
2025.02.12
職員一人あたり52時間の残業削減に成功 kintone導入がもたらした富士吉田市の自治体DX“変革”ハウツー
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溝口勇児氏(以下、溝口):例えば、その後の「尖った人材を採用せよ」という話とけっこう関係してきますけど、一方で会社が知られていることで、お金が集まったり人が集まったりする要素もあるじゃないですか。
その辺のトレードオフはどう考えますかね? ビジネスモデルによるんですかね。それとも失うもののほうが多いのかなと。ちなみにそのあたりは、ヘイってどう考えたんですか?
佐藤裕介氏(以下、佐藤):僕らもどちらかと言うと、何をやっているかもどうしたいかも、資金の調達状況も含めてほぼ外部には公開していないので。採用等々はまた別のやり方でカバーできるという感覚ですかね。
溝口:確かにヘイを見ていると、ぜんぜん採用には困ってなさそうだし。ものすごくいい人材が集まっている感じがしますけれども。確かに資金調達なども含めて、戦略戦術に関してメディアで話しているところってあまり見ないですよね。
佐藤:そうそう。まぁ、やるとしたらすごく抽象的な議論だけするという感覚ですかね。それは25歳で起業する時と、僕がヘイを始めたのは32歳ぐらいなので、その時とはやっぱりちょっと前提条件も違いますよね。
今日の聴衆は、スタートアップの起業家が中心になっているかなというふうに思います。あるいはそれを支援する人たち。そうすると、少なくとも知り合いのアントレプレナーの比率はものすごく下がるかなというふうには思うんですよ。
例えばdelyの堀江裕介くんとかだったら、ものすごく目立っていたし、ものすごく発信していたし、競合の社長を名指しで「潰す」と言ったりして話題を集めていたりしましたけれども。
安武弘晃氏(以下、安武):(笑)。
溝口:ああいう戦略ってどうなんですかね。(堀江くんは)隣のルームAにいますけど。もともとルームAだったけど、確か今回変わったんだな。その辺はどう思いますか? 株主として、近くで見ていたと思うんですけれどもね。
佐藤:確かにそうですね。彼はめちゃくちゃ若かったし、これまでの信用やトラックレコードがない中で、どうやって急速に組織を拡大させて認知を取ってやっていくかということに関して言えば、ああいうやり方も当然……。もちろん、もともとのキャラクターと合っていることもあるんですけど。
溝口:そうそう。
佐藤:ぜんぜん正しいやり方の1つなのかなと思いますけど。ヤフーに入ってからは「いろいろ怒られたりする」って言ってましたよ、小澤さん。
溝口:(笑)。確かに。そういえば堀江くん、YouTubeでジャイミーさんというチャンネルを作ったら小澤さんに怒られたみたいなことを言ってましたよ(笑)。
ちなみに初期の楽天はどうだったんですか? 僕は楽天の初期って正直イメージがないんですけれども、「情報を隠しながら成長せよ」というのは、安武さんの今の会社に関してはお考えを聞けたんですけれども、楽天としてはどういう方針だったんですか?
安武:楽天は別に隠すも何も、インターネットでショッピングをする概念がないくらいの古い時代と言うか、日本が「クレジットカードを持っていると借金して悪いことになるから、あまり持たないほうがいい」というような社会だった時なんですよね。
隠すも何も競合がいなかったですし。プロモーションと言えば、だいたい三木谷さんが銀行のエリートからハーバードに行って辞めて起業しました、というのを新聞に取り上げてもらうようなことしかなかったんですよね。
なので、今とはまたちょっとぜんぜん違いますね。今はみんなが横並びで、同じマーケットを何千人という人がうわーっと熱い視線で見ている状態じゃないので。冷ややかだったのが良かったですよね。
佐藤:ちなみに小澤さんは、メルカリが非上場の時に数字が見られないことはやっぱり嫌だったんですか?
小澤隆生氏(以下、小澤):そうですね。なんか(数字が)とれないので見誤りましたよね。だから、「なんかたいしたことないんじゃないの?」とみんな思っていて、気づいたときにはもう手遅れという状態でしたね。
ただ、楽天の話にちょっと割って入りますけど、私も2000年ぐらいからいた立場で言うと、1998年から99年はまず山田進太郎氏がインターンでいましたでしょ。それで、私と同じ部署にグリーの田中良和さんと、ユーザーローカルの社長の伊藤将雄さん。その3人が同じ部屋にいましたからね。
佐藤:やばい。同じ部屋なんですか!?
小澤:経沢香保子さんとかも同じ時期にいましたし、めちゃくちゃですよ。だからそういう意味ではやっぱり採用は、今思えばすごかったんじゃないですか? 安武さんもいましたし。
安武:そうだと思いますね。
小澤:どうやって採用していたんだか知らないけど。
溝口:今回の本論と少しずれちゃうんですけど、彼らは当時から先天的に優れていたんですかね? それとも後天的な要素も多いんですかね。当時はどうですか?
小澤:私は後天的要素はすごいと思っていて。例えばビズリーチの南壮一郎さんは、私のプロ野球時代の仲間ですけれども(笑)、ただの生意気な人でしたからね。
(一同笑)
小澤:今は大変優秀な人になっちゃったけれど。だから結局、私自体も楽天の経験ですごく育てていただいたし、やっぱりヤフーの採用をする時もスタートアップを経験している人は、もう問答無用で採用するようにしていますよね。
成功しようが失敗しようが、事業をひと回ししたという経験値が違いますわね。それはもう楽天の中で、三木谷さんのやり方やものすごい成功体験を目の当たりにしていればいるほど、「こうやってやるんだ」「これでいいんだ」というものもありますね。
そういうものは思ったより特別な方法じゃなく、よく言われているように、オーソドックスなことを誰よりもしつこく誰よりも深く誰よりも突っ込んでやるということ。それを目の当たりにする体験によって、「あれ、俺でもできるんじゃねぇかな」という。才能が芽生えるんじゃなく、意識が変わるということでしょうね。
溝口:やっぱりクラスター効果ってありますよね。さっきも似たような話があったんですけれども、例えばネットエイジのオフィスには、それこそFringe 81の田中弦さんとか、ミクシィの笠原健治さんとか、今名前が挙がった田中良和さんも含めてですけど、スマートニュースの川崎裕一さんとか、いろんな方がいたんですよね。確か小澤さんもいたんじゃないですか? そうですよね。
小澤:パソコンラックみたいなところにみんないましたよね。
(一同笑)
溝口:でも、それぞれ今や日本のインターネットシーンで名前が挙がらないことがない方たちだと思うんですよね。
小澤:そうですよね。でも、それって早く入ってがんばっただけで、100メートルをずっと9秒台で走る能力を全員が持っていたわけではないですよ。僕が他の人のことを言うのは大変失礼ですが、少なくとも自分だけで言うと、本当にごくごく平凡だと思いますね。
溝口:そのまま3つ目の話にスライドしたいなと思うんですけれども。川邊さんがおっしゃった「尖った人材を集める」ということで、尖った人材と言いますか、ヤフーだと今の経営に参画している人たちは、みんなもともと起業家の方たちや実際に事業をやられている方々ばかりだと思います。
実際、人材の育成をどう考えているんですか? 一般的な大企業だと、外様で入った人たちが社長になったり、経営幹部になることはすごく少ないじゃないですか。再現性があるかたちでどうやって小澤さんを産むのか、どうやって川邊さんを作るのかということは、けっこう永遠のテーマだと思うんですよね。
小澤:ここはちょっと意見がわかれるところだと思いますね。私自体は自分でスタートアップをやっていた時も、今のヤフーでも、誰でもできると言ったら恐縮ですけど、自分自体の能力もそんなに高いわけではない中で、なんとかかんとかやれているのを見ると特別な人じゃなくてもいいんじゃないのと。
戦うべきフィールドと戦い方次第では、誰でも一定の成功ができるんじゃないと。佐藤さんや安武さんは特別な才能を持っているし、溝口さんも特別な才能も持っているけど、多くのインターネットの会社をやったり上場している人を見てくださいよと。例えばプロ野球や陸上のような強烈な能力の差を感じますか、みなさん、ということだと思いますので。
尖った人材というのは、私から言うと「尖った経験を持っている人」とかだったらいいかなという感じですかね。
溝口:まさにヘイは本当にドリームチームになってきているなという。執行レイヤーも強いし、経営レイヤーもすごく重厚な面々が集まっていますよね。今日はスタートアップの起業家が多いので、彼らに参考になるような内容で、尖った人材を集めるための工夫や心がけていることなど、知見を享受してくれたらうれしいなと思うんですけど、いかがですか?
佐藤:どうだろうな。逆にうちはあまり起業家っぽい人を集めているわけでもないので。
本当に期待する役割をはっきりさせて……いわゆるジョブディスクリプションと呼ばれるものが曖昧なスタートアップはすごく多いから。相手に何を期待しているのか、なぜあなたに声をかけているのかを、まず誘う側の自分が本当に腹落ちしている状態を作れないと、誘ってもあまりうまくいかないと言うか。
「会社をこうしたい。そのためにはこういう能力・ケイパビリティがミッシングピースとしてある。そのミッシングピースは、具体的にはこういう役割を期待する人のことだ。それはつまりあなたであると僕は思っているんだけれども、それはなぜか」というような。めちゃくちゃ基礎的な話ですけど。
意外にそういうことがちゃんと整理されて、採用活動に活かされていない会社がすごくたくさんあるのかなと思うので。
逆に言うと、とにかくすごそうな人を採るという採用は、うちはまったくしていない。ビカビカのなんでもできそうな人を採用しようというのは、むしろまったくないですね。そういうやり方でうまくいっている会社もあると思うけど。メルカリとかもそうかもしれないし、ヤフーさんでも一部そういう採用をしているのかもしれないですけど。
溝口:でも、例えば“佐藤裕介のジョブディスクリプション”って、あまり明確にできなくない?
佐藤:ああ、そうですねぇ。
溝口:どういうことかと言うと、すごく優秀な人の傾向として、ジョブディスクリプションが明確な業務ほど給与はあまり上がらないイメージがあって。抽象的な仕事ほど実はその人の価値が高いという。
例えば小澤さんと安武さんも佐藤裕介も、まさになんでもとりあえずその時に火を噴いているものとか、その時の局面を適切に評価して正しい意思決定をし続けられる人だと思っていて。
そういう人材がたくさんいたらいいように思うんだけれども、裕介は今のお話で何か補足したり思うことってありますか?
佐藤:いや、でも意外に小澤さんもこんな感じで、なんならちょっと雨が降ってきてたけど、まだ海辺でにこやかに話していて(笑)。やっぱ狂ってるなって思うけど。でも、たぶん会社に戻ると普通にめっちゃちゃんとした仕事ができる人なのよ。
溝口:(笑)。
佐藤:例えばこのセッションの前日にまだ何も決まっていなくて、誰もこのルームで事前に発言したこともなくて、超やばいから資料を作って議論のアウトラインを作って、何かバーチャル背景も作っとこうぜ、というような。なんて言うんだろう、普通のこと?
突飛なこととかすごく変なことを思いつくとか、考えがめちゃくちゃ壮大であることが、日々の業務や会社の成長に有効に作用する瞬間は、たぶんすごく限定的なタイミングだったり瞬間だと思っています。
普通にちゃんとやることをやれる人が、なんだかいっぱい集まっていて、毎日少しずつ改善を積み重ねていける組織が長期的にはやっぱり強いのかなと思うので。
とはいえ、その社会が大きく変わるときとか、すごく大きなディシジョンが必要な時もあるとは思うんですけれど。基本的にはベーシックなことはちゃんとできる。だから、やっぱり僕はジョブディスクリプションはすごく大事だと思っているし。
溝口:確かに。
佐藤:抽象度の高いやつは、入れてみたらやっぱり大してできないのよ(笑)。お前は確かにすごいところはあるかもしれないけれど、毎日別に大したことはしていないねという。なんて言うんだろう。そうですね……。
溝口:確かに、僕は堀江くんから小澤さんの話をよく聞くんですよ。でもSNS上からすると、本当にヤフーのCOOとは思えないようなパク・セロイヘアにしちゃったり。発信されていることも、普通にヤフーの上層部にいる人じゃなかったら、なんというか、たまにちょっと病院行ったほうがいいように感じちゃうところもあるぐらいの内容が多いんですけど(笑)。
でも堀江くんが、「いやマジであの人はディテール力がハンパないし、数字をすべて丸裸にされるし、あの人の前だと本当に何も嘘は通じないから、毎回真剣勝負になる」という類いのことを言っていましたね。すごくちゃんとしてるんだなって。
小澤:まぁ、嘘です。
(一同笑)
溝口:嘘ですか? そう言ってましたよ(笑)。
小澤:だから、スタートアップの人材採用で唯一がんばるとしたら、COOじゃない?
佐藤:あー。
小澤:番頭ですね。結局社長は風呂敷を広げて、いっときまでは自分が一生懸命やるんですけど、社長の妄想を実現するために、本当にディテールまで含めた実務をがんばってくれる人を雇えるかどうかです。それはちょっと面接などではわからなくて、トラックレコードから見ていくしかなくて。
社長経験者じゃないほうがいいかもしれないな。僕はやっぱりそんなにビジョンとかないので、川邊や孫さんがばーっと言ったことに対して、それは楽天時代の三木谷さんが「プロ野球チームをやりたい」「○○だー」とか言うのと同じで、とにかくなんとかして実現するところに関しては今も一生懸命やっていますと。
だからPayPayなどのディテールの部分って、私だけじゃなくていろんな人のチームでやるとか。一休を買収した後とかZOZOを買収した後もひたすらやると。そういう人材をどこかのフェーズで雇っていったほうがいいと思います。最初からいたら社長の役目がなくなっちゃうけど。
溝口:うーん、確かに。
小澤:COOってちゃんと考えて採用したほうがいい。ヤフーで私がこれからまたうまくできるかは別として、いたほうがいいと思いますね。
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