2024.10.10
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鹿毛康司氏(以下、鹿毛):これからの時代に求められるファンマーケティングとは? 最初に規定しますけれども、「ファンマーケティングって何だろうか」と、いろいろなことが言われているけれども、この3人がファンマーケティングのプロかどうか、僕にはわかりませんが、ファンに向き合っていることだけは確かです。
だから、この3人からファンマーケティングを勉強するというよりも、ファンに向き合うというのはどういうことなのか? そしてその活動はどういうことなのか? そんなことを聞いていきたいなと思っております。
まずは藤本さん、どんな仕事をしているのかだけ教えてもらえます?
藤本光正氏(以下、藤本):おそらくご存じない方も(いらっしゃると思いますが)、プロバスケットボールチームの経営です。15年くらい、栃木県宇都宮市をベースに活動してきておりまして。
みなさん、プロ野球やJリーグなどでプロスポーツに親しんでいるとは思いますので、そのイメージと相違ないかなと思います。試合は、ホームゲームを年間30試合行っています。チケット、グッズ、スポンサーシップ、販売して経営を成り立たせている状況ですね。
鹿毛:ファンベースマーケティングって、何かやっていますか?
藤本:「チケットを買ってご入場いただく方に対して、どういう価値を感じていただけるか」ということになってくると思うんですけど、「勝った、負けた」といった試合の内容は、もちろん大事ですよね。
ただ、毎試合勝てるわけではありません。例えば、自分のお気に入りの選手が出ない試合だってあるわけですよね。そういう意味では、商品価値が一定ではないことが、スポーツの1つの特徴だと思うので、「試合だけに依存しない価値をどう作りだすか」ということで、いろいろな演出だったりとか、空間自体が価値になるような仕掛けを行ったりとかは、創業以来ずっとやってきていますね。
鹿毛:僕、行ったことないんですけど......今度行かせてもらいますが......(笑)。
(会場笑)
急にディスコになって、老若男女がダンスをし出すとか......。
藤本:ファンの方がですか?
鹿毛:ファンの方です。あれって、どういうことですか?
藤本:鹿毛さん、NBAってご覧いただいたことはありますか?
鹿毛:行ったことはある。アメリカで、本物を見たことはある。
藤本:おそらくその時もあったかと思うんですけど、ファンの方がその演出に参加する。例えば、映画とかの「見る側」「提供する側」ではなくて、ファンの方、見ている人も、その空間を作るのに一緒に参加する。というのが、スポーツと他のコンテンツとの違いになってくるのかなと思いますね。
鹿毛:「茨城ロボッツ」では、みんなダンスしてなかったけど......。
藤本:いやいや、そんなことはないです。
鹿毛:(ダンスをするジェスチャーをして)堀義人さんが、前でこういうのやっていたりは見たことがある(笑)。
藤本:アメリカで......あたりを見回すと、「みんな堀さんみたいな感じ」ということです。
鹿毛:あ、そうなんですか?
(会場笑)
あ〜、堀さんみたいになる。
藤本:それが、アメリカのスポーツです。
鹿毛:そうなんだぁ。ごめんね2人、あとで(お話)聞きますけれども。僕、1995年にNBAファイナルのチケットを手に入れて、「(マイケル)ジョーダン見た」と言って自慢していたら、この方はジョーダンに教えてもらっていたというね。
藤本:そうですね。中学の時にクリニックを受けたことがあって。それであこがれて、「海外にバスケをしに行きたいな」ということで、高校時代はアメリカでバスケをしていたんです。
自分がプレイヤーというよりも、どちらかというと、さっき言った「見る側」の立場で感じるところが多かったですね。
鹿毛:だからプレイヤーから日本に......。あきらめたわけでしょ?
藤本:プレイヤーになるのは、なかなかハードルが高いなと(思いました)。
鹿毛:人生はまだ、あきらめていない。
藤本:人生はまだ、これからですね。
鹿毛:これからなの(笑)?
(会場笑)
藤本:今月40歳になったので、ここから倍以上は生きようと思います。
鹿毛:すごくおもしろいでしょ? みんな、あとで何を聞きたいか、いっぱいメモっておいてくださいね。
彼はグロービスにも来ちゃっているわけですよ。ということで、藤本さんです。よろしくお願いします。
藤本:お願いします。
(会場拍手)
鹿毛:河合さん、どこかで見たことがあります。
河合辰信氏(以下、河合):そうですか?(笑)。まぁまぁ一緒にやってます。
鹿毛:まぁまぁ一緒に(笑)。何をされている人ですか?
河合:一言で言ったら、「ブラックサンダー」を作って売っている人です。
鹿毛:いやいやいや、社長。ちゃんとみんなに(説明して)。知らない人がいるから。
河合:(笑)。有楽製菓という会社の代表をしていまして、代表的商品が「ブラックサンダー」です。「他に何を作っていますか?」と言われると、あんまり有名なものがないので一番困る質問なんですけど。
だいたい「ブラックサンダー」周辺のものを作って、お菓子を含めて企画なんかもやりながら、お客さまに喜んでいただくことを仕事にしていますね。
鹿毛:ファンマーケティングかどうかわからないけれども、とにかくファンと一緒にいろいろ何かやっていますよね。
河合:そうですね。最近のすごくわかりやすいところでいうと、「アンバサダーマーケティング」というか。「黒い広報室」という、オンライン上の......どう言ったらわかりやすいですかね? 「ファンクラブ」というとおこがましいので、怒られちゃいそうですけど(笑)。
まずは集まりを作って、ブラックサンダー好きの方とコミュニケーションを取りながら、去年、9月6日を「ブラックサンダーの日」と制定しました。この日に集まっていただいた方から、私向けにグッズの提案をしてもらう。それを商品化するかしないか、私がジャッジする。そんな企画を今進めています。
鹿毛:僕、「ブラックサンダー」ってあまりよくわかっていなくて。「ブラックサンデー」と(間違えて)言ったら、河合さんが本当に「ブラックサンデー」という商品を作ったという話があるんです。
河合:これは本当の話ですね。
鹿毛:すごいですよね。すごく不思議なことをやられる会社でございます。河合さんです。よろしくお願いします。
河合:よろしくお願いします。
(会場拍手)
鹿毛:鈴木賢治さん。これは「47(よんなな)」っていうんですか?
鈴木賢治氏(以下、鈴木):はい、「よんなな」です。
鹿毛:「よんなな」ね。47PLANNING代表ということで、「47」ってよくわからないんですけど、ちょっと説明してもらってもいいですか?
鈴木:はい。みなさんご存じだとは思うんですが、日本には47都道府県ございまして、「47都道府県を活性化し、日本の国力を上げる」をミッションに、2009年に作った会社ですね。今期、14期目に入りました。
グロービスは、実は2016期の仙台校で入ったんですが、この間卒業しました。たぶん、みなさんに一番近いかたちだと思います。
鹿毛:「47」は何をやっているんですか?
鈴木:はい(笑)。47PLANNINGは、「街づくり」の会社をやっています。例えば、福島のいわきで「空きシャッター街」を再生して、飲食店街にしたり。今、長野県塩尻市奈良井宿という場所で、築200年の酒蔵を改装したオーベルジュを運営しています。
そこを中心に、そこの宝をどんどんいろんな方に知っていただく。そのような「地域の宝」を、いかにいろんな方に届けるかをやっている会社でございます。
鹿毛:なんて言うとかっこよく見えるけれども、スタートが震災ですからね。
鈴木:そうですね。2期目の時に震災が(ありました)。
鹿毛:2期目?
鈴木:はい、2期目です。
鹿毛:2期目の時、震災でいったい何が起きて、何が何だったのか。そのへんのところをちょっとお話しいただければ。
鈴木:自分は福島県いわき市出身で、東京で起業したんですけれども。実家は福島県いわき市の沿岸部で製氷会社をやっていました。氷を作る会社です。自分はそこの4代目でもあるんですが、津波で実家が全壊してしまいまして。
あと、父親も津波で流されるという経験をしたのですが、たまたま奇跡的に生きていて、すごく幸運の持ち主です。
鈴木:地域活性会社だったのですが、急に地域活性から地元復興というかたちになりました。そこでまず、「地元をなんとかしよう」というので、いわきの駅前の空きシャッター街を丸ごと改装した、「夜明け市場」を作ったんです。
最初は2店舗からスタートして、空きシャッター街を年間10万人くらいお客さまが来るところに再生して、そこを中心に復興の活動や商品開発をしたり、カフェを作ったりしてきた感じですね。
鹿毛:いわきの駅前に、10店舗くらい商店街を作ったんですよね。
鈴木:今は15店舗ですかね。飲食店が並ぶ、飲食店街を作りました。
鹿毛:(飲食店街を)作って、みんなにいろんなものを食べさせたり、いろいろしたわけでしょ? 「うわぁ〜」って、みんなが感動したりとか。なんてことが、ネットに書いてありました(笑)。
鈴木:見ていただいて、ありがとうございます(笑)。
鹿毛:さっきネットで調べたら、「すごくいいことしているオッサンだなぁ」と思って。
鈴木:まだ40歳です。
鹿毛:まだ40歳ね。俺、じいさんだから(笑)。40歳なんだ。この3人は同い年だってことが、さっき発覚しました。
鈴木さんも中・高・大学とバスケットをやっていた。河合さんもバスケットをやっていた。藤本さんもバスケットをやっていたし、マイケル・ジョーダンに教えてもらった。なんかすごく不思議です。
あとびっくりしたのが、この人たち、みんなMBAを持っているんですよ(笑)。
(会場笑)
藤本:グロービスの卒業生なので(笑)。
鹿毛:あ〜そっか、そっか。
鹿毛:ということで、向こうのおじさま(鈴木さん)に、何か聞きたいことない? 鈴木さんに聞きたいことを、2人で聞いてください。
(会場笑)
藤本:こういう流れでいいんでしたっけ(笑)?
鹿毛:いいんですよ。
河合:ぜんぜん打ち合わせと違います(笑)。
(会場笑)
鹿毛:違います。
河合:え〜?(笑)そうですね......。地元のいわき市を復興させるために、2年目から活動されたと思うんですけど、たぶん震災復興って、世の中的にもまだぜんぜん終わっていないじゃないですか。でも、ちょっと忘れられているみたいなところがある。そのあたりに向けての活動で、やられていることってあるんですか?
鈴木:いまだにですか?
河合:はい。
鈴木:「いわきFC」というサッカーチームがいわきにできて、そこが福島2部の頃から一緒に活動させていただいて、そこのオフィシャルカフェの業態開発と実際の運営をやらせてもらっています。
サッカーって、まだまだ「男性がたくさん見るスポーツ」というところもあったので、どちらかというと女性向けのカフェを、我々のほうで作らせていただいたり。そこはいまだに運営しています。
あとは「夜明け市場」という飲食店街を、どう拡張していくかも含めてやっていたり、地元の水産物を商品開発して、どう価値を上げていくかとか。そういうことを今やっていますね。
藤本:今日のテーマでいうと、「ファン作り」ということだと思うんですけど、地域ごとに商品の特性も違えば、その地域のマーケットの特性も違うと思います。47都道府県バラバラのことをやらなくちゃいけないと思うんですけど、何か共通する部分はあるんですか?
鈴木:地域に入ってみんな共通して必ず言うことは、「うちの地域はめんどくさい」って言うんですよ(笑)。「うちの地域は本当に特殊だから」って、みなさんおっしゃるんですけど、全員言うので「一緒なんだろうな」と。
(会場笑)
まずはそこから始まるんですが、我々がすごく大事にしているのは、押しつけで何かやるのではなくて、地域のものをたくさんの方に伝えるために、我々が正しく知ることです。
我々は企画会社でもあるんですが、企画運営会社ですので、「何かこうしたらいいよ」じゃなくて、企画したものを一緒に伴走して走っていくことを、ともにやらせていただいています。
まずは我々が地域に入り込んで、それこそ今、長野県のプロジェクトでは、そこに3人移住して、住民になって、ちゃんとその地域のことを知るということをやらせてもらったり。まずはそこから(です)。
藤本:それは「転勤で」ということですか?
鈴木:はい、転勤で行ってもらっています。
藤本:それは47都道府県(ですか)?
鈴木:まだまだ東京までは行けていないので、まずはご縁のある地域からやらせてもらっているかたちです。
鹿毛:栃木は一緒にやったらどうですか?
鈴木:はい、さっき話していました。栃木はよく遊びに行くので、今度行こうという話に(なっています)。
藤本:観光資源も、あるようで意外とみなさんに知られていなかったり。日光とか那須とか......。
鹿毛:かんぴょうね。
藤本:かんぴょうもですね。宇都宮だと餃子とかなんですけど......。まだまだ活かしきれていない部分がすごいあるなと住んでいて感じますね。なのでぜひ、ご一緒できれば(と思います)。
鹿毛:そういうの、おもしろいですよね。僕は福岡を担当しますので、よろしくお願いします(笑)。
鈴木:よろしくお願いします(笑)。
鹿毛:何の話をしているか、わかりませんが(笑)。今の話はとっても重要な話でね。
企業というのは、10年、20年前までは、まだ上から「これをやったら喜ぶだろう、これをやったら喜ぶだろう」と。マスのコミュニケーション、マスのマーケティングがある時代はそれがよかったんだけど、「一緒になって作る」という時代になった。
そういう時代になったのはなぜかというと、SNSが広がり、時代が変わっちゃったから。だからもう、昔のやり方がぜんぜん通じないというか、そもそも一緒に作るのが当たり前の話になってきた。その「一緒に作る」ところをやろうとされているのが、僕は鈴木さんだと思っているんです。
一緒に作るためには、「頑固じじい」もいれば、いろんな人がいるじゃないですか。その人たちさえもが、実は一緒になってやらなきゃいけない。住民じゃないですか。住民そのものがファンベースにならなきゃいけないんだけど、さて、ここにどうやって入り込むんでしょうかね?
鈴木:やっぱり、新しいものをなかなか受け入れない。例えば、「前例がない」とかも含めて、そういう部分ってあると思うんですね。
僕は東京で起業して、福島のいわきが被災して、「いわきの駅前を再生しよう」というので飲食店街を作ったんですけど、自分の中で一番衝撃だったのが、出る杭じゃないですけど、それを作ろうとした時に叩かれまくったんですよね。
28歳だったので、「そんな若造に何ができるんだ」みたいな。「東京の会社のそんなヤツができるわけねぇだろ」みたいなことを、すごく言われたんですけれども、自分が思ったのは、「大事なのはめげないことだ」と。「言われようが何しようが、自分が『これは正しい』と思ったことをやりきる」というところですよね。
すごくおもしろかったのは、(飲食店街が)できて、メディアに取り上げられて、それがうまくいくとなってくると、周りの人たちが今度は手のひらを返していくんですよ。
本当に一番わーわー言っていた人が、「君のおかげで」という話になったり。でも、そこを「なんだよ」ではなくて、「わかっていただけたんだったら、協力してください」と。
街づくりとか地域の活動って、1社だけでは絶対にできなくて、いかにたくさんの人を巻き込んでやっていくかが大事です。なので、「わかってもらえるまで、ずっとやる」というかたちで、私はやってまいりました。
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