2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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今野:そうした意味では、今後はインターネットの中には限らず、日本の強みに特化していこうと。むしろ(ネットの)外側にあるかもしれないというところが一つポイントでしたね。さきほどM&Aのような話がすこし出ていましたが、生態系を大きくしていく意味において、そのM&A関連でいえば、どんな課題があるんでしょうか。
堤:そうですね。いろいろとよく言われる税制の問題などはあるんですが、そうしたものを置いておいたとしても、大企業の方が(会場に)7割ぐらいもいる中で大変失礼な話ですが、(僕は)大企業の中から新規事業は生まれないと思っている派なんですね。
といいますのも、僕はリクルートという会社で昔働いておりまして。5年ほど、リクルートの新規事業企画をほとんど僕が担当していた時期がありましたが、ありとあらゆる企画を考えて、しかも相当優秀なメンバーをそろえて、かなり何百億というお金を突っ込んだあげく、何1つ成功しなかったという。
その後リーマンショックが起きたということもありますが、それ以降リクルートは自社で新しいものを作るのはやめようということになりました。
アジェンダを変えて「グローバルのM&Aだ」という方針にして、今の5兆円だか6兆円だかの時価総額ができている。そうしたこともあるように、大企業の方々はあまり新規事業を自前で作ろうと考えすぎると、必ずイノベーションのジレンマにぶつかって、例えば仮に100億の売り上げを作っても「普通だね」などと言われちゃうんですよ。リクルートでは。そうすると、悲しい気持ちになるんで。
やはりそれであれば、本当にポテンシャルのある会社をM&Aしていくほうが、大企業の方にとってもいいですし、僕としては中の人材を取り込むことによってすごく質的な変換というものが必ずできると思っているので、やはりそういった部分で大企業のオープンイノベーションというのは、実はM&Aにつなげていくというのが一番効果的じゃないかと思っています。
今野:ちなみに今日のセッションは、具体的な質問を予告なしでやっているのですが、例えばアメリカでいうとGAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)といわれる元スタートアップが、今、トップファイブですよね。
今の文脈は、大企業がM&Aをしていくべきではないかという意味でいったときに、日本の進化系というのは、やはり大企業はそのまま残るんでしょうか。残すべきなんでしょうか。それとも、やっぱりスタートアップがそのまま日本版GAFAMというものができていくべきなのか。もしくはその想定など、どのように、堤(さんの)説を唱えていますか?
堤:そうですね。もちろんメルカリさんであったり、昔でいうDeNAさん、グリーさん、サイバーエージェントさんもそうです。そうした日本的なメガベンチャーがやっていくというところがもちろんあると思いますが。
変な話、僕はもう大企業という概念自体がイケていないと思っておりまして。日本で、単体で、単一のプロダクトだけをやって成功している会社なんて、ないじゃないですか。だいたいが逆にコングロマリット化している。コングロマリット・ディスカウントになっている部分がすごく多いと思うんですよね。
ですから、僕が思うのは、M&Aとはまったく逆の話なんですが、大企業の中でも、これはコアじゃないと思えばどんどん分離していき、そこにそれこそグロービスさんのような大きなファンドがバカバカお金を入れる。そして、それをもう一回違う形で大きくしていく。そのほうが日本の経済全体がすごく回るんじゃないかと僕自身は思っています。
今野:これからは100パーセントすべての事業を資本的に持つ必要も、必然性もないかもしれませんね。孫(正義)さんの群戦略じゃありませんが。では、高原さん、3軸に関わる……。
高原:私がやっているところはシードステージが多いと思っています。そのシードよりさらに手前のアイデアレベルからのお付き合いもさせていただいております。今、非常に(スタートアップにとっての)リソースが多くなっています。
アクセラの話をしましたし、あとはエンジェル投資家も増えているということで、賢く行動することが大切です。何が起こっているのかと言いますと、やばいファイナンスをしているケースをけっこう見ているんですよ、「あれ、なんでそこからそんなお金の引っ張り方したの?」というような。
あと、クラウドファンディングも賢くやらないといけません。あれをやってお金を集めたら、今度はリターンを出す。リターンを出す必要に駆られて、会社の戦略としてはそっちにいかなくていいのに、やらなければいけないことが出てくる。変な約束をしているから。それで、(結果的に)つぶれるというもったいないケースを見ています。この事象は、リソースが多いからこそです。
そうしたことにならないように、みなさんには賢く動いてほしいと思っています。その賢さをどこで手に入れるかと言えば、先輩に聞くのはやっぱりいいことです。(グロービスの)宣伝になりますが、アクセラなどでいいメンターがいるところに入っていただくと、そこは迷わなくて済むんじゃないでしょうか。そういうのが1つ目。
2つ目が、先ほどお話をした規制の話ですね。この規制はもう、なんて言えばいいんでしょうか、複雑怪奇です。法律がどう書いてあるのかということを1つずつ読んでいっても、なにかぐちゃぐちゃだし、プレーヤーもいろいろなところに散らばっているということから、これを1人だけで変えようとするのはもう無理ですね。
(できることは)いかに仲間をつくるか。まさに、こうした「あすか会議」や「G1(ベンチャー)」といったグロービスのネットワークをうまく使っていただきながら、取り組みたい規制や社会課題があるのであれば、仲間をきちんとつくるということが重要だと思っています。ぜひ、しっかり仲間を作っていただきたいですね。
今野:先ほどアクセラという意味では、もう100ぐらいもあるようなお話があった中で、あえて参入をはじめる……。僕も京都大学でやっているんであれですが。なぜ今さら、後発のアクセラをやるんですか?
高原:なぜ今さら後発のアクセラをやるか。まだまだアクセラとしては、点であって、面になっていないということですね。どこのアクセラが本当に成功しているかというと、まだまだわからないところがあり、やっぱり餅は餅屋で、グロービスの得意なところはグロービスが得意だし、東大さんが得意なところは東大さんが得意だし、リクルートが得意なところはリクルートですし、これが生態系なんですよ。
経済とは何かというと、分業なんですね。自分の得意なところでしっかりとエコシステムに貢献していく。苦手なところは誰か他の人にお任せする。そこが信頼関係の中で使っていくことによって、お互いに良い循環が生まれるのです。この信頼はすごく重要だと思いながら、キャピタルパートナーズと一緒にしっかり信頼を紡いでいきながら、エコシステムに貢献していきたい。
今野:アクセラの中でつなぎ役になりたいということですね。
高原:そうですね。
今野:はい。では、鈴木さん。お願いします。
鈴木:はい。先ほど言いましたとおり、私は0→1のフェーズで活動をしておりますので、0→1らしいことを伝えると、たぶんこの中でユニコーンというものに対してリアリティを持ってイメージしている人は、おそらくいないですよね。いたとしても、本当に一部だと思うんですよね。
そうした前提で、僕らが0→1で活動をしているときに「どの領域を」「どのテーマを」とか、いわゆる「どこのマーケットであればグローバルマーケットをとれるか」ということを考えても、あんまり意味がないと考えています。
それよりも、0→1のときは、みなさんの心の声を聞いたほうがいいですよ。「本気で人生をかけてやり遂げたいことはなんだ」と問いかけたほうが、はるかにいいですね。その活動をまずしてくださいということを、我々はさんざん言っています。
とくに地方や大手企業などで行うトレーニングでは、それをやっています。とはいえ、だいたい1人で活動をしていると、どんどんどんどん、いわゆる視野狭窄というか、小さくなっていくので、グロースを意識させるという働きかけをします。
人から刺激を受けて、自分の志を立てたら、それに対してグロースをさせるということを意識する。とにかく常にプレッシャーをかける環境を作って、そこに身を置く。そうしたことを、0→1フェーズではやっていくべきだろうというのが、我々の考え方ですね。当然ステージが上がれば、いろいろな考え方、VCの考え方などが出てくるんで、それはそれでいいと思っています。
今野:若干繰り返しになるかもしれませんが、もう少し具体的にという意味で、(会場の)7割の方々に1週間以内に辞表を出すところまで持っていくために、何……。(辞表を出すところまで)持っていくためというのもおかしいけど(笑)。
(会場笑)
今野:……ような状態にするには、何をしたらいいですか。明日。今。
鈴木:今?
今野:今から。第一歩。おそらく、「なんとなくそっちでいいと思うけれども、10年ぐらい勤めちゃったし、給料が下がるかもしれないし、家族もいるし……」という状況がだいたい思うかと。
鈴木:今。そうですね…… 私も実は大手企業の社員でした。当然、最初はビビりました。そのときにやったのは、とにかく起業家に会うことですね。
今野:なるほど。
鈴木:実際に事業をやった起業家たちにどんどん会いました。そうすると、やっぱり勇気が出てくるんですね。これは、もう一つみなさんにお伝えしたいことなんですが、大手企業出身の起業家がよく言うことは「辞める前のほうがビビってた」ということ。辞めちゃった後のほうがすっきりするんですね。
今野:とりあえず辞めたほうがいいということだな(笑)。
(会場笑)
鈴木:そうです。とりあえず辞めろと。なんだか悪者になってきました。
今野:(笑)。はい。では、各務さんもお願いします。
各務:はい。私は大学(の立場)ですので、大学にある研究施設、あるいは学生も含めたさまざまなアイデア、それから人材そのものが、大きな産業創出、イノベーションに結びつくかという仕事をしていますので、基本的には(ビジネスの)初期設定の頃ということなんですが。
ただ、大学にある研究成果というのは、学術論文のままでは、それがビジネスになるわけではないんですね。いわゆるノーベル賞級の研究成果に関して言えば、MITの研究やいろいろな論文でも、蓋然性で言えば、研究の質が高ければ高いほどビジネスになったときにかなり大きくなるというのは証明されているんですが。
個別個別を見ていくと、学術論文がそのままにとどまっていては、ビジネスにはならない。したがって、ある意味においては大学にある、アカデミックな研究成果をビジネスのにおいがするものに、少しばかりセクシーに見えるショーケースに変えるためには、どうすればいいのかということを考えるのが、私のやり方です。
そこにいわゆる、教育というフレーバーが入ります。例えば、東大には1500名もポスドク研究者がいますから、今、通常で考えれば、なかなかアカデミックなポストはないということが、リアリティとしてあることはわかっているんですね。
しかも任期は3年、5年で40歳ぐらいまでかなり雇用されている。子どもさんも1人、2人で、そこから荒れ野に追いやられてしまうと、にわかにニートになってしまう。これも一方で、リアリティとしてあります。
したがって大学としては、そうした研究者が研究シーズを担ってくれるんであれば、仮にCEOにはなれなくても、せめてビジネスの伸びしろを出すためにはどうすればいいのかということを身につけてもらう教育プログラムをかなり進めております。なにしろ、最後はシリコンバレーのベンチャーキャピタリストの前でピッチをするということをやっていますから。
シリコンバレーのベンチャーキャピタリストにも、重々そうしたことを含めて「本当のリアルビジネスになるかどうか、少し甘いところがあるんだけれども教育的に見てね」など申し送りをしながら、こうしたものをやっています。
したがって、大学でやるべきことというのは、こうしたことを含めてやるものと、その研究成果に近いところにお金も出すことだと考えています。
研究成果が事業化に向かうときに、今、ボトルネックになるものがあります。アメリカにあって日本にないものの一つなのですが、ギャップファンドといいますが、研究成果にそのインベスタブル(投資可能)、ライセンサブルにするためにプロトタイピングをするといった伸びしろを出す、周辺特許を取得するという動き方ができるかできないかです。
東大では最近、1件600万円まで出すことを始めました。今で、年間に30件から40件ぐらい利用されています。お金を出すと、そうした研究シーズでどんどん出てくるようになってきました。そうするとかなりおもしろいシーズが出てきます。
それに対して、我々で言いますと、技術移転のTLO(Technology Licensing Organization:技術移転機関)とそれから2つベンチャーキャピタル、投資会社が、いわゆるお金の出し方を見て、これがおもしろいかどうか、セクシーかどうかをチェックする。
私も審査をやっていますので、チェックをしながらお金を出します。そしてお金を出した1年先、6ヶ月先ぐらいに、これが本当にインベスタブルになるかどうかということを検討するのです。こうした取り組みをやるということでしょうか。
さらにいえば、東大には、今、年間500件か600件ぐらいの発明があるんですが、病院を運営しているという環境も影響して、この40~50パーセントはライフサイエンス系のものなんですね。このライフサイエンス系のものに限って言いますと、やっぱりビジネスそのものはグローバル、アメリカ市場が5割か6割を持っている。こうしたリアリティもあって、したがってビジネスそのものの初期設定から、グローバルにしなければいけないということがあります。
知財戦略そのものも、やっぱりローカルな、いわゆる知財の弁理士さんに頼んでしまうと、初期設定からダメなんです。したがって、あえてかっこつけて言えば、最初の段階で少なくともy切片はマイナスから始まるとしても、傾きだけはちゃんとして、初期設定は私の守備範囲でやっています。
要は弁護士や会計士といった、ああした先生方は最初の段階からフリーで使えるシステムを作っていますので、そうしたところを間違えないようにするということが私の役割だと思います。
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