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一般社団法人日本スタートアップ支援協会 代表理事 岡隆宏 氏(全3記事)

上場企業の創業経営者50名が「壁打ち相手」 日本スタートアップ支援協会代表理事が説く、メンターの重要性

経営者マッチングアプリCOLABOが運営する、ライブ配信スタジオ「COLABO LIVE CHANNEL」。さまざまな起業家をゲストに迎え、仕事への想いを定期的に発信しています。今回は2019年4月4日に公開された、一般社団法人日本スタートアップ支援協会 代表理事の岡隆宏氏のトークをお届けします。本パートでは、日本スタートアップ支援協会のサポートの事例や、スタートアップが気をつけるべきさまざまなリスクについて語りました。

日本スタートアップ支援協会の岡代表理事が登壇

及川真一郎氏(以下、及川):では始めさせていただければと思います。本日のゲストは、日本スタートアップ支援協会の岡代表理事に来ていただきました。今日はどうぞよろしくお願いいたします。

岡隆宏氏(以下、岡):よろしくお願いします。

及川:岡さんとは、毎月ミートアップやピッチイベントでコメンテーターをしていただいたりしながら、いろいろ連携をさせていただきまして、本当にありがとうございます。

:こちらこそいつもありがとうございます。

及川:岡さんとお話しさせていただく中で、本当にスタートアップに対する支援の思いがあって、毎回すごくいいお話を聞かさせていただくな、というふうに思っているんですけれども、今やっていらっしゃるこの日本スタートアップ支援協会はどういった協会なのかとか、そういうお話を今日いろいろしていきたいなと思うんですけれども。

:お願いします。

及川:簡単にいうと、どういう協会を立ち上げられたんでしょうか?

:僕自身、学生ベンチャーでピボットも12回して、13回目のネット通販でやっとマーケットフィットして、そこまでの過程でいろいろ失敗もしてきたので。もう一つは、プロダクトマーケットフィットしてから上場するまで、8年ぐらいかかっちゃいまして。

及川:すごいですね。

:そこでも直前期を2回したり、あとは資本政策でもいろいろしました(笑)。やらかしました。その辺の失敗経験を後輩や起業家にちゃんと腹落ちするまで伝えられるようにするための協会。それに賛同してくれた仲間の上場企業の経営者とか、あとはスポンサーといった方々の協力を得て、今、運営している協会になります。

日本スタートアップ支援協会の設立の背景

及川:そうですね。そういった意味では、ご協力いただいているメンターの方も含めて、ものすごいメンバーの方が集まっていらっしゃるな、というふうにすごく思いまして。やっぱり岡さんのこれまでの人徳といいますか、そういったものがあるんじゃないかなと思いますけれども。

:ありがとうございます。僕が一番年長者ということもありますし。僕だけじゃなくて、そういうふうに苦労して上場したメンバーばかりなので、「なんとかしていかないといけない」という危機感はみんな持っていましたから。ただ、それをする場がなかったので。

僕がそういう場を作ることができて、それが今、良質なコミュニティになったおかげで、上場企業の経営者も50数人顧問になってくれていますし、会員も100社を超えてきました。スポンサーも13社かな。非常に良いかたちでスケールしてるかなと思っています。

及川:なるほどですね。ホームページなども見ながらお話ししたいなぁと思うんですけど、待ってくださいね。こういうホームページなんですね。

:手作り感満載のホームページで。

及川:これ、でもスポンサーの方ですよね。

:スポンサーの方で。ベンチャーフレンドリーなところばかりで、スポンサーになりたいと言ってくださるところもけっこう来られるんですけれども、やはり趣旨や協会に賛同されそうにない方はお断りしていて。その中で今13社、スポンサーになってもらっていますね。

メンターは50名の上場企業の創業経営者

及川:なるほどですね。やっぱりスタートアップにとって、そういうふうにいろんなアドバイスをいただいたり、いろんな支援をいただける協会はものすごくありがたいんじゃないかな、と思っていまして。だからもう3年目に、今年なりましたっけ……?

:はい、2年半ぐらいなんですけど、3周年記念イベントをします。

及川:楽しみですね。

:石の上にも3年といいますけれども。一応やりたかったスタートアップエコシステムはほぼ完成したかなと。あと去年、1社上場もしましたし、今年も2、3社申請しそうなので、すごくいいかたちでクローズしていくので。楽しみですね。

及川:今これを見ると、50名以上の上場企業の創業経営者が壁打ち相手になります、って(笑)。

:メンタリングたけどね。

及川:そうですよね。

:いうのは、行政の方や大企業のアクセラレーションプログラムではなかなか難しいし、みんな気の良い仲間、友だちなので。やってくれますんでね。逆に気を使うんですけれども。やっぱり、壁打ちに勝るものはありませんのでね。グループメンタリングもありますけど、そういう場をできるだけ提供していきたいなと思ってます。

及川:けっこう会員というか、やっぱりスタートアップ側の企業さんはどういう業界といいますか、どういうテーマの企業さんが多いんですか?

:ブティック系が多いことは多いですよね。ブティック系はピボットもしやすいし、あと在庫もそんなに持たなくていい場合もあるし、人員もそんなに必要じゃない場合も多いので、エグジット、IPOとかM&Aには向いているかなと思って。ただし日本の将来を考えると、IoTやメディカルなどもすごく大事だし。またレガシーな業界も、もっともっとやっていく必要があるんですけど、現行半分くらいがTech系かな。

資金調達がしやすい反面、待ち構えている落とし穴

及川:そうですか。確かにレガシーな業界も今後なにか、ITを絡めてイノベーションを起こしていこうというテーマなどはもっと増えていってほしいなと、僕なんかもけっこう思ったりしていて。やっぱり、業界側の雰囲気などもいろいろあったりすると、大きい変化を起こすのはなかなか大変というか、そこはけっこう課題かなと思ったりはするんですけどね。

:どうしても既得権益が絡む業界なので。いろんな意味で横槍が入ったりすることがあるので大変ですけれど、例えば建設業や不動産業では、最近いい感じで出てきたスタートアップが多いので、風穴を開けてほしいなと期待をしていますけどね。

及川:そうですね。確かにですね。最近のスタートアップ業界といいますか、こういう最近の業界を岡さんはどういうふうに見ていらっしゃるのかな、というのも、気になったりしているんですけど。

:やっぱり協会に相談に来るスタートアップの半分以上が資本政策、それも資金調達の相談が多いので。今、資金調達もすごくしやすいのは間違いないんでね。僕らの時代、30年以上前はとてもじゃないが、そんなふうに調達をすることなんてほとんどできなかったんですけれども。それが今はすごくしやすい。

ただ、しやすいが故に、落とし穴にもはまりやすいという誘惑も多いので。よくあるのがオーバーバリュエーション。バリュエーションを高くしすぎて、調達額は取れるんですけど、当然投資家はそれ以上の成長を期待しますから。

もしそれができなければ、次のラウンドがダウンラウンドになっちゃったりすると、非常にやりにくくなるし。当然IPOもM&Aも厳しくなることも多いのでね。だから、フェアなバリュエーションがどのくらいなのか。これは相対的な目利き(が必要です)。

及川:そうですね、確かに。

企業価値が高くなりすぎることのリスク

:経営の経験もそんなにないし、なかなかフェアバリューがつきにくいんですけれど。マルチプルと言っても限界があるので。でも、フェアバリューをなんとか見つけ出して、ある程度のバリュエーションでやっておけば、次のラウンドではやりやすいかなと。足りない部分は、できたらデットで調達しておけば、今は金利も安いし。創業支援とか創業融資か、あとは保証協会。

だいたい1千万円、2千万円は、払われることが多いので。よっぽどやんちゃしていなければね。そのお金とエクイティのフェアなバリュエーションでの資金を合算して、それでプロトタイプをある程度作って、マーケットフィットするまでがんばれば、良いかたちでシリーズへいけるんじゃないかなと思うんですけどね。

及川:確かに、ニーズがあったときにエクイティに行くのか、デットへ行くのかどちらかというよりは、うまく合わせてちゃんと計画を持っていくのは一番いいでしょうからね。本来のかたちですよね。

:だから、デットについても賛否両論がありますけれども、とにかく金利が安いし、長期で借りられれば、とりあえず資金繰りは回るし。なんといっても、株は取られないので。

及川:そうですね。確かに。

:経営のリーダーシップ、議決権はしっかり持っていけるので、これは大きいですよね。僕もデットで17億円を調達して。「デット」と言ったらかっこいいんですけれども、借金だからね(笑)。17億円の借金を背負って一生懸命やってきて、上場して全部返済して、連帯保証も省けて、やってきたので。

そのデットのしんどさはわかるんですが、それが逆にモチベーションにもなるし。それだけ真剣にやっているということが、自分の周辺の社員にも外部にもわかりますので。そこはそういった面では良かったかなと。

及川:そうですよね。だから、自分のステージをちゃんと見極めるというか。その上でどういう選択があるかというのをちゃんと見ていくのがいいんでしょうね。口でいうのは簡単なんでしょうけど(笑)。

:ただ、こういうのはなかなかね。僕もバリュエーションが高いのはいいと思うし、バリューアップ、企業価値を高めることは協会の大きなミッションでもあるんですけど。ただ、ある限度を超えると高すぎる。いくらなんでも高すぎるだろう、というのが最近多いので。そう言ってもね、本人も舞い上がっちゃっているし、なかなかいうこと聞かないものですけれども。でも、結果、ほとんどがあとで「岡さんの言うとおりでした」と。

及川:それはタイミングがよかったんですかね。バリュエーションがついたタイミングがいいのかもしれないですけど、その次で困っちゃうということなんですよね。

:そうなんですよ。

及川:ですよね。

「転ばぬ先の杖」になることがメンターの役割

:とにかく資本政策、後戻りができませんし。多少、次のバリュエーションが上がったとしても、株数は増えないので。そこでよく勘違いするんですけど。また、ストックオプションでもバリュエーションが高いと行使価格は高くなっちゃうので。これもインセンティブとすれば、すごく薄くなっちゃうので。とにかくそこは、我々のような経験者にちゃんと相談したほうがいいかなと。

及川:そうですね。確かにそういうふうに相談できる方と、やっぱり、そういう岡さんの協会と出会う前などだと、確かに誰に相談したらいいかわからないということは一番ありそうですよね。

:そうですね。今、ネットや本で見られる情報はけっこう役に立つことと立たないこともあるし。本質的な部分を書いていないことも多いしね。例えば、資産管理会社や生前贈与のことなどは税務リスクがあるので書けないし、言えないですよね。でも、我々メンターは1to1だったら言えるんでね。

及川:そうですね。

:ここでは言えないけど。

及川:そうですね。もちろんそうですよね。確かに本やメディアだとやっぱり言えること言えないことがありますよね。

:叩かれるからな。

及川:ですよね。本だと書けないのは、例えば失敗的なこととか。その失敗も具体的に言わないと、やっぱりなかなかわからないようなことになったりするので。やっぱり、どうしても表現的になりがちな部分がありますからね。

:だいたい本やネットで出るのは成功譚がほとんどだし、たまに失敗談が書かれていても、それは一部であって。本当の失敗はなかなか活字化しにくいしね(笑)。そういうものは、もうライブでしか話せないし。それがスタートアップにとって、めちゃめちゃ大事なこと。「それを聞いていなかったら、同じ失敗をしていました」という子もすごく多いしね。「聞いておいてよかった」みたいな。我々メンターは、転ばぬ先の杖のようなことをやるべきことかなと思っています。

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