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清田氏講演 投資家攻略事例(全2記事)

実績は「これから」の状態でVC・投資家から出資を得るポイント 起業当初に資金調達を実現したメルカリ・Airbnbのピッチ資料

スタートアップ向けクラウド経営管理ソフト「FUNDOOR」を提供する株式会社FUNDINNOが主催するセミナー「資金調達 ピッチの極意」に、『起業の科学』の著者・田所雅之氏と、ユニコーンファームCSOの清田享平氏が登壇。本記事では、清田氏による「投資家攻略事例」の講演の内容をお届けします。避けたほうがいい4つの投資家タイプや、VCが求めるリターンの割合などが語られました。

SmartHRのピッチの構成

清田享平氏(以下、清田):ピッチのイメージを持つために、SmartHRさんの事例を、(スライドの「実現したいこと」「実現する意義」「実現の可能性」の3つのポイントに)簡易的に当てはめてみます。

まず、「労務の手続きが面倒だ」という課題があります。そこに対する解決策として、労務の手続きをSaaSで自動化します。あるいは解決策2として、簡単にフォームに入力して、必要書類が自動で出てきます。

「それって、今まであったんですか?」「ありました。今までは社労士に委託して、すごくコストがかかっていました。これを我々のSmartHRを使うことによって、大幅にコスト削減ができます」と。

「すごいですね。じゃあ、それってどれだけニーズがあるの?」と。「市場規模は人事業務のアウトソース潜在市場を狙っていきます」という感じです。

そして実績(トラクション)です。「市場はSmartHRのサービスを欲しがっているの?」「実は事前登録の段階から、すごくお申し込みをいただいているんですよ」。つまり、「それだけユーザーさんが欲しがっているんですよ」あるいは「欲しがっている可能性があるんですよ」と裏付ける根拠になります。

そして今後の将来の展望です。「行政が『e-Gov』『電子申告API』を公開していくので、さらに成長していく市場だと思っています」と。そして、「我々はこんな素晴らしいチームです」という構成です。あとはこれにデザイン含めて細かいアップデートをしていきます。

メルカリ、Airbnbのピッチ資料

(スライドを指して)これはメルカリのシードファイナンスのピッチ資料ですが、当時8枚のスライドだけでピッチをして資金調達をしています。

メルカリは2013年に山田(進太郎)さんが創業して、CtoCフリマアプリをローンチして2013年にイーストベンチャーズから5,000万円、ユナイテッドから3億円を調達しています。8枚のスライドを見てもらうと、すごくシンプルですが、本当に本質的な情報を端的に述べています。

(スライドを指して)次に 「Airbnb」ですね。

課題は何なのか、そしてソリューションとして「A web platform where users can rent out their space to host travelers 」、ホストとトラベラーズ(旅行者)がマッチングできるプラットフォームを作っていきます、と書いています。

(スライドの)構成を見ていただくと、プロダクトがあって具体的な機能イメージがあって、右側にビジネスモデルがあります。

「市場で選ばれるために、なぜAirbnbが使われるのか」「なぜAirbnbが良いとされるのか」と強みをお伝えして、競合環境、「同じような会社でこんな会社がいます」と。そして競争優位性。最後に経営陣とか場合によってはメディア実績とかです。

あとは「Voice of Customer」とありますが、実際に使ったユーザーの声として、「すでに我々にはこれだけのユーザーがいて、こんなに良いフィードバックをもらっています」「満足度99パーセント以上です」とか。そういったものをしっかりと伝えていく。

そして、シードラウンドで「いくら調達したいか」という資金使途を書いている、そのような構成でしっかり基本に沿っているピッチ構成です。

よく聞かれるのが、「もし、あなたの会社のプロダクトを一言でいうと何ですか?」です。「日本版Airbnb」とか「日本版Spotify」とか「日本版Netflix」とか「日本版Uber」とか、わかりやすく説明できるとすごくイメージが湧くので印象に残りますよね。

みなさんのサービスを一言で端的に言うなら、何と言うのか? をしっかり端的に言えるようお考えいただければと思います。

投資家との相性の重要性

ここからは「投資家の選び方」について、残りの時間を使っていきたいと思います。

(スライドを指して)「投資家は結婚するつもりで選びましょう」と、ちょっと大げさに書いていますが、本当に大事だと思います。

投資家も人間なので、お金ではなくてしっかりと相性で見ていきましょう。「結婚するつもりで選ぶ。なぜならば、結婚のあとの離婚は難しい」とあります。

エクイティファイナンスに関していうと、エクイティ(株主資本)を入れたあとは、本当に長い関係になります。もちろん、お金を入れてもらう立場ですが、お互い人間なので、「この人と本当に中長期的にやっていけそうか?」とか、様々な観点で投資家選びをする必要があると思います。ここに書いていることも、細かくは割愛しますけれども、別途見ていただければと思います。

資金調達や投資家は、野球のスカウトと似ています。ここ(スライド)にある中村(幸一郎)さんは、アメリカのSozo Venturesの方で、初めて日本のVCでミダスキャピタルのトップ100に入っためちゃめちゃすごい方です。

ZoomとかコインベースとかTwitterとかSQUAREとか、名だたる企業に出資している本当にすごい方です。

彼も、「投資家とスタートアップの相性は野球のスカウトのようなものだ」と言っています。「長く長くしっかり関係性を作って、ここぞというタイミングでスカウト(投資)をしていく」ということです。

(スライドを指して)この赤字で囲っているところです。野球のスカウトでいうと、ドラフト前に会うのではなくて小学校の前から、みなさんでいうとシードファイナンスの時から会って、関係性を築き、定期的に事業進捗を聞いたりする。そして、ここぞというタイミングで調達金額や条件面などの具体的な話をしていく、と書いています。

もちろんすぐに出資が決まるケースもありますけれども、3ヶ月とか、半年とか、長ければ1年、2年かかって投資するケースもあることは、みなさんご認識いただければと思います。

避けたほうがいい4つの投資家タイプ

(スライドを指して)避けたほうがいい投資家は、大きく4つあります。

「時限爆弾型」は、「今日意思決定して」「明日までに判断して」と迫るタイプ。「ブランド型」で、有名だけどぜんぜん投資家として事業のサポートをしてくれない。「過大要求型」は投資後に追加フィーを要求してくるタイプ。

「交渉人型」は、例えば2億円調達したいのに「5,000万円だったら出資するよ」とか。もちろん、VC的な視点も理解はできますが、大事なのは、大前提として投資家の意見を尊重した上で、調達したい金額に対して一緒にその金額の妥当性を含めた調達方法を一緒に考えてくれることだと思っています。

やはり、出資するために一緒に汗をかいて考えてくれるVCさん、つまり寄り添ってくれるVCさんはすごく重要だと思います。

(スライドを指して)投資家の期待値調整とは、「投資家がYesという可能性 × Yesといった場合の金額」です。

いろいろなVCと会って、最適な条件とか相性を見ていきましょう。そうすることで、より良い投資条件を引き出していけますし、あとは比較検討ができるからです。

なので、「2~3社と会ってダメでした、うわーっ」ではなく、最低限、2桁以上のVCと会ってお話するくらいの気持ちの持ちようと覚悟が大事です。

資金調達のバリュエーション相場

資金調達における具体的なポイントとして「シード」と「アーリー」前提でお話しすると、「市場・課題に対する仮説の解像度」と、「メンバー構成」、あとは解決したい課題に対する「共感」を得られるかがすごく重要です。

本日参加されている方は、恐らくシード期、アーリーフェーズが多いと思いますので、参考にしていただきたい部分はここ(のスライド)です。

先ほどお話しした市場環境とかProductやチーム、その時のポイントや概要を記載していますので、この要件に対してしっかりと内容を記載できたかをご確認いただけるといいと思います。

(スライドを指して)バリエーションの相場の「500(KOBE ACCELERATOR)」、私も以前ピッチしたところが出している相場感です。

ここもベンチマークとしてよくまとめられています。自分はシードだな、プレ・シードだな、シリーズAだな、となった時に、みなさんの立ち位置と、それぞれ必要な要素が何なのか。現状で足りている部分と足りていない部分がわかると思います。

今回は具体的なバリエーションとか時価総額の算定については割愛しますが、どういうロジックで考えていくのかをここ(のスライド)にまとめています。

自分たちのバリエーションや時価総額を算定する際に、時価総額がどう決まるのか理解することが大事だと思います。

簡単に時価総額の算定方法とか構成要素を(事業計画及び株価の思考法のスライドを指して)こちらと(企業価値評価のスライドを指して)こちらに示しています。

算定方法は大きく3つあります。インカムアプローチ・マーケットアプローチ・コストアプローチです。簡単にappendixというかたちで算定方法の考え方を記載していますので辞書替わりに活用いただければと思います。

VCが求めるリターンの割合

最後に、ここは大事なところなのでお伝えしておくと、VCは調達する側として、しっかり「リターン」を求めるのでそれをわかりやすくまとめているものがあります。

(スライドを指して)一般的にシード、アーリー、ミドルにおけるリターンの倍率とか成功確率、Exitまでの期間を、参考値ですが左側に記載しています。これはZ(Venture)Capitalの大久保(洸平)さんという方がまとめたものです。

右側は、Coral Capitalのパートナーの澤山(陽平)さんがおっしゃっています。「超ハイリスク・ハイリターンのビジネスモデルが一般的なVCです」と書いていますが、50社に出資して1社成功すればいいというモデルです。

ご参考までに、IRRと書いているのは内部収益率です。一般的にCoralさんは、期待するリターンの割合は15パーセント以上、10年で3〜5倍を求めていらっしゃるということです。

もちろん厳密にいうと、VCの50億ファンド、100億ファンド、1,000億ファンドによって、期待値は変わってきますが、1つのご参考ということで、「自分のフェーズだと、VCさんはこれくらいのリターンを求めるんだな」と、頭の片隅にぜひ入れておいてください。

これは最後(のスライド)です。

みなさんが資金を調達する上での、資金使途の整理の仕方を簡単に書いています。調達金額や時期は会社によって違います。5,000万円だろうが1億円だろうが。記載方法は変わりませんが、表現の仕方としては、私はこんな感じで実際に書いていました。

「Why you」「Why now」をしっかり考える

最後のまとめに入ります。

ピッチではしっかりとみなさんが実現したい世界を語っていく。特にシード、アーリーは、トラクションはこれから作っていく段階なので、実績よりも経営陣とか市場の課題の有無とか、さらに起業家の本気度を見ます。なぜ自分がこの事業をやるのか、今やらないといけないのか、「Why you」「Why now」をしっかり考えて、パッションを持って伝えていく。

そして、やはり忘れていけないのが、「Make Something People Want」で、大前提として、顧客が欲しいものを作ることです。そのための手段として「資金調達する」ことをみなさんどうかお忘れなく。

ファイナンスはマラソンなので、1度ファイナンスして終わりではありません。しっかりと次のラウンドを重ねていく上で、ファイナンスをする体力、つまり健康管理は超大切です。

ということで、私のパートを締めさせていただきたいなと思います。皆さん本日はありがとうございました。

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