2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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今野穣氏(以下、今野):では、2つ目の質問にいきますが、この5年間にどんな変化がみなさんの周りで起きていますか? ポジ・ネガ両方あっていいと思っているんですが。では、各務(かがみ)さんからいきますか。
各務茂夫(以下、各務):いくつかの変化がありますね。例えば、2015年に初めて安倍総理が内閣大臣賞という名前をつけた「日本ベンチャー大賞」というものがあります。第1回はユーグレナ、第2回はペプチドリームがとり、第3回はサイバーダインがとり、それから第4回をメルカリがとって、第5回となる今年はプリファードネットワークスが受賞を果たしています。
大賞以外の各賞にも経産省や文科省といった名前がついていて、内閣総理大臣賞の名前をつけた賞をベンチャー企業が受賞する。これが典型的な変化であると思うんですね。それから私は、大企業ともお付き合いをしておりまして、あまり筋がいいようには見えないかもしれませんが、「東大・経団連ベンチャー協創会議」というものを始めているんですが、大企業のベンチャー企業に対する目線がずいぶん変わってきたと、この5年間で強く思います。
実質的にどれくらいうまくいっているかは別問題として、場合によっては鈴木さんに聞いていただいてもいいと思うのですが、5年前は、いろんな委員会に呼ばれていくと、「いやぁ、各務さんのやっていることおもしろいから、どうやってご支援できますか」というように支援される立場でした。
私も被害者意識が強かったのかもしれませんが、なにか上から目線で見られているという印象を持ちました。今はもう、イコールフッティングですね。同等の存在として見ないと、もう自分たちは立ち行かないといった大企業が、かなり積極的に前に出ています。
そうした意味で、かなり支援もしていただいている印象があります。ちなみに経団連には、いろんな委員会があるのですが、すこし前までは「起業なんとか委員会」といったものが、今年から初めて「スタートアップ委員会」に名前が変わったぐらいです。
このように大企業が変わってくる一方で、基本的に、私は、とくにディープサイエンス系のビジネス、いわゆるイノベーションまで行き着くのには、ものすごく時間がかかるものをやっています。
とくにライフサイエンスとバイオテクノロジー系は、言ってみればトレードセールがあるような、M&Aのマーケットというのが存在しないと事業が成り立たないもの。なかなかIPO一本やりでは担げないような事業です。
大企業のコミットメント、言ってみればM&Aも含めたマーケットが健全に成り立たないと、大学の技術はなかなかイノベーションに近づかないということがあります。
先ほど申し上げたような、日本の大企業の変化は、私から見るととても前向きな1つの大きな変化だろうと思います。国をあげての変化もありますし。
それから、東大の5年間で言うと、ペプチドリームなどがいいケースなので、少しだけご紹介します。実はペプチドリームの成功というのは、大学のポケットを潤すものがかなりあるんですね。今でもライセンスの費用など、ランニングロイヤリティーというものがずっと大学に入り続け、それなりに大きなものになっています。
これが実は蓄積として大学にインパクトを与えているのです。名士的に、大学の中にロールモデルが生まれる。これは5年間でずいぶん進展したという気分ですね。
今野:たしかに大学発というものは、まだそんなに成功事例がないこともあるのかもしれませんが、エコノミクスの還元についてはまったく言及されていませんよね。それによって、アカデミックな機関がどれだけ潤っているかについては触れられないことが多い。ちなみにその変化が今なぜ起きているのだと思われますか。
各務:一つには、やはりこれもみなさんはご存じかどうかはわかりませんが。今、研究のプロジェクト、一番大きな『ImPACT(インパクト)』や、あるいは『CREST(クレスト)』という、いわゆるJST(注:国立研究開発法人 科学技術振興機構。ImPACT・CRESTは同法人の研究開発プロジェクト)という、文科省がつけているお金があるんですよ。これも本当にいいのかどうかについては議論があると思いますが、最後にプロジェクトが終わる前、エグジットしなさいと言われるんですね。
今野:うーん、なるほど。
各務:エグジットというのは何かといえば、基本的に「会社をつくれ」という意味なんですが、すべての研究が会社をつくるところに帰着をおくのは、むしろ国全体で考えれば、本当に国益に適うことなのかは議論があると思います。
でも、そうした意識が環境として存在し、スタートアップ側に求められると、イノベーションを追い求めている研究者側もビジネスをつくっていくことに対して意識が変わらざるを得ません。そうすることで、ロールモデルが生まれて、成功がぽちぽち生まれてくる。
大学の仕組みとしては、今、ライセンスをするときにエクイティをとっています。インキュベーション施設でも入った途端にエクイティをもらうルールを、私たちが作ってしまったので、言ってみればベンチャーの成功と共に大学も一緒に、運命共同体ですねという意識も生まれている。このあたりが醸成されているんだと思いますね。
今野:逆に景気や金余りというよりも、ロールモデルの蓄積のほうのパラメーターが強い。
各務:集めるエクイティは、額全体からいえば、決して東京大学をよほど潤すほどの額ではありません。しかし、ただ我々のような部隊をサスティナブルにファンディングしようと思うと、かなり重要な原資になることは確かです。
今野:では、あまり景気に左右されない強いトレンドだということです?
各務:できれば、そうであることを願いたいのですが。
今野:はい。わかりました。では、鈴木さん。どうでしょうか、この5年間。
鈴木規文氏(以下、鈴木):はい。ありがとうございます。(各務)先生がおっしゃるとおりで、もう大手企業は本当に変わり始めていますね。5年前の2014年は、我々が「コーポレートアクセラレーター」のプロジェクトを日本で初めてやった年です。そこを起爆地にしてアクセラレーターがもう、ばんばん立ち始めたというのがちょうど5年前です。
そうした意味では、大手企業が自社だけの資源、いわゆる人材ではイノベーションがやはり生み出せないことを、とうとう自覚し始めたかなと思っています。今、大手企業は相当変わってきています。
ただ、いろんな課題は山ほどあるんです。まだ。そんな簡単にビヘイビア(行動)は変わりません。大手企業というのは、頭ではわかっていても、やっぱりビヘイビアまでは変わらない。まずは、その課題に取り組まなければならないということですね。だから、イノベーションを創出する以前の活動をもっとやらないといけないということが、まず1つ。
次は、大手企業の社員さんは明確に変わっていますね。私は15年前に起業してますが、15年前は本当に起業家は肩身が狭かったんですよ。本当に大手企業の人たちが輝いて見えました。起業家は虐げられていた。そんな感じでしたが、今はどんどん変わっていますね。大手企業の社員でいることをかっこ悪いと、みんなが思い始めています。そうでしょう、みなさん。
(会場笑)
鈴木:そんなことありませんか。
今野:今日ここにいる大企業勤務の7割の方に言っています。
鈴木:7割の方。本当にみなさん、すごくそれを言いますね。とくに僕はかなりいい年なんですが、大学の同期に僕はすごくうらやましがられますよ。「事業を自分の思い通りにやれていていいね」と。こんな世界がみなさんを待っているんですね。ですから、ぜひ引き込みたいと思っています。
もう一つは、地方です。我々は地方にも毎週のようにアクセスしています。(参加者を指して)そこに座っているヒラオカが、飛びまくっているんですが。地方も変わり始めています。
もともと地方はエクイティを入れて、事業を育てる発想は皆無に近いわけですよ。今も、まだそこまでいっていない地方がかなり多いんですが、ただ、投資家と一緒に事業を起こそう、スタートアップモデル、いわゆるスケールするようなビジネスを狙っていこうというようなことを少しずつ考え始めている。
ここ2、3年は重い石が動き始めたんですね。動き始めたということでいえば、このいわゆるスタートアップコミュニティーというのは、相当に動き始めているぞという実感を5年間で感じていますね。
今野:なるほど、わかりました。ありがとうございます。
今野:では、高原さん。この5年間はどうでしたか。
高原康次氏(以下、高原):この5年間でグロービス経営大学院の学生の方がつくる、起業のレベルが上がってきたと、毎年プランを見ていて感じますね。今まではサービス一辺倒だったものが、AIを使ってみようといったように、テクノロジーにも目線が広がっていますし、そういった起業家に対して支援をするプレーヤーも増えてきたことも事実だと思っております。
今の日本には100以上のアクセラプログラムがあるということで、そうしたものを賢く使っている起業家というのは、どんどん伸びていっています。そして、メディアでも取り上げられているというのが、私の目に非常に強く映っているところですね。
あとは、さまざまなテクノロジーを使っていく中で、社会に影響を与えようとすると規制との向き合い方をどうするかを考える方が増えてきたのも確かです。ここはまた、この後の論点のところでも話さなければいけないと思うんですが、どうしていくかということですね。
より社会を起業家がつくり上げていくという世の中に近づいているんじゃないかと思います。起業家が待たれている状態が起こっていると私は思っています。
今野:はい。では最後に、堤さんお願いします。
堤達生氏(以下、堤):はい。ピュアVCの立場からして、私は17~18年間ほどこの仕事をやっているんですが、この5年間というと、本当にその前の12年間以上に劇的な変化が起きていると個人的には実感しております。変な話、インターネットバブルや、リーマンショックなど、私はそうしたものを全部経験しているんですが、その中を差し引いてもかなり大きな変化だと。
大きな変化というのは結局何かというと、ベンチャーキャピタル自体がどんどんコモディティー化しているんです。これがすごく大きな変化だと思っています。これはどうしてかというと、単純に数が増える、だからコモディティー化するということがまず1つ。
そして、その数が増える源泉が、今みなさんおっしゃったような大企業さんの参入、すなわちCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)、オープンイノベーションを含めたCVCという形ですね。これがすごい勢いで増えている。最近だとソニーさんや博報堂さん、そういったところがどんどんファンドを作ってやっていくのです。こうしたものを含めて、数が圧倒的に増えています。
あとは、20年ぐらいVC業界がだんだん育ってきている中で、そこで育った人たちがだんだん独立してやっていく。それで小さなファンドができていきます。そうしたものも含めて、数が増えることによってのコモディティー化が進んでいます。
あとは、ここにいる今野さんがやっているGCP(グロービスキャピタルパートナーズ)などはまさに最たる例なんですが、ファンド自体がすごく大きくなってきているんですよね。我々も今3本目のファンドというお話をしましたが、やはり3本目のファンドがどんどん大きくなっていく。そうしたかたちでファンド自体の総量が増えていきます。
このような形によって、ベンチャーキャピタルそのものの、質的にも量的にもすごい変化が起きているというのが、この5年間だというように思っています。
あとはエグジットという観点でも、私はマザーズがなかったころからやっているんですが(笑)。その昔はIPOを目指しましょうというのが基本だったのですが、大企業さんのオープンイノベーションの一環などで、やはりM&Aが増えてきている。
今の私の実感としては、アメリカに比べればまだまだ少ないのですが、この5年間で確実に増えていると思っています。
今野:ありがとうございます。投資の業界でいうとファンドレイズというのは、最初にファンドを組成するんですが、たぶんこの3年で、1,000億円、2,000億円、3,000億円と確かに増えています。そこからベンチャー企業に投資することでいうと、去年が1,500億円かな? 本当に倍々で伸びているんで、コモディティーといえばコモディティーですし。
それでグロービスも(G-STARTUPとして)400億円を集めた理由としては、コモディティーであればなおさらお金に制約がない状態を作るという意味で400億集めて、かつユニコーンを本気でつくろうと。1社あたり40億を出そうとしております。堤さんの延長線上というか、同じようなことを今、我々も取り組んでいるというところです。
今野:これからどうすべきかを、それぞれうかがいたいと思いますが、その前にみなさんで想像してください。3軸で考えていただきたいのですが、1つ目がテーマというか領域ですね。インターネット、それから大学といったテクノロジー。あとはソーシャルなどのカテゴリーはどんなものに可能性があるとお考えか。
2つ目の軸が地域。だいたい、東京、地方、海外と3つぐらいのセグメントがあると思います。そして、3つ目がアクセラ、シード、アーリー、ユニコーンのような、スタートアップにおけるステージについて。そうした3軸の中で、どこかのキューブに対して、各々が持っていらっしゃる強い意見や提言のようなものをお聞かせください。
では、次、堤さんからいきましょう。
堤:そうですね。さきほど少しお話したように、私自身はもともといわゆるピュアなインターネットビジネスというものが極めて大好きなのです。eコマース、アドテク、メディアといったようなものですね。最近、一部のSaaSもそうなんですが、そうしたものにもかなり幅広く投資をして、おかげさまでそこでいろいろと成功体験もさせていただいているんですが。
この分科会のテーマ的には、やはりそれだけではユニコーンは本当につくれないと思っています。ちょうど先々週に、グロービスさんが主催していらっしゃる「G1ベンチャー」にも出させていただきましたが、そのときにある方のセッションでありましたように、やはり日本が世界で本当に勝てるものというのは、ある程度絞られてくると思っているんですね。
ひとつは、一部の素材のようなものであったり、例えばハードが絡むものであったり、そうしたものに対して、正直僕自身が目を背けていたんです。あまり得意じゃなかったということもあって、やってこなかったのですが。
やはり、そうした部分に目を向けていかないとならない。日本の中でこぢんまりとマザーズ上場して数百億円でエグジットできてよかったね、というような世界観を自分の中でも超えていかなければいけないというようにすごく感じています。そのためには、やはり今言ったように、日本ならではの強みが必ずあるんですよ。
堤:ソフトの面でいっても、よく言われる話ですが、日本はアニメやコンテンツ系はまだまだ強いです。そうしたものも含めて、本当に世界で勝てるものは何か、突き詰めて考えていかないと、いつまで経ってもこぢんまりとしたところで「よかったね」で終わっちゃうんですよね。そこは一つやっていかなければいけないところだと思っております。
あと、それに含めて、僕は残念ながら地方の投資をまだやったことがないんです。今度やるんですが、今はないんです。今までは東京中心になってしまっていた。それは、やはりインターネット産業がとても知識集約型のものだからです。知識が集まりやすいという意味で、東京が一番効率がいいからなんです。
僕自身は今回ハード投資をやるにあたって、その工場のようなものを見に行きます。製造技術もそうですが、モノを作ることは、工場をはじめ、場所的なものも非常にコストがかかるんで、どうしても地方が重要なキーになってくると思っております。
そうした意味では、僕ら自身も東京だけを見ていると、良いものを見失ってしまうんじゃないかと考えております。すべての地方に行くわけにはいかないのですが、ある産業のこの部分に関してはすごく強いというフォーカスが絞られてくるのではないかと。
例えば浜松であれば、ヤマハがありますが、浜松に根ざした強い技術がある。そういったもの、地方ならではの技術を持っているところを、よりフォーカスしてやっていくことが必要だと思っています。
あとは、ステージですね。ステージということに関しましては、私自身はいわゆるシリーズAといったものに、かなりフォーカスして投資しております。「シリーズA」という言葉でわかる方、わからない方もいらっしゃるかもしれませんが、まだ売り上げが立っているか立っていないかでいうと、だいたい立っていません。ほとんどの場合、プロダクトが「一応マーケットフィットできたよね」などと言っていながら、本当はだいたいできていないんですが(笑)。
今野:(笑)。
堤:引き続き、それぐらいのところで果敢に数億単位で変わらず投資をしていきたいと思っております。
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