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「スピード重視」のベンチャー・スタートアップで働く人に求められるマインドやスキル(全2記事)

上司と部下で、評価に対する「認識のズレ」が発生するワケ スタートアップで「結果」を残すポイント

大企業からベンチャー・スタートアップへの転職者が増えています。しかし、限られた時間で最大限のアウトプットが求められ、転職後にその「スピード」についていけない人も少なくありません。ベンチャー・スタートアップで結果を残すためには、どういったスキルやマインドが必要になるのでしょうか。 本記事では、20年以上にわたってベンチャー・スタートアップへの転職/採用支援を行っている株式会社キープレイヤーズ代表の高野秀敏氏に、スタートアップで結果を残す人の共通点や、身を置く環境の重要性などをお聞きしました。

世界的にグロース株が下落しても、日本のスタートアップ求人は増加中

ーー現在のベンチャー・スタートアップ業界の採用の動向をお聞かせください。

高野秀敏氏(以下、高野):2021年のスタートアップの資金調達額は7,800億円を超えており、2012年が650億円ぐらいだったことを考えると12倍に拡大しています。そのお金の約半分が採用や人件費にあてられると言われ、実際に求人は過去にないほど多くあります。まずこれが大前提です。

世界を見ると、今いわゆるIT系グロース株(成長株)は大幅に下がっていて、米国や中国ではスタートアップでリストラがかなり進んでいる状況ですが、日本は他国と違ってリストラは行われておらず、採用の勢いが止まったという話もありません。むしろ、すべての職種で人が足りず、「オール求人あります」という状況で、資金調達した多くのスタートアップ企業が採用を強化しています。

よく言われるようにエンジニアは特に足りませんが、営業もデザイナーも経理も足りません。けっこう軽視されがちですが、CFOではなくベンチャーは経理が足りないという問題がありますね。法務も足りないですし、内部統制の人もCxOも足りず、本当に全部足りないという。すべてのポジションで採用がある感じですね。

スタートアップで結果を残す人の共通点

ーー世界のスタートアップでリストラが進む中、日本は採用に追い風が吹いているということですね。求められる人材については、ベンチャー・スタートアップと大企業とで違いはあるのでしょうか。

高野:ベンチャー・スタートアップでは、「即戦力が欲しい」「すぐに結果を出してほしい」というケースが多いですが、今は大企業もすぐに結果を出してほしいと考えていると思います。大企業で欲しい人はベンチャーも欲しいし、ベンチャーで欲しい人は大企業も欲しい。大前提として、私は求められる人材はほとんど一緒だと思っています。

あえて違いを言うと、スタートアップのほうがスピード感や柔軟性が高い人を求めるところがあるかもしれません。あとはプレイングマネージャーみたいな人を求めて、管理だけする人はあんまり必要としないとかですね。

そのあたりは、過去に私が書いた、大企業からスタートアップに転職した人の多くが陥る失敗や後悔をまとめた記事の中で紹介していますので、よろしければそちらをご覧ください。

ーー長くスタートアップへの転職支援をされてきた高野さんから見て、マインドや行動習慣などで「こういう人は高い確率でベンチャー・スタートアップで結果を残す」といった共通点はありますか?

高野:やはり何よりも「結果にこだわる人」ですね。今風に言えばGRIT、ちょっと昔の言葉で言えばコミットメント。行動については「大量行動する人」。量質転化という言葉がありますが、やはり大量に行動する人は強い。営業で言えば100件アポを取る人と500件アポを取る人では、500件の人が勝つという非常にシンプルな話ですね。

習慣については「継続努力できる人」。仕事は、短距離走ではなくマラソンになります。短距離も速くマラソンも速い人がもちろんいいですが、継続して努力できることが極めて大事です。小さい約束を破ってしまう人が多いんですが、日々積み上げなので、それだとなかなか勝てません。

よく楽天さんが「PDCAの仕組み化」と言っていますが、それはとても大事だと思います。やはりスピードとコミットメントなんですよね。

スタートアップで結果を残すためのポイント

ーーベンチャー・スタートアップで結果を残すためには、「ここを意識すべき」というポイントはありますか?

高野:まず前提として、私は会社選びが大事だと思っています。伸びる会社に行かないとなかなか結果は出せません。PMF(プロダクトマーケットフィット)していない商品を売っている会社だと、売れようがないので、結果も残せないですよね。なので、会社がダメだとダメです。結果を出すためには、本人も大事ですが環境も大事です。

そういう意味では、心がけることとして「結果が出せる環境下にあるのか」はあるかもしれません。売れない商品は何をやっても売れないし、開発をわかってない社長の下での開発も基本的に難しい。なので、やはり環境を整えないといけません。

しかし、環境のせいにしてもいけない。「矛盾するじゃん」と言われそうですが、その矛盾を乗り越えていくのが仕事でもあるので。「これとこれをやったら結果が出る」みたいなものはたぶんないんですけど、自分がとことんやり抜いているのに結果が出ない場合は、「自分の強みが活かせない環境にいる可能性がある」と思ったほうがいいと思いますね。

マイケル・ジョーダンさんが、野球ではうまくいかなかったという事実があるわけです。あんなに運動神経が良く、とんでもない結果を残した人でも野球は無理だった。(米プロバスケットボールリーグNBAの伝説的プレイヤーのマイケル・ジョーダンは、キャリア全盛期の1993年にNBAを引退してMLBに挑戦。しかし、メジャーデビューを果たせぬまま1995年にNBAに復帰した)

大谷(翔平)選手も野球だからいいけど、バスケットボールをやったらたぶん普通の人じゃないでしょうか。大谷選手の努力値からすると何とかなりそうな気もしますが(笑)、今からの転向ではさすがに難しい。やはり「強みを活かせるところでやる」ことが結果を出すためのポイントなので、そういう状況下にあるかですね。

上司と評価に関する「認識のズレ」が発生するワケ

ーー結果が出せる環境かを考えた上で転職し、精一杯やり抜いても結果が出なければ、あらためて環境を考えると。

高野:あと、結果を残すための大事なポイントとして、上司とのコミュニケーションがあります。ここが足りない人が実は多いんです。上司の人は部下が1人だけというケースは少なく、数人から下手をしたら20~30人の部下を持っていると思うんですね。そうすると、どうしても注意が分散するので、部下側から積極的なコミュニケーションがないと情報伝達がおろそかになる。

「何をやったら自分が評価されるのか」や「何を期待されているか」について、上司と常にすり合わせをしないと、どんどんズレていくと思います。期待とズレていたら再確認したり、結果が出ていなければ、例えば目標を修正して提案してみるといったコミュニケーションが必要です。

ーー結果を残すためには、受け身にならず、積極的に上司に目標を確認しに行ったほうがいいということですね。

高野:そうですね。あんまりそういうことをやってない上司・部下が多く、なんとなく働いてる人が多いと思います。でも、なんとなく働いてしまうと、結局なんとなくしかやらなくなる。基本的に「いつかがんばる」はやらないので。

1年に1回とか半年に1回とか、評価面談の時期になって焦って考えたりする会社が現実に多いと思うんですが、私は目標設定が曖昧な会社は成長が続かないと思っています。残念ながら、ベンチャー・スタートアップは目標設定や管理がきちんとできていない会社が多いんですね。そこを具体的にやらなくても、売上や利益など会社の数字は出ているのかもしれませんが、目標を定量的に定めなければ、一人ひとりが何を目指していいかがわからなくなります。

働いたことはありませんが、野村證券さんやリクルートさん、エムスリーさんも恐らく数字化されていると思います。勝ち続けている会社はみんなそうじゃないかと思いますね。もちろん定量面だけじゃなく、定性面を評価する部分もあると思いますが、少なくとも定性面が定量面を上回って評価されてることは、さすがにないと思います。

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