2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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若宮和男氏(以下、若宮):確かに、確かに。それで言うと、今日最初はいらっしゃらなかった方もいるので、「Your」という事業は必ずしも全部がスタートアップじゃなくていいと思っていて。資金調達の手段も自己資金のパターンもあるし、今は金利がめっちゃ安いので、投資家から受けないで融資で国からお金借りるとか(笑)。そういう仕方もあるんですよね。
投資家からお金が入ると「何十倍にして返します」というレースに入ってしまうことになるので。それもそれでよくて。だけど、そもそもいろいろな選択肢があることを知っていただいて、一番いい、無理していないかたちが選べればいいかなと。
奥田浩美氏(以下、奥田):そうですね。私が90年のときにやっていた事業は、まさに今も続いているんですけれども、そもそも海外にはカンファレンスのプロフェッショナルがいたと。カンファレンスのステージを作ったり、デザインですね。
別に装飾のデザインじゃなく、イベントというものが前日からどうなり、翌日どうなるかというデザインをする会社がいっぱいあって。そして、ITがあったときに、日本でそれ(ITに関するカンファレンス)を探したときに、「あ、ここスポッと抜けてるな」と。そこから入った起業が90年代で、最初は決して、私の想いがどうのということはなかったです。
でも、そうやって見つけた事業に対して、これを続けていくには、私は一体何のミッションを持っているんだろうと考えていました。それで、ウィズグループのビジョンとミッションである「最大の叡智を次の世代に」が落ちてきたときに、腹落ちした事業になりました。ですから、みなさんはどっち側(足りないものを埋めようとするか、自分の想いから生まれるか)からいっても、必ずしも「自分のここからだけ産み出さなきゃ」という必要は一切ないと。
若宮:確かに。そうですね。
藤本あゆみ氏(以下、藤本):合宿のときにBeingとDoingの話をしていたじゃないですか。あれはやっぱり、すべての起業家の人がもう1回ちゃんと考えるべきことだなとすごく思っていて。自分が何をしたいのか。何に一番心が動かされて、どんなことに想いを強く持てるのかが自分の根底にあるBeingだとしたら、それを表現するビジネスがDoingであると。
だから、シリコンバレーにはシリアルアントレプレナーがいて、Beingは変わらないんだけれども、やるDoingが変わって、結局ビジネスがいっぱい生まれたという話を合宿で聞きました。それが自分の中ではすごく衝撃的で。
奥田:そうですね。私も今までたくさんものの根底が一切揺らいでいない。おそらく来年やるインドビジネスなども、愛と希望がかすっていなければ全部外すと思います。そこですよね。
藤本:なので、たぶんこれからなにかをやろうと思ったときにちょっといろいろ変わってきたり、それこそ社会も変わっているので、今がフィットするのかフィットしないのかということもあったりすると思うんですけれど。
自分は本当は何がやりたいのか、どんな社会を作りたくて、どんな自分で在りたいのか。たぶん、「この事業」と決める前か、決めながらも自分の根底をちゃんと見にいくことは絶対にやめないほうがいいなと思います。
若宮:そうですね。一方で僕は、走りながら発見していくということもやっぱりあると思うので。自分はまだ根底は見えていないので、「応募やめときます」(という人)は、(今はまだ)やらなくてもいいかなと思っていて。僕もなんだかんだで起業したのは42歳とかで、めっちゃ遅いんです。今、女性向けの(起業支援)とかやってるんですけど。
その前はわりと大企業でずっと新規事業をやっていて。なんだかあんまりピンと来ないなと思いながら、ずっとやっていて。それこそさっきみたいにニーズを切って、「ここが空いているから」というものもやっていたけど。自分で事業を作ってるのに、自分の奥さんには「別にこのサービス使わなくていいと思うよ」というような(笑)。そういうことをずっとやっていて。
起業するあたりになってから、女性の比率が低いとか、ここがもったいないから片目(男性目線のバイアス)を外したらいいのに、ということがだんだんわかってきた。動きながら違和感がわかりながらというところもあると思うので。チャレンジしていると、「ああ、こういうことか」という部分もある。探しつつ動くことも、とても大事なのかなと。
奥田:人生の10のうち9はかすりもしないことをいっぱいやったあとに……私は本当に無駄なことばっかりやっていて、結果的に無駄がないというふうになるので。動くことだけが……。
藤本:深いですね(笑)。
若宮:無駄をやることが無駄がない。
奥田:大人が「人生なんて無駄はないよ」と言うのは嘘で。動いたあとにしか言えない言葉だと思っています(笑)。
若宮:確かにね。
奥田:まだ動いてない人に「無駄なんてないんだよ」と言うのは嘘で、これから無駄がいっぱい出てきて、無駄なことばっかりして、ある一定のときにパパパパッと、Dotsですよね。(点が)繋がる。そのときに「ああ、無駄はなかった」って言うまでの20年みたいなのが絶対あると思ってます。
若宮:僕も起業してみたら、起業する前に起業家に対して思っていたイメージとは違うというか。「あ、なんかこんな感じでいいんだ」というのも変なんですけれども(笑)。もっと気負っていたんですよね。起業家たるもの! という。世の中を変えるすごく熱いパッションみたいな。
でも、飛び込んでみると、「こういう景色か」って。例えば壇上に上がっていて、奥田さんとかあゆみさん……(雰囲気は)柔らかいですよ。柔らかいですけど。ほかの人から見ると「あ、私とは違う世界の人だ」と思っちゃう人もけっこういると思っていて。そこもあんまり神格化しすぎないというか、気負わないことが大事。
奥田:そういうのもあって、破壊の学校ってずっと一緒にいて、みんながちゃんと(一緒に)感じる。すごいことをやっているんじゃなく、みんなと同じようなことで悩み、同じようなことで驚くことが大切だなと思って合宿形式をやっています。
そうじゃないと、カンファレンスってこの段差(壇上にいる登壇者とその下にいる参加者)があるんですよ。「あぁ~!」って聞いて。「勉強になりました!」って言って帰っても、その勉強はぜんぜ刺さらない。それよりは同じ風景を見て同じように驚き、同じところで泣き、感動するようなことが、起業家がフラットになる仕組みかなぁと思っています。
藤本:ちなみに私、絶対に起業するつもりはないです。今のところ。
若宮:へ~。
藤本:奥田さんの合宿に行くときにも「私は起業家じゃないんですけれども、行っていいですか?」という話をして。「そういう人もいるからいいと思う」と言われたんですね(笑)。
奥田:さっきの三蔵法師の話で、(藤本氏を指して)別に妖怪じゃないけど(笑)。絶対にその場面にいなければいけない人です。
藤本:(私には)今やりたいなにかがないからということが、たぶん一番の理由なんですけど。だからこそ、自分ができない(ような起業をしている人たちに対して)、その代わり、やろうと思っている人たちのパッションをすごくよく知ってるので、それをサポートしたくて、今Plug and Playにいます。
なにかをしようと思って一歩踏み出している人は本当にすごいと思うし、その一歩を踏み出した想いを忘れないでほしいなと思います。それが消えないようにサポートする仕組みがあって、どう続けるのか、もしくは誰かにそれを灯していくのかということが、このコミュニティでもっと広がっていくとおもしろいなと思います。
若宮:僕はやっぱり、規模もけっこう大事だと思ってるんです。今なんでもかんでもIPO……IPOと言うと、やっぱり3桁億以上いってないと無理してIPOしてもしょうがないというようなことで言うと、IPOと個人事業主みたいなスモールビジネスや中規模という部分はぜんぜんあると思っていて。
例えば自分が起業して、企業にM&Aしてもらうのでも十分にすごいイグジットなんですけど。今は調達環境がいいので、数億円とかすぐ集まっちゃうんです。だけど、たぶん20億円出して買える企業ってあんまりないんですよ。僕もドコモなどにいて新規事業をやっていると。だから、数億円くらいの規模まで大きくして、そこでイグジットして、企業と一緒に事業として残していくという道がもっと(あってもいい)……。日本はM&Aイグジットがすごく少ないと思っていて。
奥田:少ない、少ない。
藤本:Plug and Playを見ていると、そっち(M&A)のほうがぜんぜん多いですよ。IPOのほうが圧倒的に少ないので。日本はIPOしやすいんですよ。
若宮:あ、Plug and Playというのは全体?
藤本:全世界で。さっき言った世界30ヶ国でいろいろな支援をしています。その中で、うちは投資もたくさんしているので、どんな企業がいるかと言うと、成功しているのはほとんどがM&Aですね。
若宮:M&Aの額もでかいんですけどね。
藤本:まあ大きいですけれどもね。日本は市場にもっとIPOさせようという力学が働いているので、やっぱり(IPOが)多い。まずそっちがどうしてもフォーカスされやすいのと、「IPOしないと成功じゃない」という、なんとなくの雰囲気ができちゃっているので。でも、そうでもない人たちもたくさんいるので、これからどんどん変わってくると思っています。
若宮:日本の人口も数十年で何分の1とかになっているので、GDP自体が大きくなっていかないときに、入れたお金を何十倍にするというレースだけでは、たぶんエコシステムごと成り立たなくなるかなと思っています。
さっき奥田さんがおっしゃっていたみたいに、ニーズがあるところでそれ(必要なサービスや商品)を届けて、その感謝でビジネスが成り立つケースをもう少しいろいろと増やせればいいかなと。
奥田:すごく単純な話をすると、例えば今日は妊婦さんがいらっしゃってますけど。こんなに長い年数、腹帯の基本は変わっていないんですよね。もしも男性が産業の中心にいる社会で男性が妊娠する仕組みになっていたら、アシックスなどがめっちゃすごいものを作ってきて進化してるんじゃないかなって、私はそういうことを思ったりして(笑)。
若宮:おもしろい(笑)。
奥田:つまり、片目を開けましょうということは、産業の中心にいないことでまだ溢れてないものがいっぱいあるよねというところを、別に女性が女性らしさを発揮してということではなく、まだいっぱいチャンスがある。300年、3000年変わってない世界がいっぱいあるでしょう、ということはいつも言っています。
若宮:それは本当にそうですね。逆の言い方をすると、今は男の子カルチャーで男の子の目線で見えているものは、たくさんの人がもうそっちに向かって走っている。その中で言うと、埋まっている可能性、まだ見えてない可能性を拾いに行くほうがよっぽどチャンスがある。
奥田:もっと言うと、私は10年前くらいから、自動運転の世界に女性が半分くらいの比率いたら、もっと進化したと思ってるんですね。つまり今までの女性って、運転して前を見るよりも、本当は後ろに乗せてる子どもが気になったりするから。前を見て運転したい意欲よりも横を見てしゃべりたいか、後ろを見て子どもを見たいというような(笑)。
そういうニーズがあまり車の産業界になかったのが、もしかしたら、ある種の自動運転的なものの進化を遅らせているんじゃないか。そういう勝手な仮説を10年前から持っていて。もしこれが(開発者が男女)半々だったら、モビリティの在り方もどんどん変わっていくだろうなと今思っているので。みんな産業の世界に出ていきましょうよ。子連れでとか、おじいちゃんおばあちゃんも連れて、と思っています。
若宮:さっきの(奥田さんの)話にあったように、オフィスをぶらぶらしている老人がいてもいい。そうしていないと見過ごしてるニーズがいっぱい埋まっているということだと思うので。今のスタートアップ、ザ・起業とか、投資家にピッチしてというのじゃなくて、たくさんのニーズをこのまま埋めておくのはあまりにもったいないので、ぜひそういうところでチャレンジするというか、一緒にそれを考えながらいけるとね。
奥田:そうですね。大きくしたいと思ったら土壌はちゃんと整っているので、それはそれで走り抜けられるエコシステムがあります。そこに繋げられる人たちがいっぱいいるので、どんな選択肢でも試せる時代が来ているんだなと思います。
若宮:プログラム上は分社化して、代表になっていただいたタイミングで、3分の1から49パーセントの株をちゃんと持ってもらうことになっているので。ちょっとがんばれば、自分が過半数を持った株主になってもらえて。そのあとは、もちろんそこに投資家もご紹介するので、「ここからはIPO目指すっす!」というのは、それはそれであっていいやり方だと思うので。
プログラム上、新規事業が生まれるんだけれども、その人のオーナーシップを持ってもらう。株をちゃんと持ってもらうことはやっぱりこだわりとして持っているので。そのあとどうしたいかは、「事業をまず立ち上げてみてから考えましょう」でもいいかな、と思っています。
このあと交流会にしたいと思うんですけど、お2人から一言ずつみなさん向けに。さっき、一番いいBe the changeがありましたけども、改めて。
藤本:私が先でいいですか? 奥田さんに最後に締めてもらいたいので(笑)。
さっき言った一番初めに持ったパッションを忘れないでもらいたいなというのと、怖がらずに外に話してもらいたいなと思うんですね。こんなアイデアはくだらないんじゃないかとか。こんなの必要ないんじゃないかと思わないで、「こう思ってるんだけど、どう思う?」と聞く。
相手がいろいろ言ってきても批判じゃなくて、これはフィードバックなんだと。餌をもらってるんだと思って、「なるほどね」と言って、いらないものはボンボン捨てていく。さっき奥田さんが言ったとおり、いろんな人に会っていろいろ聞いて、いろいろ吸収しながらいろいろ捨てるという。それをぜひ試してもらいたいなと思います。
若宮:ありがとうございます。
奥田:本当はみんなが心の中に幸せとBeingを持っているんだと思っていて。ただ、それを広めるには、ビジネスはある種のチャンスですよ、と思っています。
やるもやらないも自由ですけれども、ちょっと試してみたいなという人は壁打ちに若宮さんのところを使ってみるもよし。その前に、「私もっと大成功したいんです」だったら、今日から学び始めてください。それを学んで何がしたいのかと、まず自分で壁打ちをして、たくさんの人とつながって、「自分がいたらいい場所はどこなのか?」を日々考えていくといいかと思います。以上。
若宮:ありがとうございます。最後に御二方にもう一度拍手を。
(会場拍手)
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