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ヒットプロダクトの創り方。 〜世にない新カテゴリーを生み出す〜(全3記事)

Makuakeで1億円調達の電動バイク「glafit」誕生秘話 ヒットプロダクトの仕掛け人が語る、商品化の判断基準

2019年8月5日、株式会社マクアケが「Makuake MEET UP DAY 2019」を開催しました。スタートから6周年を迎えたクラウドファウンディングサービス「Makuake」を運営する同社。本イベントでは、プロジェクト実行者、メディア関係者、流通関係者、金融機関・自治体をはじめとしたパートナー向けに、「アタラシイ未来」をテーマにしたカンファレンスや懇親パーティーなどが行われました。今回は「ヒットプロダクトの創り方。~世にない新カテゴリーを生み出す~」と題し、Makuakeで人気を集めたヒットプロダクトの仕掛け人3名をゲストに迎えて、「ヒットプロダクトの創り方」の共通項を導き出します。本パートでは、3名がそれぞれのプロダクトについて語りました。バイク嫌いの社長が思わずOKを出してしまった、新型バイクの企画とは。

日本の技術力を活かした新商品開発をサポートする「Makuake Incubation Studio」

北原成憲氏(以下、北原):ルームAでの2つ目のセッションといたしまして、「ヒットプロダクトの創り方。~世にない新カテゴリーを生み出す~」を今から行わせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

(会場拍手)

この会場のみなさんと一致団結して、カジュアルな雰囲気の中で、いろんな質疑応答などを交えながらやっていきたいと思っております。「ヒットプロダクトの創り方」というところで、おそらく商品開発や事業開発に携わっている方がいらっしゃると思います。この中で企業に所属をして、新商品開発などをされている方はどれくらいいらっしゃいますか?

(会場挙手)

かなりいらっしゃいますね。ではご自身で起業されて、こうしたチャレンジをされている方はどれくらいいらっしゃいますか?

(会場挙手)

企業に所属してやられている方がだいたい7割ぐらいというイメージですね。このあと、ゲストのみなさんもご紹介したいと思っています。

それではまず告知なのですが、今回のセッションの様子はこちらのハッシュタグで投稿していただいても構いません。お写真なども撮っていただいて大丈夫です。

ただ、今回のセッションではとくに大きなスライドを設けているわけではありません。みなさんにざっくばらんに生々しいところも含めて、どんどん切り込んでいき、いろんなことを聞きたいと思っております。後半では会場のみなさんから質問を受け付ける時間を設けておりますので、ぜひいろんなことを聞いていただきたいと思っております。

申し遅れましたが、私は株式会社マクアケの北原と申します。この前のセッションでありました「Makuake Incubation Studio」の木内が統轄しております部署で、主に大手企業の方々の新商品開発・新規事業開発をサポートさせていただいております。

余談なんですが、私も実家が九州で板金工場をやっておりまして、非常にものづくりが好きなんです。今日はものづくりの最前線でやられている方々のお話が聞けるということで、大変楽しみにしておりました。

すこしだけMakuake Incubation Studioのご紹介をさせていただきます。Makuakeというところが、まさに新しいものが生み出される出口になるわけなんですが、Makuake Incubation StudioではBefore Makuakeと言われるMakuakeの前の段階、商品企画の段階から、製品企画のサポートであったり、あとはMakuakeとつながりのある開発会社様など企画実現に必要なリソースをご紹介させていただいたり、プロモーションのサポートをさせていただいたりしています。

そうしたことで、日本のおもしろい技術から斬新な新製品を生み出すサポートをさせていただいております。Makuakeを出口にすることで、量産する前に市場評価を見える化することができ、その上で一般販売につなげていくことができるため、斬新な新製品開発にトライしやすいプロセスをご提供できるのも特徴です。

広告会社の博報堂が“ものづくり”で注目を集めたヒット商品

北原:それでは、こちらにいらっしゃいます今日のメインゲストの方々を、私の方からご紹介させていただきます。まずお1人目は株式会社博報堂のクリエイティブディレクターでいらっしゃいます、小野直紀さんです。どうぞよろしくお願いいたします。拍手を願いいたします。

(会場拍手)

博報堂はみなさんもご存知のとおり、大手広告代理店です。しかし広告ではなく、博報堂の中でプロダクトを創出するといったことをご自身で社内に訴えかけて、そうしたクリエイティブチームを作り、数々のプロダクトを手がけられています。Makuakeでやっていただいたのが、ご存知のかたも多いかと思いますが、「Pechat(ペチャット)」という、ぬいぐるみにボタンをつけることで、スマートフォンからぬいぐるみを喋らせる体験ができるアイテムです。

ぬいぐるみを通して、子どもたちとコミュニケーションを取ることができます。Makuake初期の段階で使っていただいたのですが、当時1,500万円を超えるヒット商品になっております。小野さん、よろしければ一言いただいてもよろしいでしょうか。

小野直紀氏(以下、小野):3年ぐらい前、ちょうどクラウドファンディングが盛り上がり始めていた時期だったと思いますが、そのときにやらせていただきました。博報堂というものを作る会社じゃないところが、こうしたことをやってもいいんだということも含めて、話題にしてもらった商品です。

北原:ありがとうございます。今日は企業での新商品に携わっておられる方が多いと思いますが、博報堂という広告がメインの会社でものづくりをするという新しいチャレンジを、企業の中でどのようにして通していったのか、そこにいろんな苦労もあったということをお聞きしています。そのあたりのお話もお伺いしたいと思っていますので、今日はどうぞよろしくお願いいたします。

証券会社の社員が50歳でチャレンジした酒造の立ち上げ

お2人目は、上川大雪酒造株式会社の代表取締役社長でいらっしゃいます、塚原敏夫さんです。どうぞよろしくお願いいたします。拍手をお願いいたします。

(会場拍手)

上川大雪酒造は、北海道に戦後初の酒蔵を作った会社です。今、北海道はお米の生産量が非常に多く、品質も非常に良いお米がたくさん採れるわけですが、その地盤を活用したおいしいお酒を作っておられます。ただ、これを造るためにも、大変なご苦労があったそうです。

塚原さんはこのプロフィールに書いてあるとおり、もともとは野村證券に勤められていた証券マンなのですが、そこから日本酒造りに挑戦されました。

実はご友人が経営されていた三重の蔵を、その友人と共に北海道に移転させている。塚原さんはさらに勉強をされて、今は酒造会社を経営されています。その酒蔵・上川大雪酒造の誕生酒を限定販売するプロジェクトをMakuakeで実施されました。一緒にこの酒造を立ち上げる当事者になれるような一端を持ってプロジェクトをやられていったということです。塚原さん、一言いただけますでしょうか。

塚原敏夫氏(以下、塚原):2年前にまったく違う業界から酒蔵を作ることになったのですが、私も本当に普通のサラリーマンを長く経験しています。もう52歳になるんですが、大学生の娘を2人も抱えながら、住宅ローンがあったとしても、リスクを負って大きな借金をすればゼロから酒蔵は立ち上がるということで(笑)。

(会場笑)

今日はこんな話もできればと思っております。よろしくお願いいたします。

北原:よろしくお願いいたします。

(会場拍手)

Makuakeで1億円以上の応援購入を集めた電動バイク「glafit」

北原:では3人目の方ですね。glafit株式会社代表取締役の鳴海禎造さんです。どうぞよろしくお願いいたします。

鳴海禎造氏(以下、鳴海):お願いします。

北原:鳴海さん、よろしくお願いいたします。

(会場拍手)

北原:鳴海さんですが、すごいですね。15歳で初めて商売に携わられて、大学卒業後に自動車販売店を起業し、その後自動車輸出業等を経てこのglafit株式会社の経営をされているということです。

先日、ヤマハ発動機と資本業務提携をされまして、大きくビジネスを拡大している途上とのことです。ご存知の方もいらっしゃるとおり、このglafit(グラフィット)はバイクなんですが、Makuakeで1億円を超える応援購入を集めております。その背景などを、この後お伺いしたいと思っております。鳴海さん、一言お願いいたします。

鳴海:ありがとうございます。まず覚えていただきたいのは、私たちは和歌山の会社です。僕自身が今日も和歌山から来たのです。大阪の下にある和歌山。関空がある場所。パンダが日本で一番多い。

(会場笑)

和歌山から来た会社なのだということだけ、覚えていただければありがたいです。

北原:ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

(会場拍手)

ありがとうございます。それでは、もう少しだけ会場を温めたいと思います。今日はいろんな方々にお集まりいただいていますよね。本イベント開始のご挨拶で、マクアケの代表・中山(亮太郎)の話にもありましたが、せっかく本日お越しいただきましたので、いろんな方と仲良くなっていただいて、ここからチャレンジが生まれたり、後に協業をするような方と知り合えたり、そうした出会いを目指していきたいと思っておりますので、1分間だけ時間を取らせてください。

隣の方と自己紹介をして、さらに今日はどんなことを聞こうと思ってこのセッションに参加しているのかについてお話しください。よろしいですか。これから1分を測りたいと思います。それでは、どうぞよろしくお願いします。

(自己紹介タイム終了)

ありがとうございました。いい感じに笑顔が溢れて、緊張感もほぐれてきたと思っております。

よかったらどんなことをお話されたのかをおたずねしたいのですが。先ほど目が合いましたので。そちらの(笑)。このセッションでは、どんなことに興味があるのかお聞きしてもよいですか。

参加者1:さきほどのセッションもそうなんですが、なかなか大手の企業から新しいものが生まれないということがあり、今回のMakuakeのミートアップの中でいろいろと知見を深めて、社内で新しいことを生み出したいと思い参加させていただきました。

北原:新しいものを創出されるような、そんなミッションをお持ちなんですか。

参加者1:新しいものというよりは、会社の中にそうした新しいものを取り込む。

北原:ありがとうございます。拍手をお願いします。

(会場拍手)

自分が「定価でもほしい」と思えるものを作る

北原:そうしましたら、いよいよ本題に入っていきたいと思います。この「ヒットプロダクトを作る」という、すごく難しいお題。僕もこのモデレーターをしてほしいと言われたときに、45分間では絶対に話しきれないと思っておりました。いろいろと考えた結果、ズバリ、お三方に単刀直入に質問のスライドを用意させていただきました。もう、いきなり結論からいっていいですかというところで。ヒットプロダクトを作るために必要なことは、何ですか?

一番ポイントだと思ったことであったり、プロジェクトをやられる中でこういったところが苦労しました、こういったところがすごく大事だということに気がつきましたというようなところがあれば、ぜひおうかがいしたいと思っております。

まずは切り込み隊長的な感じで、1億円を超える応援購入を集められたglafitの鳴海さんに、この質問をさせていただきたいと思います。一番重要なことは、なんだと思いますか?

鳴海:これ、僕の主観で大丈夫ですか。

北原:大丈夫です。

鳴海:これは、はっきりしています。自分がずっとやってきたのは、「自分が欲しいものを作る」ということ。

もうすこし正確にいえば、自分が買いたいものを作るということ。ここがポイントで、自分が欲しい理想のものを作ったんだけれども、例えば金額が高すぎる。途方もない金額で、自分にとって普通に買えないものであれば、もう作らない。自分が行った店に普通に並んでいたとして、そのお金を定価で製品価格を払って手に入れるかどうか、という判断基準のもとで作っています。

バイク嫌いの社長が思わずOKを出した企画から生まれた「glafitバイク」

北原:なるほど。glafitバイクも鳴海さんが「このバイクが欲しい」というようなところから着想されたプロダクトなんですか。

鳴海:そうですね。とはいえ、自分はバイクが嫌いで乗ったこともなくて、最近バイクの免許を取ったばかりなんですが。

小野:嘘。

(会場笑)

鳴海:アンチバイクです。もうバイクなんてなくなってしまえばいいと思っていたんですよ。

北原:はい(笑)。すごいですね。そこから、どうしてこれに至ったのですか。

鳴海:そうですね、逆にそれがポイントです。社内でこの企画を上げてきたのが、エンジニアなんですよ。もともとは自分たちで車を作ろうとしていた。実は今、車を開発しているんですが。

北原:そうだったんですか。

鳴海:その開発の途中に出てきた副産物のようなものなんです。それで(glafitバイクの)企画が上がってきたときに、僕はバイクが嫌いだから、そんなものはだめだと相手にしていなかったんですよ。ところが、途中で違う観点に気づいてしまった。話を聞いているうちに、おもしろいと思ってしまったんです。

「あれ、まてよ」と。今、バイクがぜんぜん売れなくて、一部のバイク好きの人たちだけの趣味の世界になってしまっているけれども、原付なら車の免許を持っている人は全員乗れるんです。そうなると、対象者が何千万人もいるわけですよ。

でも、ほとんどの人が僕と同じようにバイクに興味がなくて、今はもう乗る人がいない。興味のない自分が「クルマに積めるバイクなら楽しそうだし乗りたいかも」と思えるということは、新しいマーケットがそこにあるんじゃないかと感じたんです。「バイクが嫌いな自分が乗ってもいいと思える物」というのがターゲットでした。

反対意見ばかりの中で、クラウドファンディングで1億円以上を目指す

北原:ちなみにglafitバイクは前例がないものだったと思います。世の中を見渡しても、あのハイブリットバイクはなかなかないように思いますが。最初はかなり否定の意見だったり、反対の意見もあったんですか。

鳴海:そうですね。基本的に周りに反対されたので、その是非を問うためにMakuakeでその判断をしようということになりました。だから、当初の申し込みは本当はオールオアナッシングで、1億円以上という申し込みを……。

北原:冷や汗が(笑)。

鳴海:あはは(笑)。いろいろ裏の事情がありまして、「そんなの不可能だからやめとけ」というようなアドバイスもいただきましたから。でも、もともとはそういうところからスタートをしていますね。

北原:そこから着眼点が生まれて、Makuakeでのプロジェクトに至ったというわけですね。

鳴海:そうですね。最低ラインが1億円以上でした。

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