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Bespoke Inc.Founder & CEO綱川 明美氏(全5記事)

サラリーマンは「人にコントロールされる人生」 Bespoke創業者が20代で起業して気づいたこと

FMラジオ番組「大人のミライ」でパーソナリティや、IT企業の顧問・アドバイザーを務める河上純二氏をモデレーターに、スタートアップ・ベンチャー企業のCEOを招き、その人柄や創立秘話などについて話を聞くYouTubeのトークライブチャンネル「『JJの部屋』by COLABO。今回は、24時間対応の多言語チャットボット「Bebot(ビーボット)」を展開する、Bespoke Inc.Founder & CEOの綱川明美氏が登場。採用で重視している観点や、サラリーマン時代と起業してからの違いについて振り返りました。

多様性のある組織のメリットとデメリット

河上純二氏(以下、河上):前にもちょっと話した、どこまで話すかあれでしょう。金融で張ってる人と、起業家で地道に1個1個、組織を積み上げていく人ってぜんぜん違うから。それはすごく大変だっていう話はちょっと聞かせてもらったことあるじゃん。やっぱり、ここまで来る間に何個か乗り越えてきたことで、組織についてはクリアできたの?

綱川明美氏(以下、綱川):イエスでもあり、ノーでもありで。

河上:イエスでもあり、ノーでもあるか。

綱川:うん。永遠の課題だなって思っていて。

河上:もちろん、そうだよね。

綱川:完璧にはならないなと。ただ、方向性は決まったかなと思っていて。

河上:定まった感じね。

綱川:やっぱり、多様性は大事じゃないですか。多様性は大事だから、いろんな国籍の方に対応はしているんですけれども、全体的な性格とか、ものの考え方とかは、近いほうが速く動けるんですよね。

磯村尚美氏(以下、磯村):それはそうですね。

スキル重視ではなく思考が近い人の採用へシフト

綱川:なので、そういう人。今までであればどちらかというとスキル重視で採っていたのが、ここ1年ぐらいで一気に変わって。なるべく思考が近い人や、本当にやりたいこととちゃんとマッチしているか。そういうところを見るようになったのが一番大きなところかなと思っていて。

あと、ありきたりなんですけれども、やっぱり1個下に採る人。私に直接レポーティングするラインの人たちは、やっぱり人間らしい人、人間を相手にするのが得意な人を採るようにしましたね。

磯村:得意な人。どんな感じの人間らしさがあるんですか? 

綱川:例えば、批判・批評をするときもconstructive(建設的)な意見がちゃんと言える。「こういうことに対して、まだ改善の余地があります」と。「こないだやってもらったときはこうだったけれども、私が期待していた結果はこんな感じだった。なので、次からは、2週間以内にこの辺をちゃんとこういうふうに改善してほしい」というお話がちゃんとできる人。

磯村:それはすごいな。

社員数が少なかった頃のゴールの決め方

河上:なるほどね。最近の綱川さん率いるビースポークでの毎週のルーティーンというか、コミュニケーションルーティーンについて、ちょっと聞いてみたいなと思うんだけれども。

日本の会社で今、スタッフたちとの寄り添い方みたいなところが、もうちょっとビジョン経営だったり、理念経営のような話の中で、欧米型のフラットな経営が流行ってきているから、組織ヒエラルキーというような話もけっこう話題になったりするし。

それがどういうタイミングやレイヤーで、今までの日本らしいヒエラルキーから逸脱していくのかという話が、僕の回りだとけっこう旬なのね。

綱川:なるほど。

河上:(ビースポークは)すごく多様性があっていろんな人たちがいるから、「Bebot」の流れの中で、もしかしたら最先端の組織経営が作られているようなイメージを持っていたりするんだけど。

意識していないかもしれないけれど、評価とか、組織の中での半期の動かし方、年期の動かし方。また、経営陣のビジョンや理念の伝え方では、どんなことを意識してやってきたのかなというのは聞いてみたかったんだけどね。

綱川:その辺はかなりファジーな感じでして(笑)。

河上:ファジー! ファジーなの? へー。

綱川:すごくファジーで。具体的には、例えば4期目のゴールって、けっこう私が勝手に決めちゃった感があって。

河上:私が決めましたと。おもしろいな、それ。意外。

綱川:数字つきで、私が「はい、これで行きましょう」っていうふうに。ただ、4期目の最初って、人数がもっと少なかったので、それでもけっこう大丈夫だったんですね。

サービスを作る会社にとって一番大事なもの

磯村:(4期目の最初は)何人だったんですか? 

綱川:15~20人の間ですね。

河上:一気に上げたってこと? さっきの人数を倍にしたってこと? 

磯村:倍以上だ。25人。

綱川:倍。15~20人ぐらいだったので。なので、あのときはもう自分で決めたほうが早いなと、まだ思っていたんですね。なぜなら、今以上にほとんどエンジニアしかいなかったから。

「もう、これでいこう」というので。ゴールもほとんど、営業前のものというよりもプロダクトサイドのゴールだったんですよ。なので、お客さんがどれくらい喜んでくれるか、何パーセントぐらいが「ありがとう」と言ってくれるかとか。チャットの会話で、例えば質問して回答が送られて、これで1カウントしたら、このラウンドが何回続くかとか。ほとんど全部、プロダクトに関するゴールしかなかったんですよ。

河上:すごい。

綱川:精度はこれぐらいとか。それがだんだんプロダクト以外の人も採用が少しずつ増えてきたので、そこを変える必要が出てきたと。なので、次にやったのはプロダクト全体のゴール、方向性として、私たちは営業会社ではないので、サービスを作る会社として経営をしていると。

なので、一番大事なのがプロダクト。さらに、同じぐらい大事なのが、そのプロダクトを提供してくれるパートナー企業さん。ホテルさんや、いろんな自治体さんもあるんですけれども。そこに対してどれくらい貢献できるかも鍵になってくるので。

なので、全体の大きなゴール、例えば満足度何パーセントというのを決めて。一応5期目は、数字目標とかもあるので(笑)。それを作って、今度は1個下のレイヤーの人たちにそれをパスして、最終的なゴールを数字に落としていって、その数字を達成するための具体的なアクションに落としていって、そこからクオーター毎に割っていって、誰が何をやるかを出して、いつ・どういうふうにトラッキングするか……。というのを細かく分解していくと。

社員数が増えるにつれて重要性が増すポジションとは

河上:なるほど。ちょっと珍しく食い込んで聞くんだけど、役員なのかCXOが、今どういう状態でやっているんだっけ? 

綱川:今は、アメリカの責任者がチーフ・コマーシャル・オフィサー(CCO)なので、ビジネス系のトップなんですね。彼がマネタイズの方法ですとか、どのチャネルをどう攻めていくかということを……。

河上:それはジャパンも含めて彼がやるっていうこと? 

綱川:そうですね。彼がやっていて、その並びにCTOがいて、彼女は技術責任者なので、全体的な開発の方向性を決めていくと。リソースのアロケーションもそうですし、どのタイミングで何が出来上がるかを見ていくと。

あとは、その他のカスタマーエクスペリエンスを見るチームが、例えば会話のデザインで、『これ、おすすめです』と言うか、『ここ、行ったらいいかも』と言うのかで、いろんな言い方があるじゃないですか。

何をどう言うかによってぜんぜん反応が違うので、そのユーザーのエクスペリエンス全体を見る人がいるんですね。その下に、そこをサポートする人たちがついているんですけれども、一番大きいのはやっぱり開発回りのところです。

河上:CTOゾーンが大きい。

綱川:一番大きいですね。

河上:40人になってきたから、そろそろコーポレートサイドの、いわゆる管理ゾーンにヘッドを置く時期なのかもしれないけどね。そこは、でも誰もいないっていう感じなんだ。

綱川:いい人がいたら紹介してください(笑)。

河上:(笑)。

人事、総務・労務、法務を兼ねる“スーパー秘書”

綱川:秘書はいるんですけど。でも、アメリカ人なので。

河上:そうだよね。人事もいないし、総務・労務もいないし、法務もいないような状態なんだ。

綱川:それを私の秘書がやっている。

河上:全部やってる。あら、すごいね。

綱川:本当、ごめんなさいって感じで。

磯村:優秀。

河上:だから人たらしなんだよ。とってもいい出会いと、いい引き込み方だからさ。ある意味でぐいって引き込む力があるんだと思うけど。

綱川:たまたま彼(秘書)も、英語の先生だったんですよ。

磯村:秘書は男性なの? 

綱川:(笑)。年下の男性(笑)。

磯村:彼女かと思ったら、違うんだ。へー。

綱川:なんでもやってくれて、すごく気が利くいい人なんですけど。

もっと早く起業していればよかった

河上:そうなんだ。じゃあ、せっかくだから人柄に触れていくけどさ、あんまり聞かれたことないと思うけど、金融業界でそれなりのポジションというか、キャリアウーマンとしてやって、いきなり起業家になって、わりかし泥臭いこともやって。泥水もいっぱい飲むような状況に急になっていって。これを今、正直、自分でどう思ってる? 

綱川:もっと早く始めていればよかったなって、やっぱり思いましたよね。

河上:そういう感じになってるんだ。すごいね。

綱川:なんでもっと早くやってなかったんだろうって。あんなに時間を無駄にしてたんだなって思います。

河上:おお、すごい。

磯村:迷った時期があるんですか? 迷ってはいないけど……。

綱川:一切迷ってなくて。起業しようって思ったことなかったから(笑)。

磯村:あー、そういうことなの。

サラリーマンは人にコントロールされる人生

河上:その時代はそれなりにいろんなことが恵まれている状況だったと思うし。でも、さっきの話から拾ってくると、自分でこういう課題というか、自分なりにやりたいことが見つかって、一気に道を切り替えるのもすごいと思うけど。切り替えて4年経って、後悔はない状態だと。すごくない? 普通に考えるとすごいことだけど。

綱川:私からすると、サラリーマンでいるほうがすごいことだなって思っていて。

河上:(笑)。

綱川:だって、人にコントロールされる人生で、来年どこにいるかわからないじゃないですか。突然転勤とか、部署異動とかあるじゃないですか。会社が潰れちゃったりね。

河上:金融業界はいわゆるギャランティーとかサラリーとかのラインでいうと、かなり高いゾーンじゃない。だから、決断には勇気がかなりいるゾーンだとも思うのね。それなりに社会ステータスも高いから。それを1回置いて、新たな道を踏み出すというのは、それはすごい決意と、またはそれなりのアグレッシブな動きだと俺は思うんだけど。

それをやりのけて、今平々坦々と、きょとんとした目で俺を見つめてくる姿に感銘を受けているんだけどね。

上司が重視するのは、部下の頭のよさよりも使いやすさ

綱川:(笑)。本当にサラリーマンはサラリーマンで、だめなサラリーマンだったんですよ。自分って。

河上:そんなことはないだろう(笑)。本当に。第一線中の第一線じゃないか。

綱川:人の言うことをちゃんと聞けなかったから、ぜんぜん。あのときの自分、今の自分だったら採用しないレベル(笑)。

河上:(笑)。

綱川:本当に(笑)。

河上:言ってるよ。

綱川:いつも言われてたのが、「頭はいいんだけど、使いづらい」みたいな。

河上・磯村:(笑)。

綱川:でも、たぶん上の人からすると、頭の良さとかどうでもよくって、一番大事なのは使いやすさなんですよね。

河上:そうね。それが一番大事だからね。

綱川:思った通りにconsistent(矛盾のない/一貫した)なパフォーマンスを出してくれるかがやっぱり大事だから。そういった観点で見ると、自分はすごく使えないサラリーマンだったなって、自分で振り返ってみて、思うんですよ。なので、そう考えたときに、イメージとしては靴擦れしてるハイヒールを履いて、がんばって走らなきゃいけなかったみたいな。

河上:当時? 

綱川:うん。すごくいいハイヒールなんだけど、靴擦れしてるとぜんぜん楽しめないんですよ。今は、ビーチサンダルで好きなだけ走れるみたいなかたちなので、フィットしてる感は今のほうがあるし、満足感も今のほうがあるし、後悔は本当にゼロです。もっと早く辞めていればよかった。

会社員時代に学んだスキルと経験

河上:気づいてよかったなっていうことだよね。出会えたね。

綱川:気づいてなかったです。ただ、よかったこともたくさんあって、例えば資料の作り方とか、PowerPointのプロになったので、あれはあれでよかったなとか。

あと、会社員ってどういうものかなって、たぶんちゃんとわかっていないと、大きな会社さんを相手しているときにわからないじゃないですか。決済のフローですとか。そういうのもありますし、どんなに怖い人が出てきても実は誰かのお父さんだったり、ちゃんとした人間なんだっていうのを、私がサラリーマンのときに学んだことだし。

人の会社で働いているとサボりたくなっちゃうとか、人間独特の行動パターンなども、まず自分がそうだったので、なにか会社でうまくいかないことがあったりとか、うまく物事がいかない、進んでないときとかに、「でも、あのサラリーマンやってたときは自分もこういう感じだったよな」とか(笑)。「あのときの自分にこういうふうに話しても、いや、通じないよな」とかって思いながら、日々過ごしています。

河上:金融法人、何年やってたんだっけ? 

綱川:一応6年ぐらいやってましたね。

河上:6年やってたのか。じゃあ、それなりにはもうさらったね。おさらいしてるね、6年だと。

綱川:イエスでもあり、ノーでもありで。あのときの上司の方々に本当ごめんなさいっていう感じです。

河上:(笑)。

綱川:「本当ごめんなさい!」って言いたいです。はい。

河上:そうだよな。なるほどね。

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