなお声を頂戴しました。すごく責任感も増して、会社の全員がやはり「上場する」ということで1つ、大きな変化を感じているのではないかと思います。

サッカー日本代表の監督がおっしゃっていましたけど、やはり「景色」が変わったのかなと。それもだいぶ大きく変わったので、いろいろな期待に応えていかなければいけないという、気が引き締まる毎日が続くあっという間の3ヶ月間という感じでしたね。

司会者:企業の見られ方も随分変わってきますよね。

三條:そうですね。

司会者:承知しました。それではあらためまして、三條さん、よろしくお願いいたします。

三條:はい、よろしくお願いいたします。私のほうから本日の「MUTB×FUNDOOR共催セミナー」。タイトルにありますIPOの話にふれながら、まず株式会社サイフューズの紹介をさせていただきたいと思っております。

最初は「細胞から希望をつくる。」とありますけれど、これはサイフューズのビジョンになります。我々は、人間の体の中にあるヒトの細胞を材料に、医療用向け、あるいは様々な研究開発向けのヒトの臓器や組織を作っているスタートアップになります。

会社としては、2010年の8月に九州の福岡で創業しました。本当にスタートアップという感じで、最初は3人、5人というところからスタートして、現在20数名の規模になりました。昨年末12月1日に証券取引所へ上場をして、その後すぐに期末を迎えて、本年で13年目のそこそこベテランのスタートアップです(笑)。

昨年には、福岡のオフィスビルの中にラボ施設と、東京に本社オフィスと研究・製造施設が一体となった新施設を自社の管理施設として構築しました。

大きな成長が期待されている「再生医療」の市場

三條:そして、いちばん大事な、魅力的な会社の「技術」。世界でここしかない、我々しか持っていない技術、我々しかできないものづくりをやっているというところが、一番の特徴になります。

具体的には、人間の体の中にある細胞だけから、人の手、例えば特定のお医者さんが特殊な治療をというような話ではなくて、「バイオ3Dプリンタ」と呼ばれる細胞版の3Dプリンタを使って、ヒトの組織や臓器を作り、これを患者さまへ移植します。

冒頭からいきなりこういうかたちで飛ばしてしまうと、初めてお聞きになった方々だと、ちょっとSFのような感じがしてしまうかもしれませんが(笑)、この後、実際にこういったものづくりが、患者さまや、医療の現場に届く未来が近づいてきているというところをご紹介させていただければと思っています。

あらためて、我々が今事業展開をしている領域は、細胞医療あるいは再生医療と呼ばれる、従来の医薬品とは別の新しいモダリティと言われるような分野になっております。

「再生医療はこれからの大きな成長が期待されている市場です」という話をお聞きになったことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、2022年の年末の時点で、厚生労働省の承認を受けて、通常の保険証を掲示して再生医療等製品による治療を受けることができるものは、まだ17品目というのが日本の現状です。

年が明けて、今2品目が承認を受けて19品目ではあるものの、世界を見渡せば、すでに数百という製品が出ているような分野ですので、当社では、新しい製品の開発を進めて、これまでにない革新的な製品を日本発で世界に広げていくことに取り組んでいます。

これまでに製品として出ているものは、「医薬品」のような、注射の中に細胞をを入れて、それをヒトの体に投与するものや細胞をシート状に敷き詰めた、細胞シートを、パッチのように貼付するようなものがあります。

このような1Dや2Dの製品というのは今まであったんですが、さきほどご説明させていただいたような、ドナーを介して臓器を移植するのではなくて、患者さまご本人から採取した細胞だけから臓器を作製して、再びご本人の体に戻すという移植臓器は、まだ世の中には存在していません。

我々はこれを従来の1Dや2Dの製品とは異なる「3D細胞製品」と呼んでおり、従来の製品と違う革新的な再生医療等製品として、厚生労働省の承認を取得した上で、この数年で患者さまにお届けをしたいという想いで、現在、製品の臨床開発に取り組んでいるというステータスにあります。

“混ぜ物”を使わず、細胞だけから臓器を作る

三條:少しだけ、どういった技術でこのような臓器が作製できるのかご説明いたします。イメージとしては、液状の中でふわふわと細胞が浮いているような状態にありますので、これらをx、y、zで言いますとz軸のほうに積み上げて立体化させることは技術的に困難とされてきました。

これに対してサイフューズでは、細胞が凝集して団子状になった塊(スフェロイド)をプリンタを使って積み上げる、非常にユニークな技術を使っています。これだけ聞くと特殊な技術に聞こえますが、そのコンセプトは非常にシンプルです。

当たり前ですが、体の中の組織・臓器は細胞だけでできています。したがって、立体化させるために、例えば接着剤のような材料や、ゲルのようなものを使って固めるというようなこと

ではなく、体の中にあるのと同じような状態で、人工材料を用いたり、遺伝子操作のようなことをすることなく、細胞だけから臓器を作ると。そこが一番大きなポイントになっています。

他の技術としては、今申し上げたように人工材料と混ぜ合わせる技術などもありますが、我々はこの部分を、今までの従来のやり方とは違うやり方で立体的な臓器を作製し、研究開発を促進させて、技術を磨きながら、製品のものづくりを進めてきたという経緯があります。我々がこれまでの研究開発で磨いてきたこの技術であれば、あくまで理論上はということになりますが、体の中のあらゆる臓器を作ることができるところまで、研究開発は進んでおります。

実際に、今後数年以内に上市し医療現場へお届けすることを目指して開発に取り組んでいる製品が、3つございます。

神経が断裂してしまった方の神経をつなげて再生させるこれまでにはない再生神経や、血管の透析用に使っておられる透析患者さま向けの血管は、シリコンチューブのような人工の材料を使っているものに代わるような細胞製の血管。

あるいは、軟骨のように血流がないものというのは、何もなければ再生することはありません。半月板や軟骨のように、一回壊れてしまうと戻らないと言われているような部位であっても、再生させる可能性を有する製品の開発が進んでいます。

このうち、指先の神経が断裂してしまって、神経の機能を失ってしまった患者さまからご提供いただいた細胞を材料として、バイオ3Dプリンタを用いて、患者さま自身の神経を作ります。

そして薬を投与などするのではなくて、作製された神経を実際に、移植というかたちで患者さまにお戻しをして経過を見るという「臨床試験」と呼ばれる開発を現在進めています。

以上のように、主要なパイプラインと呼ばれる各開発品をパートナーであるアカデミアのみなさまと共に、実用化に向けて開発を進めている段階にあります。

「バイオ3Dプリンタ」を活用した、多面的な事業展開

三條:また、我々としては、このようにして大切に磨いてきた技術を、必ずしも再生医療だけではなくて、創薬支援などの他領域で展開したり、実際に組織臓器を作っている3Dプリンタを様々な研究開発に使っていただくデバイスというかたちで、再生医療以外の領域に向けて多面的に展開していく事業戦略を取ってきました。

「肝臓」と書いてありますけれども、実際には移植するような臓器とは別に、体の中のヒトが持っている機能と同じものを有しているという、ミニ肝臓なるもの。あるいは腸の内側を再現したようなヒダヒダですね。腸の吸収などの機能を持っているようなミニ小腸であるとか。

皮膚は比較的わかりやすいかもしれません。化粧品のパッチテストのようなものに使えるような、ヒトの3D皮膚のようなものを作っています。このように再生医療向け以外の、医薬品、食品、化粧品などの隣接領域に役立てられるような製品開発についても進めてまいりたいと考えています。

プリンタなどのデバイス領域も非常にユニークです。ロボットがプログラムに従って臓器を作るというと、これまたSFのような話ですが、これは必ずしも研究用のものだけではありません。実用化に近いところで製造を行うことのできる臨床用のもの。あるいはその先の商業用のデバイス開発も進めていまして、我々のエンジニア部門では、常に装置開発のみではなく、技術応用、新技術の開発に取り組んでいます。

我々としては製品としてプリンタを販売するというかたちで、基盤技術、我々のプラットフォーム技術を普及させながら、様々な領域で事業を進めてきました。

スタートアップにとって「パートナー」の大きな意義

三條:以上、ご説明した3領域、自分たちの技術のポテンシャルを広げていける再生医療を中心に、多様な領域でも事業展開をするというところが我々独自の事業モデルの大きな特徴になっています。

後ほど出てきますけども、IPOのような選択肢へのチャレンジを含めて、やはりどのスタートアップであっても、将来の大きな高度成長に向かって活動していくなかで、自分たちの技術あるいは研究といったベースになるシーズ、プラットフォームをどれだけ広げることができるか、我々自身もとことん社内外を通じて議論を重ねて今に至っていますが、この姿勢はとても重要であるように思っています。

ただ、我々だけで製品開発から患者さまへのご提供までのすべてをできるというわけではありません。全社でも20数名というサイズの会社ですので、それ以外の部分については、それぞれの技術や設備や、それから研究に強みをお持ちのさまざまな事業会社、研究機関のみなさまと強いパートナーシップを構築していくというかたちで、「餅は餅屋」のイメージでしょうか、さまざまな企業のみなさまと協業・共同開発、あるいは業務提携で関係構築することを進めてまいりました。

幸いにして、名だたる会社のみなさまと開発や事業でご一緒することができました。スタートアップの我々にとっては、資金調達の面で、あるいは会社のブランディングといった面でも大きいですが、何より、製品開発にとって、これらの素晴らしいパートナーを得ることができたのは非常に意義が大きいと思っております。

創業以来初の黒字を達成、そして上場へ

三條:このような様々な創意工夫をベースとして、先ほどの多領域展開もそうですが、パートナーシップ戦略も含めて、多面的に事業展開をできるような活動に注力して、将来の収益構造の厚みを増していくというようなスタイルを取ってまいりました。

ちなみに、本日使用している説明資料であったりとか、会社のプレゼンテーションについては、急にできたわけではなく、事業計画を策定したり、IPOの過程で幾多も議論を重ねながら、資料や図について1つ1つ何度も何度も自分たちで作成をし直してというところで、準備を重ねてきました。

幸いにして、今のようなかたちで上場の準備を本格化させた2019年度以降、業績的にも、業績ハイライトにあるように、しっかりと実績を積み上げることができました。

おかげさまで上場の基準期になりますけれども、2021年12月期については創業以来初の黒字を達成することができ、結果的に翌年に弾みをつけたかたちになったかもしれません。本当に様々な方々のご支援もあり、2022年の12月1日にSBI証券を主幹事として上場することができました。

成長ステージということでみますと、あくまでこの上場は、今後の事業展開というところで申し上げますと、ちょうどSTEP3から4のところです。「CHALLENGE」と書いてありますが、この後、今回の上場によって調達した金額をもとにパイプライン開発への成長投資を進め、製品の承認取得をした先には、グローバルに出ていくという展望が開けるかもしれません。

その先には当然のことながら、魅力的な成長市場の市場成長をけん引していくというところに取り組んでまいりたいと考えています。

そこに取り組むことができる技術を持っている会社が、やはり中心となって、自分たちの企業成長だけではなく、市場自体を創出・拡大していくということで、企業成長のみならず産業の創出というところに貢献をしていきたい! と。サイフューズは、そういうビジョンを持った会社でございます。今後とも、ご支援いただけますようよろしくお願いいたします。

司会者:三條さん、どうもありがとうございました。こういった研究開発型のスタートアップということで、三條さん、CFOとしてご活躍されてきたと思います。

第二部に関しては、IPOに向けて、いろいろとご苦労されたところがあるかと思います。そのあたりは、蔡さんとの対談形式でご紹介できればと思っています。

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